まだ空を
みんなが、世間で受け入れられる
コミュニケーションのスタイルは
こんなものだと思っている中、
自らが発信するものの内容を
自己規制している社会があるとする。
そんな社会は、ひそやかに人を
傷つける。
たとえば出版社。
大学の時には、こんなことを
研究して、あんな議論をして
いたのに、世間に出たとたんに
「売れ筋」の本を作ろうとする。
それがプロフェッショナリズムと
擬制する。
世間とはそんなものだと
思いこまされて、
次第にそれが自分の内面となってしまう。
あるいはテレビ局。
視聴率を上げる番組は
こんなフォーマットで
こんな内容だという
「常識」が内容を均一に
塗り上げていく。
映像表現を志す、
その理想が、マーケットによって
蹂躙される。
もちろん、「仕事」は大事だ。
お金は大切。
世間を読み、時代の空気を感じる
ことも重要。
しかし、たまには、
「そんなことは知ったことか」
と自分の本音を出しても
いいんじゃないか。
本来の夢が何だったのか、
忘れてしまってさえいるかも
しれない私たち一人ひとり。
パーコレーション相転移の
ように、たとえ最初は一つふたつ
でも、つながることで一気に
形成は逆転するはずだ。
紀尾井町の文藝春秋。
「ナンバー」の座談会。
女性アスリートが人気となっている
時代背景について。
辛酸なめ子さん、生島淳さん。
CREA編集部の
山下奈緒子、井上敬子、三井三奈子
の「三人娘」さんたち、
それにナンバー編集部の竹田直弘さんと、
四谷駅近くのとんかつ屋「三金」
に行く。
竹田さんはなんとなく雰囲気が
新潮社の金寿煥さんに似ていて、
それで「締め切り」を思い出した。
四谷駅の近くの空は大きい。
かつて東京の空はどこでもそうだった
のだろう。
スカイラインが乱されず、
のびやかに広がっている。
そうだ、諸君、たまには
空を見上げようヨ。
月刊「文藝春秋」に掲載される
予定の脳の記事のインタビュー。
東嶋和子さん。編集部の井崎彩さん、
編集長の飯窪成幸さん。
東嶋さんと楽しく議論。
飯窪さんが絶妙のタイミングでコメントする。
珈琲店で、ひたすら仕事に
没入する。
時間の経過も忘れる。
フロー。
外に出ると、また空が大きい。
四谷界隈の住人になったような
気分になった。
お台場のフジテレビ。
フジテレビキッズの小畑芳和さん、
網谷浩恵さん、山田洋久さん、菅野温夫さんと
お話しする。
私の研究室から、須藤珠水、箆伊智充、
柳川透が同席。
丹下健三さんの設計した
社屋から、お台場の空が見える。
黒く茫漠たる広がり。
下界がどう変わろうとも、
同じものは依然としてそこにある。
私たちは、まだ空を失っていない。
2月 26, 2008 at 08:57 午前 | Permalink
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春休みで頭に刺激が足りないなぁと感じていたら
久しぶりに猛烈に
ビビビッと頭に飛び込んでくるものがあった。
Sakai Podcastという媒体で配信されている
プロフェッショナルにも以前登場した
奥山清行さんの話がすばらしかった。
坂井直樹×奥山清行 | SAKAI POD...... [続きを読む]
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今朝はグレーの空が広がって、木の枝も風に揺れています。
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上空を通り過ぎる飛行機の音が驚くほど大きな音をたてて、時おり行き過ぎています。... [続きを読む]
受信: 2008/02/27 7:09:19
» 試み十八 トラックバック ほんとにっき
そんな時、救ってくれたのも、やはり女性だった。
陽が顔を見せ、その体を空中に放射し始めた午前7時頃だろうか、
一人の女子高生が、こちらに眼差しを向けた。
遊びつかれて、芝生に横になり、寝言を言ってたらしいから、当然かもしれない。後で、聞いた話だが。
その娘は、その日一日中、僕と付き合ってくれた。一日限定の「彼女」として。
幸いなことに、二千円程、持ち合わせがあったので、ランチをご馳走するくらいは出来た。
その分、ファミレスで、豪勢な夕食を頂くことになるのだが。
どのような言葉で会話をしていたか、正... [続きを読む]
受信: 2008/02/27 10:21:02
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コメント
今日、空を見上げてみた。
白く薄い雲に覆われた空を灰色のチギレ雲が飛び交い、その薄雲の裂け目から透けるような青空が覗く。夜が来ると、青空は星空に変わり、瞬くように星が輝く。
いくら雲が覆い隠そうと、その向こうには何処までも透明な空が広がり、太陽が成層圏を照らし輝いている。
この地上には一方的な情報が、夥しく大手を振って歩いている。
その中で、キチンと本音を語っているのは、いくらもない。
