大いなる慈母
2月 29, 2008 at 07:47 午前 | Permalink | コメント (0) | トラックバック (0)
人生を生きる上で真っ先に学ぶべき
大切なことは、
重要な問題になるほど、そもそも
「正解」など一つには決まらない
ということではないか。
生きることを導くのは
私たちの価値観であり、
「よろこび」である。
その学習に脳内報酬物質である
ドーパミンがかかわる。
そして、ドーパミンによる強化学習は、
正解が何であるかを教えてくれる
「先生」のいない「教師なし学習」
である。
人生とは、つまり、自分の
よろこびを耕すことであるが、
その方向性は人によって
違っていい。
数学者には数学者の、
八百屋さんには八百屋さんの、
音楽家には音楽家の、
教師には教師の喜びがある。
「どちらに行ってもいいんだ」
「深めることができるんだ」
と知った時、人は目眩く自由を感じ、
大いなる喜びへの希望を抱くのでは
ないか。
渋谷東武ホテル。Typeの大亀慎也さんに
『思考の補助線』について
取材を受ける。
筑摩書房の増田健史(たけちゃんマン
セブン)と、NHKの西口玄関に
向かいながらもろもろ話す。
たけちゃんには、しばらく前に
「歴史エッセイを書きたいなあ」
と言っていた。
それが、サンデー毎日の連載
「文明の星時間」となった。
「いやあ、大場葉子さんは手際が
速いんですよ。」
「えっ、あれ、大場葉子さんだった
んですか。知らなかった。がーん」
とたけちゃん。
大場葉子さんのパートナーの
大場旦さん(NHK出版)=オオバタンは、
たけちゃんとも私とも親しい。
私とたけちゃんとオオバタンは、
毎年三人で「おじさん温泉」に行く仲である。
「そうだったのかあ。ショックだなあ」
とたけちゃんは繰り返す。
しかしながら、たけちゃんは今週末から
幻冬舎の(旧姓)大島加奈子さんと
新婚旅行でスペインに行くのである。
立ち直りの速いたけちゃん。
「まあ、いいや。アタマはスペインの
ことでいっぱいだから。」
「スペイン語できるようになった、
たけちゃん?」
「ペフファヴォーレ、グラシアス、
ムーチョ・グラシアス!」
たけちゃんは結局は元気になって
去っていった。
『プロフェッショナル 仕事の流儀』
の収録後、チーフプロデューサーの
有吉伸人さん(ありきち)がしみじみと語る。
「いやあ、羽生さんの回の再放送、
見て本当に面白かったなあ。
自分たちで作ったはずなのに、
感心させられてしまいましたよ。」
ぼくも同じだった。
「ぼくも、久しぶりに見て本当に
面白かったんですよ!
ぐいっと惹き付けられたなあ。
もう、あれは、「プロフェッショナル・
クラッシック」ですねえ。殿堂入りですね。」
自分たちが作ったものでも、
時が経てばあたかも客観的に最初から
存在したオブジェのようなものに
なっていく。
そして、その「手放した」
感触の向こうに、本当の手応えが
あるのだ。
その昔、「新しき村」で
見た武者小路実篤の画賛
「これをつくった時には生きた心地が
しただろう。」
そこをみんなが目指して、
今日もがんばっている。
2月 29, 2008 at 07:12 午前 | Permalink | コメント (13) | トラックバック (7)
2008年2月27日
日立中央研究所訪問
の際の写真です。
飯塚宏さん、お送りくださり
ありがとうございました。
緑深き「返仁橋」にて
日立中央研究所の研究棟の前で。
「泉水クラブ」にて。
前列左から
小泉英明さん、茂木健一郎、武田英次さん。
後列左から
飯塚宏さん、矢野和男さん、禰寝義人さん。
2月 29, 2008 at 06:53 午前 | Permalink | コメント (3) | トラックバック (2)
パレスホテル。
猪口邦子さん、猪口孝さんに
お目にかかる。
テレビ東京の番組の打ち合わせ。
PHP研究所。
二件の取材を受ける。
お寿司屋さん。
木南勇二さん「日本テレビがあった頃は、
テレビの人もたくさん来ていたん
ですけれどもね。」
街の潮目は変化していく。
人の表情も移る。
国分寺の日立中央研究所。
武田英次さんが「一度いらっしゃいませんか」
とお招き下さった。
「変人橋」ならぬ「返仁橋」
があるとは聞いていたが、
実見して驚いた。
深い森があり、谷に橋が
架かっている。
研究所というものはそもそも
「変人」だらけであるから、その名前が
付いたわけだが、
鬱蒼たる自然の気配に包まれるという
ところまでは予見できなかった。
人は返仁橋を渡り、自動車はぐるりと
森を抜ける。
なんだか魔法にかかったような
気持ちで、大樹の間を歩いた。
禰寝義人さんが、中央研究所のoverviewを
お話くださる。
禰寝義人さんは、ケンブリッジ大学の
experimental psychologyに留学
されていたという。私のいたphysiologyの
すぐ隣りである。
外に出る。
研究棟を抜けると、そこには庭園があった。
池があり、鳥が泳いでいる。竹林を風が抜ける。
わき水からは透き通った流れが地を充たして
いた。
開所は昭和17年という。当時の日立は
まだ32歳。企業としての若々しい意図と、
その頃の人の大いなる構想力を感じる。
矢野和男さんにセンサネットの
プロジェクトについてお話いただく。
人間身体にかかわるデータを
集積する時に開かれる
計算世界は、その可能性が
まさに発掘されつつある。
牧敦さんに、光トポグラフィーについて
レクチャーいただく。
「YES/NO」
一ビットのBMIや、
最新の携帯型のプロトタイプなど、
非侵襲型の脳計測の手段としての
光トポグラフィーの発展の
方向を実感できた。
小泉英明さんがいらっしゃる。
「泉水クラブ」にて懇談。
武田さんの技術観、人間観、
小泉さんの脳科学の現状に関するお考え、
さまざまな研究者たちの消息、
これからの課題、
日立という会社のさまざまなトピック。
武田さんがセレクトされた
ワインも美味しく、
楽しい時があっという間に
過ぎていった。
多言語主義よりも大切なのは、
多文化主義だと信じる。
日立という企業のコーポレート
カルチャーを垣間見た。
その奥行きと深さを実感する。
私たちは皆旅人であり、
一人ひとりが持つ通行手形に、
行き交ったものたちの残滓が
刻印されていく。
2月 28, 2008 at 07:53 午前 | Permalink | コメント (8) | トラックバック (0)
茂木健一郎
『脳を活かす勉強法』
PHP研究所
は、重版(13刷、累計33万部)
が決まりました。
ご愛読に感謝いたします。
PHP研究所の木南勇二さんから
いただいたメールです。
茂木健一郎先生
いつもお世話になります。
日曜日は、取材+講演会+サイン会と
誠にありがとうございました。
『脳を活かす勉強法』は「自分を変えるための本」
と言われていたことが心に響いております。
授業、媒体取材、セミナーなど、ご体調が芳しくない時でも
つねに全力を傾注されているお姿を拝見すると、
まさに本書の内容を日々実践されているのだと感じ入った
次第です。
木南拝
http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=978-4-569-69679-9
2月 27, 2008 at 07:48 午前 | Permalink | コメント (3) | トラックバック (2)
来し方行く末
朝起きてすぐにすることは
いつもはブログを書くことだが、
今日はちがっていた。
2008年2月29日から
2008年3月26日まで
FUJIFILM SQUAREで
開かれる
『椎名誠写真展「ニッポン ありゃまあ お祭り紀行」』
に寄せる「烏天狗」のお面の
ペインティングをした。
椎名さんの笑顔を思い浮かべながら、
せっせと描いた。
筆を動かしていると、
まるで職人の朝のよう。
アインシュタインがあこがれた
職業は「灯台守」だった。
さかのぼる。
久しぶりの「プロフェッショナル 仕事の流儀」
の打ち合わせ。
夏休みを終えた登校日のよう。
住吉美紀さんが、しばらく顔を見なかった
クラスメートのように
思えた。
寺岡環ディレクターがナレーションを読み上げ、
すみきちはビデオを見る。
有吉伸人さんと、来し方行く末の
話をする。
時は流れ、そして積み重なっていく。
「今、ここ」からの健やかで
若々しい跳躍。
NHK出版で大場旦さんと
話す。
最初は「久しぶりですねえ」と
誤魔化していたが、
やがてのこと、オオバタン攻撃が
始まった。
「やっぱり、何日かまとまって
時間をとっていただかないと。」
「気持ちを入れないと、すぐに6月、
7月になってしまいますからねえ。」
そのうちに、オオバタンが
どん! どん! と机を叩き始めた。
おお。
オオバタンは、こうでなくてはならない。
原稿の催促の勢いで、
オオバタンの元気がわかる。
オオバタンのどんどん! が、
何だか、かけがえのない
「文化遺産」のように思えてきた。
どんどん! する前のにこやかな大場旦。
ソニーコンピュータサイエンス研究所へ。
柳川透くん、田辺史子さん、張キさん、
田谷史彦くんといろいろ議論し、
今後の方向を話し合う。
大切なのは、スピード感。
三田の「コートドール」へ。
橋本麻里さん、和楽の渡辺倫明さんと
来し方行く末を。
和楽連載もあと数回で終わり。
時は過ぎ、二度と戻らない。
積み重なったものは
化学反応を起こし、光を発し始める。
「新・森の生活」の原稿をお送り
したら、中央公論の井之上達矢
さんがお返事をくださった。
言葉には、時間をつなぎとめ、
永遠へと結ぶ力がある。
井之上さん、ありがとうございました!
