春になる前に
「予定が入ってしまっている
未来は現在と同じである」
養老孟司さんが、常々そのような
ことを言われていた。
人生ここに至って、
時々そんなことを
実感する。
何の予定も入っていない未来は
真っ白で、ある輝きを持っている。
一方、予定が入ってしまっている
未来は、
たとえ、それが心愉しき用事でも、
何かたこ糸でつなぎ止められてしまったような、
天翔ることのできない空気を伴って
いるのだ。
ソニーコンピュータサイエンス研究所。
日刊スポーツの沢田啓太郎さん、
井之上眞さんに
お目にかかる。
チョコレートの伝道師、
クロエ・ドゥートレ・ルーセル
さんにお目にかかる。
日本でのクロエさんの活動の
代表、松浦有里さんとも。
クロエさんは、チョコレートに
はワインと同じくらい複雑な
香りと味わいの奥行きがあるという。
チョコレートが好きで
毎朝食べている私も、
自分が実際に感じているものに
クロエさんほどの繊細な感覚を
もってメタ認知を向けるという
ことはしていなかった。
チョコレートを5枚置き、
blind tastingをする。
お話した1時間で、今までの
人生で学んだこと以上の
ことをクロエさんから得た。
クロエさんが
ジャン=ポール・エヴァン、
パトリック・ ロジェ、
ファブリス・ ジロ ッ ト、
アーティザン・ドゥ・ショコ
の4人のショコラティエの
作品を一つの箱の中に
アレンジした
「クロエ・ セレ クション・ボックス」
をいただく。
28日まで伊勢丹新宿店で開かれている
サロン・デュ・ショコラ2008にて、
「クロエ・ セレ クション・ボックス」
を手に入れることができる。
当日の模様は講談社の
MouRa
に掲載される予定。
クロエ・ドゥートレ・ルーセルさんと
(photo by Tomio Takizawa)
テレビ東京の内田久善さん、
大河プロダクションの永井洋一さん、
川口伸之さんと打ち合わせ。
脳の番組について。
福岡のディップ・アンド・エスの
小正伸一さんがいらっしゃる。
桑原茂一さん
と行うイベントについて。
大手町の
東京国税局へ。
職員の方々の研修会でお話させて
いただく。
藤田博一さん、藤原修志さん、三次直哉さん、
飯野佳代子さん、石井道夫さんにお目にかかる。
研究所に戻る。
お昼を食べる時間がなく、
エネルギー切れになりそうだったので、
近くの「すき屋」に入ったら、
見慣れた顔が座っている。
「よお、箆伊!」
博士課程の箆伊智充だった。
「最近研究はどう?」
と話をする。
Haggard流のsensori-motor contingency
に興味をもって研究してきた箆伊だが、
加えて、sensory modality内部の
contingencyについても
興味を持ち始めているのだと
いう。
箆伊の持ち味は、ちょっと
とぼけたようなそれでいて
風雅なもの言いである。
「ぼくも、3ヶ月で論文を書く
ことにしますよ。」
「わかった! オレがブログに
書いたら、既成事実になってしまう
のだからな。」
牛丼を食べている箆伊の
表情がどんなものだったか、
つい見逃してしまった。
箆伊クン、がんばろうね。
研究所の定例ミーティング。
私が喋る番であった。
Learning、learning、learningと
題して、脳の学習の諸側面について
論ずる。
タイトルは、かのTony Blairイギリス前首相の
1996年労働党大会での
three priorities for government would be
education, education, education
というスピーチをもじったもの。
所眞理雄さん、北野宏明さんと
有意義な議論をする。
夏目哲さんと、「アハ体験」関係の
企画の話をする。
田谷文彦と、研究の話。
それから、
たまっていた仕事をいろいろと
片付けにかかる。
寒さというものはこういう
ものであったかと実感させる
街の空気。
春になる前に、思い切り冷たさを
味わうのが良い。
忙しくても仕事が終わらなくても、
とにかく何であっても、
この巨大な岩塊の上に生きている
だけでありがたい。
1月 26, 2008 at 08:11 午前 | Permalink
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» 『鰐口考』19 トラックバック 御林守河村家を守る会
後 記
丁度二年半前の、平成五年十月に、
写真家の木村仲久先生が我家を撮影に訪れました。
その日が、私の歴史探求への旅出ちの日となりました。
それから実質二年にも満たぬ研究期間の私を、
多くの方々が導いて下さいました。
ご指導賜わりました諸先生方に心か... [続きを読む]
受信: 2008/01/26 10:17:06
» 巨大高炉改修 トラックバック 須磨寺ものがたり
昨晩NHKで「かんさい特集・アンコ-ル 巨大高炉改修」が、
オンエアーされた。
初回放送分を見逃していたので、
しっかりと見ることにした。 [続きを読む]
受信: 2008/01/26 12:41:42
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一項目一枚です。堀口七 段が新四段の頃 「村木さんのやり方はプロで通用するでしょうか」と質問した。私は「時間の短い将棋で有効でしょう」と答えた。その後堀口七段ははやざしの銀河戦15連勝の記録を作った。... [続きを読む]
受信: 2008/01/26 14:46:28
» 日テレ出演?? トラックバック 御林守河村家を守る会
先日、
日本テレビ、
朝のワイドショー”スッキリ”
の番組取材があったことをご報告をいたしました。
なんで?
何であんたが朝のワイドショーで全国放送なの?
