これをつくった時には
人生を生きる上で真っ先に学ぶべき
大切なことは、
重要な問題になるほど、そもそも
「正解」など一つには決まらない
ということではないか。
生きることを導くのは
私たちの価値観であり、
「よろこび」である。
その学習に脳内報酬物質である
ドーパミンがかかわる。
そして、ドーパミンによる強化学習は、
正解が何であるかを教えてくれる
「先生」のいない「教師なし学習」
である。
人生とは、つまり、自分の
よろこびを耕すことであるが、
その方向性は人によって
違っていい。
数学者には数学者の、
八百屋さんには八百屋さんの、
音楽家には音楽家の、
教師には教師の喜びがある。
「どちらに行ってもいいんだ」
「深めることができるんだ」
と知った時、人は目眩く自由を感じ、
大いなる喜びへの希望を抱くのでは
ないか。
渋谷東武ホテル。Typeの大亀慎也さんに
『思考の補助線』について
取材を受ける。
筑摩書房の増田健史(たけちゃんマン
セブン)と、NHKの西口玄関に
向かいながらもろもろ話す。
たけちゃんには、しばらく前に
「歴史エッセイを書きたいなあ」
と言っていた。
それが、サンデー毎日の連載
「文明の星時間」となった。
「いやあ、大場葉子さんは手際が
速いんですよ。」
「えっ、あれ、大場葉子さんだった
んですか。知らなかった。がーん」
とたけちゃん。
大場葉子さんのパートナーの
大場旦さん(NHK出版)=オオバタンは、
たけちゃんとも私とも親しい。
私とたけちゃんとオオバタンは、
毎年三人で「おじさん温泉」に行く仲である。
「そうだったのかあ。ショックだなあ」
とたけちゃんは繰り返す。
しかしながら、たけちゃんは今週末から
幻冬舎の(旧姓)大島加奈子さんと
新婚旅行でスペインに行くのである。
立ち直りの速いたけちゃん。
「まあ、いいや。アタマはスペインの
ことでいっぱいだから。」
「スペイン語できるようになった、
たけちゃん?」
「ペフファヴォーレ、グラシアス、
ムーチョ・グラシアス!」
たけちゃんは結局は元気になって
去っていった。
『プロフェッショナル 仕事の流儀』
の収録後、チーフプロデューサーの
有吉伸人さん(ありきち)がしみじみと語る。
「いやあ、羽生さんの回の再放送、
見て本当に面白かったなあ。
自分たちで作ったはずなのに、
感心させられてしまいましたよ。」
ぼくも同じだった。
「ぼくも、久しぶりに見て本当に
面白かったんですよ!
ぐいっと惹き付けられたなあ。
もう、あれは、「プロフェッショナル・
クラッシック」ですねえ。殿堂入りですね。」
自分たちが作ったものでも、
時が経てばあたかも客観的に最初から
存在したオブジェのようなものに
なっていく。
そして、その「手放した」
感触の向こうに、本当の手応えが
あるのだ。
その昔、「新しき村」で
見た武者小路実篤の画賛
「これをつくった時には生きた心地が
しただろう。」
そこをみんなが目指して、
今日もがんばっている。
2月 29, 2008 at 07:12 午前 | Permalink
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コメント
まさに、人生の岐路に立っていた、数日前。
「人生は自分のよろこびを耕すこと」
と言う言葉ではっとしました。
その時まで自分は
自分自身で凝り固めてしまった「思い」の
スパイラルの中にいたようです。
そのはっとした一瞬で、スパイラルから気持ちがはずれて
少しだけ、楽になりました。
楽になったと気付くことと、重なるように起きていく偶然!