*****
今回の原稿で、
多様性を担保する「拡散」が、
いわゆる「横」への広がりではなく、
「メタ」方向へも広がっていることに
気づかされました。
たしかに
「意識」の原初を解明するために
“意識的”に考えていくと、
今、私たちが持っている人間の意識すらも、
意識が進化していく階梯の「踊り場」に過ぎないのではないか、
ということを想定せざるを得ません。
この指摘だけでも、
十分に面白いと思いますが、
ここで
「思考のグルグル巡り」に終わらせることなく、
この意識の創発システムから
「同一性の再生」と「喪失」の物語、
つまりは
多様性の物語を
読み取られたところが、
茂木さんの面目躍如といったところでしょうか。
脳の問題と
心の問題と
生命の問題は、
「相互関係が生み出す多様性」がその
謎を解く鍵を握っているという点で、
同じ問題なんですね。
連載を重ねるほどに
茂木さんが
最初の打ち合わせで
熱く語っていた
「とにかく多様性なんだよ」という言葉の意味が
わかってきます。
中央公論新社
雑誌編集局「中央公論」編集部
井之上 達矢
***
2月 27, 2008 at 07:28 午前 | Permalink | コメント (8) | トラックバック (3)
プロフェッショナル アンコール 羽生善治
羽生善治さんとお話した
数々のこと。忘れられない。
将棋のことはどこでも考えられる。
始まると、アタマの中に将棋盤が
現れて、コマが動き出す。
ライバルである谷川浩司さんとの
対局は全部覚えていて、
同じような局面がくりかえさないように
配慮して指す。
二人の棋譜が歴史に残るものであるという
ことを意識されているのである。
羽生さんの存在自体が、
一つのインスピレーションである。
ふとした表情の向こうに無限の宇宙がある。
NHK総合
2008年2月26日 22:00〜22:45
2月 26, 2008 at 09:08 午前 | Permalink | コメント (4) | トラックバック (7)
集英社新書
茂木健一郎『欲望する脳』
は、増刷(6刷、累計51000部)
が決定しました。
ご愛読に感謝いたします。
集英社の鯉沼広行さんからいただいた
メールです。
茂木健一郎様
お世話になっております。
『欲望する脳』ですが、また重版が決まりました。
読者層について、前に新書としては、かなり若い感じだと
申し上げましたが、男女比をみると、ほぼ半々のようです。
通常、新書は男性のほうが多いので、『欲望する脳』は、
比較的、女性のかたが多いという印象です。
テーマにもよると思いますが、茂木さんの他のご著書も、
男性・女性を問わず読まれているのはないでしょうか。
鯉沼広行拝
集英社
2月 26, 2008 at 09:01 午前 | Permalink | コメント (0) | トラックバック (1)
みんなが、世間で受け入れられる
コミュニケーションのスタイルは
こんなものだと思っている中、
自らが発信するものの内容を
自己規制している社会があるとする。
そんな社会は、ひそやかに人を
傷つける。
たとえば出版社。
大学の時には、こんなことを
研究して、あんな議論をして
いたのに、世間に出たとたんに
「売れ筋」の本を作ろうとする。
それがプロフェッショナリズムと
擬制する。
世間とはそんなものだと
思いこまされて、
次第にそれが自分の内面となってしまう。
あるいはテレビ局。
視聴率を上げる番組は
こんなフォーマットで
こんな内容だという
「常識」が内容を均一に
塗り上げていく。
映像表現を志す、
その理想が、マーケットによって
蹂躙される。
もちろん、「仕事」は大事だ。
お金は大切。
世間を読み、時代の空気を感じる
ことも重要。
しかし、たまには、
「そんなことは知ったことか」
と自分の本音を出しても
いいんじゃないか。
本来の夢が何だったのか、
忘れてしまってさえいるかも
しれない私たち一人ひとり。
パーコレーション相転移の
ように、たとえ最初は一つふたつ
でも、つながることで一気に
形成は逆転するはずだ。
紀尾井町の文藝春秋。
「ナンバー」の座談会。
女性アスリートが人気となっている
時代背景について。
辛酸なめ子さん、生島淳さん。
CREA編集部の
山下奈緒子、井上敬子、三井三奈子
の「三人娘」さんたち、
それにナンバー編集部の竹田直弘さんと、
四谷駅近くのとんかつ屋「三金」
に行く。
竹田さんはなんとなく雰囲気が
新潮社の金寿煥さんに似ていて、
それで「締め切り」を思い出した。
四谷駅の近くの空は大きい。
かつて東京の空はどこでもそうだった
のだろう。
スカイラインが乱されず、
のびやかに広がっている。
そうだ、諸君、たまには
空を見上げようヨ。
月刊「文藝春秋」に掲載される
予定の脳の記事のインタビュー。
東嶋和子さん。編集部の井崎彩さん、
編集長の飯窪成幸さん。
東嶋さんと楽しく議論。
飯窪さんが絶妙のタイミングでコメントする。
珈琲店で、ひたすら仕事に
没入する。
時間の経過も忘れる。
フロー。
外に出ると、また空が大きい。
四谷界隈の住人になったような
気分になった。
お台場のフジテレビ。
フジテレビキッズの小畑芳和さん、
網谷浩恵さん、山田洋久さん、菅野温夫さんと
お話しする。
私の研究室から、須藤珠水、箆伊智充、
柳川透が同席。
丹下健三さんの設計した
社屋から、お台場の空が見える。
黒く茫漠たる広がり。
下界がどう変わろうとも、
同じものは依然としてそこにある。
私たちは、まだ空を失っていない。
2月 26, 2008 at 08:57 午前 | Permalink | コメント (13) | トラックバック (7)
西新宿のヒルトンホテル。
『大人のウォーカー』誌の取材
で、梶本音楽事務所の
梶本眞秀さんと対談する。
ラ・フォル・ジュルネが
日本で開催されるようになった
経緯など、興味深い話を伺う。
部屋が変わり、
『週刊ポスト』誌上で
連載されている
眞鍋かをりさんとの対談。
眞鍋さんは、自分を客観的に
見る能力に大変長けていらっしゃると
思った。
それが、才能というものだろう。
紀伊国屋書店へ移動。
地下のカレー屋さんで、
ビーフカレーを食べる。
探しても探してもビーフの
かけらはなかった。
ふと見上げると、チキンカレーや
コロッケカレーの何よりも、
この店のビーフカレーは安かった。
なるほど。でも、ビーフくんに
会いたかったなあ。
地下のスツール椅子に
思いを残して、四階に上がる。
毎日小学生新聞の取材。
毎日小学生新聞は、
二十歳過ぎの時に
童話『トゥープゥートゥーのすむエリー星』
を連載させていただいた懐かしい媒体。
朝日新聞のweb媒体
「どらく」の取材
プレジデントFamilyの取材。
ブラインドスポットの平塚一恵さんが
アレンジ下さった怒濤の
『脳を活かす勉強法』関連の取材は、
これにて終了。
紀伊国屋ホールにて、
『脳を活かす勉強法』について
お話させていただく。
この本をこの時期に出すに
至った一つの背景は、
私自身が人生においてまだまだ
変わらなければならず、
また変わるべき時が来たのであって、
その時、自分が小、中、高と
魂の激変を経過したその経験を
もう一度なぞらなければならない。
そんな思いがあるのです、と
お話する。
平塚さんがC・W・ニコル
さんの知り合いで、これから
はりはり鍋を食べると言うので、
PHP研究所の横田紀彦さん、
丹所千佳さん、木南勇二さん、
電通の佐々木厚さんとともに
西麻布へ向かう。
大場葉子さん、石井高弘さん、
田畑博文さんとは名残惜しいですが、
また会う日まで!
ニコルさんと鯨の話をした。
森の話をした。
ケルトの民と、アングロサクソンの民の
違い。
ウェールズのこと。
炭坑のぼた山に復活した緑。
地球のこと。
お酒のこと。
人生のこと。
「ケンさん、黒姫の森においでよ。」
ニコルさんがいざなった。
行くよ、ニコルさん。
私は、この地球上の何よりも、
森が好きなのです。
木々が茂っているところを見ると、
とにかく、ニコニコと
笑い出してしまうのです。
ニコルさんは、森の下のふかふか
とした大地のように、あたたかく、
大きかった。
奥の座敷に松本人志さんが
いらっしゃる。
ブルータスの対談以来。
お久しぶりでした。
2月 25, 2008 at 07:30 午前 | Permalink | コメント (10) | トラックバック (3)
ヨミウリ・ウィークリー
2008年3月9日号
(2008年2月25日発売)
茂木健一郎 脳から始まる 第92回
すべては音楽から生まれる
抜粋
ずっと音楽に親しんできたのに、自分が思っていた音楽よりも、「音楽」の範囲は本来は広いのだとある時気づいた。一度わかってしまえば、「音楽」が宇宙全体を覆っていると言ってもよいくらいである。人間の意識の中には、常に「音楽」が流れている。私たちは、お互いに「音楽」をやりとりしている。私たちの生命は、「音楽」によって包まれている。
それは、思わず、「あっ」と声に出してしまいそうな覚醒の瞬間だった。以来、音楽というものが全く違ったものに感じられて、その胸騒ぎが未だに収まらないでいる。
全文は「ヨミウリ・ウィークリー」で。
http://info.yomiuri.co.jp/mag/yw/
2月 24, 2008 at 06:33 午前 | Permalink | コメント (1) | トラックバック (1)
サミュエル・バーバーの
『弦楽のためのアダージョ』を
ふと耳にして考えた。
ポップスやロックを
含めたここ数十年の人類
が親しんできた曲を、バッハやモーツァルト
と比較した時の際だった特徴は、
「異なる要素が組み合わせられる
ことの緊張感」が
脱落したことだろう。
もっとも、民謡が素朴な
旋律主義に基づいている
ことを考えれば、
古典主義音楽、
教会音楽が「多様性の
封じ込め」を行ったことは一つの
特異点だったのかもしれぬ。
現代からは失われてしまった
「対位法」の世界観とは
何だったのだろう。
人間精神の単純化は、
現代の天空を舞うどんな
妖精のしわざか。
日本橋の髙島屋へ。
NHK「きょうの健康」
が放送開始から40年を迎えたのを
記念して開催されている
「NHKきょうの健康フェア」
にて、お話する。
宮川泰夫アナウンサーとは、
昨年の11月の「ねんりんピック」
以来。
宮川さんにお任せしていれば
本当に安心で、楽しくお話する
ことができた。
質疑応答も活発に。
突然、強い風が吹き始める。
春一番。
遠くの方で、誰かが、ほっぺたを
ふくらませて空気を吐き出している。
地球が丸いなどとは知らなかった
わが祖先たちは、地平線を
眺めてどんなことを考えていたか。
真実の発見は多くの幻視にとどめを
刺す。
物理的な真実への到達
がモノカルチャーを招くとは、
なんと皮肉なことだろう。
私たちは、多様な幻視をも生み出す、
多様性を支える普遍的真理を
再発見せねばならぬ。
対位法の精神の復活のためにも。
2月 24, 2008 at 06:26 午前 | Permalink | コメント (14) | トラックバック (4)
茂木健一郎
『脳を活かす勉強法』
PHP研究所
は、重版(12刷、累計31万部)
が決まりました。
ご愛読に感謝いたします。
PHP研究所の木南勇二さんから
のメールです。
茂木健一郎先生
12刷4万部が増刷となりまして
累計31万部となりました。
茂木先生、誠にありがとうございます!
読者の皆様、本当にありがとうございます!
PHP 木南拝
http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=978-4-569-69679-9
2月 23, 2008 at 08:39 午前 | Permalink | コメント (1) | トラックバック (1)
PHP新書
茂木健一郎 『すべては音楽から生まれる』
は増刷(8刷、累計55000部)
が決定しました。
ご愛読に感謝いたします!
PHP研究所の丹所千佳さんから
いただいたメールです。
茂木健一郎先生
ブルーノ・タウト(フェノロサという説もあるようですが)は
薬師寺東搭を「凍れる音楽」と称したそうですが、
あらゆる美しいものは音楽になぞらえる
ことができるような気がいたします。
それはとりもなおさず、
「この世界はあまねく音楽である」ということ
なのかもしれないと思うのでした。
2月 23, 2008 at 08:32 午前 | Permalink | コメント (0) | トラックバック (0)
ボクは時々勘違いすることがある。
とにかく、事実ではないことを信じこんで
しまって、それが世界だと
思ってしまうのだ。
イギリスで免許を取ったが、
筆記試験の時間を一時間勘違いして
思いこんでいた。
受験票に午後6時とはっきり
書いてあるのに、なぜか午後7時だと
天地神明に誓って信じていたのだ。
会場につくと、もうみんな
帰るところだった。
あのときは悲しかった。
バーガーキングでホッパーを
食べて呆然とした。
グリーンパワージャパンというのは、
同時通訳のつく国際会議だと
信じ込んでいて、
会場に着いてから、聴衆もしゃべる人も
日本人ばかりだと知った。
一緒にいた電通の佐々木厚さんが
あきれた。
有楽町駅のコンビニでおにぎりを
買って、とぼとぼ食べながら
エスカレーターを上がった。
ロハス・サンデー
http://www.j-wave.co.jp/original/lohassunday/
の収録で、王理恵さんにお目にかかって
お話した。
やわらかく、しかし芯の
しっかりとした、「アルデンテ」な方だった。
勘違いしていた基調講演を日本語で
行う。
佐々木厚さんと移動。
日本自動車販売協会連合会の総会で
お話させていただく。
神保町の岩波書店へ。
ほぼ20年ぶりに
『岩波講座 哲学』全15巻
が刊行されるのを記念した
座談会。
西垣通さん、野家啓一さん、伊藤邦武さんと
哲学、思想の現状と未来について
語り合う。
編集部の中川和夫さん、
十時由紀子さんを交えて
山の上ホテルの
「モンカーヴ」
で懇談する。
最近はやりの「街場の哲学」は、いわば
「辻説法」のようなもので、
「修験の場」である山から
思想者が降りてきて、
縁なき衆生に語りかけようとする。
その行為が尊いものであることは
言うまでもない。
しかし、逆のベクトルもあったらいい。
志向者どうしで、修業している
のである。
きびしい小乗を実践しているのである。
精神の感化にとっては、本当は、
その場に歩み寄るのが一番良い。
辻説法は、ユニークな表現の形式を
生むが、実質的な「真水」の進捗
という意味においてはついに薄められた
ものになってしまう。
その峻厳たる頂きを目指して
登攀を始めるだけの脚力と意志を
現代人はまだ持っているのか。
山から下りてくるのを待っているんじゃ
なくて、
自ら登攀しようとする。
そんな「力場の逆転」を図る
「乾坤の一擲」を探る。
2月 23, 2008 at 08:17 午前 | Permalink | コメント (8) | トラックバック (4)
Zhang, Q. and Mogi, K. (2007) REPRESENTATION OF 3-D VOLUMETRIC OBJECT FROM THE PANTOMIME EFFECT AND SHADING CUES IN HUMAN BRAIN, International Journal of Pattern Recognitionand Artificial Intelligence Vol. 21, 1307–1322.
