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2008/02/01

男はハカ

朝早く渋谷へ。

雑誌「DIME」のキーパーソン
インタビュー。

編集部の藤谷小江子さん、
ライターの佐藤恵菜さん、
カメラマンの高仲建次さん。

もともとはPHP研究所の
木南勇二さん、丹所千佳さん、
横田紀彦さんがアレンジ下さったのである。

大場葉子さんから、大場旦さんの
近況をうかがう。

「茂木さんとは、原稿だけの
つながりではないですから」
と大場旦さんは言っているらしい。

原稿が一向に進まなくて、
すみません。

近くへ移動。

ラグビー、ニュージーランドの
名門All Blacksの元選手であり、
現在は日本代表チームのhead coachである
John Kirwanと対談。

「アタマの中身が70%ラグビーで
出来ている男」花野剛一さんが
撮影する。

ラグビーマガジンの田村一博さん。

ジョンは、「ラグビーは、接触の
あるチェス(chess with contact)だ」と言う。

身体的な接触をともなう
激しい「格闘技」であると同時に、
計略を練り、瞬時の判断をする
高度なインテリジェンスを
必要とする。

肉体から知性まで。
いわば、人間という存在の
「全ダイナミックレンジ」を使う
のである。

「白か、黒か、とわかるような
時に判断をしても、面白くない」
とジョンは言う。
「グレーのゾーンでいかに判断するか、
そこに本質的な問題がある」

日本選手に「グレーゾーン」で
判断することを推奨するため、
ジョンは、「答えのない質問」
(open-ended question)を選手たちに
投げかけるのだという。

「こういう時はどうすると思うか?」
「どう考えれば良いか?」
と問いかけ、その答は与えない。

そのような宙ぶらりんの状態に
選手たちを置くことで、
自ら判断し、選択する力を養う
のだというのである。


John Kirwanと。

ジョンは素敵な人だった。
試合を見に行くことを約束する。

対談は、ラグビーマガジンの別冊に
掲載される予定。

外に出て、通りでジョンと撮影を
していると、筑摩書房の
「たけちゃんまんセブン」こと
増田健史がやってくるのが見えた。

NHKに向かって一緒に歩く。

「茂木さん、今の、ひょっとしたら
ジョン・カーワンじゃないですか?」

「よくわかるねえ」

「ぼくは、何を隠そう、ラグビーおたく
なんですよお」

たけちゃんに、『思考の補助線』
の見本をいただく。

「3000部しか売れない原稿にしましょう」
とたけちゃんと誓って
筑摩のPR誌「ちくま」に連載した
原稿が、やっとちくま新書となった。

「予定通り、3000部しか売れない
ですかねえ」

「それが、30000部も刷っちゃった
んですよお」

一桁、予定が違った。

だとすれば、少しは売れないと
たけちゃんは困る。

「3000部しか売れない」
と言ったのは、とくかく剛速球を
投げようと思ったからである。
 
人間が心脳問題を解こう
とすることは、空に向かって
石を投げるようなことなのかもしれない。

ロケットのように、全く違った
原理のなにものかを導入しなければ、
存在の引力圏を脱することは
できないだろう。

西口玄関で見本をいただく。
たけちゃん、本当にありがとうございました。

「どうつかうかわからないけれども、
手書きで宣伝文句のようなものを
したためてくれ」
というので、いっぱい書いた。

オールブラックスが
試合前にやるマオリの戦いの踊り
「ハカ」 

にリスペクトを払って、
「男はハカ。」
もいれた。

たけちゃんが「書け」「書け」
というのである。

本当は、濁点がつくのであろう。

男というものは、本当にハカだねえ。

2月 1, 2008 at 08:13 午前 |

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コメント

「ラグビーは、接触のあるチェス(chess with contact)だ」といいうのは、ぴったりくる表現ですね。
武道家でもある思想家、作家の内田樹(たつる)さんが、以前、養老猛さんとの対談で身体の動きと知的活動について触れていたことを思い出します。
ところで、John Kirwanさんに限らず、海外の人間と話していると、海外からみた日本の状況がよく見えると言います。
最近のBusinessWeek記事にインドの若者のハングーリー精神に触れたものがあり、日本との対比を感じ、ブログに載せておきました。

投稿: IT起業研究所代表小松仁 | 2008/02/03 11:56:25

茂木先生にお願いがあります
(今までにもお願いされたことがおありかも知れませんが)。
先生が、今後どれだけ小乗をきわめられても、
人の心を読める機械が作れる設計図” などは
間違っても書き残さないで下さい。

