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2008/01/07

おいしそうにコーヒーを飲んだ

何か障害がある時に、
それを友人相手にこぼすことは
愉しいことである。

「バカな○○が邪魔をするんだよ。」
「そもそも、○○っていうのはさあ、
そういうことはできないようにできている
んだ。」
「予算がないからね。」
「そんなことをしても、おそらく、
この日本の現状では、受け入れられないよ。」

友人は、うらみつらみを聞いてくれる
すばらしい吸収壁である。
しかし、それでは世の中は変わらない。

ロミオとジュリエットの恋愛では
ないが、
障害が高いほど理想に燃える
ということがあっていいはずだ。

信じること、愛するものがあるん
だったら、世間の障害など問題に
せずに、できることを何でも
やったらいい。

その風車に向かうドンキホーテの
ような姿に、人々は拍手喝采、
少なくとも温かい気持ちで哀れんで
くれるはずだ。

横浜美術館へ。

キュレーターの八柳サエさんと一緒に、
開催中のGOTH展を見る。

 リッキー・スワロー、ドクター・ラクラ、
束芋、イングリッド・ムワンギ・ロバート・ヒュッター、ピュ〜ぴる、吉永マサユキ
の6人(組)の作品が展示される。
 
 Dr.ラクラは、昆虫の身体の
一部を用いて人間の顔を構成した
作品や、日本滞在中に漫画や雑誌に
取材して描いた巨大なドローイングなど、
質・量ともに充実した作品群で
圧倒された。

 リッキー・スワロー、Dr.ラクラ、
イングリッド・ムワンギ・ロバート・ヒュッター
といった海外の作家を、
 吉永マサユキさんの撮影した
日本のゴシック・ファッションの少女
たちの写真から想起される
日本の「ゴス・ロリ」ブームと
比較すると、相違点が感受される。

 伝わってくる世界観が異なる。

 神や宇宙といった大文字の概念に
言及するかどうかは別として、
 大澤真幸さんの言われる
「第三者の審級」のありかたが
違う。 
 そのことは、
イングリッド・ムワンギ・ロバート・ヒュッター
による、人間の肉体だけを使った
そぎ落とされた表現との対照において、
すでに明らかではないか。

 日本のゴスロリ・ブーム
から見えてくるのは、ひとことで
言えば「第三者の審級」
の衰退である。

 それは、ピュ〜ぴるさんの
作品の自己言及的な表現においてより
明示的。
 すぐれて現代的な精神風土
の姿がそこにある。
 
 ところが、「現代」という
やつは、それぞれ少しずつ異なる
風貌を見せて、世界各地を闊歩
しているらしいのだ。

 一方、束芋さんの作品は、
「束芋宇宙」としかいいようのない
独自の存在感を持っている。

 生きている現場における、
潜在的な死との絡み合い。
 その「きわ」において
繰り出される舞踏こそが、
実は私たちの生命の頂点
そのものであることを
悟らされるのだ。

同時開催の
コレクション展も見る。
ボクは恋してしまったよ。
セザンヌの筆のタッチと、
そしてフランシス・ベーコンの
人間の「魂」の造形に。

八柳さんとカフェでカツサンドを
食べていると、
GOTH展を企画したキュレーターの
木村絵理子さんがいらした。
さまざまな疑問について、
ダーッと質問する。

束芋さんの「ギニョる」は、
プロジェクター6つで円形に投射
されていて、それを下で寝ころんで
見たのだった。
昔カナダのバンフで見た「全天空型」
のオーロラを思い出したのだった。

つなぎ目が見えない、あれは
どうやっているのかと木村さんに聞くと、
ちょっと画面の周辺をぼかして、
照度を1/2にしてつなげている
のだという。

なるほど! と感心する。
実際に見ると、本当にうまくできて
います。
皆様、ぜひ横浜へ。

カツサンドが胃袋の中に
消えかかった頃、
キュレーターの松永真太郎さん、
大塚真弓さんがいらっしゃる。

「ぼくは弁当を持ってきたんだけどなあ」
と言いながら、
松永さんがおいしそうにコーヒーを
飲んだ。

八柳さん、松永さん、大塚さんに
いろいろな作品を見せていただく。

最初は漠としていたまぼろしの
ようなものの姿が、
少しずつ見えてきた。

The three curators.

