シャンパンの泡のような気分
収集家の中には、作品を
やたらと見られることを、
「目垢がつく」といって
嫌う人がいるという。
早朝、外を歩く。
もし、太陽がずっと上りっぱなし
だったらこの世界はどうだったろう。
暗闇の中、探る時間があり、
やがて、大地がぐるると回転して、
太陽がさーっと差してくる。
その巨大な運行の下、
地上のものたちが次第に
照射されてくる。
おお!
そうであったか、この世は、
こんな場所であったか。
毎朝感動が繰り返される。
地上の万物は、いつまでも
目垢はつかない。
桑原茂一さんのプロデュース
されるイベント
「ホープフル・モンスターを
探して」。
谷田一郎さんが、
表参道で偶然見つけたという
「人形を売るおばさん」
の話がおもしろかった。
布きれで作った、
ゆるいかたちの人形たち。
しかし、どこか惹き付けられる。
「これで絵が描ける」
と谷田さんは思われたの
だという。
谷田さんから代金を受け取った
おばさんは、そのまま近くの
回転寿司に入っていった。
谷田さんの「メジャーとは」
という議論。
「メジャー」なものは
いかに知覚され、そして形成
されるのか。
CMの最後に大企業のロゴが
出るだけで、「メジャー」
となる。
さらに「空き缶はくずかごに」
などと細かい字で注意書きが出ると、
また「メジャー」感が上がるという
のである。
控え室に戻り、谷田さんとにこにこ
話す。
娘さんを描いた絵が素敵!
北川フラムさんは、
10年間割烹をやっていた
ことがあるという。
「いやあ、たまたま、この会場の
隣りのビルでやっていたんですよ。」
「何でですか?」
「スタッフを食べさせなければ
ならなかったからね。」
途中で、北川さんが突然
麻雀の話をして、
うれしそうな様子が
何かヘンだなあ、と思い、
「北川さん、麻雀すごいんじゃ
ないですか」
と伺ったら、
「実は、生活するという意味では
一番自信があるのは、麻雀なんですよ」
と北川さん。
「点と線」がヘンな人なのである。
北川さんは、
東京芸術大学で坂本龍一さんの
先輩だった。
越後妻有トリエンナーレを
成功させ、
今、直島の地中美術館館長として、
福武書店の福武総一郎さんと
ともに瀬戸内海にアートの革命を
起こそうとされている。
そのような線は、「すごい!」
と思いつつたどることができるが、
どうしてそこに「10年間割烹」
とか、「麻雀が生活力一番自信がある」
という「点」が入るのか。
つくづく、不思議な人なのである。
「東京芸術大学の入試は、
デッサンの練習を全くしていなくて、
試験の前日になって、慌てて
画材屋さんに買いに走って、
友だちにどんな風に絵を描けばいいのか
聞いたんですよ。
実技の後の面接会場に行くと、そこに
受験生の絵がずらっと貼ってある。
それで、試験官が、「どれくらい
練習したんですか」と聞くので、
さすがに前日にやっただけだと言うと
怒るだろうと思って、
「三ヶ月くらいです」と答えたら、
「それにしてはヘタだねえ」
と言われたんですよ。」
と北川さん。
それでいて合格する。
北川フラムさん。
つくづく、不思議な人なのである。
セッション風景
北川フラムさんと
(photos by Atsushi Sasaki)
桑原茂一さんが、クリスマス・プレゼントを
下さった!
私のリュックは、穴が開いてしまって
いたのだが、見かねて、
茂一さんがリュックを下さった!
今までのはポーターだったのだけれども、
今度のは「ヘッド・ポーター」
と書いてある。
「ヘッド・ポーター」の
リュックを、桑原茂一さんが下さった。
わーい!
アイリッシュハープの吉野友加さんと、
ギターの影山敏彦さんのデュオ
ティコムーン(tico moon)のお二人が
生演奏をした。
サイレント・ナイトの後に、
桑原さんがステージに呼ばれた。
しずしずとケーキが運ばれてきた。
明けて今日が桑原茂一さんの
誕生日!
