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2008/03/10

心くんの表情

 新宿の初台で料理コンテストがあった。

http://www.gas.or.jp/shokuiku/zenkoku-oyako-cooking/index.html

 会場に向かっていると、
服部幸應さんが後ろからいらしたので、
二人で一緒に入る。

 本番が始まる前に、控え室で
服部さんの「食育」に対する思いを
うかがった。

 もう一人の審査員は、本多京子さん。
 
 会場には全国から集まった親子たちが
いて、始まる前から何だか楽しそうだった。

 調理開始。 
 12組がA、Bの2組に分かれて
調理する。

 服部さんは年間数十回の料理コンテスト
の審査をされるそうで慣れていらっしゃるが、
 私は初めて。

 6つのテーブルを順番に回りながら、
気付いたことを書いていった。

 試食も真剣。
 食べながら、何を感じているか
をメタ認知するという訓練を
長年続けていくと、人間はどう
なるのだろう。


服部幸應さん、本多京子さんとともに試食する。
(photo by Tomio Takizawa)

 A、Bの二組が終わり、
 服部さん、本多さんとともに
ステージに上がった。
 「食」について鼎談する。

 いよいよ、結果発表。
 
 優勝したのは、北海道からいらした
小学校3年生の心(こころ)くんとお母さん。

 北海道原産の材料を生かして、
おいしいパンが出来た。

 発表してステージに上がったら、
お母さんが感激してぽろぽろ
泣いてしまった。

 印象的だったのは、隣りに
立っていた心くんの
表情である。

 男の子だし、泣くわけにもいかない。
 しかし、すぐ近くで母親が号泣
している。

 優勝して、飛び上がるほどうれしい。
 その一方で、お母さんが泣いてしまって、
困っている。

 そんな時、人間というのは
はにかんだような、泣きだしそうな、
こわばったような、爆発しそうな、
震えるような、溶けるような、
守るような、助けてもらいたいような、
強いような、弱いような、
このままずっとこの瞬間が続いてほしいような、
早く通り過ぎてほしいような、
実に何とも言えない表情をするもんなんだね。

 心くんの人生の中でも、あんな表情を
することはそう何回もないでしょう。

 君の脳裏に、この出来事は
しっかりと忘れられない
思い出として刻まれたことと思う。

 ぼくの心にも焼き付けられたよ。
 忘れない。

 人間、かけがえのない思い出という
のはそんなにたっぷりあるという
わけではないけれども、
 数少ないそれらの「星の時間」を
 時々ふり返ってゆっくりと
育てていけば、人生はだいじょうぶ。

3月 10, 2008 at 04:54 午前 |

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コメント

はじめまして。m(_ _)m
心君の描写や心君の心の描写が素敵で、おそれおおいと思いながら
コメントを入れさせて頂きました。^^
心君の表情、心君の想いは、誰もが子供の頃の思い出につながり、
そんな心君を想い描くだけで、ピュアな気持ちが生まれます。
「星の時間」・・・・私の心がゆったりと暖かく柔らかになれる時間。
心君と心君を紹介してくださった茂木さんに会えて、
素敵な時間が持てました。ありがとう~~!

投稿: ねたの | 2008/03/11 4:55:20

国際結婚をされたご夫婦が隣県から職場にいらっしゃいました。前回は妊娠中の奥様に豪華な結婚式の写真集を見せていただきました。今回は、神様の籠の中の天使が一緒でした。元気に動いている愛らしいbabyから目が離せません。みんなニコニコ。でも、お母様だけは、他国で暮らす気苦労からか、心くんのような複雑な表情でありながらも、幸せそうでした。

投稿: Nezuko S | 2008/03/11 4:47:28

子供の頃 親は、大人は万能だと思っていた
私は愛され 守られていると確信して育った。

それなのにどうだろう・・・

いざ 人の親になった私は
いつまでも大人になりきれず

迷い 惑い・・ 子供に確たる安全基地を
用意できているのか・・ 不安な日々だ・・・・

だが 今日の先生のお言葉

<< 人間、かけがえのない思い出というのはそんなにたっぷりあるというわけではないけれども、
 数少ないそれらの「星の時間」を 時々ふり返ってゆっくりと
育てていけば、人生はだいじょうぶ。>>