2月 22, 2008 at 09:43 午前 | Permalink | コメント (0) | トラックバック (0)
Omata, K. and Mogi, K. (2008) Fusion and combination in audio-visual integration. Proceedings of the Royal Society of London A 464, 319–340.
2月 22, 2008 at 09:39 午前 | Permalink | コメント (1) | トラックバック (0)
『生きて死ぬ私』 (ちくま文庫)
は増刷(8刷、累計30000部)
となりました。
ご愛読に感謝いたします。
以下、文庫化を担当してくださった
筑摩書房の増田健史氏からのメールです。
茂木さま
気持ちのよい天気ですね、ちくま増田です。
さて早速ながら、お蔭様をもって、
ちくま文庫『生きて死ぬ私』の重版が決まりました。
それにしても、この本に寄せていただいた内藤礼さんの
文章はやはり素晴らしいですね。
読み返していると、こちらの思考もあちらこちら
多方向に広がっていって、つまりそれが心地よくて
勤労意欲がぜんぜん湧きません。
ともあれ、まずは要用のみご報告までに。
増田健史
2月 22, 2008 at 08:34 午前 | Permalink | コメント (2) | トラックバック (2)
人生における課題の一つは、
いかにより「ピュア」
になっていくかということでは
ないか。
様々に交わりながら、影響を受け、
しかし、芯にある「真水」
の部分を純化していく。
交わり、そして純化する。
吸って、そして、吐く。
「往還運動」の中でこそ、
春はずっとずっと濃くなり続ける。
「私」という樹木は成長し続ける。
ソニーコンピュータサイエンス研究所にて
ゼミ(The Brain Club)。
箆伊智充が「同時性」知覚における
恒常性についての論文をレビューする。
物理的な空間距離に関する知識が、
いかに同時性知覚に影響を与えるか。
触覚には距離という観念はない。
ヴァーチャル・リアリティに
おいても、higher knowldgeとしての
距離は成立しない。
A、Bという二つの刺激に
対するReaction Timeの定量的
関係と、両者のtemporal order judgementの
間にconsistencyがないことの意味。
続いて、関根宗泰が、video ergo sum、
ビデオを用いたヴァーチャル・リアリティを
通して擬似的なout of body experienceを
引き起こしたとするScienceの論文を
レビューする。
rubber hand illusionにおいては、
「自己」の位置は変わらないままに
handのownershipが変化するわけであるが、
そのことと、OBEの差異は何か?
もそもと、「かものはし」こと関根は、
ボディ・イメージについて何らの仮定も
せずにゼロからbootstrappingによって
構築しようという強い志向をもっているが、
rubber hand illusionとOBEの差こそが
よき練習問題であろう。
関根くん、がんばりたまえ!
田森佳秀がゼミに来た!
理化学研究所時代からの私の
親友、及び畏友。
今は金沢工業大学にいる。
ある時、
数学の問題を夕方から解きだし、
「夜の8時になったらあのカレー屋に
行こう」と楽しみにしていた田森。
「そろそろ行こうか」とドアを開けると、
何か変だ。
さわやかな空気が流れ、雀がちゅんちゅん
鳴いている。
夜の8時ではなかった。いつの間にか、
朝の8時になってしまっていたのだ。
あれれ?
そんなぶっとんだエピソードに事欠かない
数学の天才、「恐怖のアルゴリズム的頭脳」
の田森佳秀。
最近の「趣味の数学活動」の話をはじめた。
25×25の「魔法陣」。
「縦横、足すと全部7825になるんだよ。」
と自慢する田森。
「それだけじゃない。どの超対角線をとっても、
全部7825になる。つまりは、結晶と
同じで、並進対称性があるんだね。」
「さらに! どの5×5の正方形をとって
きても、全部7825になる。へへん。
すごいだろう。」
こういう話をしている時の田森は
本当にうれしそうである。
「でもね、これ、世界で初めてだと
思っていたら、何と、ベンジャミン・フランクリン
が見つけていたんだよ。残念!」
「そんなことをして何の役に立つのか?」
などと聞いてはいけない。
田森にとっては、数学を考えることが
何よりの喜びなのだ。
大好物のカレーを12時間も忘れてしまうように。
ゼミメンバーの中には、「田森初体験」
の学生もいて、普段は眼にすることの
ない「変わった人」を喜んで見つめていた。
銀座のエルメス・ギャラリーにて、
j-waveでon airされるラジオ番組の
収録。
朝日新聞社の下の「アラスカ」にて、
読売新聞の「オンとオフ」の取材。
「アエラ」の山本モナさんとの対談。
尾道出身のモナさんと、かの街の
素晴らしさを楽しく語った。
photo by Tomio Takizawa
赤ちゃんは純心だと思いがちだが、
価値があるのは大人の純真では
ないか。
魂が濁っているか、それとも澄んでいるか。
そのことにこそ、最大の価値を見いだす。
泥の中にまみれて、もまれて、
埋もれてこそ、輝きを増すものは
確かにあるのだ。
田森は、年間で26コマも授業を
担当しているらしい。
2月 22, 2008 at 08:31 午前 | Permalink | コメント (10) | トラックバック (2)
TBSラジオにて、
大沢悠里さん、五月みどりさんと
お話する。
大沢さんは声の彫刻家である。
五月さんからは正のエネルギーがこんこんと
わき出している。
ニューロクリアティヴ研究会。
甘利俊一先生の後にお話する。
田森佳秀と久しぶりに話す。
鈴木良次先生は十年ぶりくらいであった。
十字屋のトークが始まる前に
ベランダで外を眺めていた。
となりのアップルストアの看板が
見える。
dictionaryのトークの前、
あの下で、松任谷由実さんと
写真撮影をしたのだった。
中村千恵子さんにお目にかかる。
音楽と脳、そして感動について
お話する。
MAKIさんが率いるcode Mの
演奏がある。
クラッシックをcode M風に
アレンジした曲、そしてMAKIさん
のオリジナル曲。
幻冬舎の大島加奈子さん、
石原正康さんにお目にかかる。
石原さんとは、2006年10月12日に
放送された『プロフェッショナル』
の収録の時以来であったけれども、
なぜかそんなに久しぶりという
気がしない。
もっとも繊細なニュアンスを
感じ分けるとともに、
どこまでも単純に疾走していく。
この二つのベクトルをどのように
合致させるか。
センシティヴな感じ分けと
同じくらい、
手元の単純な作業は裏切らない。
朝の一杯のコーヒーが
精神を支える骨組みになるように、
解きほぐし、組み立て、
そして並べる。
そんな作業が私たちの心を
生き生きと輝かせる。
2月 21, 2008 at 08:48 午前 | Permalink | コメント (7) | トラックバック (4)
第一回ニューロクリアティブ研究会
2008年2月20日(水)
有楽町 朝日ホール
甘利俊一、茂木健一郎、多根弘師、
ナンシー・C・アンドリアセン、久米是志、
鈴木良次
http://www.kuba.co.jp/neuro/program.html
2月 20, 2008 at 07:30 午前 | Permalink | コメント (0) | トラックバック (2)
大沢悠里のゆうゆうワイド
TBSラジオ
2008年2月20日(水)8:30〜
2月 20, 2008 at 07:29 午前 | Permalink | コメント (1) | トラックバック (0)
論理的に指し示されるのでは
ない方向性について、
自分がどのように判断するか
という点に、その人が
一番現れるのだと思う。
「感性を磨く」とひとことで
言うが、それは、海図のない
大海原を闇雲に行くヨットに
似ている。
地球上の表面はくまなく
探検し尽くされてしまったが、
精神の宇宙の中には
まだまだ手つかずで多くの
暗黒大陸が残されているのだ。
飛行機が羽田にストンと
降りて目が覚めた。
東京工業大学すずかけ台
キャンパスへ。
長津田で遅い朝食を
とる。
日経サイエンス編集部にて、
京都大学の川合光さんと
超ひも理論のお話をする。
CERNで建築中のLHCで
ヒッグス粒子が見つかれば、
標準模型が事実上完成され、
未知の物理現象が発見される
ということはもはやほぼ期待
されない「砂漠」が広がると
川合さん。
「アンダーソン局在」
で知られる物理学者のフィリップ・
アンダーソンは、あるシステムが
理論から論理的に予想されることを
超える振る舞いをすることを、
emergenceと呼んだ。
たとえば、高温超伝導が
emergenceである。
しかし、「それは、理論が一時的に
追いついていないに過ぎない」
と川合さんは言う。
最終的には何らかの整合性のある
理論的記述ができるはずであり、
それまでに一時的に存在する
ギャップであると。
脳を探究していると、一つ
わかると十わからないことが
出てくるというように、
いつまでも理論がconvergeしない
印象を受ける。
これは、要素から積み上げてより
高度な組織ができるという
emergenceに固有の問題で、
逆に要素の方に還元していく
という知的探究においては、
標準模型が確認されれば
あとは超ひも理論で
その裏付けをするというように、
convergentな理論構築を
志向することができるのだろう。
超ひも理論においては、
いかに非摂動論的な
扱いをするかということが
理論的課題となっていて、
川合さんはその課題に
行列形式のダイナミクスの
記述で取り組まれている。
麻布十番の「かどわき」へ。
文藝春秋の女性誌CREA
編集部の方々と、遅い新年会。
文學界連載の時から引き続きお世話に
なっている山下奈緒子さん、
編集長の井上敬子さん、三井三奈子さんと
楽しくお話する。
最後に出た黒トリュフのごはんが
絶品だった。
それだけで完結した、足すものも
引くものもない世界をつくっている。
ごはんを食べる時には赤だしや
お新香がうれしいものだが、
それらのものが要らない。
トリュフご飯だけでずっと食べて
いたいと思った。
この世のさまざまは
理論からは予想できない
emergenceをふんだんに
示し、
その航海で頼りになるのは
自分の感性だけである。
豚はぶうぶう言いながら黒トリュフを
探りあてる。
視覚は一覧性を特長とするが、
幻視においては私たちは何も
見渡していないし、並列も
していない。
ただ、感性という鼻で探りあてる
だけである。
暗闇の中を行くゾと思うからこそ、
人生は美しい。
2月 20, 2008 at 06:18 午前 | Permalink | コメント (8) | トラックバック (4)
プロフェッショナル 仕事の流儀
あきらめなければ、失敗ではない
~
中小企業経営者・片山象三 ~
片山さんは、逃げない。
どれほど時代の逆風に
さらされ、
器用なものならば転身を
図るかもしれない場合にも、
そこに留まる。
身体、故郷、大切な人々。
この世には、そう簡単には
交感できないものが存在する。
どう、自分の状況を受け入れて、
そこで踏ん張るか。
片山さんの生き方に勇気づけられる。
生きる情熱こそが、革新をもたらすのだ。
NHK総合
2008年2月19日 22:00〜22:45
http://www.nhk.or.jp/professional/
Nikkei BP online 記事
生きる情熱からしかイノベーションは生まれない
〜中小企業経営者 片山象三〜(compiled by 渡辺和博(日経BP))
2月 19, 2008 at 08:16 午前 | Permalink | コメント (4) | トラックバック (5)
茂木健一郎
『脳を活かす勉強法』
PHP研究所
は、重版(11刷、累計27万部)
が決まりました。
ご愛読に感謝いたします。
PHP研究所の木南勇二さんから
のメールです。
昨日、11刷1万5000部と朝、ご連絡させていただきましたが、
夜中に訂正されました。
申し訳ございません。
11刷3万5000部がかかり累計27万部となりました。
誠にありがとうございます!
その前にいただいたメールです。
茂木健一郎先生
いつもお世話になります。
11刷1万5000部が増刷となりまして
累計25万部となりました。
誠にありがとうございます!
