« 生の体験が子供はぐくむ | トップページ | プロフェッショナル 仕事の流儀 イチロー・スペシャル »

2008/01/02

「風の前の塵に同じ」

本当に久しぶりに10時間くらい
眠った。
 いやあ、人間というものは、
眠る気になれば眠れるものですネエ。

 元旦。近くの公園を初走り。
 小学生のときは真冬だろうが
なんだろうが半袖、半ズボンの体育着で
駆け回っていたものだが、
 最近はさすがに長袖である。

 しかし下は、やはり膝上までの
ものがいい。
 寒風の中、枯葉の積もった斜面を
駆け上がると、次第に別の生きものに
なっていく実感がある。

 小学1年生の頃から、朝誰もいない
校庭を走っていたりしたから、
 おそらく私は走るということが
好きなんだろう。

 本を読むのも好きだったが、
かけっこをすると、
座ってじっと観念の世界に遊んでいる
自分と別の自分になることが
できる、その変貌の感覚を好んで
いたのだと思う。

 年賀状を書いて、投函する。
 本来は前年度末に書くべき
ものなのだろうが、
 「明けましておめでとうございます」
という文意はこちらの
方が正直のような気がする。

 年頭だからと言ってとりたてて
特別でなければならないという筋合い
はないが、思いはある。

 昨年、伊藤若冲の『動植綵絵』が
相国寺で一挙公開されたときにじっくりと
拝見した。

 釈迦三尊像を中心に、生きとし
生けるものの姿をありありと
描いた入魂の作品。

 かけた時間も、投じたエネルギーも、
膨大なものだったことだろう。

 若冲は他にも枡目描きの「鳥獣草木図絵」など
多くのすぐれた作品を残している。
 しかし、若冲を若冲たらしめているのは
やはり今は宮内庁所蔵の御物となっている
 『動植綵絵』であり、
 『動植綵絵』という「乾坤一擲」が
あればこそ、他の作品も、「『動植綵絵』
を描いた若冲による」ということで
生きてくる。
 
 もし、『動植綵絵』という芯が
なければ、若冲は器用に奇想をもって
生きものたちを描いた不思議な画家という
だけにとどまり、私たちの認識の中に
おいて今日のような特別な地位を占めるという
ことは難しかったのではないか。

 私自身をふり返れば、随分いろいろな
ことをやっているけれども、
 やはりライフワークは「クオリア」
を中心とする心脳問題であり、
 この掛け値なしに難しい、しかし
深い問題をきちんとすることが
一番大切である。

 「クオリア」問題で実質的な
貢献ができれば、
 今やっている様々なことは
生きてくるだろう。
 そうでなければ、「風の前の塵に
同じ」である。

 自分のありったけの努力を注ぎ込んで、
それでもできるかどうかわからないことを
こそ目指さなければならない。

 子どもの頃は、土の上を歩いていると
霜柱を踏む感触がしたものだが、
最近は絶えて久しい。
 しかし、日影になっている
ところなどを丹念に探せば、
ひょっとしたら見つけることが
できるかもしれない。

 霜柱をぐしゃっと踏むあの感覚が、
至上の贅沢であるように思える。
 今日は公園を走りながら
探ってみようと思う。

1月 2, 2008 at 07:59 午前 |

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「風の前の塵に同じ」:

» 雪の中の少年に トラックバック 須磨寺ものがたり
生の体験が子供はぐくむ 脳科学者 茂木健一郎さん、 聞き手 橋本五郎特別編集委員の、 対談の一部をYOMIURI ONLINEで読んだ。 [続きを読む]

受信: 2008/01/02 11:20:13

» ある異常 トラックバック Tiptree's Zone
 彼の名は千葉仁司。年齢は二九歳。現在の日本の首都であるネオ神戸に位置する、あるマンションに自宅兼オフィスを構える生活を送っていた。仕事は出版業。営業、編集、時には取材まで全て一人で営んでいた。収入はそれほど恵まれているものではなかったが、フリーランスと....... [続きを読む]

受信: 2008/01/02 12:17:06

» 新年の波が地球を駆ける トラックバック この地球を受け継ぐ者へ † Life log
この冬一番の冷え込みらしい。そんな日で新年が明けた。 皆様、お元気でしょうか。 日付変更線の関係で、世界一早く夜が明ける国はキリバス共和国 。 キリバス共和国からニュージーランド、オーストラリア、そして日本へ。 次々に新年を迎える人々の声がそれぞれ... [続きを読む]

受信: 2008/01/02 16:22:54

» 「若冲展」をみる トラックバック Art- Mill  あーとみる
展示室は二つ。第一室は水墨画や書を中心とした構成。第二室は「釈迦三尊像」と「動植綵絵」の構成。 今回初めて若冲の書を見た。生真面目であり、直線的で一つ一つ丁寧に書く姿 [続きを読む]