竹内薫と合流。

久しぶりのツーショット。
八柳さん、大塚さん、松永さんも加わり、
美や人生について語り合った。

4月が来ると、
もう竹内とは25年も一緒に
いるんだなあ。

心を込めるべき仕事と、美味しいお酒と、
愛と、素敵な音楽と、魅入られる美しい
光景と、そして永き友情があればそれで
もう人生はいい。

他には何もいらないヨ。


わが友、竹内薫と。

1月 7, 2008 at 09:47 午前 |

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コメント

おはようございます。

価値を見出すキュレーターは、
新しい芸術家だと思いました。

興味がわいたので、
さまざま調べてみようと思います。

---------------
以前、
ぼくのブログで
茂木さんの本を引用させてもらいました。

きのう、
文学について考えていたら、
時間に飛び火して、
脳にまで手を出すことに
なってしまいました。

茂木さんの「脳とクオリア」を
読んで、勉強したくなりました。
参考にさせていただきます。

そのエントリ:
http://anta-to-watashi-no.blogspot.com/2008/01/42.html
 貼り付けスミマセン(**)

投稿: Aoki* | 2008/01/08 5:13:28

昔から原宿には時折出かけることがある。で、通りを歩いている人々の流れを見ていると、流れの中の数人かはその「ゴスロリ」ファッションに身を固めてやってくる少女たちだった。

つい最近も、かの地へと足を運んだけれど、ゴスロリ・ファッションで歩いている少女たちは少なくなっていた。

ゴスロリブームも、終わりに近づきつつあるのだろうか。

けれども、彼女らの胸の中にも、ゴスロリスタイル以外にも、本当に自分達が心から信ずるもの、愛するものは、きっとあるはずだ・・。


それにしても現代(もしくは世間)というものは、なんともやもやした、得体の知れないものなのだろうか。

あちらを見ても、こちらを見ても、まさに障害だらけ。でも、そんな障害を気にして、負けてばかりはいられない。

とにかく、燃えるような情熱をもって、立ち向かっていくしかない、と思っている。


竹内さんとのツーショット、お二人の姿に「友情」というものの、ひとつの美しい姿をみたような気がします。

お二人の、友情の絆が、何時までも永遠でありますように…!

投稿: 銀鏡反応 | 2008/01/07 23:41:51

こんばんは。
「他には何もいらないヨ。」
この一言の中には、数え切れないほどの思いが込められているんでしょうね。
素敵な言葉だなぁと、改めて思いました♪

投稿: かおり | 2008/01/07 23:15:59

ていねいな生活。

個々のクオリア。
同じ思いと同じ方角。見つめつづける先には、連鎖反応が起きて大きなエネルギーに。


本日、クオリア日記。の最後には、
そして甘いスイーツもつけくわえたい。

溢れすぎるモノへの興味はなく、丁寧にむきあうものは少しだけでよい。
のんびりそんな風に思う。

ていねいにコーヒーをいれた。
おいしい。

投稿: 美容師 | 2008/01/07 22:31:33

思い起こせば5年前、
僕は竹内薫さんのサイトを通じて
茂木さん、そして「クオリア」を知りました。

心脳問題にガチンコで体当たりしている人がここにいる!
なかなか衝撃的でした。

夜の街をバックにワイングラスがふたつ、
そしてなんかフシギなオジサンがふたり...
イケてます。


投稿: zitterbewegung | 2008/01/07 21:46:57

心を込めるべき仕事と、・・・・・
そして永き友情があれば・・・
そうですね。
他には何もいらない。
いい写真ですね。

投稿: かなえ | 2008/01/07 19:46:23

こんにちわ

以前、茂木さんのブログに竹内薫さんのブログのリンクが張っていたので、竹内さんのブログをお気に入りに入れて、時々見ます。焼酎にビールを入れたような、竹内節が面白いです。(^^)


ところで、ドンキホーテが、空気を読めたら、すごい人になっていたような気がします。(^^)

投稿: ドンキホーテのクオリアby片上泰助 | 2008/01/07 18:44:49

楽しいこと が、起こる、のじゃなくて、
自分で作るものだよ、
でも、それ むずかしい。。。
茂木博士のお話をきいていたら、いつのまにか、
楽しいことや好きなものが ふえていった。
今年は、展覧会やお芝居など、できるだけたくさん
出掛けていきたいと思います。。

投稿: F | 2008/01/07 14:44:04

なんだかよく分からないけどためになりました。

投稿: 彩乃 | 2008/01/07 12:47:04

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