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2008/03/22

自然にぐわーっと

東京大学広域科学科の
池上高志は私の「まぶだち」である。

「茂木、おまえな〜」
「池上、てめえ〜」
と言い合う「まぶだち」である。

 あれは、一ヶ月ほど前のこと
だったか。
 4月から博士課程一年に
進学する野澤真一の顔を見ていて、
私は「こいつをどうしよう」
と思った。

 野澤は今、自発性
(spontaneity)に大変深い関心を
抱いている。だが、こいつが本当の感触
を掴むためには、何かが欠けている。

 そんな風に感じた。

 その時、池上高志の顔が浮かんだ。

 「おお、そうだ。池上と
噛み合わさせよう。池上に
鍛えてもらえば、ぼろぼろに
なって、野澤くんは再生するだろう。
新しい人間に生まれ変わるだろう。
そんな野澤くんが見てみたい。」

僕は、池上高志にメールをした。
「自発性についての、オレと
お前の研究室のjoint workshopを
やろう。」

Spontaneous One (「自発性その一」)
というタイトルには、「自発的なものたち」
という意味も込められている。


Spontaneous One

Joint Workshop on the cognitive process of spontaneity.

21st March 2008
University of Tokyo Komaba campus. 15-409

13:00-13:30
Consciousness and Spontaneity Mogi

13:30-14:00
The essence of Spontaneity Nozawa

14:00-14:30
Microslip Ogai

14:30-15:00
Spontaneous neural activities Yanagawa

15:00-15:15
Short Discussion

15:15-15:30 Break

15:30-16:00
Dichotomy of tools and objects Sato

16:00-16:30
Emotion and spontaneity Onzo

16:30-17:00
Spontaneity of fish group Nishimura

17:00-17:30
Autonomy and Homeodynamics Ikegami

17:30-18:00
Long discussion

18:00 Trip to BYG bar, Shibuya


東京大学駒場キャンパス15号館
409号室でワークショップは
始まった。

自発性について、
池上研と茂木研の
人たちが話す。

野澤真一はと言えば、
りっぱに自分の話をしていた。

そして、何よりも良かったことに、
野澤には、すばらしい友人が
見つかったような気がする。

「同じ世代のやつらの中に、
オレにとっての池上高志、
田森佳秀、郡司ペギオ幸夫、
塩谷賢みたいな、全面的に
共感できるやつを探せ!」

常々そう言って来た。
しかしながら、自分の感性
(フィーリング)にぴったりと
合うような友人を見つけることは
そんなに簡単なことじゃない。

佐藤勇起が野澤にはぴったりだ!
研究会の後の談話の様子を見ていて
突然そうひらめいた。

「野澤、お前、佐藤ぴったりだろう」
「友だちになりました。」
「そうだ、そのようにして、大いに
切磋琢磨するのだゾ!」

『プロフェッショナル 仕事の流儀』
の「バックギャモン担当」、
本間一成さんが、ワークショップの
様子を見に来ていた。

「茂木さん、ちょっと聞いて
いいですか」
と本間さん。

「なんで、皆、あんなに難しい
言葉を使って話しているんですか?」

「いや、やさしい話を難しく話そうと
しているのではありません。
問題について考えていて、そのエッセンスを
簡潔に表現しようとすると、
自然とあのような言葉遣いになるのです。
いわば、呼吸をするようなものなのです。」

ワークショップの後、渋谷のBYGに
歩いた。

『プロフェッショナル 仕事の流儀』
に出演いただいた長沼毅さんがいらっしゃる。

池上と三人でぐわーっとした。

わざとぐわーっとするのでは
ありません。
心に従っていると、自然に
ぐわーっとなるのです。

元気になることを考えていると、
いつでもどこでもぐわーっとなる。

ぐわーっ。


池上高志、長沼毅さんと。
(渋谷B.Y.G.にて。
photo by Atsushi Sasaki)