受信: 2008/01/02 17:05:53

» 物語 トラックバック Tiptree's Zone
時は二〇九五年。 物理学の究極理論は既に発見されており、また、その世紀の前半から後半にかけて起こったテクノロジーの爆発的進展と、新たな経済理論の発見により、全ての人々は物質的には完全に満たされた生活を送っていた。サイエンスにおいて未だ発見されていないもの....... [続きを読む]

受信: 2008/01/03 1:51:18

コメント

こんにちわ、二度目の投稿失礼します。

台風は、地球全部の大気の影響を受けて、移動します。でも、完全に予測不可能ではありません。

意識も、無意識、知覚、記憶で入るものすべて影響を受けます。たとえば、東大を目指す学生がいて、先生から「キミの調子で行けば東大を合格できる。」と言われ、やる気が増して、東大に合格する。一番大きいのは本人の努力ですが、もし、先生の言葉が無ければ、合格していなかったと思うかもしれない。でも、聞かなくても、合格していたかもしれない。逆に「このままでは合格しない。」と聞いてても合格していたのかもしれない。

台風と同じで、意識はすべての影響を受けるが、ひらめき等特殊な場合を除き完全に予測不可能ではない。

この問題は、予測を予測する等等、もっと深そうなので、もっと考えてみます。

投稿: 台風とクオリアby片上泰助 | 2008/01/03 4:42:32

こんにちわ

霜柱を踏むのは楽しいですね、子供の頃、見つけては、よく踏んでいた事を思い出しました。

最近、意識と台風を関連付けて考えています。台風の進路を人工的に変えた場合、どのぐらい影響があるか、完全にシミュレーションできる、コンピュータが必要なことです。
意識が、完全にシミュレーションできないと、あることで意識にどのぐらい影響があるか分からない感じがします。

この問題は、予測と選択と関係しているようなので、もう少し考えてみます。(^^)

投稿: 霜柱のクオリアby片上泰助 | 2008/01/02 19:52:30

明けましておめでとうございます。
新年早々に茂木さんが若冲さんについての文を書かれているので、去年の文ですが私の感想をトラックバックしました。

一日付けの京都新聞に掲載された茂木さんの「凝縮から拡散愉しき春へ」という文を読みました。新春にふさわしいのびやかな文章を読み晴れやかな気分です。「寒さに身の引き締まる新年」と書かれていますが、ほんとに元旦にふさわしい言葉です。京都も急に冷え込こんで、身が引き締まります。

今晩の「イチロウさん」が愉しみです。私流の解釈ですが、イチロウさんの「苦悩の美学」が好きなんです。苦悩するからあれだけ精魂を込める事ができると思っています。どんな会話がなされるか期待大です。

投稿: 欅屋長衛門 | 2008/01/02 17:32:45

あけましておめでとうございます。
「動植綵絵」というのですね。素敵ですね。日本にいながら日本画をほとんど見に行ったことがありません。
 1日の朝は、自宅から富士山が見えるのですが、東から初日をおがみ、西から富士山を眺めました。階下を白いジャージで走っている方や散歩をするご夫婦の姿が見え、「平和だなぁ」と長閑な気持ちになり、温かくなりました。
 イチロー密着取材のOA、愉しみにしています。
 また今年も茂木さんのご活躍を愉しみしています。
 頑張ってくださいね *'ー'*。°。♪

投稿: 才寺リリィ | 2008/01/02 12:48:53

若冲だのダ・ヴィンチだのとなると
崑崙に棲むという仙人やオリュンポスの神のよう。
圧倒されて批判めいたことは何も言えなくなります。

「ありったけの努力を注ぎ込」む、そんな自己に対する
攻撃性を尊敬します。

美術館や展示会、もっとゆっくり眺められるつくりに
なっていたらいいのに。
作品と一対一で対峙する「私秘的」な空間や時間なんて
とても望めなくて「ハイ、次!」「ハイ、次!」って。。。

ん?ボトムが膝上??

投稿: murr | 2008/01/02 12:07:25

 明けましておめでとうございます

 
昨年はNHKの『プロフェショナル』、書籍
クオリア日記と大変楽しませていただきました。
ありがとうございました。
引き続き、愛読、視聴させていただいております。

霜柱とは、本当に懐かしい響きです。
子どもの頃を思い起こします。
忘れてしまいそうな子供のこころの視点を
いつまでも脳の宝箱に大切なおもちゃのようにしまってあって
時々取り出すところが
茂木先生の素敵な所ですね~☆

いつも微笑んでしまいます。
本年もよろしくお願いします~☆

投稿: tachimoto | 2008/01/02 12:00:34

元日から元気に走られる茂木博士。本当に穏やかな新年第一日でしたね。

最近は温暖化の所為か、霜柱とは随分御無沙汰。

うちの近所でも、日陰などに回ってみるが、それらしき土中の氷の柱は見え無さそうだし…。

そのかわり、自宅の裏庭とか、街の路地には、雑草のロゼットたちが、元気に青々とした葉を広げている。


日々の生活にどれほど追い立てられていても、自分なりの「命がけ」な課題を常々、忘れないようにして生きていきたい。

投稿: 銀鏡反応 | 2008/01/02 11:04:22

コメントを書く