洞窟にひっそりと咲く
たくさんの人々が行き交う
場所には、独特の風情がある。
インターネットの発達に伴い、
ウェブ上に不特定多数の目に触れ、
人々の観察、批評に
さらされ鍛えられる数多の
表現があふれ出るようになった。
一方で、誰の目にも触れずに
包まれてあるものもある。
そのような私秘的な領域は、
保たれなければならない。
そうしなければ育まれないものも
ある。
足で踏みつけられ、小突かれ、
弄られて鍛えられるものもあるが、
誰の目にもさらされることなく
ひっそりとあって初めて
育っていくものはあるのだ。
例えば、岩窟に囲まれた山中に
密かに生える木々やシダや
その中を飛び交う蝶たちが
醸し出す気配のように。
沖縄県産業振興公社主催の
『沖縄イノベーションフォーラム2008』
に参加する。
「脳と創造力 イノベーションの流儀」
というテーマで講演する。
続いて、パネル・ディスカッション。
平澤之規さん、伊波匡彦さん、
稲福直さん、下地明和さん、
西本一郎さん。
西本さんの見事なコーディネーションで
話が弾んだ。
会場で、佐喜眞保さんに
お目にかかる。
『プロフェッショナル 仕事の流儀』
の収録でお話して以来。
佐喜眞さんは、底知れぬ苦労を
通ってきた人だけが放射することの
できるあふれるばかりの笑顔を
見せた。
笑顔は、その人の心の中の
洞窟にひっそりと咲く蘭の
花に由来する。
普段は預かり知れぬ奥底の
消息を伝えてくれるからこそ、
心を動かされるのだ。
1月 30, 2008 at 08:13 午前 | Permalink
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この記事へのトラックバック一覧です: 洞窟にひっそりと咲く:
» 静岡がんセンター内視鏡科部長 小野裕之医師 トラックバック 御林守河村家を守る会
その人がどれほどの方か
私は全く知らずにいた。
一昨年の秋、
早期癌の告知を受けて、
小野先生にすべてをお任せした。
たしかに
京都大学で遺伝子研究に携わっている
教え子の医師・藤田陽太博士から、
是非小野先生を、というお薦めはあった。
しかしその時点で、
... [続きを読む]
受信: 2008/01/31 5:01:42
» 沖縄イノベーションフォーラム2008に参加しますた。 トラックバック 沖縄からヨッシャー(=^^)9
昨日なのですが、沖縄イノベーションフォーラム2008 (「脳と創造力 イノベーション流儀」)に参加してきました!沖縄県の産業振興公社が主催で後援に沖縄の錚々たる(そうそうたる)顔ぶれの企業さんが並んだフォーラムです。僕は基調講演として、脳科学者 「 茂木健一... [続きを読む]
受信: 2008/01/31 7:58:59
» 茂木健一郎さんの講演を聴きました! トラックバック やむやむ
1月29日、沖縄県産業振興公社が主催した
『沖縄イノベーションフォーラム2008』へ行ってきました。
人混み嫌いの私が、なぜ?
それは、脳科学者・茂木健一郎さんの基調講演があったから!
■茂木健一郎 クオリア日記/洞窟にひっそりと咲く
この日のテーマは、「イノ...... [続きを読む]
受信: 2008/01/31 18:02:17
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コメント
1月30日のMizunoさま、
とても、きれいな考えで、
みなさん素敵な方ばかりですけど、
あんまり、きれいだったので、
なんども読み返しました。
投稿: F | 2008/01/31 12:01:52
沖縄の講演を見に行く事ができました!
とても楽しかったです!そしてためになりました!