 この「大丈夫」・・・が 我が背中に置かれた父の手のように
眠る前に 眉毛を優しく撫でてくれた母の指先のように・・・私に
安堵を与えてくれ・・ 涙が溢れてきた。


奇しくも テレビからはショパンのノクターン嬰ハ短調が流れ
トリル部分が星の瞬きを彷彿とさせる。


不甲斐なき母だけれど・・・ありったけの愛を あなたに注ぐから・・・

あなたは あなたの人生を楽しんで・・・・
胸に刻める星の時間を見逃さずに生きて・・・・

願いを込めて 眠る我が子にキスをした・・・。 

投稿: エミ | 2008/03/11 1:17:50

こんにちは。

この記事のエピソードを読み、心くんが持ったような掛け替えのない「星の時間」を果たして、自分は大切にはぐくんでこれたかな…、とわが人生を省みて深く思う。

短気でドジな性分の上、下手な言動で失敗する事が多かった我が青春。

でも、まてよ?そんな私にも、生涯忘れられない瞬間というのはあったはずだ。

今は煩雑な、しかし平穏な日々の中で滅多に思い出すこともない、そんな瞬間。

ふと思い出すのは、つい5年ほど前、失業した後、履歴書を持って数々の企業を訪れ続け、苦しみ抜いた末に、現在の就職先を勝ち取った時。あの時は本当に「これで何とか生きていける!」と思ったものだ。

あるいは、それよりずっと以前に、中学1年の2学期で様々なストレスにより心身のバランスを崩し、鬱病になり、ほぼ1ヶ月間苦悶の日々を送った挙句、何としてもこの苦しみを越えたいと祈って鬱な自分と真正面から向きあった末、やっと暗雲が晴れるように、鬱がみるみる回復していった、そのときの爽やかな感慨。

…それ以来、些細なことで苛々する時はあっても、重たい鬱状態になることは、ほとんどといっていいほど、なくなった。

こんな私でも、人生のうちで何者にも換えがたい瞬間というのはあったのだな。

これまでがだめでも、これからはそういう掛け替えなき瞬間を、私の人生の中で、生かしていこう。

投稿: 銀鏡反応 | 2008/03/10 18:33:56

茂木さん,おこんばんは。
心くんの表情はとてもきれいだったのでしょうね…あたしは通り過ぎた時間だな…。

茂木さん,今日あたしはきらきらしたきれいなものを見ました。仕事仲間である1人が,彼自身の問題設定を達成するため今日で仕事を終えました。その顔は希望と不安に向けて,きらきら輝いていました。
「頑張ってね」と言うと,はにかんだ笑顔を浮かべていた。

いろいろ通り過ぎてきた大人こそ,きれいなものに触れる必要があるのだろうとあたしは突然腑に落ちた。
音楽や絵や小説や詩,映画。花の香りや風の臭い。水の音。鳥の声。美味しい食べ物や飲みもの,そして人が本心から笑っている顔や,人が悲しみから立ち上がろうとするときの決意を秘めたような顔,誰か…他人のために流す涙。こぼれおちるようなきらきらした瞬間は日常にある。いつでも,どんなときでもそれらに感じていたい。タフなココロ(脳)を育みあたしを浄化したい。

投稿: 柴田愛 | 2008/03/10 18:24:42

暖かく、包み込まれるような気持ちになりました。

今の私自身、視点はもうブレていないです。

ただ…五感…特に聴覚と味覚に、時々?と思う事があるのです。これは、私自身の成長の時間を進めはじめてからの違和感です。

今日の日記を読ませて頂き、これも、ゆっくりかもしれませんが治ると思い、それを感じる事が出来ました。

ありがとうございます!