(どこかで、なにかを、隠しているような気もする…。)
だが、そんな情報達が、まるで灰色の雲のように、地上や私達の心を覆っている。油断すると、それが「本当のこと」だと、みんな、思ってしまう。
そんな雲を吹き払い、透き通る空を仰ぎみるように、心からみんなが本音を語れる(もちろん、互いを思いやりながらも)ようになれたら、この世はどんなに住みやすくなるだろう…。
投稿: 銀鏡反応 | 2008/02/27 19:27:21
>本来の夢が何だったのか、
>忘れてしまってさえいるかも
>しれない私たち一人ひとり。
mixiでさえ、お店のママになった感覚で書いている、穏健なゲイも多い。
僕も茂木さんがおっしゃるとおり、そろそろ本音で物事を語り合うべきだ、
ってつとに思います。自主規制なんて、最悪の管理の仕方(され方)で、
規制するのは僕の大嫌いなお役所のお仕事。役所から仕事を取っちゃう
から、余った時間とお金の使い道に困って、やれ接待ゴルフだのと、税金
泥棒な事をやらかす輩が出てくるのだ、と思います。
mixiレベルでも、やっぱり本音で語り合うべきで、一般市民がそういう
雰囲気を好ましく受け入れる体制を作らないと、今の腐った日本の社会は
良くならないと思う。
投稿: LINUS | 2008/02/27 7:29:57
たびたびコメントして、申し訳ありません・・・
William Smith Clark博士が言ったとされる"Boys, be ambitious"はたいへん有名な言葉であり、今日に至るまで多くの若者の心を鼓舞してきましたが、この言葉に込められた
博士の真意は、この先に続く言葉にあります。
Boys be ambitious,not for money,not for selfish aggrandizement,not for that evanescent thing men call fame.But be ambitious for attainment of all that men ought to be.
人は生まれて来る境遇も、身につける性格や実力も、巡ってくるチャンスも様々であり、当然、生きる目的も様々であるのが自然なことだと思います。この言葉に出てくる「本来、すべての人間があるべき姿」も、規定されるものでも強制されるものでもありません。しかし、お金や自己顕示欲、名声が「手段」となっても、「目的」にだけはしない方がいいということ、それらを通り越した先に、真の幸せや価値が待っていることを、もしかしたらClark博士は伝えたかったのかもしれません。
投稿: ひろぽん | 2008/02/27 6:55:38
日本人は、和を尊ぶ点で素晴らしいですが、人を息苦しくするくらいに空気を読み、
何か1つ大きな流れが生じると大勢がそれに乗っかる風潮がよくないと思います。
相手の言うことを一旦好意的に受け止めて消化する素直さや柔軟性と、
自分のフィルターにきちんと通す懐疑的精神の双方のバランスが大切だと思います。
個性が尊重される為にも、多様性に寛容な柔軟な精神性が多くの人々に根付いている
必要が多いにあると思います。
たしかに、かつての日本の組織形態が戦後の奇跡的な復興・発展を支えた一つの大きな
要因だったのかもしれません。しかし、社会が豊かになると、人々も多様化し、関心の
ベクトルも色んな方向を向きます。
日本研究をしている外国人の中には「まだ日本には真の民主主義が根付いていない」
と指摘する人もいます。日本の組織の優れた点は上手く残しながら、多様な個性と価値観
をいかに上手く汲み取っていくのか、バランス感覚が今の日本に試されていると思います。
投稿: ひろぽん | 2008/02/27 6:39:35
こんにちは。
ずいぶん飛躍した話になるかもしれないのですが、、。最近、アウトサイダーアートや素朴絵画の作り手と表現について考えています。私が考えるに、そのような絵画や芸術には「選択」という要素がありません。あるのは世界との接点(イコール)だけだという認識で、作り手と表現の間はもちろん、イコールという広がりの認識だけなのではないのかと考えています。
作る為に表現がある。
もし、こんな言葉が許されるなら「才能」と言う言葉さえ自由なものではなくなるのではないかとさえ考えてしまいます。
投稿: モリモト | 2008/02/27 5:23:07
太陽が沈む前の空をじっくり眺めてほしい・・・
「夕焼け」・・・その鮮やかなオレンジ色に注目した
言葉なのだろうが・・・・
本当は空全体が虹色のスペクトル・・・と化しているのに
気づくはずだ。
東の空は・・薄闇に包まれ・・西の空は赤~オレンジ色のグラデーション
あなた自身が、壮大な・・虹のアーチの下に
存在している・・・
西を向いて立ってみる
背後から押し寄せる闇に
抵抗するかのように・・・
西の空は力を振り絞るかのように
紅緋色に燃える
遠き山の稜線も
眼前に広がる建築物も
まるで影絵のように際立つ美しさを示す
・・・てなことを 私は 小学校入学間もなかった娘に教えられた