そして今、明らかに違うことを思っている自分。
本を読んで理解した気になっていたこと、本当は解ってなかったんですねぇ。
でも、本を読んでいなかったら経験出来なかったと思われる
このすばらしい「アハ体験」(笑)
投稿: HAL | 2008/03/02 11:48:53
茂木さん,パオです。本文末「そこをみんなが目指して、今日もがんばっている」に励まされました。
「今日も」というところに熱いものがこみあげてきました。
人は言葉によって勇ましくなれる。
茂木さん,ありがとうございます
投稿: パオ | 2008/03/01 3:48:02
最近、また絵筆やペンを握らず、ひたすらPCに向かってネットサーフィンする日が続いている…。う~ん、まずいな…。
私にとって「歓び」を感じることとは、真っ白な紙に向かって、無心におのれの描きたいものを描くこと。
二次元の白い紙面に、心に浮かぶままを描く時、不思議に深い手応えを感じる。そして頭の中がささやかながらも、歓喜しているという“手触り”も感じている。描き上がった後の達成感もたまらない。
けれども、もっと違う方向性…たとえば、私は描画はよくするが、粘土などをこねて何か立体的なものを作る、ということはあまりやっていないので、機会があれば挑んでみたい、と思っている。
きっと新たな側面が見出せ、絵を描く時とはまた違った歓びや達成感が味わえるに違いない。
苦悩と絶望、悲しみといったネガティヴなものものをも、エネルギーにしながら、前へと進んだほうが、歓喜が深く大きくなるのではないかと、今ごろになってしみじみと、心に染み渡るように思う。
投稿: 銀鏡反応 | 2008/02/29 21:59:40
茂木さん、こんばんは!
茂木さんの考えに触れ、自分の中で消化し、
行動に移すことのできる世界は、
大変だけど、幸せだなあ・・・と思いました。
私の住む場所は
日本だけど日本じゃない、
日本本土は他国からの侵略を2千年受けたことがなく、
世界から見れば、大変稀な国、とのこと。
私の住む島は、
地上戦を体験し、多くの血が流れ、
その後他国に侵略されました。
日本に復帰はしたものの、
日本とも違う。
まだ、戦争体験者が数多く生きており、
アイデンティティを踏みにじられた歴史は、
子孫に自虐を伝えていきます。
幼い子供たちさえ飢えや病で死んでいく
もっと貧しい国と比べたら
幸福な方ではありますけど
生きること、人生とは
よろこびを耕してゆくことと
子孫に伝えられないとは
何と苦しいことでしょうか。
これほどの苦しみがあるでしょうか。
これはとてもわかりやすい例だと思います。
物のあふれた先進国も、
とりわけ最近の日本は、
自殺者が多く出ているので
真の意味で
人生とはよろこびを耕してゆくことと知っている人は
まだまだ数少ないのかもしれない、と感じます。
私も、中学生のころから
人生は苦であると、生きることが苦しかったです。
ただ私は求めていたので
人生は喜びを耕していくもの、と苦しい中からも
生きる意味を見出すことができました。
生きる喜びを、もっともっと
浸透させていって
多様性を調和させることのできる
そうした世界に早くなればいいと望みます。
ものすごく困難なことを言っていますが
しかし、それができないと滅びに向かうことを
意味すると私は思います。
グローバル化とは、そうしたことも内包しているのではないでしょうか。
この島からは、
日本がよく見えます、
世界もよく見えます。
学ぶ喜び、生きる喜びが
この地に満ち溢れるよう、
地道に努力していくしかありません、
茂木さんの日記のテーマから外れてしまって
ごめんなさい。
投稿: ももすけ | 2008/02/29 19:39:08
人生を生きる上で真っ先に学ぶべき大切なことは、重要な問題になるほど、そもそも「正解」など一つには決まらないということではないか。
このことに、実感と確信を持って気づいたのは、5年ぐらい前です。「答えは常に一つ」という漠然としたImageを、学校教育・偏差値教育を通じて持たされていた気がします。組織の中でも、自分が正解を話しているんだという前提でみんなが話している感じがします。暗に競争しながら。
合理的に思考しても、意思決定する時は選択肢は一つとは限らず、いくつか存在することがほとんどであると経験からは言えると思います。人の多様な価値観を尊重することが、本当に大切だなと思う、今日この頃です。
投稿: SpiralBeatleZen | 2008/02/29 17:20:47
生きることを導くのは私たちの価値観であり、よろこびである。とのお言葉。
私もそのような客観的な視点から見たときに、存在するオブジェを手に取り、喜びへの希望・優しさのヴェールという光を手にすることが出来れば…と思う。
投稿: 奏。 | 2008/02/29 16:24:23
こんにちわ
最近、コンビニに行ったとき、プレジデントと言う雑誌をみつけました。「『売れる営業」の科学」と、あって、営業に興味を持っていたので、買いました。そこで、部下の価値観に合わせて、喜びを持って仕事が出来る環境にするのが上司の仕事のような事を書いていました。茂木さんの今日のブログを見て、ドーパミンと価値観は大きな関係を持っていると思いました。
返仁橋のご写真ありがとうございます。グーグルアースの写真は夏で木で橋の端が見えなかったようです。森の中の橋を通って研究所に入れるようにしているのは、日立の人たちも粋ですね。(^^)
投稿: ドーパミンのクオリアby片上泰助(^^) | 2008/02/29 13:31:59
「脳を活かす勉強法」拝読いたしました。
本当に朝一番でブログをつけていらっしゃいますね。
私も目覚めてすぐに、お布団の中で本を読むときの
あの幸せ感がたまらなく好きです!