茂木先生は、できるだけ早く本物といえる
人と会うことが、学習には大切と述べられていますが、
私は子どもの頃、野球少年であり、
中学生時、母校からプロ野球選手に
なったばかりのK投手と一緒に冬季練習を
する機会がありました。
K投手は、その後、左の本格派投手として広島と
巨人に在籍し活躍しました。練習時、ボールを
投げる時の肘の使い方がすごく参考になったのを
今でも覚えています。
あの時、私のミラーニューロンも働いていた
のかもしれません。
ちなみに昨日は紀伊国屋2位でした!
週間ランキングでは1位です!
何卒よろしくお願い申し上げます。
PHP 木南拝
http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=978-4-569-69679-9
2月 19, 2008 at 08:00 午前 | Permalink | コメント (4) | トラックバック (1)
由布院から博多へ戻るとき、
車窓から山々とその間に
点在する家々が見えた。
住んでいるということは、
どうしょうもなく動かしがたい
ものである。
ずっとその景色に包まれて
ある。
同じ道を通り、雑貨店で
買い物し、佇み、空を
見上げ、そして自分の
手を見つめる。
どこにでも自由に
行ける、検索ができる、
そんなもんは私たちの
実生活の中にはない。
そんな重みをどこかで
担保しなければ、人間は
バカになる。
そうだ、どっしりしていて
いいんだ。
ネットなんて聞いたことも見たことも
ない人たちよ。
インターネットなんて、
知っちゃことじゃない。
そう言って全くかまわないヨ。
ボクはネットのヘビーユーザーだし、
これからも抱きしめ続けるだろうが、
それでも、インターネットなんて
自分という存在の本質とは関係がないと
どこかで思わなければ、
魂のバランスが保てないだろう。
桑原茂一さんと小倉へ。
「もり田」にて、茂一さんの
旧友と美味しい寿司をいただく。
手間のかかった美味しい
料理に元気づけられ、
人の心のあたたかさに
触れる。
福岡の西南学院大学にて、
「ホープフル・モンスターを探して」
http://www.clubking.com/topics/archives/02event/218vol3.php
はなわさんとお話する。
アーティストたちが、
作品をプレゼンテーションする。
議論する。空に向かって
手を思い切りの伸ばす。
すばらしい会になりました。
関係者のみなさま、ありがとうございました。
勇気というものは、ざらざらとした
感触がある。
スムーズには行かない重いところにこそ、
自分の生のエネルギーを注ぎ込まなくては
ならない。
2月 19, 2008 at 07:56 午前 | Permalink | コメント (6) | トラックバック (1)
ヨミウリ・ウィークリー
2008年3月2日号
(2008年2月18日発売)
茂木健一郎 脳から始まる 第92回
ニル・アドミラリ
抜粋
数多くの情報が行き交う現代社会の中で、自分自身の生きるバランスを失わないことの大切さを思う時、私は夏目漱石の『それから』に描かれた代助の世間に対する態度を思い起こす。
「二十世紀の日本に生息する彼は、三十になるか、ならないのに既にニル・アドミラリの域に達して仕舞つた。彼の思想は、人間の暗黒面に出逢つてびっくりする程のやまだしではなかつた。」
漱石は、代助の考え方をそのように描く。
「ニル・アドミラリ」とは、もともとはラテン語で「何ごとに対しても驚かない」ことを指す。経験を積み、様々な知識を持つ者は、目新しいことに接したとしても容易には驚かないのである。
全文は「ヨミウリ・ウィークリー」で。
http://info.yomiuri.co.jp/mag/yw/
2月 18, 2008 at 06:23 午前 | Permalink | コメント (3) | トラックバック (1)
桑原茂一さんと湯布院にきた。
空港に降り立った瞬間、
ゆだんしていた神経が
ぱあっと開いて、
「ああ、来たんだ」と
思った。
(
桑原茂一さんの日記はここです。
http://www.clubking.com/~kuwaharamoichi/D2/
)
駅のホームで
トンコツラーメンを食べる。
心が躍り出した。
ゆふいん号で目を閉じると、
窓から差してくる光が
オレンジ色に意識を包み、
温かさの中にすべてを
ゆだねた。
由布岳がくっきりと見え、
その頂きに向かって道路がのびる。
亀の井別荘の部屋に
荷物を置いて、近くを歩いた。
金鱗湖の水面から白くもやが
立つ。
新潮社の池田雅延さんに電話をして、
小林秀雄さんと湯布院との
関係についてお話した。
小林先生は玉の湯にいらしていたが、
そのいとこが亀の井別荘を
営んでいる。
白洲信哉に電話をする。
相変わらず元気である。
信哉がもらしたひと言に、
無意識を言い当てられたような気がした。
茂一さんと、ゆったりと
お話する。
談話室にて暖炉の火を
味わっているその時、
「仕事をしてまいります」
と部屋に戻った。
どうしても時間に追われている
そのことを始める。
ゆったりと線を描く
課題もまたあり。
10年前の宿題を思い出した。
お湯に浸かり、
少しずつ樹脂を
溶かして、ゆすりながら、
部品を解体したり、
また組み合わせたりする。
2月 18, 2008 at 06:22 午前 | Permalink | コメント (4) | トラックバック (1)
朝日カルチャーセンターにて、
植島啓司さんと「聖地」について
お話しする。
神様が「立ち入り禁止」
の立て札を置いている。
そう簡単に、「あちら側」には
行けない。
その向こうにある星辰の広がりを
こそ、私たちは想像し、震撼する。
植島さんが偶有性の話をした。
ジャングルを歩いている。
雨が降ってくる。
近くにあるバナナの葉で
避ける。
そのような一連の流れと、
傘をあらかじめ用意して
おくことは違う。
植島さんは、傘を用意して
おくのは嫌なのだと言われる。
レヴィ・ストロースの言う
「ブリコラージュ」には、
私たちの生命を育む
断片とそのつながりが
たくさん含まれている。
入不二基義さんと永井均
さんも講演をされていて
榊原淑子さんのアレンジで合流する。
永井さんと師弟関係にある
川上未映子さんもいらした。
「おしら様哲学者」塩谷賢と、
久しぶりにゆっくり話す。
「君の言う、一回性というのは
どのようなことだい」
と塩谷が聞く。
塩谷に手垢のついたことを言っても
始まらない。
トラジェクトリーを一つひとつ
扱う、それを統計的アンサンブルにして
傾向を見るんじゃ消える、という
のでは当たり前で、その前提と
なる時間や空間の成り立ち自体に
ついての懐疑にまで至らなければ
ならないのだ。
「つまりさ、生命というものを
考えていくと、時間の問題に
当たらざるを得ないんだよ。」
「うん、わかった。それじゃあ、
その時に空間というものは
どう考えているんだい?」
塩谷はソクラテスかもしれないと
思うことが時々ある。
それならば、ボクはプラトンに
なろうと志願して
塩谷の粘着質どろどろ未解明の
思考を分析しようとするが、
なかなか歯が立たない。
日本の哲学界では、誰もが
塩谷のことは知っていて、
しかしその思考をいかんとも
し難いので、投げ出している。
かくして、塩谷は奉り上げられて
「おしら様」となる。
それが、塩谷にとって幸福な
ことなのか、不幸なことなのか。
バーで飲んだ後、塩谷と二人で
牛丼屋に入った。
ボクは生卵をつけるのが好きだが、
塩谷は苦手だという。
「じゃあ、並盛りだけでいいんだな」
と確認すると、それでいいんだ
という。
ボクがとって勧めたお新香も、
塩谷は「いいよいいよ」と
二度ほど言ってから手をつけた。
流通しているもんなんて、大した
ものじゃないと思う。
その一方で、塩谷と18歳の
時に出会って、
駒場を猛然と歩きながら
シュトゥルム・ウント・ドランク
して、隅田川のほとりで
ビールを飲みながらくだを巻いて、
カップルが僕たちの周囲を半径10
メートルくらいに避けて歩いていって、
とにかく向き合おうとした
問題の動かしがたさと、
やっかいさと、何も変わって
いない感じと、塩谷が
哲学界で奉られてしまっている
感じと、さまざまを思い合わせると、
どす黒い絶望のようなものが
込み上げてくる。
「お前が、いったんは社会的身体を
まとったら、いったいどんな姿に
なるんだろう?」
オレは塩谷に問うた。
「どうなるかわからないから、
オレはおそろしいんだよ。」
と塩谷は言った。
一度対談本を作らねばなるまい。
流通しているものなんて、
くだらないと思う。
しかし、万人の胸にどうしても
流通できない鬱屈した思いは
必ずあるはずだと信じるならば。
植島さんの
バナナの葉の話ではないが、
不意打ちされる時に
もっとも大きな恵みを受けられる
ことは確かだ。
ボクは、塩谷と深夜の牛丼屋に
たどり着いて、本当にうれしかった。
塩谷には、57歳まで、
社会的身体をまとうことを
猶予してもいいよ。
「どうしてだい」と塩谷が
聞くから、
「カントが純粋理性批判を出版したのは
57歳」
と呪文のように答えた。
2月 17, 2008 at 08:22 午前 | Permalink | コメント (9) | トラックバック (5)
植島啓司 茂木健一郎 人はなぜ聖地をめざすのか
朝日カルチャーセンター 新宿
2008年2月16日(土)
15時45分〜17時15分
http://www.acc-web.co.jp/sinjyuku/0801koza/A0101_html/A010130.html
2月 16, 2008 at 09:53 午前 | Permalink | コメント (2) | トラックバック (0)
ちくま新書
茂木健一郎 『思考の補助線』は増刷(3刷、累計45000部)
となりました。
筑摩書房の増田健史さんから
いただいたメールです。
茂木さま
お世話になります、ちくま増田です。
さて早速ながら、お蔭様をもって、
ちくま新書『思考の補助線』の重版が決まりました。
第3刷として、5,000部を増刷させていただきます。
(累計は45,000部です。)
ところで14日の朝日新聞朝刊、気迫みなぎる
ドデカイ広告の対面で圧倒的に翳
んでいたのでお気づきでないと確信しますが、
弊社の広告も出して
おり、そこにはもちろん『思考の補助線』
も載せていたわけで、
「美と醜、善と悪、
凡人と天才、感情と論理、科学と思想……
一見かけ離れた物事のあいだに補助線を引
くとき、世界の見え方が一変する!茂木流
『考えるヒント』」と、紹介文を付しました。
ご本の論考に通底してある「怒り」とか
「厳しさ」とか、それでいて「可愛げ」と
か、そういった魅力の核心を省みつつ、
こういうところが好きだなと、
感心しながら読み返しているわけで
あります。
それでは、またいずれ。
要用のみ、ご報告旁々御礼までに。
増田健史
2月 16, 2008 at 09:39 午前 | Permalink | コメント (2) | トラックバック (3)
PHP新書
茂木健一郎 『すべては音楽から生まれる』
は増刷(7刷、累計50000部)
が決定しました。
ご愛読に感謝いたします!
PHP研究所の丹所千佳さんから
いただいた一つめのメールです。
茂木健一郎先生
いつもお世話になっております。
先週は怒涛の取材に最後までお付き合いいただき
ありがとうございました。
さて、増刷のお知らせです。
PHP新書『すべては音楽から生まれる』は
このほど増刷が決定し、
おかげさまで7刷累計50000部となりました。
文中に直接出てきてはいませんが、
この本を読んだあとでは
「私は単なる耳にすぎず、
それ以上のなにものでもないのだろうか」
というニーチェの言葉が、
以前とは異なる響きとして感じられるのでした。
読者の方々も、読後なにか一つでも
「変化」に気づいてくださると嬉しいなと思います。
真夜中、こうして会社にひとりいると、
昼間は聴こえなかったものが
いろいろと聴こえ出す気がいたします。
それらはみな、すくいとる前に
指の間からすり抜けていってしまうのですけれども。
眠さゆえ、
おかしな文面になっているかもしれませんが
お許しください。
丹所千佳さんから
いただいた二つめのメールです。
茂木健一郎先生
すみません、今しがたお送りしたメール、
署名を忘れていたようです。
丹所千佳でした。
2月 16, 2008 at 09:34 午前 | Permalink | コメント (2) | トラックバック (0)
茂木健一郎
『脳を活かす勉強法』
PHP研究所
は、重版(10刷、累計23万5000部)
となりました。
ご愛読に感謝いたします。
PHP研究所の木南勇二さんからの
メールです。
いつもお世話になります。
10刷2万部が増刷となりまして
累計23万5000部となりました。
誠にありがとうございます!