おめでとう、茂一さん。
「何回目ですか?」と尋ねても
教えてくれないので、
「40回目の誕生日です、おめでとう
ございます!」
とみんなで乾杯した。
明けて太陽は昇り、
目垢は落ち、
みんな、ぴっかぴか。
ティコ・ムーンの
「クリスマス・アルバム」 と
「Live at くるみの木」 を
聴く朝。
シャンパンの泡のような気分が
続いている。
12月 9, 2007 at 07:51 午前 | Permalink
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コメント
先生は最近、ティコ・ムーンをよくお聞きになるのですね。もうワグナーはお聞きにならないのですか?
先生の著書『クオリア降臨』(文藝春秋)の中で、「私の大学生時代は『完璧なるワグネリアン』」であり、友人の音楽愛好家たちからワグナーの音楽性を批判される度に、憤慨するとともに傷ついていた。モオツァルトは良いが、ワグナーはディレッタントだと言うのである」という記述を見つけました。
私が大学生のときに「般養」の授業で使ったHugh M.Miller Ph.D.〝History of Music〟には、ワグナーについてこう記述されていました。
「19世紀後半におけるドイツ・オペラは、ワグナーの創造力に完全に魅了され、彼はオペラを諸芸術の総合体と考え、それを楽劇(Musik-dorama)と呼んだ。ワグナーは、ほかのどの作曲家よりも強く伝統的なオペラから離脱しようとした」。
ミラー博士によると、ワグナーの楽劇の特徴は、
①彼のオペラの概念とは、オペラが何ものをも凌駕する劇的な迫真生と統一性を追求するという点で説得力のあるものでなくてはならず、そのために演劇法や文学や音楽の融合が行われるべきとするものである。
②ワグナーは自分自身で台本も書き、初期のドイツ・ロマン主義オペラのように、民話や伝説、中世的なプロット、超自然的な要素およびしばしば宗教的な意味を持つ罪のあがないを含むテーマなどを用いた。
③劇と音楽の連続性は、部分的に分かれた形式を捨て去ることによって楽劇の1つの大きな特徴となった。
④アリアとレチタティーヴォ(叙唱)の区別を無くした。
⑤オペラの中で、主題を繰り返すことは比較的早くから行われていたが、ワグナーは劇性を高め、劇と音楽の一体化を強める工夫、つまりLeitmotifの開発を行った。このライトモチーフとは、楽劇の中で、人物、もの、状態、感情などを表すために用いられた主題である。
⑥ワグナーはオーケストラの規模を拡大し、より明確な劇的な機能をもたせ、さらにそれを楽劇特有の継続性という点で重要な要素とした。
⑦半音階的和声、長く引き伸ばされた転調、部分的に分割しない楽句法(フレージオロジー)、対位法的構成、合唱の使用がごくわずかである。
先生は、いまもワグナーをお好きですか?