投稿: 奏。 | 2008/03/10 14:35:18

こんにちわ

小学生の頃、おじさんの家に、一人でお泊りして食事に行った事がある。自分の家の料理とは、違う風味だけど、美味しかった記憶がある。今から考えれば、料理屋で、出す料理は、万人受けする料理だけど、家庭の料理とは、その家族の好みに合った味になる。つまりロングテールにある味なのである。


心くんは、この星の時間の資産を増やしてくれた、と、考えたい。(^^)

投稿: 星の時間のクオリアby片上泰助(^^) | 2008/03/10 12:55:20

私の「星の時間」

「夢見てぇー、夢みてぇー」と、90歳近くなる大叔母が言った。
秋田弁混ざりのそのことばの意味がわからなくて、
「え?なあに?夢でも見たの?」
と尋ねたら、
「今だよ、今だよ、今が夢見たいなんだよぅ。
 あんたとこうして、散歩している今が夢みたいなんだよ。
 こんなにいいことがあるなんて、
 思ってもみなかったよ。」
と言った。

私は数年ぶりにに会った大叔母と
秋田の田舎の小さな村を2人で散歩していた。

東京から秋田へ遊びに出かけて、
ただ大叔母と一緒に散歩しただけなのに、
こんなに喜んでもらえるなんて。
じわじわと心があったかくなった。

私は、大叔母から「星の時間」をもらった。
その叔母がおととい亡くなった。
でも、その「星の時間」私の中で、
ますます輝き出した。


投稿: Joie-joie-rie | 2008/03/10 10:53:45

はじめまして・・・私は子供たちを教えているものなのですが、茂木さんの言葉から、なんて慈愛に満ち溢れているのだろうととても感激してお邪魔してしましました。あは体験で存じていましたが、お名前を見つけブログを拝見した途端心がわくわくどきどきしてしまって、そして、心くんはとても幸せだなあと心から思い、私も子供たちの一瞬の表情も見逃さず受け止めてそして感じ取るる心と感受性を持ち続けて行こうと改めて思いました!!!なんだか感謝でいっぱいです!茂木さんのお言葉にはとても素敵な魔法の教えがたくさん詰まっています。

投稿: らぶり | 2008/03/10 8:50:18

茂木さん、おはようございます!
こちらはすっかり春・・・イエ、昨日は最高25度で、いっきに夏日でした。
今日は少し肌寒くなっていますが、
こちらは一足先に春を迎えていて、最近は、
春眠暁を覚えず状態。
茂木さんのブログにコメントを書く時は、
公案しているような感じがあって、
頭が春(笑)な私は、このところ、
茂木さんのブログを読むのに精いっぱいで、
公案までできませんでした(笑)

今日の茂木さんの日記からは、
親子の料理大会、
そして優勝した心くんの様子が
よく伝わってきて、
朝から優しくほんわかした気持になっています(*^_^*)

心君のこころの中に、
一瞬に色鮮やかな思いがあふれて、
きらきらと綺麗だなあ・・・と感じました。
素敵な一瞬ですね☆

心くんにも、
茂木さんにも、会場にいたほかの方々にとっても、
茂木さんのブログを読んでいる方々にも。

茂木さん、素敵な日記をありがとうございました。
良い一日になりそうです♪

投稿: ももすけ | 2008/03/10 7:47:36

「ゆっくりと育てていけば、人生はだいじょうぶ。」
つぶさに人を観察されての茂木さんのあたたかな応援に感銘します。
何を焦るでもない、のんびりした旅なのだから。
私はそのように思います。
思うようになりました。
過渡期においては自らの「やる気」がそのコミュニティの中では厄介者と糾弾され、出る杭を打たれ、自分を見失っていた時期もあります。
それはそれで世を渡るには必要なこと。
何が今の自分を支えているか・・・
個人情報保護の理論に照らし合わせれば、この場において「私」と「支えとなる人」「支えとなるコミュニティ」・・・これらのマリアージュを不成立にさせないためにもこの場においては申せませんが、今朝ふと思ったことは・・・
マリアージュ
不成立な婚姻関係は維持できなければ解消することも自らを保つひとつの選択肢
でも婚姻関係も継続させる努力は大事
出る杭は引っこ抜いてもらえる「偶然のような」「必然のような」出会いの中で引っこ抜いてもらえればそれはそれで素敵なこと
今朝はそのような感覚です。

投稿: 中村匠哉 | 2008/03/10 7:20:57

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