私が子どもの頃、数学好きの母親が
「数学の問題を夜中ずっと考えていて、
解けたときすごく嬉しかった」と
よく言っていましたが、今になって初めて
その言葉のもつ意味がわかった気がします。
PHP 木南拝
http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=978-4-569-69679-9
2月 16, 2008 at 09:17 午前 | Permalink | コメント (3) | トラックバック (5)
格闘家の須藤元気さんと
研究所で対談。
須藤さんは、ある時期から
「勝ち」や「負け」
ということについて、執着が
なくなったのだという。
この世を「勝ち」「負け」
という二つの
カテゴリーに色分けしようとする
衝動は、長い人生を考えれば
持続可能なものでは
ないのだろう。
四国を遍路したり、南米に
行ったり、世界を経巡り
模索する須藤さん。
今度は東ヨーロッパに
行くのだそうだ。
すばらしい人でした!
(photo by Tomio Takizawa)
ゼミ中、関根崇泰が
また絵を描きやがった。
どういうつもりなんだ、
まったくブツブツ(笑)
えっ、誰かに似ているって?
そんなはずがない!
柳川透が、自発性について
いろいろと議論を展開した。
柳川が書いた文字で、
ホワイトボードがいっぱいになった。
吸引力のある概念に
趣くのは当然の青年の志である。
世間のヒットパレードなどというものは、
うすらぼんやりとした人気に
よって形成されている
ものであって、
そんなものと、本当の知的な
面白さは当然比例しない。
これが科学でございと
紙面を飾るようなものとは
遠い世界において、この宇宙を
創ったのかもしれない神様の
ひそかなたくらみは息づいている。
世間と付き合うことは
大切だが、
同時に、ひそやかなに
自分自身の内奥と向き合わないと
いかん。
その時、神様は、本当に息がかかる
くらいに、近くにいらっしゃるのだ。
回る、回る、くるくる回る。
私たちの太陽系を含む銀河系は、
大宇宙の中で、渦巻いてくるくる回る。
その運動に一つでかく対抗
してみたいものだなあ。
富士山を見てみたまえ。
凱風に聳える、その雄姿と向き合い
たまえ。
あの姿に比肩するものを、
密かに胸の中で育みたい
ものだなあ。
2月 16, 2008 at 09:14 午前 | Permalink | コメント (7) | トラックバック (3)
『脳を活かす勉強法』の内容を
PHP研究所で
木南勇二さんや、
ブリッジワークスの安藤大介さん、
渡部睦史さんにお話して
いた時によぎったのは、
自分という存在が大きな変化を
通過していた中学校、高校の時の
感触だった。
学びというのは、世間では
「ノウハウ」としてとらえられ
がちである。
ノウハウでもいい。しかし、
学ぶということは、
それによって自分自身が
変化しなければ意味がないと
思う。
その意味では、学びは、自分の
限界を極めようと挑戦する
アスリートの姿勢に通じるし、
また悟りを求めて修業をする
僧侶のあり方にも似ている。
イギリスのケンブリッジ時代の
恩師、ホラス・バーローは
チャールズ・ダーウィンのひ孫
であり、ウェッジウッド家にも
つながっている名門の出であるが、
至ってきさくな人で、
いつもコインをポケットの
なかでじゃらじゃらさせていた。
ホラスから学んだことは
数限りない。
イギリス流の控え目な
表現もその一つ。
ホラスは1921年生まれで、
いつまでも元気でいてほしいと
思うが、時の流れは止められない。
久しぶりに電子メールをやりとり
した。
相変わらずのウィットに富み、
的確な内容で、ああ、元気
なのだと安心した。
『脳を活かす勉強法』
のような本を今このタイミングで
出そうと思ったのは、
木南さんの誘いや、仕掛けも
あるのだけれども、
自分自身の中に変化への
胎動が生じているからでも
あるようだ。
ホラスとのメールのやりとりで、
自然の季節よりも一足先に
氷が溶け始めた。
2月 15, 2008 at 07:30 午前 | Permalink | コメント (10) | トラックバック (5)
茂木健一郎
『脳を活かす勉強法』
PHP研究所
は、増刷(9刷、累計21万5000部)
が決まりました。
ご愛読に感謝いたします。
PHP研究所の木南勇二さんから
のメールです。
茂木健一郎先生
昨日は誠にありがとうございました。
先日社内で「コーチング」の研修を受けました。
「コーチング」の語源は馬車で、コーチが部下を「教える」のではなく
目的地にまで部下を「導く」ということらしいです。
「勉強」という「勉めて強いる」という響きではなく、
学習本来の喜び、
そして幅広い意味での学習に応用できるような道を
これからも模索したいですね。
PHP 木南拝
http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=978-4-569-69679-9
2月 14, 2008 at 07:24 午前 | Permalink | コメント (4) | トラックバック (1)
音楽でも、何となくその時々に
聴きたいものがあって、
無意識のダイナミクスが
それを欲しているのであろう。
無意識を耕すきっかけとなる
もの。
それを私たちは「文化」
と呼ぶ。
寒風の街を歩いていて
大学時代のことを思い出した。
赤門を出て、郵便局の横を
入ったところにあった
森川町食堂。「ニュートン」
が必ず置いてあったアルルカン。
セイロンカレーを食べながら議論
したルオー。
あの頃のロマンティック・アイロニーは
今でも身体に染みついていて、
ふとした時に私を支えてくれる。
東京工業大学すずかけ台キャンパスにて、
博士最終試験。
関根崇泰が、一生懸命
トークをしているのを見ながら
胸が熱くなった。
慶応の経済を出てやってきた
時には理屈っぽい男で、
しばらくして、身体感覚という
ものは無から幾何学的原理に
よってつくり出されるのだと
言い出した。
手が手であるのは、アプリオリに
自明のことではなくて、ブートストラップ
的に立ち上がるのであると。
なるほど、それはそうだ。
マッハの原理や
相互作用同時性を唱える
人間として、よーくわかる。
しかし、いかに経験科学に着地させるか。
大抵の人は、抽象的な議論には
ついてきてくれないものだ。
そして、科学とは、
populismの芸術でもあるのである。
関根崇泰は成長した。
指を交差させる一連の面白い
実験を考えて、
興味深いデータを出した。
柳川透に手伝ってもらった
自作の実験装置を使って
リアクション・タイムを
計測したり、
研究室の飲み会では、
「宴会部長」をつとめた。
「部長、一つお願いしますよ。」
「ああ、そうかね、茂木君、君も
がんばりたまえ。」
「はい、お願いします。こっちの
新入社員の星野英一もよろしく
お願いします。」
「ああ、そうかね、君はなかなか
見込みがあるね。大いに期待しているよ。」
関根の「だみ声」による
「部長との対話」
最後は、必ず爆笑に包まれる。
審査員の先生方に誠実に
答えている関根の姿は、立派だった。
特に、自分の論理に「入り込んでいる」
時のintricateな感じに、
ボクは、自分自身のロマンティック・
アイロニーを想起させられた。
PHP研究所へ。
いくつかの取材を受ける。
ブラインド・スポットの
平塚一恵さんが
ブック・プロモーションに
加わって下さって以来、
『脳を活かす勉強法』
と『すべては音楽から生まれる』
は動きがねずみ花火になった。
ちりちりちり。ちりちりちり。
パチン!
木南勇二さん、横田紀彦さん、
丹所千佳さんとともに、
すっかり「戦友」の趣きである。
時は流れる。
しかし、目を閉じた時に見える
もっとも純粋な夢の姿は
変わらない。
森川町食堂は建物が変わった
と噂に聞く。
今度本郷界隈に用事がある時に
訪れてみよう。
自分自身のロマンティック・アイロニー
と再会するために。
2月 14, 2008 at 07:18 午前 | Permalink | コメント (6) | トラックバック (5)
アインシュタインは、教授から
「なまけもの」と決めつけられて
大学に残ることができず、
ベルンの特許局で働いていた。
その時に、「街の発明家」たちの
混乱した申請書を読んで、
アイデアの本質を整理する
のがたいへん良い知的訓練に
なったと述懐している。
一日中関根崇泰の論文を
読みながらあれこれと
整理をしていて、
アインシュタインのことを
思い出した。
関根は身体の感覚について
研究をしていて、
その実験はとても面白いのだが、
生来理論志向というか、理屈っぽい
性行をもっていて、その書くものを
empirical scienceへと着地
させるのに少々手こずる。
でも、せっかく素晴らしい原石が
そこにあるんだから、
なんとか磨き上げて
価値の高いものにしたいと、
四苦八苦する。
なるほど、私にとっての
『パテント・オフィス』
はここにあった。
TBS『はなまるマーケット』
でお話しする。
薬丸裕英さん、岡江久美子さん
にお目にかかる。
PHP研究所にて、
木南勇二さん、横田紀彦さん、
丹所千佳さんとお話しながら、
関根の論文の「解体修理」
を続ける。
有楽町の東京フォーラムへ。
「ラ・フォル・ジュルネ」の
記者会見。
「アンバサダー」として、
ラ・フォル・ジュルネ 2008
に期待すること、音楽の生命哲学に
ついてお話しする。
『すべては音楽から生まれる』は
ラ・フォル・ジュルネ 2008の
オフィシャル・ブックである。
赤坂のテレビ朝日にて、
『徹子の部屋』
の収録
学生時代、おしら様=塩谷賢と
青山を歩いていて、
向こうから黒柳徹子さんが
数名の大きな外国人を引き連れて
早口で喋りながら歩いてくるところに
遭遇したことがある。
黒柳さんはたいへんアタマの回転が
はやく、気配りも行き届いていて
実際にお話してその「空気感」
に魅惑された。
芝居のせりふの「暗記法」について、
黒柳さんのお話をたいへん興味深く聞く。
黒柳徹子という一つの個性が、
一人の恩師に出会うことで
伸びたエピソード、
NHKで仕事を始めた頃の話なども
とてもゆかしく、
またぜひお目にかかってお話する
機会があればと思う。
八丁堀。
波頭亮さんが座長をされる
研究会に出席。
ディー・エヌ・エーの南場智子さんに、
携帯電話のインターネット接続
サービスの現状と将来展望をうかがう。
南場さんが『プロフェッショナル 仕事の流儀』
出演された時、さらにお聞きしたい
と思っていたことをたっぷり議論できた。
帰路、
ふたたび特許局の係員になる。
ぐちゃぐちゃと革袋に
入っているものを
まとめ、整頓してならべる。
見上げれば星辰の運行は規則正しく、
昔の人がこの猥雑な地上に比べて
天上こそが秩序の王国だと
夢見ていたのも納得できる。
人は、時に目を閉じて
天上の音楽をこそ想うべきなのであろう。
2月 13, 2008 at 06:50 午前 | Permalink | コメント (12) | トラックバック (5)
プロフェッショナル 仕事の流儀
心揺さぶる歌は、こうして生まれる
~音楽プロデューサー・武部聡志 ~
武部さんのピアノ伴奏で
住吉美紀さんが歌ったとき、
本当に変化したので驚いた。
ピアノが、人の声とデュエットする。
やさしく付き添い、
個性の一番よいところを
引き出してくれる。
あの認知的変容以来、
ボクは、カラオケというものが
機械に人間というなまものが
無理矢理合わせているものだという
ことを悟ってしまった。
生きものが生きものと寄り添う
ことでしか生まれてこない
エネルギーがあるのだろう。
きっと、武部さんから力を
もらえるはず!