ずいぶん前のことなので私の記憶違いかもしれませんが、以前東大の入学式で流れていたのは「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕ヘの前奏曲だったような・・・。
そうそう、あとワグナーは女性無しには語れませんよね。「トリスタンとイゾルデ」を作曲する上で霊的な影響力を与えたとされる人妻のマティルデ・ヴェーゼンドンクは、自身が作った詩に曲をつけてもらっておりますし、2番目の妻のコジマは誕生日に「階段の音楽(=ジークフリート牧歌)」をプレゼントされ、大指揮者トスカニーニに「世界一幸せな女性」と言わしめております。2人とも女冥利に尽きるでしょう。同性からすると羨ましい限りの女性たちです。
個人的なことで恐縮ですが、学生時代に「般教」で取った音楽史の授業は私にとってお気に入りの時間でした。武蔵野の面影が残る木立に囲まれた教室で、クラシック音楽を聴きながら、音楽史の講義を受けました。心地よい調べをBGMに両サイドの窓から見える景色は最高で、そよ風にサワサワと揺れ動く木の葉の影や木漏れ日が移ろぐ様子はそれはそれは美しかったです。
投稿: K.M | 2007/12/10 3:08:45
こんにちわ
少し、茂木さんが言っていた「自発性」と、「自律性」、「一時的メモリー」について、、考えてみました。
たとえば、電車のおもちゃで、電池とモーターで動く場合、スイッチが、一時メモリーになるのは分かります。このスイッチを無くし、モーターと電池を直接つなぐ場合、電池が一時メモリーになります。つまり、電池があるときがONで、電池がなくなるとOFFです。
すると、模型電車はどうなるか、電車にモーター、レールを通して、電気を送る、模型電車自体は、自律系ではないですが、電源を含めれば自律系だとなります。ココで、電源がバッテリーなら、そこで、自律系は成り立ちます。これがコンセントだと、電力送電網の日本全体が自律系になります。
これを人間に当てはめると、人間は自律系ですが、モノを食べたり、火を使ったり、電気を使ったりします。すると、大きくみると、地球、太陽系で、自律系が成り立つ事になります。
人間も、メモリーの一つ、太陽もメモリーの一つと考えられないか?
「エネルギー=メモリー」とも、考えられるのではないか?
すると、人間は分子系ですが、分子に存在するエネルギーも、メモリーと考えられるのではないか。
意識の場合、意識上のメモリー(記憶や感覚等の意識)=意識上(ニューロンネットワーク)のエネルギーと、推測できるのではないか?、と、考えたりします。
まだ、完全ではないですが、「自発性」と「自律性」「エネルギー=メモリー」について、もうしばらく、推察してみます。(^^)
投稿: tain&片上泰助 | 2007/12/09 22:42:30
けん
いち
ろう
さん!
いないのかなあ
この まどから
のぞいてみよう
ねむっているよ
つかれたんだね
いそがしいもの
このあいだ しあとる まで
みんなと いったんだって
とおいところ
でも とおくないところ
ぼくのともだちも しあとるにいて
ときどきだけど てがみをくれるよ
ゆめを みて
わらってるね
きっと きっと
たのしい ゆめ
みているよね
おこしちゃ わるいよ
かえろうか そうしよう
めざめたら
いつかまた
ぼくら と
あそんでね
やくそく!
投稿: F | 2007/12/09 22:18:58
こんにちわ
量子力学で観察者は重要ですから、目垢が意外と重要のような気がします。
それから、なんでも映像の後に企業のロゴが表示されると、メジャーなCMっぽくなるような、気がします。(^^)
投稿: tain&片上泰助 | 2007/12/09 16:09:17
「ホープフル・モンスターを探して」、大変にお疲れ様でした。
あけて今日は、明るく夜が明けました。
いまはもう9時5分前、眩い朝日が我が家の内部まで差しこんでまいります。
早速今日の日記を拝見し、昨日のイヴェントには、とても面白い方々が集われていたんですね…!
茂木さんとともにセッションに加わった方々も、たくさんいらしていたお客さんも、一人一人が皆、「ホープフル・モンスター」であられるのではないか…日記を読んで、そんな気持ちになりました。生憎なことに、自分は昨日は如何しても外せない私用が出来てしまって、このイヴェントを拝見する事が出来ませんでした。
ティコ・ムーンのアルバムのカヴァーイラストが、真冬の日の光のような温かさにあふれているように見えます。素朴でやさしい味わいに心が惹かれます。
投稿: 銀鏡反応 | 2007/12/09 9:11:27
「メジャー」になる時点では、いろいろな要素が同時に重なり合う場合が多いような気がします。これは、「メジャー」に限らず、大きなことが、個人に、また、集団にも起こる場合に見られると思います。
例えば、大事故が起きるのも、幾つもの原因が重なっています。急に大事故は起きません。悪いことが長年積み重なって発生します。事故については、「ハインリッヒの法則」があります。1つの大事故の前には、29の小さな事故、300のヒヤリハットがある、という経験的法則です。
投稿: かまくら | 2007/12/09 8:08:24