3月 22, 2008 at 09:26 午前 |

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コメント

フィーリングがぴったり合う人々と友達になれる、なれないかは、自分自身が心を自然にまかせるか、そうでないかで決まってくるのかもしれない。

私はなかなか友人が出来にくいタイプで、これは!という人がいると如何してもなってもらいたくて、自分から拙速で動き出してしまうのだが、そうすればするほど、その人は逃げ出してしまうのだ…。

本当に、心の底から友情を結べる人を見つけ出すのは、難しいことなのかもしれない。

でも、拙速であわてて動かずに、心を自然にまかせて、おのれらしく生きてさえいれば、自分の感性にピッタリと合う、生涯の友が見つかる筈だ…!

のびやかな感性で、互いにつながれた茂木さんとお友達の、心からの友情の絆の素晴らしさを、この記事を読んで改めて感じた。

私も自然に心をまかせ、友誼を結べる友との出会いに挑戦していきたい。


投稿: 銀鏡反応 | 2008/03/23 19:08:10

茂木博士、この場をお借りいたしますことお許しください。
池上博士様、遅々として進展せぬ不肖の「Time Theory」に於きましては、時間、時間と大海にてWordの収集に励んでおりましたら、行き着く先々に不時着ばかり、言い訳に過ぎぬと反省しております。が、暫し、寛大なお心で、次なる報告をお待ちいただければと思っております。
塩谷博士様、「理性はどうしたって綱渡りです」を拝読いたいしました。塩谷博士の「時間論」をどうしても拝見いたしたく存じます。早期のご出版を心よりお待ちしております。

投稿: Nezuko S | 2008/03/23 2:41:02

「おまえな~」「てめえ~」のniceな関係。
野澤さんと佐藤さんにも切磋琢磨の
ピアプレッシャーな関係が築けると素晴らしいですね。

生物学者の長沼毅さん。お元気そうですね。
プロフェッショナルに出演されたときの言葉、
「思い込みを捨て 思いつきを拾う」。
日々の中で義務感が先走り、不必要に課した制約の中で
がんじがらめになっていた、そのときの自分にとって、
まさに必要な言葉でした。
「思いつき」は、単に無根拠に出てくるものでなくて、
自分自身の内部にある様々な経験や積み重ねが
作用して湧いてくるもののひとつだということに気付かされ、
思い込みを捨てる勇気をいただいたのでした。


今宵の満月はくっきりと光を放っています。
ん?よく見ると月面の顔、
少しだけアインシュタインに似ていませんか。
ベロは出していませんが。
いつもこちらに同じ面が向いていると思うと、
なんだか覗かれているようで、見守られているようで。。。

投稿: s.kazumi | 2008/03/22 23:59:58

本日、二度目の書き込みですが、プロセス・アイについてです。

プロセス・アイ、21日早朝に読了しました。

実は事前に書評を色々と読ませていただいており、覚悟して読みました。
書評を書いている皆さまとは、読了後の感じが違っており、考えを少し寝かしてみました…。
でも、やはり何か残したいと思い、書かせて頂きます。

読了後の感覚は、一言でいうと…さっぱり・すっきりでした。陰と陽のバランスが保たれていて。…どちらかと云うと、未来への希望を感じさせるものだったからです。

本全体を通し、愛が語られいて、戻ってくるという期待が感じられたからでもあります。


読ませて頂き、心がウキウキ、温かくなりました。

…やっぱり、他の方と違うのかな…。でも、みんな違って、みんないい…かなと自分に言い聞かせています。

綺麗な詞たち、ありがとうございました!

投稿: 奏。 | 2008/03/22 20:35:58

こんにちわ

コンピュータサイエンスの人たちとJointしてはどうでしょう。自発性だけではないですが、なにか、コード化できるのではないでしょうか?(^^)

投稿: コンピュータのクオリアby片上泰助(^^) | 2008/03/22 18:54:11

茂木さん、こんにちは(o^-^o)♪
東京でも桜が開花したそうですね。

茂木さんの日記読ませて頂き、茂木さんからウキウキわくわく、ぐわー感がこちらまで伝わって来ましたよ!