そして単純なのですが、沖縄の事が好きでいらしゃっている事が嬉しかったです。是非また遊びにきてください(^^)。
そして僭越ながらトラックバックさせてください、
どうぞよろしくお願いいたします。
投稿: だーしゃ | 2008/01/31 7:57:49
おつかれさまです。
日常が、わっさわっさしてあわただしい。
その感じに、つかまりきってしまう。
心の身動きがうまくとれないとき。
こんな日は、ペン先もとがってしまわぬかと思う。
クオリア日記のやわらかい感触にふれた。
今日も、がんばろう。
投稿: 美容師 | 2008/01/31 2:48:59
笑顔が苦手な私にとって、
文字を表出することは、笑顔を見せるのと同じ意味を持つ。
けれども 後で見返してみると、気に入った笑顔はほとんどない。
ブログは何ヶ月も更新が止まったままになっている。
数十分、場合によっては1時間も2時間もかけて、笑顔を作っても、
本物の笑顔になっていないのかと思うと、空しくなる。
遺伝子を残せない私にとって、
他の何かを残せたら、と思うことだろうと、他人は思うかも知れない。
でも、今、私には、何か残したい願望は特にない。
今ここにある幸福と荷物で、今のところ何とかやっていけるけれども、
生きてるうちに欲しいものが、ひとつある。
それは、どんなにお金があろうと、どんなに人に誉められようと、
決して手に入らない 。 「モノ」でも「成績」でもないから。
そして、私がそれを欲しいと、人に言うことも出来ない。
「プロフェッショナル」に出演されるような方々は、
その方にとってのそういうもの(生涯でいちばん大事なもの)
を引き寄せ、共に生きておられるのでしょうか。
投稿: MiznoYuli(u-cat) | 2008/01/31 2:10:11
http://happy109.ti-da.net/t1933929
(トラックバックのお願いです。講演の新聞記事をUPしました。)
読むほどに素敵な詩のような文章で、感動です。
講演の内容も面白かったですが、印象に残っているのは、
2部で紹介のときに立ってお辞儀した様子と
拍手(すごくパチパチしたの)が私的に好印象でした。
時間がたつと忘れてしまうので、残しておきたくコメントしてます。
投稿: ぷっちんぷりん | 2008/01/31 0:54:14
「歴史の原動力は、敗者の復活にある」という見方があります。
さまざまな場所でさまざまな人と交流し、他流試合をし、
時には他者と感動を共有し、時には他者に小突かれて傷つき・・・
こうして劣等感を抱いたとき、自分の殻に閉じこもって自己保全に走ることなく、
ありのままの自分を受け入れて「今日の劣等感」を「明日の原動力」へと昇華する
ことの大切さ。そして、その難しさ。
でも今日は、「誰の目にもさらされることなくひっそりとあって初めて育っていくもの」
があるという先生のお言葉で、また意識が変わりました。
ささやかでいいので、僕も何かをじっくり育んでいこうと思いました。
ただ、やはり「誰か」が育っていくものをひっそりと見てくれている気もします。
生命が自分自身だけでは完結できない以上、生命がその中に欠如を抱きそれを他者から
満たしてもらう以上、よく分からない「誰か」がきっと見てくれている気もします。
投稿: ひろぽん | 2008/01/30 22:49:00
佐喜眞さんの「プロフェッショナル」で拝見した、あの底知れぬ優しさと温かさにあふれた笑顔を思い出しました。余人には想像し難い、つらさと苦しさを味わい、それと闘い続けた人だけが表わせる慈愛の表情。
それはやはり、佐喜眞さんの心に咲いた可憐な花なのに違いない。
そんな可憐なやさしい花を、咲かせられる人になれれば、どんなにか素晴らしい、今生の思い出になることだろう。
投稿: 銀鏡反応 | 2008/01/30 20:38:16
茂木先生、初めまして。
1年程前から、携帯でクオリア日記を読んで出勤するのが日課となりました。
茂木先生の大事な人への感謝の姿勢、昆虫や植物や空気への感動や、確固たる考えの表現の仕方、怒れる言動や、やさしさや、漱石、アインシュタイン、その全てに影響を受けております。
先日お客様に『寒いね』と言われ、『春が訪れる前のひんやりとした心地良い寒さです、辛い寒さと思うから寒いのです!』と言うと、笑われました。
本日インターネット工事が終了し、私の部屋が急にグローバルに。
一番最初の接続をクオリア日記に。
自分のなかの自分を大切に厳しく育み、内から笑顔があふれる人に。
毎日、茂木先生のことばを読んで、自分と向き合っています。
明日も、携帯かパソコンで一日が始まります。
雪なんて降っちゃって確かに心地良いんですが、この寒さでお体壊さないようにお気を付けください。
投稿: hoshi | 2008/01/30 16:14:05
こんにちわ
日本人の創造性の事で、日本の場合「ココがダメではないか。」と言うのが、アメリカでは、「ココをこうすればよい。」、同じアイディアで足らないところを日本では削るが、アメリカでは付け足すのです。この点を工夫すれば、日本の創造性、イノベーションの向上につながると考えています。
私の場合、「心の中の洞窟の蘭」が足らないかも・・・さぁ洞窟の中を探検だ!!(^^)
投稿: 心の中の蘭のクオリアby片上泰助(^^) | 2008/01/30 9:57:16
お疲れ様です。
きのうのプロフェッショナルの高橋さんも格好良かったです。なんとなく、なぜだろう、チェックのシャツとジーンズが履きたくなりました。
佐喜眞さんにお会いしたのですね。佐喜眞さんの(OAでの)笑顔は、心の中に、鮮烈に残っています。
茂木さんの「笑顔は、その人の心の中の洞窟にひっそりと咲く蘭」。
美しいお言葉です。朝から、きらきらとした雫のようなものが、自分の頬に落ちた気がしました。
わたしも誰かの心の中の洞窟にひっそりと咲く華になりたいなぁ。
お仕事がんばってくださいね♪
投稿: lily | 2008/01/30 8:39:50