生きものとしての元気さ
先日、椎名誠さんと街中で
出くわした。
ちょうど、椎名さんの写真展に
向けて事務所の方から依頼されて
いたことがあったので、その
ことをお話した。
ひとしきり話した後で、
「ところで、こんど、
サンデー毎日で連載させて
いただくことになったんです」
と申し上げた。
椎名さんは、「ナマコのからえばり」
というタイトルでエッセイを連載
されている。
そうしたら、椎名さんが
「それじゃあ、ヨミウリの方は?」
と聞いた。
「書きます!」
「そうですか、じゃあ、ボクと同じで
二誌ですね。一つ、勝負しましょう!」
話はそれだけだったが、
ぽぽぽぽぽん!
と返ってくる椎名さんの
言葉が心地よく、その印象がずっと
残った。
「生きものとしての元気さ」
はこの世で何よりも大事な
ことなのではないかと思う。
私たちの祖先は、明治で
西洋という強烈な他者と
出会ったが、「生きものとしての
元気さ」を発揮して何とか
適応した。
坂の上の雲を見失って
混迷の道に入ったが、
戦後、「奇跡の復興」
を遂げる。
したたかに、しなやかに、
すばやく。
平成日本で一番心配なのは、
日本人が「生きものとしての元気さ」
を保っているかということだろう。
NHKにて、平成20年に因んだ
建国記念の日の番組に
出させていただく。
朝10時から夜6時まで、
休憩1時間を挟んで7時間。
上田早苗アナウンサー、松本和也アナウンサー
のお二人は、生放送ならではの
時間の仕切りなど、見事だった。
神田愛花アナウンサーとグッチ裕三さんの
掛け合いも楽しかった。
最後に「大切なもの」を問われて、
私は「多様性」と答えた。
多様性は、持続可能な自然環境、
持続可能な社会からしか生まれない。
そして、多様な中で、異質な他者に
向き合うことにはエネルギーがいる。
まさに、「生きものとしての元気さ」
が必要になる。
世界を一つの色で染め上げようと
いう独裁者は、その果敢な攻撃に
おいて元気なようでいて、
実は多様性を許容できないという
点において根本的に
「生きものとしての元気さ」
が欠けている。
ヨミウリ・ウィークリー編集部の
方々と新年会。
「生きものとして元気」
な方々との楽しい会話に、
命の日だまりができた。
2月 12, 2008 at 05:59 午前 | Permalink
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コメント
デリダのデコンストリュクションについて問いなおしをしていました。
他者の肯定の思想と言われ、<言語>と<法>の2つの特権的なテーマは、まったき他者(法をとうして、法をこえる)との関係の追究であり、今日の博士の文章に、それらを想起させる部分がありました。
投稿: Nezuko S | 2008/02/13 4:43:04
自身、仕事の上で、
「生きものとしての元気さ」はリズミカルだと思う。
プライベートでは遊ぶ事すらおっくうだ。
気持ちの上でイコールになる余裕があればと思う。
あたり前だ。
と、うたがう事もない思考の他者と日々向き合い、エネルギーは消耗するばかり。
前のクオリア日記にもヒントはありました。
仕事との在り方が今後の課題のようです。
いつだったかプロフェッショナルでの茂木先生。
ツイード?。
素材の質感といい、髪の色調とがなじんで、白っぽいグレーのジャケットでしたが、
とても素敵でした。
投稿: 美容師 | 2008/02/13 1:39:39
生放送7時間!大変おつかれさまでした。
番組最後で言われていた、多様性に対する覚悟、という言葉に
目が覚めるような気持ちです。
異質な他者に向き合うとき、
摩擦があり、傷つき、時には自らを犠牲にし、大きな苦しみを伴います。
しかし、一方で、異なる視点こそが状況を救うことも事実です。
単純すぎて恥ずかしいのですが、私は「力を合わせる」という言葉が好きです。
ひと昔前、「会社の歯車にはなりたくないから」みたいな言葉をよく耳にする時期がありました。でも組織の中で歯車の役割を果たすということは、大変難しいけど実に貴いことだと思います。組織を動かすエネルギーです。
組織ひとつにしてもそこにいる人間は様々。その「さまざま」をいかに組み合わせプラスのベクトルを生み出すか。そのプロセスが力を合わせることに関わってくると思います。
コミュニティや国に置き換えてみても共通のことが言えるのではないでしょうか。
今はウェブ時代。世界レベルでそのような総合力が作用すれば素晴らしいですね。
ただやはり、そこに至るまでの道のりが、まさに異質な他者を受け入れる痛みから避けて通れないものだと思うのですが。
これから多様性に向き合うための自分なりの第一歩として
世界の捉えきれないほどの豊かさに少しでも目を向けること。
複雑なメカニズムの中で生かされていることに感謝すること。
他者への関心を通して幅広い視野に触れること。
このあたりから歩んでいけたらと思います。
持続可能な自然環境、社会の中から育まれるもの。
ただそこに存在するのではなく、「つながって続いていく」ということが多様性の証し。
そのことがとても印象に残ります。
長々と失礼いたしました。
投稿: s.kazumi | 2008/02/12 23:56:31
椎名さんと街中でバッタリ出くわすなんて、い~ですね~!?
そして、私の尊敬するお二人がお知り合いだというところが
またい~!素晴らしい!
二誌での連載、椎名さんの連載共々楽しみにしています(^^)/
投稿: fayway | 2008/02/12 21:34:18
世界を一色に染め上げようとする独裁者のロボットにはなりたくない!
世界はジャングルのように多彩多様なのが自然なのだ。
私も、勇気と元気を引き出して、もっと多くの異なるひと・もの・ことと出会い、交わって、限りある我が一生を、思いっきり、生き抜いていきたい!
投稿: 銀鏡反応 | 2008/02/12 18:39:22
茂木さん、こんにちは!
大きな括りでは”日本”に属するが、
文化風習といった暮らしの背景は”外国”に属すると思われる、
南の島に住む者として、
日夜、多様性に向き合うことを
余儀なくされていると実感いたします。
ここでは、
私がいなかった長い間、
私が肌で感じることのできない様々なことが
起きていましたし、
私も、別の土地で、
違うものを吸収していたからです。
世間話をしている程度では、
その違いはそんなに明確にはなりませんが、
本気で何かをなそうとするとき、
違いが浮き彫りになってきます。
その橋渡しを担うのは、
すごくエネルギーがいります。
生命としての元気さが大切、
すごく実感しています。
・・・・
茂木さんのおっしゃることと、
ずれていたら申し訳ありません(汗
そんな私の今年の目標は、
体力倍増・気力倍増だったりします(苦笑)
茂木さんも、連日ハードスケジュールかと存じますが、
どうぞお体お大事になさってくださいね。
いつもありがとうございますm(__)m
投稿: ももすけ | 2008/02/12 11:14:05