一日がスムースに流れますね。
ブログ、お気に入りに入れました。
投稿: may | 2008/02/29 12:00:57
こんにちは。
きょうは、肉の日、ニンニクの日、どんなものを召し上がるでしょう。
ラジオで、4年に1度の貴重なきょう、「挑戦し損ねていたことをやってみましょう」と聴きました。買ってから4年開き損ねていた英語の参考書を開いてみようかな。
わたしも今はスペイン語で頭がいっぱいなんです。友人から借りた「ビクトリア 愛と復讐の嵐」にはまってしまって。 今までに学んだフランス語とごっちゃになり始めてきましたが。笑。
自分の学びたい事が、ある友人には価値を持たないことにがっかりとしていたのですが、茂木さんの「どちらに行ってもいいんだ」「深めることができるんだ」というお言葉をいただき、自信がすこし持てた気がします。
お仕事、いえ、お勉強、応援しています。♪°
投稿: 才寺リリィ | 2008/02/29 11:12:01
おはようございます。
久しぶりにコメントします。
羽生さんの回、以前には見そびれ、先日は7分遅れで拝見致しました。
羽生さんは、三十代になると記憶力が10代の頃より落ちて、
将棋の戦法が変わってきたと、をおっしゃっていたのが、
印象に残っています。
若き十代で極めたものを維持し続けることの難しさよりも
年を重ねる分だけ、視野が広がり過ぎて、
考えすぎてしまうから、直感を重視するようになった、と言うような
ことをおっしゃっていたような気がします。
羽生さんは天才だと思いますが、天才と言えども、記憶力が三十代で
落ちる、と言ったことに少々驚き、直感を重視という・・・
私もそれでいっているので、何だか、そうなんだ~と親しみを感じました・・・。
少しだけ、春めいて来ましたね・・・・。
投稿: tachimoto | 2008/02/29 9:03:27
茂木先生。
サンデー毎日で歴史エッセイを書かれるとのこと、
またあらたな分野について教えていただけると思うと
いまから楽しみです。
いつもは単行本になってから拝読していますが
今回のサンデー毎日は毎週買って読もうと思います。
ますますのご活躍をお祈りいたします。
投稿: 河村隆夫 | 2008/02/29 8:52:45
喜びが人の数だけある、って良い考え方ですよね。
隣の芝生は青いっていいますが、他人の喜びが自分の喜び
に繋がるとは、安易に考えない方が良い。
だから、人生の大事な選択は、他人に任せちゃだめなんですよね。
んー、分かっているけどお節介な人って多いから(笑)。
投稿: LINUS | 2008/02/29 8:17:19
きっと仕事の上でもモノづくりをしている人でも、いろんな面で達成感や満足をしたいから打ち込める気持ちと同じかなと思いました。
数学は答えがすぐに出る、ひとつだと言う人がいるけど本当にひとつなんだろうかと思う事も。
生きていく上で、いろんな人の話を聞いたり反論したり疑問をもったり感銘をうけたりして成長していくんだろうなって思います。
知る事を恐れないで前に進むしかないんですね。
篤姫曰く
女の道は一本道。後ろを振り返ってはいけない。
いいセリフです。
脈略ない文章ですみません・・
まだ起きてないのかも。脳が・・
投稿: kazu | 2008/02/29 7:25:05