NHK総合
2008年2月12日 22:00〜22:45
http://www.nhk.or.jp/professional/
Nikkei BP online 記事
優しさとは「弱さ」を「強さ」に変えられること
〜音楽プロデューサー 武部聡志〜(compiled by 渡辺和博(日経BP))
2月 12, 2008 at 06:12 午前 | Permalink | コメント (5) | トラックバック (6)
2月 12, 2008 at 06:04 午前 | Permalink | コメント (13) | トラックバック (0)
サンデー毎日
2008年2月24日号
新連載 茂木健一郎『文明の星時間』
二度と戻らぬ時間の中を生きる
人間はいかに「偶有性」に向き合うか。
「歴史エッセイ」に挑戦します。
http://www.mainichi.co.jp/syuppan/sunday/
2月 12, 2008 at 06:03 午前 | Permalink | コメント (0) | トラックバック (0)
先日、椎名誠さんと街中で
出くわした。
ちょうど、椎名さんの写真展に
向けて事務所の方から依頼されて
いたことがあったので、その
ことをお話した。
ひとしきり話した後で、
「ところで、こんど、
サンデー毎日で連載させて
いただくことになったんです」
と申し上げた。
椎名さんは、「ナマコのからえばり」
というタイトルでエッセイを連載
されている。
そうしたら、椎名さんが
「それじゃあ、ヨミウリの方は?」
と聞いた。
「書きます!」
「そうですか、じゃあ、ボクと同じで
二誌ですね。一つ、勝負しましょう!」
話はそれだけだったが、
ぽぽぽぽぽん!
と返ってくる椎名さんの
言葉が心地よく、その印象がずっと
残った。
「生きものとしての元気さ」
はこの世で何よりも大事な
ことなのではないかと思う。
私たちの祖先は、明治で
西洋という強烈な他者と
出会ったが、「生きものとしての
元気さ」を発揮して何とか
適応した。
坂の上の雲を見失って
混迷の道に入ったが、
戦後、「奇跡の復興」
を遂げる。
したたかに、しなやかに、
すばやく。
平成日本で一番心配なのは、
日本人が「生きものとしての元気さ」
を保っているかということだろう。
NHKにて、平成20年に因んだ
建国記念の日の番組に
出させていただく。
朝10時から夜6時まで、
休憩1時間を挟んで7時間。
上田早苗アナウンサー、松本和也アナウンサー
のお二人は、生放送ならではの
時間の仕切りなど、見事だった。
神田愛花アナウンサーとグッチ裕三さんの
掛け合いも楽しかった。
最後に「大切なもの」を問われて、
私は「多様性」と答えた。
多様性は、持続可能な自然環境、
持続可能な社会からしか生まれない。
そして、多様な中で、異質な他者に
向き合うことにはエネルギーがいる。
まさに、「生きものとしての元気さ」
が必要になる。
世界を一つの色で染め上げようと
いう独裁者は、その果敢な攻撃に
おいて元気なようでいて、
実は多様性を許容できないという
点において根本的に
「生きものとしての元気さ」
が欠けている。
ヨミウリ・ウィークリー編集部の
方々と新年会。
「生きものとして元気」
な方々との楽しい会話に、
命の日だまりができた。
2月 12, 2008 at 05:59 午前 | Permalink | コメント (6) | トラックバック (4)
NHK教育
2008年2月11日(月) 20:00〜20:30
福祉ネットワーク
NHKハート展
「ママとかくれんぼ」
2月 11, 2008 at 05:50 午前 | Permalink | コメント (3) | トラックバック (0)
平成20年いま大切にしたいものは?
7時間生放送
NHK総合
2008年2月11日(祝)
I部 午前10:05~11:54
かけがえのない日本の自然を見つめる
II部 午後1:05~3:00
“昭和”記憶の扉
III部 午後3:05~6:00
特集「美の壺」スペシャル ~「衣・食・住」
から見える日本人の美意識 ~
47都道府県 大切にされてきた地元食材
を使った「平成大切弁当」
http://www.nhk.or.jp/heisei20/
2月 11, 2008 at 05:46 午前 | Permalink | コメント (2) | トラックバック (0)
久しぶりにまとまった
距離を走る。
雪が降ったあとの土は
ぬかるんでいて、
そのやわらかな感触に
やがて来る春を思った。
いろいろと、未来へ向けて
やりたいことを考える。
日常の生活の中で、目の前の
ことをやることに追われている
だけだと、
不確定の「これから」の
「白さ」に十分付き合うことが
できない。
たらいの中には、メダカが住む。
鯨が自由に泳ぎ回るためには、
大海を必要とする。
自分がどれくらいの器を
用意するかで、
その中に育ってくる生きものは変わって
くる。
自分の将来のためには、
大きな大きな器を
用意しよう。
2月 11, 2008 at 05:25 午前 | Permalink | コメント (7) | トラックバック (3)
The natural history of contingency.
The Qualia Journal
10th February 2008
2月 10, 2008 at 05:58 午後 | Permalink | コメント (3) | トラックバック (0)
平成20年 いま大切にしたいものは?
あなたにとって“大切にしたいもの”は何ですか? 平成20年のいま、時代が移りゆく中でも私たちが“大切にしたいもの”は何かを探る長時間の生放送をお送りします。日本のかけがえのない自然、人々の暮らし、日本の伝統など、私たちが大切にしてきたものをスタジオのゲストとともに見つめます。また、放送をご覧のみなさんに、お便りを大募集!番組の中でご紹介します。皆さんが“大切にしたいもの”は何かお教えください!
2月 10, 2008 at 09:03 午前 | Permalink | コメント (6) | トラックバック (0)
ヨミウリ・ウィークリー
2008年1月24日号
(2008年2月9日発売)
茂木健一郎 脳から始まる 第91回
弱さこそが強さになる。
抜粋
その「プログレス」のプロデュースした武部聡志さんが番組のゲストとしていらした。
(中略)
「その歌手の弱さが最大の強さでもあり、魅力なんですよね」
と武部さんは言われる。歌い手の力を本当に引きだそうとしたら、その人の人生の喜びや挫折、コンプレックスのようなものに向き合い、それと寄り添うことが必要になるというのである。
(中略)
弱さを守ってあげることがやさしさだと思いがちだが、本当のやさしさとは、「弱さ」が「強さ」になるということを知っていることではないか。本当のやさしさを発揮するためには、弱さに正面から向き合わなければならない。それが、自分の弱さであっても、他人の弱さであっても。
全文は「ヨミウリ・ウィークリー」で。
http://info.yomiuri.co.jp/mag/yw/
2月 10, 2008 at 07:59 午前 | Permalink | コメント (2) | トラックバック (0)
横浜にて講演会。
夢を持ち続けることの意味、
その方法からスタートして、
オープンエンドな学びへと
話を進めていった。
講演会のアレンジをして下さった
市川重樹さんから、
浜田真理子さんのCDを頂いた。
http://www.beyondo.net/mariko/
「住吉美紀さん、知り合いなんですよ」
「えっ、そうなんですか」
「ええ、浜田真理子さんのコンサートにも
来て下さって」
みなとみらいには、冷たい
風が吹いていて、
人々が歩くそのリズムが
いつもに比べるとスタッカート
であるようだった。
子どもの頃、母親に連れられてスケート
教室に通ったことがある。
早朝、仕立てられたバスに乗って
スケートリンクへ向かった。
車窓から朝焼けが見えたように
記憶しているから、よほど早かったの
だろう。
足下がぐらぐらして、
一歩も歩けないところから始まった。
フィギュア・スケートを
履いて、くるくる回って、
すぐにすってんした。
あの時の大地が揺らぐような
感覚こそが、新しい世界への
パスポートだった。
寒さの中を行き交う人の
リズムはスタッカート。
初めて履いたスケート
靴はぐらぐら、すってん。
一日のうちに、いろいろな
リズムがあると良い。
我を忘れてフルスロットルで
疾走する「フロー状態」
だけではなくて、
ぐらぐらのぎこちなさをこそ、
一日のうちで必ず持つべきなのだ。
2月 10, 2008 at 07:52 午前 | Permalink | コメント (3) | トラックバック (4)
2月 9, 2008 at 11:00 午前 | Permalink | コメント (2) | トラックバック (0)
ちくま新書
茂木健一郎 『思考の補助線』は増刷(2刷、累計4万部)
となりました。
筑摩書房の増田健史さんからメール
です。
茂木さま
お世話になります、ちくま増田です。
さて早速ながら、お蔭様をもって、
ちくま新書『思考の補助線』の重版が決まりまし
た。
この電光石火の増刷をうけ、茂木さんにお伝えしたい
言葉はもちろん沢山たくさんある
のですが、また、いずれお会いした折にでも。
増田健史
2月 9, 2008 at 10:54 午前 | Permalink | コメント (2) | トラックバック (2)
変化への胎動というものは
気付かないうちに、深い
ところで少しずつ
進行している。
アンドレイ・タルコフスキー
の名作『惑星ソラリス』。
巨大な水の塊が
人間の意識に感応して
姿を変える。
私たちの身の回りには、
明示的にそのような変貌を見せる
ものはないけれども、
目には触れない脳髄内部の
無意識の潮流の中では、
常に渦が巻き、よみがえり、
風が吹き、そして気が付くと
どこか遠くへと運ばれている。
新幹線で京都へ。
関西経済連合会及び
関西経済同友会主催の
「第46回関西財界セミナー」で
お話する。
講演を前にして、ホワイエで
コーヒーを受け取り、
庭に出る。
京都国際会館は大谷幸夫さんの
設計。
丹下健三さんとずっと
いっしょに仕事をしていた
人だけに、確かに、かの人の
風情を感じさせる。
コーヒーカップを手に
ゆらゆらと歩く
そのような時間に、
自らの内なる「ソラリス」
ともっとも近しく
対話をしているように
感じるのだ。
「2月の京都はいかがですか?」
「一年でいちばん空いてますよ。
なにしろ、京都は寒いですからなあ」
「それじゃあ、案外来るのには良い時期かも
しれませんね。」
「そうですねえ。余り知られていない
素顔が見られるんじゃないですか。」
いずれにせよ、私はとんぼ返り、
日帰りなのである。
N700に当たった。
座席の電源コンセントに入れると
大いに安心する。
白いものがちらつく空気の
中を、時速300キロで鉄の
かたまりがつらぬく。
ボクの無意識の中にも、
新幹線のようなものはあるだろう。
大いなる山もあるだろうし、
海もあるだろうし、
とにかく人間を人間たらしめる
ものは
一通り揃っていることだろう。
朝日カルチャーセンターの
後、懇談をしていると
増田健史がきた。
タケチャンマンはふふん、ふふんと
歩きながら、ソラリスの海に
現れた巨大な赤ん坊などではなく、
ぴったりと人間のサイズをしていた。
私たちの仲間が人間の大きさ
でいるというのは、
なんとうれしいことだろう。
2月 9, 2008 at 10:47 午前 | Permalink | コメント (5) | トラックバック (4)
朝日カルチャーセンター 脳と心を考える
本日第2回
脳の働きは、長い進化の過程で徐々に形成されてきました。脳を理解することは、すなわち「生きる」ということの本質を明らかにすることです。生命とは何でしょうか。感じること、考えることは、生きることとどのように結びついているのでしょうか。4回目には、心の問題から社会現象まで、広く鋭い視点でとらえる解剖学者の養老孟司先生をお迎えし、脳と生命の関係に迫ります。
2008年 1/18、 2/8、 3/14、 22
金 18:30~20:30
3/22は 土 14:00~16:00
http://www.acc-web.co.jp/sinjyuku/0801koza/A0301_html/A030101.html
2月 8, 2008 at 09:02 午前 | Permalink | コメント (2) | トラックバック (1)
日刊スポーツの井上真さんに
お目にかかる。
日本が4−1でタイを下した
ワールドカップ第3次予選
第1戦に絡んで、
岡田武史監督の指導者としての
ユニークさ、これからの戦い
ぶりについて。
「茂木健一郎の岡ちゃんをKNOW」
というタイトルで、
本日(2008年2月8日)付の
日刊スポーツに掲載される予定。
ここのところ、かつての青春ドラマを
DVDやyoutubeで見ていて、
ぼく自身も中、高とずっと運動部だったことも
あり、
(大学から「でぶ塩」=塩谷賢に会って
軟弱になったのだ。しかし、
時々まだ今でも走っているゾ)
何となく体育会系がゆかしい。
明日(2008年2月9日)
放送の『世界一受けたい授業』
で使いたいということなので、
竹下美佐さんに、中学の水泳部で
200メートル平泳ぎに出た頃の
写真を送った。
椎名誠さんに会う度に、発作的に
腕立て、腹筋を200回ずつやるのだと
決意するが、長続きしたためしが
ない。
スタジオで、
有吉伸人さんに、「今、日刊スポーツ
のヒトに会って来ました」
というと、有吉さんは
「茂木さん、今度、日刊スポーツに
サッカーのコラムが出るでしょ」
と言う。
あらら。なんで、そんなことを知っているのか。
「ボクはサッカー好きだから、それくらいの
ことはチェックしているのですよ。」
『プロフェッショナル 仕事の流儀』
の収録。
繊維機械をつくり、地場産業を
立て直す片山象三さん。
片山さんは
男の中の男だった。
青春ドラマと言えば、
有吉さんが先日打ち合わせの時に
見せた表情が「夕陽に向かって走れ」
っぽかった。
有吉伸人は男である。青春真っ直中である。
夢はでかい方がいい。
それは、つまり、物事を
知らないばかということだな。
知識や経験において
子どもが一番ばかならば、
ボクは思い切りばかになるぞ。
ぐるりと螺旋階段を一周して、
もとに戻ってばかになるぞ。
そうだ、今度こそ、
椎名誠を見習って腕立て腹筋200回ずつ
貫徹するぞ。
クオリアの問題を解くぞ。
思い切りばかになるぞ。
そんでもって、収録が終わり、
打ち上げが終わった後で、
ボクは有吉さんと二人で
ばかになって
NHKの近くの「S」で飲みました。
ばかイニシエーション、完了。
2月 8, 2008 at 08:58 午前 | Permalink | コメント (8) | トラックバック (3)
「母の友」2008年3月号
http://www.fukuinkan.co.jp/magadetails.php?goods_id=20406
書評『生きものの流儀』日高敏隆著、岩波書店刊
「生きるための『イリュージョン』」
茂木健一郎
福音館書店の高松夕佳さんからのメールです。
茂木健一郎先生
さて、先生の書評ご連載最終回を掲載した「母の友」3月号が
発売になりました。
2年間本当にお世話様になり、ありがとうございました。
先生のご紹介くださった10冊の本は、いずれも
生きていることの不思議、世界の美しさを感じさせながら
今の自分のあり方を顧みさせてくれるような、
物事を深いところから気づかせてくれるような
すばらしい本でした。
毎日忙しいお母さんたちにとって、ご紹介くださった
ような読み応えのある本と向き合うのは、易しいことでは
なかったと思います。
でも、先生のご書評には、つねに子育ての
始まりという人生の重要な時期にいるお母さんたちへのエールが
溢れていて、お原稿をいただくたびに、あたたかさと
身の引き締まる気持ちに包まれるのでした。
ご連載終了は寂しいですが、今後とも、
どうぞよろしくお願いいたします。
高松 夕佳
福音館書店 母の友編集部
高松さん、こちらこそありがとうございました。
高松さんを中心とした
「母の友ブログ」
が面白いです!