「ママァ・・・ 夕焼けさんは 虹がつれてくるんだよ・・」て^^
それ以来 睡眠障害を利用して 朝の淡いグラデーション
夕刻の ハッキリしたグラデーションを拝むのが
私の日課である。
空は 思ったより 懐がでかいらしい・・・・
でかい 懐い抱かれながら 確実に
心にエネルギー補填をしている私が ここに存在している・・
投稿: エミ | 2008/02/27 1:46:53
いまこの時の幸せ。
片手なべ。
古くなったフタに、ピッタリの物が見つかった時。
電車の中から空をみた時。
つたわったとき。
茂木先生の平行感覚たるものに、常にひきよせられ、ゆさぶられ。大きな器の中で自由に泳げる気がしてくる。
日常の小さな出来事のなかに、見い出せたことと、昨日ブルーグレーの空の上はいつもかわらない。
さあ。
今日のそらはどんな色だろう。
投稿: 美容師 | 2008/02/27 1:35:51
久しぶりに茂木さんのブログを見れました。
なんかほっとする空間がここにはあるのでうれしいです。
人生って気づいたときには決定的瞬間が通り過ぎてしまったなんて事も沢山あるんですけど、そのことの意味がふっと分かる瞬間ってあって、
その空間を超えた思考のつながりにはっとしたりします。
空、、
この空って世界中一つの空を共有しているんですよね。
誰のものでもない空、
心を癒してくれる空、壁のないそら、
空は夢がありますよね。。
この青い空を次の世代に残したいですね。。
そのために、
私は何が出来るだろうか。。。
でも、何もしていなくても
思いは心に秘めておこう。。。
いつか芽が出るそのときまで待とう。。。
と思う
投稿: canacanazemi | 2008/02/26 19:14:21
空を見上げて想うこと。どこまでも続いていく空に、大地を重ね…あの広い空を旅したら、どんなにか素敵だろうかと。そして、誰かが歌った歌にあるように、好きな人と繋がる空。その人もこの空気を吸っていると思うと、少しショックな事があっても前を向いて頑張ってこう!という気持ちが込み上げてくる。あの人も、この空のもと頑張っているのだからと。
でもいつの間にか、日常生活や、しがらみ、人の目を気にして、自分自身の時間の筈なのに、時間に追われてしまう毎日。
そこから解放され、私自身を見つめていくうちに、以前から持っていましたが日常生活で追われているうちに、心の奥底に追いやってしまっていた大切な宝物を今度はしっかりと抱きしめていたいと思っています。
これだけは、見失いませんように。
そして大切な宝物を抱きしめつつ、日常生活を送る事が出来るバランス感覚が欲しいです。
投稿: 奏。 | 2008/02/26 14:22:47
茂木さん,こんにちは。空,大好き!毎日見ています。今日はくもり。あたしにとってくもりの日は1番冷静でいられるので落ち着きます(晴れは訳もなく気分が明るくなるし雨はココロを鎮めてくれるなど,なんか乱されちゃうんです)
最近グレイのよさについて友人と話が盛り上がりました。もともと好き嫌い,考えはハッキリしています。が,他者と関わるときにおいてはグレイ(お互いの中間)が楽しい。関係をつくるというかそういう時に強く感じます。すぐに白黒のダイレクトな表現はつまらない(でも時々面倒臭いと…そのつど途方に暮れますけど)
書いていて自己矛盾を感じますがこう思うんだからこれがあたしなのだろうと納得しています。。。
投稿: 柴田愛 | 2008/02/26 14:06:32
子供の頃、両親が最初に買ってくれた本が、バーネットの「秘密の花園」でした。花壇を花園にみたて物語の中に自分を置いていた時代、今でも、心魅かれる小説です。
そのなかで、空を見上げたいと思いました。
投稿: Nezuko S | 2008/02/26 11:58:27
こんにちわ
人間の欲求が、生理的欲求→安全の欲求→愛と所属の欲求→自尊の欲求→
自己現実の欲求、と、上のレベルなってくるらしいですから、大人になれば、自分が社会に認められる欲求は、誰もが持っていると思います。
茂木さんなら、「茂木健一郎短編小説集ブログ」なんて立ち上げ、本音を含んだ、短編小説を書けば良いのではないでしょうか?。
茂木さんぐらいの有名人になれば、「この短編小説を本にしませんか?」と、声もかかるのではないでしょうか?(^^)
投稿: クオリアの本音by片上泰助(^^) | 2008/02/26 11:05:17
茂木先生
まさに、先生のおっしゃる通りだと思います。
人の良さそうな先生の風貌から
TV局や、出版社等ににおし流されるんじゃないかー
と、心配でした。
でも、思考の補助線の中で
チョロッ、チョロッと本音を出されていて
>そこまで書いたら
とり方によっては、誤解を受けるかもー
と、驚きと感動の本でした。
プロフェッショナルの物書きの方の境目が
判断できなくなっている私たちマーケッター
茂木先生
今日も素敵な言葉の表現とさりげない本音をありがとうございます。
投稿: 尚 | 2008/02/26 10:20:11