私も昨日は東京の友達と真剣かつ楽しく話していて、
ウキウキわくわく、ぐわ~!と盛り上がっていました(*^∇^*)
それを思い出して、ウキウキわくわくぐわ~再び、なのです(笑)

少し疲れていたんですけど、茂木さんのお陰で元気復活★いたしました、ありがとうございます♪

投稿: ももすけ | 2008/03/22 17:23:41

心に自然に任せる事。フィーリングがピッタリと、あうこと。
それが先日、日記で書かれていた「カチッ」の瞬間だと思う。

人生の中で、一番難しいのは心からの“友人”を見つけること。
それは、一瞬で嗅ぎ分けるフィーリングなのではないかと思う。

私自身は、ここ最近…“信じることが出来る”と感じてから、何故だか心が穏やかです。

投稿: 奏。 | 2008/03/22 13:52:27

茂木さん,こんにちは。
「わざとぐわーっとするのではありません。心に従っていると、自然にぐわーっとなるのです。元気になることを考えていると、いつでもどこでもぐわーっとなる。ぐわーっ。」笑!最高!

あたしは元気になることを考え,ルンルン♪です。いろいろあるけれど,つねに上機嫌でいたい。それだけです。あっイチゴパフェも食べちゃおうかな。ルルルンルン♪

投稿: 柴田愛 | 2008/03/22 13:39:20

茂木先生、毎日が本当に楽しそうですね。この世で楽しいことは、いろいろとあるでしょうが(太宰治は恋と革命と言ってました)知的好奇心を満たすことは世の中で1番楽しい事といってよいのでしょうね。

アルバイトで二年間勉強を教えた中学生が無事高校に合格し、昨日、彼女がお母さんと一緒に選んでくれたのであろうお礼の品をくれました。それは私が普段身につけない、どちらかというと私の趣味ではないブランドの小物でした。しかし、このブランドは私の趣味じゃない!という固定観念を抜きに見ると、それはとても可愛い品物だと思いました。だから人になんと思われても、これを使おうと思いました。ブランドという理屈、言葉で何かを決めてしまうのは、生命力の衰えだと茂木先生の言葉を借りて考えました。

投稿: セセシオン | 2008/03/22 11:21:17

ゲニウス・ロキという概念を最近知りました。
野澤さんを池上先生の研究室に連れて行き、
佐藤さんに出会うまでの手はずを整えた茂木先生に
この概念が働いていたように思えます。
双方、自然体でいられる相手とは「ぐわーっ」ですよね。笑

2月の後半頃から、休みの日は家でぐったりな
メタボ街道まっしぐらの日々でしたが(笑)、
今日は頑張って工学院まで行けるか…と、様子見てます。笑
暖かくて気持ちの良い日です。

対談中、茂木さんのデイバッグから
5キロはありそうな本(笑)が取り出されたのを見たあの時、
「ド、ドラエモン?」と突っ込みをいれたくて、いれたくて…
…不規則発言はガマンしました。。。

投稿: Boo! | 2008/03/22 10:59:29

自然と、ぐわーってするのですね。

そうか。じゃぁ、今この緊張も、その先にはきっと、ぐわーっって
なるかもしれませんね。

前に書いた、雄大なジャングルは結局は、前に目指していた、
生涯学習の世界でした。

今日、2年ぶりに講演会の受付をすることになりました。
なれていたことなのに、私のこころは緊張しっぱなしでしたが、、、。

ありがとう^^

ぐわーってなってきます。^^

それから、今日の養老先生との講演会ご成功お祈りしています。
某新聞社の養老先生のCMは、「モリー先生との火曜日」を読んで
その意味がやっとわかりましたと、お伝えください。
(あ、、明日の朝みるのかしら?このカキコ)

ではでは

行ってきまーーーす。^^

投稿: あすか | 2008/03/22 10:09:49

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