2月 7, 2008 at 09:43 午前 | Permalink | コメント (3) | トラックバック (1)
『となりのセレンディピティ』 第3回
文藝春秋 CREA 2008年3月号
http://crea.bunshun.jp/feature/0803/index.html
クレア編集部の方々によるブログが面白いです!
2月 7, 2008 at 09:02 午前 | Permalink | コメント (2) | トラックバック (0)
対談
「小林秀雄」とはなにものだったのか
橋本治×茂木健一郎
文藝春秋 文學界 2008年3月号
p.130~155
http://www.bunshun.co.jp/mag/bungakukai/index.htm
2月 7, 2008 at 08:55 午前 | Permalink | コメント (1) | トラックバック (0)
駅などで階段を登っているとき、
足を交互に踏み出してオイッチニ
オイッチニと歩んでいるうちに
なんだかおかしくて仕方がなくなる
ことがある。
ボクは人間なんだな。
身体というものを持っていて、
それが自分にとっての王国なんだな。
身体という王国が無くなっちまえば、
ボクもなくなってしまうわけだから。
消えてしまうわけだから。
だから、国よりも世界よりも
宇宙よりも
何よりも自分の王国を
大切にしなければならない。
いわき市立美術館にて、
いわき市民美術展の作品を拝見し、
審査をする。
今年で37回目。
いわき市民美術館は現代アートの
収集に特徴があり、
美術展も毎年一人の審査員を
招いて全てを委ねるという
独自のスタンスを重ねてきた。
昨年いらしたのは版画家の
山本容子さんであった。
賞を選んだあと、800字の
選評を執筆する。
作品に触れた部分は次の
通りである。
齊藤弘美さんの「生家(一枚の写真より)」は、庭先で魚を箱詰めするというモティーフを扱って、奥行きのある忘れがたい印象を残す。前面で作業をする女性たちと、背景の男性たちの色彩のコントラストが効果的である。多くの人を描いていながら、構図的に破綻していない。ゲルハルト・リヒターの作品に見られるような、存在するものと過ぎ去りしものの行き交いさえも予感させる。
ダビさんの「Untitled」は、繊細な模様を描いてそれを水滴で降下させる思い切りの良い趣向に惹き付けられる。しかも、とびっきり美しいのだ。吉田重信さんの重陽は、現代美術に不可欠な批評性における国際水準の作り込みに成功した。さらなる飛躍に期待したい。
いわきの街を歩く。
いつも思うこと。
ボクが、この地に住んでいたら
どうだったろう。
ここで生活し、仕事をし、
人々と交わり、そのような日々が
重なっていったら、
ボクという人間はどのように
なって、どんな風に世界を見て
いたことだろう。
階段を上る。階段を下りる。
列車に乗る。
土浦あたりで雪が降っている
らしい、常磐線は雪に弱いから
と聞いていたが、
順調に疾走する。
もっとも、ボクは眠っていたけれども。
たどり着いた上野で、雪はむしろ
盛んに降っていた。
『思考の補助線』を読みながら
移動していた。
自著ではあるが、あらためて
ふり返ると、
たけちゃんまんセブンこと
増田健史さんには本当に良い仕事を
していただいた。
たけちゃん、ありがとうと
思っていると、筑摩書房方面から
メールが届いていた。
茂木健一郎さま
雪ですね。
ちくま新書編集部の増田です。
ところで、先ほど紀伊國屋書店をぶらぶらしていたら、
もう『思考の補助線』が並んでいました。
ふと顧みれば、茂木さんの歩みを追っかけ始めてから、
早いもので10年の月日が流れ
たという現実に、呆然としています。
この間、いろいろのご著書を拝読し、
ときには編んできましたが、(ちょっとエラそ
うな物言いをすれば)なかでも今回の
『思考の補助線』は、茂木さんの「本気」のゴ
ツゴツとした手触りが、リアルに伝わってくる感じが素晴らしい。
こういうのは、美徳ですよね。
それに比べれば、他のあれこれなんぞ、
つまらぬことにしか思えません。
まぁ、いいや。二日酔いで、いつもに増して
頭がぼんやりしているのです。
またメールします。禁煙は失敗しました。
増田健史
生きた言葉、生かす言葉は
無責任な批評の言語とは異なる。
生命一つを消滅させるのは
簡単だが、
育むのは一苦労。
ましてやゼロから作り上げる
など、人知の及ぶところではない。
育む言葉、思い以外に興味はない。
それが私の世間との付き合い方
である。
今日外を歩き回ったら、
霜柱をたくさん発見してきっと
楽しいことだろう。
2月 7, 2008 at 07:15 午前 | Permalink | コメント (8) | トラックバック (5)
PHP新書
茂木健一郎 『すべては音楽から生まれる』
は増刷(6刷、累計45000部)
が決定しました。
ご愛読に感謝いたします!
PHP研究所の丹所千佳さんから
いただいたメールです。
茂木健一郎先生
増刷のお知らせです。
『すべては音楽から生まれる』は
おかげさまで6刷が決まりました。
読者の方々と茂木先生、
関係者の方々に感謝いたします。
わたしはこの本の主要な
メッセージの一つである
「自分を鳴らす」という言葉に
非常に感銘を覚えた一人ですが、
それに加えて、最近、思うのです。
うまく鳴らせなくても、
思うように奏でられなくても、
止めないこと。
音楽を諦めないこと。
その先にしかきっと、
美しい旋律はないのでしょうから。
丹所千佳
2月 6, 2008 at 08:32 午前 | Permalink | コメント (2) | トラックバック (2)
東京工業大学すずかけ台キャンパスにて、
石川哲朗くん、野澤真一
くんの修士論文発表会が
行われる。
ふたりとも立派に発表を終える。
ぱちぱちぱちぱち。ブラボー。
学生たちはすずかけ台駅前の
てんぷら「てんてん」へ。
私は東急田園都市線で一路渋谷へ。
センター街を歩く。NHK出版の
横を通るときに、ゲンコーが
一向に来ないでどうなっているだと
思っているに違いない「怪奇オオバタン」
こと大場旦さんのことをちらりと思った。
思っていれば、必ず伝わる。
「プロフェッショナル 仕事の流儀」
の打ち合わせ。
石田涼太郎ディレクターの担当。
『福祉ネットワーク』の収録。
町永俊雄アナウンサーとお話しする。
NHKハート展に向けて。
参加者の詩にあわせて、絵を描いた。
絵にも他者にも、ゆったりと向き合うことが
大切。
じっとしているだけで良い。
やたらと動き回らなくても、
奥へ奥へと広がっていく。
ちょっと止まっていたいと
思っているのだろう。
思考の課題もまた同じである。
たとえば、「創造性」。
たとえば「自発性」。
野澤くんや石川くんの
テーマにしても、
その前で立ち止まってずっと
考えていれば、
ずっとずっと広がっていく。
2月 6, 2008 at 08:29 午前 | Permalink | コメント (5) | トラックバック (3)
プロフェッショナル 仕事の流儀
若き求道者、未到の地へ ~ フレンチシェフ・岸田周三 ~
岸田さんの料理は、「クオリアのピュアさ」
を突きつめている。それは驚くべき精密な
作業から生み出されるのだ。
岸田さんの非凡さは、自分の置かれた状況を
客観的にみきわめ、ドラスティックな決断を
下せる点にも見いだされる。
見きわめて、決断し、必要に応じて
大胆な変更を加える。
その冷静さと熱さのバランスが、
岸田さんの類い希なる食の芸術を
支えている。
これからも岸田さんの進化を見つめていきたい。
NHK総合
2008年2月5日 22:00〜22:58
http://www.nhk.or.jp/professional/
Nikkei BP online 記事
決断を支える「見極め」の潔さ
〜フレンチ・シェフ 岸田周三〜(compiled by 渡辺和博(日経BP))
2月 5, 2008 at 08:01 午前 | Permalink | コメント (3) | トラックバック (6)
とにかくもう、自分にとって
大切なことを抱きしめ、
向き合い、アクセルを踏み込んで
全力疾走していこうと思う。
100%できない場合でも、
心の中ではそれを志向する。
無理をすることは少しずつ
減らして行きたい。
メールソフト
eudoraの調子が悪く、
エラー対応のパッチをあてても
どうも直らずに、
この忙しいのに往生した。
ソニーコンピュータサイエンス
研究所でゼミ。
石川哲朗、野澤真一の二人が
修士論文発表会の練習をする。
探究の対象というものは
無限に奥深い構造をしている
のであって、
「わかった」というのは
途中の一里塚に過ぎない。
理解という準安定状態に
とどまることは、
時にさらにその先に進むことを
妨げてしまう。
仏陀は菩提樹の下で、そんな
ことをきっと考えていたのではないか。
日常は目まぐるしく動く。
神田昌典さんにお目にかかって、
お話する。
TBSにて打ち合わせ。
ドイツ大使公邸にて、
ドイツワインをより良く知るための
夕食会。
ドイツワイン基金と宝島が
共同で企画した。
久しぶりにドイツ語を話すチャンス
だった。
くつろぎ、楽しむ。
ひんやりとした庭に出た。
大事なのは、人と交わりつつ、
時にはうまく孤独になる
技術である。
その昔、
茂木さんの人生の挫折は
何ですか、と聞かれて、
「現代に生まれたことが最大の
挫折です」
と答えたら、わかってもらえない
ことがあった。
シュヴァルツヴァルトの中を
歩く旅人のように、時には
静寂の中に身を置こうと
考えていると、昔好きだった
ゲーテの詩がよみがえってきた。
Über allen Gipfeln
Ist Ruh,
In allen Wipfeln
Spürest du
Kaum einen Hauch;
Die Vögelein schweigen im Walde.