そんな疑問を感じませんでしたか。
そこで、
「河村夫婦は、なぜ日テレで取材されたのか」
この疑問に�... [続きを読む]
受信: 2008/01/27 0:10:10
» 予定が入ってしまっている未来 トラックバック 成長する診断士!
ビジネスマンであれば、計画を立てることの重要性は耳にタコができるぐらい聞いていることだろう。 私自身、優先順位を決めて時間管理をしっかり行うことの大切さを書いた文章を切り取って、手帳に入れて時々見返すことにしている。 しかし、昔から予定や計画を立てることが嫌いだった。 旅(旅行)でもなるだけ計画を立てないようにしていた。 それは、計画を立てた時点で未来が拘束されて自由が無くなり、いくら楽しい予定でも消化しているような感じがしてしまうからだ。 少し前になるが(08/1/26)、有名な茂木健一郎さん... [続きを読む]
受信: 2008/03/08 9:42:20
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コメント
桑原茂一さんとのコラボ。
オトナのクラブ、期待しています。
前回の「ホープフルモンスターを探して」は
本当に楽しかったです。
投稿: LINUS | 2008/01/27 2:20:06
「人生を変える ミッション・ステートメント(http://www.cty-net.ne.jp/~kana-h/)」というHPに、『人は相手に意思を伝えるために「言葉」を生み出しました。そのため、すべてに「名前」をつけて区別することが必要となり、「生・滅、増・減、きれい・汚い、同・異、正(善)・悪」といった二元論的な概念をも創り出しました』と書いてありましたが、茂木さんはどう思われますか?
投稿: hajime | 2008/01/26 21:44:19
朝陽もね、夕日もね、満月も、白夜も、一応オーロラなんかも
出番がねずっと、決まってるらしいよ。
舞台の袖で、機嫌をそこねたら、出てこないこともあるらしいけど。
流れ星なんかも、予定がきまってるかな?
きっと、舞台袖で、わくわくしてるかもしれないよ。
投稿: おおはたみやお | 2008/01/26 14:37:27
どうも!こんにちは。
予定入りの未来って、どこか息苦しいし、また詰まらないものですね。
未来についてあれやこれや、と予測や予想をするのが楽しいのは、やはり未来がまっさらの白紙で予想もつかず、予定も入れられないものだからではないか。
チョコレートといえば、もうすぐヴァレンタインデーなるものが訪れますね。チョコもたとえば、日本料理などと同じく、普段口に含むとき、舌と眼の両方で味わっているのかも知れませんね。まずは眼で見て、そして舌で味わう。
それにしても、チョコレートも非常に複雑多彩な味わいをもつ食べ物なのですね・・・。
身を切るような寒気に包まれる日々が続いています。冬が厳しいものであればあるほど、やはり、暖かな春が待ち遠しくなるものです(月並みでどうもすみません)。
こんな時期は、暖かくてとろけるようなホットチョコレートも乙なものだ・・・と思います。
投稿: 銀鏡反応 | 2008/01/26 14:26:02
私は幼い頃、チョコレートといえず、
こちょれーと、と呼んでいたそうです。
(チョコを少しください、の意が含まれる)
投稿: F | 2008/01/26 11:12:34
こんにちわ
クロエさんの、チョコレート、どんな味だろうか食べてみたい!!
チョコレートを一番から食べて、底を空けると、答えが載っているなんてありそう!! コンビニで売ってくれないかな?
いま、経済集中研究中なのですが、たとえば、チョコレートを買う人を個人個人を扱うのは難しいですが、チョコレートを買う人たちを消費者群と、考えれば、チョコレートに反応する消費者群ニューロンが経済脳科学で成立するのではないでしょうか?
関係ないですが、私は、禁煙を一日に何回も失敗します。(^^)
投稿: チョコレートのクオリアby片上泰助(^^) | 2008/01/26 10:13:27
養老先生のメッセージの「予定」と言う言葉の取り方で、
その世界が随分と違ってきますね。
先生はどの世界からその言葉を発したのかな?
茂木先生の「何の予定も入っていない未来」。
ボーゼンとした時間の中にいる今の私の表現にぴったりです。
臆病者だと、自分で自覚してはいるのですが、
「何の予定もはいっていない未来」は、私にとって、
ただ、ボーゼンとしたものです。
ただ、強い意志は自分の核?芯?となってリンとしているのは、
感じるのですが、、、。
今までにない思考側面からの行動パターンで今までになかった思考定着を
こころみかけているのですが、ただ、ただ、ボーゼンとするばかりです。
でも、文章を読み返しているうちに「ある輝きを持っている。」かもしれないと、感じました。
それでも、前に未来の輝きを見ることはできず、
茂木先生の言われる「ある輝き」と言うもの、
を私の実感的イメージで例えると、
私の少し潤んだ目の輝きぐらいです。
初代ジャングル大帝のオープニングに大ジャングルを見渡して
いるレオの居るシーンに似て、何も無い様に見えて、
とてつもなく大きなものが存在しているジャングル。
あぁ、、。私はそこに行こうとしているのでしょうね。
ただ、見て楽しんでいればいいものを・・・・。
(↑まだ、過去の私にひっぱられている(笑い)
養老先生のコメントは、とてつもない厳しさが潜んでいると
感じました。
茂木先生の言われる、輝き、真っ白なもの。
ってなんだろう?
先生は、ジャングルがお好きなんでしたね。
私はジャングルに入るのは好きではないので、その真っ白なものや、
輝きって、ジャングルの中にあるのかもしれませんね。
投稿: あすか | 2008/01/26 9:33:40