もちろん、そんなお願いはしなくても、
ちゃんと考えて下さると信じております。

秘密とか、モウソウとか、知られては困ることがいっぱいあります。
100年後は まだそんな発明の可能性はないと思うので、
「私」は心配要らないのですが。
自分の考えている言葉が文字になって出てきたり、
思い浮かべたことが映像化されたりしたら、
とても生きていけないと、思います。
私秘性が守られないような悲劇は、
想像を絶すると思います。

何故か、今日初めて、ちょっとだけ不安に思いました。
1000年後の人類は、大丈夫なのかな・・・・・と。

P.S.
「ハカ」なるものを初めて見ました。
不思議な儀式ですね。
動画の前半のほうで、
ガンバッテ ガンバッテ イコウ
と歌っているように聞こえるのですが、空耳でしょうか。

投稿: MiznoYuli(u-cat) | 2008/02/03 3:12:51

オトコというのはハカないねえ。

投稿: LINUS | 2008/02/01 22:15:40

2年半前、学校の語学研修でNZに行ったことがあります!
希望した男女数名で行ったのですが、そのうちの2人が同じ女子を好きになってしまいました!!(>_<)


それから2人は、
現地のラグビーに参加して、男らしさをアピールしたり、 スカイタワーの展望台でプレゼントを渡したり、あの手この手を使って口説こうとしました!


「男はハカ!」まさにその通りですね!!身をもって体験した語学研修でした(>_<)


ちなみに、その2人ですが、結局どちらとも振られてしまいました…(-.-;)


投稿: ガンガン | 2008/02/01 20:32:16

こんにちわ

「女性の脳は、学問に向いていない。」みたいな事を言って、アメリカで首になった、学長がいましたが、「男は『ハカ』なので学問に向いている。」と言えばよかったような気がします。

究極の「ハカ」を目指したいと思います。(^^)

投稿: ハカのクオリアby片上泰助(^^) | 2008/02/01 20:29:24

白か黒か、というすっぱり割りきった思考は、時と場合によっては通ずるところもあるだろうが、世の中全部にはやっぱり通用しないのに、今の世の中でも、ものごとに「白黒はっきりつけないと、私は気が済まない!」という人がまだまだいそうだ。

私は、この世の全体は白黒分け難い、灰色っぽいマーブルのようなものだと常に思っている。

そのマーブルのおりなす“模様”の中に、人々の様々な煩悩がグネグネと渦巻いている。

その中で難しい課題に取り組むということは、ある意味、身を削るような途轍もなく厳しい格闘だと思う。

「思考の補助線」というタイトルをみて思うこと、それは煩悩に包まれた人の心の謎を解くための、そんな闘いなのではないか、ということだ。

ある意味濁点のつく「ハカ」にならないと、人はどんな時も闘えない。

闘いこそが人生なのに相違ない。


投稿: 銀鏡反応 | 2008/02/01 18:38:30

たまに、おおげさな笑いをしたくなったり、騒音になるぐらいに大きな声で一人言を言いたくなったりします。

その時に起こる空気の摩擦と、不定調和からくる切れ目に音速を一瞬越えていくような破裂を見出だしたいと思うからです。

そうやって続いていくであろう、これからにコールします。

投稿: モリモト | 2008/02/01 14:53:30

茂木先生…、あのレジェンドと対談ですか!しかもリンクのハカ、僕はyoutubeの中で一番好きなヤツです、なぜかとても嬉しい!僕は現在のハカよりも前代ハカが一番良いと思ってます。

いやぁ嬉しい!

自分が慕っている人が何かの機会で出会っている、自分が全くそれにコミットしてないのに。そのことだけで何か自分まで誇らしげに思えてしまう。

何ですかね、この感覚。
やっぱりこれも「ハカ」だからなんですかねぇ。
まぁラグビー好きは「ハカ」ばかりですからねぇ。死ぬまで一生治らないらしいですねぇ。しかも自覚症状がないところが幸せな人種なんですねぇ。

ようこそ茂木先生(笑)

投稿: th | 2008/02/01 10:00:13

心脳問題にもBrightnessがあるなら、
私は、その中で溺れてしまうばかりです。
でも、博士には焦点が見えていらっしゃるんでしょう?

投稿: Nezuko S | 2008/02/01 9:57:33

空気読むって、本来きっとジョンさんの言うようなことだと思う。

先見性とか、そうやってすべきことを決断する能力のことだと。

投稿: おおはたみやお | 2008/02/01 9:27:56

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