Warte nur, balde
Ruhest du auch.
しばしまて、やがて
お前も憩うのだ。
ドイツワインが憩いを助けて
くれた。
2月 5, 2008 at 07:55 午前 | Permalink | コメント (10) | トラックバック (5)
楽観主義の恵み
ヨミウリ・ウィークリー
2008年2月17日号
(2008年2月4日発売)
茂木健一郎 脳から始まる 第90回
抜粋
時には、「困った」とか、「もう駄目だ」と思うこともある。しかし、そんな場合でも、落ち込むのは一時的で、大抵はすぐに立ち直ってしまう。「楽観的」であることこそが、自分の才能の一つだと思っている。
思い起こせば、大学院で勉強をしている時、自分の将来がどうなるかなんてことは、全く見通しが付かなかった。博士号を取得してから脳科学を始めた時も、果たして将来ものになるのか、まともな生活ができるのか確信などなかった。目端の利く人だったら、もう少し実利的な職業を選んでいただろう。
それでも、常に、「根拠のない自信」のようなものがあった。時々、友人に、「お前はなぜそんなに楽観的なんだ」と皮肉られていた。しかし、何と言われても、未来は明るいと思うことが正しいのだという直観だけは揺らぐことがなかった。
全文は「ヨミウリ・ウィークリー」で。
http://info.yomiuri.co.jp/mag/yw/
2月 4, 2008 at 08:21 午前 | Permalink | コメント (3) | トラックバック (0)
雪で高松からの飛行機は
大幅に遅れた。
羽田に着陸できない場合は、
高松に引き返すか、あるいは
関空に向かうという。
飛行機が時折横に大きく揺れる。
しばらく目を瞑ってやがて
開くと、
東京湾を行き交う船が見えた。
小笠原流礼法の皆さんの会に
お呼びいただき、「他人を鏡として
自分を磨く」というお話をする。
小笠原敬承斎さんに、お目にかかる。
エンジン01の会以来。
声がかすれている。それでも、
時折大きな声が出るような気配が
することがあって、
春の目覚めのような思いになる。
時折見る夢がある。
パブリックの場で喋っていて、
声が次第に出なくなり、やがて
ささやき声になってしまうのだ。
ある時、あれは睡眠時の
motor inhibitionの結果だなと
着想してから、夢中にて、さすがにそこに
思い至るほどのメタ認知はないものの、
それほどの怖ろしさにとらわれることは
なくなった。
声がもうぎりぎりなので、
講談社の岡部ひとみさんにお目にかかる
用件はもうしわけないが先にして
いただく。
カフェにて一生懸命仕事をする。
寒いので、ジャケットの裏に
ホッカイロを張る。
隣りの席で、何やら話す人たちが
いる。
その長話が終わる頃に、ちょうど
私の仕事も一段落ついた。
丸の内の「イル・ギオットーネ」にて、
イチローさん、岡田良樹さん、
NHKの『プロフェッショナル
仕事の流儀』のスタッフで先日の
番組の打ち上げをする。
イチローさんと四方山話をして、
心から楽しかった。
努力は裏切らないものだと思う。
そして、努力はいつも地味な
ものである。
向かい続ける人だけが、
その深い喜びを知ることができる。
料理は本当に美味しかった。
お皿が重なるうちに、
「もっともっと」と食べたくなる。
シェフの笹島保弘さんにお礼を申し上げた。
一夜明けて、雪が積もっている。
たったそれだけのことで
世界が違って見えるものであるならば、
時々、人生に雪を降らせてみたい。
2月 4, 2008 at 08:16 午前 | Permalink | コメント (6) | トラックバック (6)
エスクワイアのチームと、
イサム・ノグチの
庭園美術館を見る。
人間が、たった一人で
ある「クレオール」
を代表することの難しさと
喜び。
事務局長の池田文さんに
お話をうかがう。
直島のベネッセ・アート・サイトにて、
James Turrellさん、内藤礼さん、
福武總一郎さんとシンポジウム。
喉がかすれ気味であったが、
何とか乗り切った。
内容はたいへんエキサイティングな
もので、
タレルさんの光に対する感覚、
内藤さんの言葉の持つ吸引力、
福武さんの雄大なヴィジョンが入り交じる
魂の饗宴に聴衆も酔いしれたのでは
ないかと思う。
小柳敦子さん、福武純子さん
をはじめ、たくさんの方が
いらしていて楽しく懇談する。
新しくオープンした「ビーチ」の
客室。
ラジオを
聴いていたら、ラジオ体操が
始まったので、
ひさしぶりにやってみた。
小学生の夏、スタンプを
押してもらったこと。
海が広がっている。
アートを包んで、宇宙全体へと
つないでくれる海と空が。
直島には奇跡があって、
今でも成長し続ける。
深いところから勇気がわきあがる。
雪の降り積む東京へと戻る。
目を閉じて、修理をしながらいこう。
2月 3, 2008 at 06:45 午前 | Permalink | コメント (9) | トラックバック (4)
茂木健一郎 『脳と仮想』(新潮文庫版)
は増刷(6刷、累計60000部)
となりました。
ご愛読に感謝いたします。
新潮社の北本壮さんからのメールです。
茂木様
『脳と仮想』文庫が増刷です!!
しかし、茂木さんの著作の累計部数ってどのくら
いになってるんですかね。
数えることなんか出来るんだろうか、となんだか
茫然としてしまいます。
どうでもいいことですが先日我が家であんこう鍋
にチャレンジしてみました。が、ぜんぜんおいしく
ない……。
「魚徳」の会のとき、もっと気合い入れて味を覚え
ておくべきだった……と激しく後悔するほど似て
も似つかぬものとなりました……。
北本拝
2月 2, 2008 at 07:04 午前 | Permalink | コメント (4) | トラックバック (1)
埼玉県春日部市にて、市役所の
職員のみなさんの研修会で
講演。
石川良三市長と、
特産品の羽子板をつくっている
ところを見学。
南健吾くんの展覧会にいく。
平面に関連づけて立体を
つくることで、
平面を単独で見たときと比較すると、
残像のようなものが
こころに刻まれるのである。
高松へ。
移動中、学生の書いた英文
アブストラクトを読みながら
ひたすら、いろいろ考える。
ある言語を習得するとは、
つまりは、文章を読んで
よい悪いという感覚的判断ができ、
今度は自分の意に染むような
文章を出力できる運動系を
持つことであろう。
だとすれば、言語習得は
音楽の修練に似ている。
吸って、吐いて。
吸って、吐いて。
リズムの中でやりとり
される言葉の中に、次第に
宇宙が定着されていく。
エスクワイアの取材で、
和田京子さんに対して
「美術館」についての思いを
語る。
講演会の時からそうであったが、
喉がどうもやられてしまった。
それでも、声を張り上げて頑張る。
のど飴をいただいた。
男はハカではなくヒリである。
『俺たちの旅』のDVDを最近
買った。
「やるせなさ」について考える。
皆さん、最近たまには
やるせなくなっていますか。
2月 2, 2008 at 07:01 午前 | Permalink | コメント (9) | トラックバック (5)
南健吾展
昨年、私も審査員として参加した
東北芸術工科大学の卒業制作展の
コンペで見事グランプリを獲得した
南健吾くんの個展が
2008年2月2日まで
銀座で開かれています。
http://geiriki.com/ten/detail.cgi?id=10007569
2月 1, 2008 at 10:47 午前 | Permalink | コメント (0) | トラックバック (0)
新潮新書 『ひらめき脳』は増刷(24刷、累計111000部)
となりました。
ご愛読に感謝いたします。
新潮社の金寿煥さんからのメールです。
茂木様
ひらめき脳が増刷、24刷 111000部となります。
しかし、PHPに比べて雀の涙、
トップセラーの座を滑り落ちた新潮社担当として、
嬉しい反面、一抹の寂しさを感じる次第でございます。
(これだと、ブログに引用できませんね)。
新潮社 金寿煥
2月 1, 2008 at 08:23 午前 | Permalink | コメント (0) | トラックバック (0)
朝早く渋谷へ。
雑誌「DIME」のキーパーソン
インタビュー。
編集部の藤谷小江子さん、
ライターの佐藤恵菜さん、
カメラマンの高仲建次さん。
もともとはPHP研究所の
木南勇二さん、丹所千佳さん、
横田紀彦さんがアレンジ下さったのである。
大場葉子さんから、大場旦さんの
近況をうかがう。
「茂木さんとは、原稿だけの
つながりではないですから」
と大場旦さんは言っているらしい。
原稿が一向に進まなくて、
すみません。
近くへ移動。
ラグビー、ニュージーランドの
名門All Blacksの元選手であり、
現在は日本代表チームのhead coachである
John Kirwanと対談。
「アタマの中身が70%ラグビーで
出来ている男」花野剛一さんが
撮影する。
ラグビーマガジンの田村一博さん。
ジョンは、「ラグビーは、接触の
あるチェス(chess with contact)だ」と言う。
身体的な接触をともなう
激しい「格闘技」であると同時に、
計略を練り、瞬時の判断をする
高度なインテリジェンスを
必要とする。
肉体から知性まで。
いわば、人間という存在の
「全ダイナミックレンジ」を使う
のである。
「白か、黒か、とわかるような
時に判断をしても、面白くない」
とジョンは言う。
「グレーのゾーンでいかに判断するか、
そこに本質的な問題がある」
日本選手に「グレーゾーン」で
判断することを推奨するため、
ジョンは、「答えのない質問」
(open-ended question)を選手たちに
投げかけるのだという。
「こういう時はどうすると思うか?」
「どう考えれば良いか?」
と問いかけ、その答は与えない。
そのような宙ぶらりんの状態に
選手たちを置くことで、
自ら判断し、選択する力を養う
のだというのである。
John Kirwanと。
ジョンは素敵な人だった。
試合を見に行くことを約束する。
対談は、ラグビーマガジンの別冊に
掲載される予定。
外に出て、通りでジョンと撮影を
していると、筑摩書房の
「たけちゃんまんセブン」こと
増田健史がやってくるのが見えた。
NHKに向かって一緒に歩く。
「茂木さん、今の、ひょっとしたら
ジョン・カーワンじゃないですか?」
「よくわかるねえ」
「ぼくは、何を隠そう、ラグビーおたく
なんですよお」
たけちゃんに、『思考の補助線』
の見本をいただく。
「3000部しか売れない原稿にしましょう」
とたけちゃんと誓って
筑摩のPR誌「ちくま」に連載した
原稿が、やっとちくま新書となった。
「予定通り、3000部しか売れない
ですかねえ」
「それが、30000部も刷っちゃった
んですよお」
一桁、予定が違った。
だとすれば、少しは売れないと
たけちゃんは困る。
「3000部しか売れない」
と言ったのは、とくかく剛速球を
投げようと思ったからである。
人間が心脳問題を解こう
とすることは、空に向かって
石を投げるようなことなのかもしれない。
ロケットのように、全く違った
原理のなにものかを導入しなければ、
存在の引力圏を脱することは
できないだろう。
西口玄関で見本をいただく。
たけちゃん、本当にありがとうございました。
「どうつかうかわからないけれども、
手書きで宣伝文句のようなものを
したためてくれ」
というので、いっぱい書いた。
オールブラックスが
試合前にやるマオリの戦いの踊り
「ハカ」
にリスペクトを払って、
「男はハカ。」
もいれた。
たけちゃんが「書け」「書け」
というのである。
本当は、濁点がつくのであろう。
男というものは、本当にハカだねえ。
2月 1, 2008 at 08:13 午前 | Permalink | コメント (10) | トラックバック (5)
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