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2007/11/23

自分を毛繕いする熊のような

 困ったことが起こって、
 養老孟司先生に緊急に
お願いしなければならなくなった。

 養老先生は外国に行かれていて、
それでも何とか連絡がとれないかと
手を尽くした。

 結局、養老さんの助けを
借りないかたちで、事態を収拾
することとなった。

 帰国された養老さんから、
メールをいただいた。

本日ただいま、バンコクから戻りました。
いろいろ大変だったようですね。
あまり気を遣わず、必要ならなんでもいってください。
年寄りの価値はそのくらいしかありませんからね。
一生に何度か、大騒動することはありますよ。

養老孟司 拝

養老先生の気持ちの温かさに、
心の中で涙がじんわりとにじんだ。

10年前、『脳とクオリア』
を出版した時に、読売新聞の書評で
取り上げてくださった養老先生。

それ以来のお付き合いの中で、
厳しさとやさしさが一人の
中に同居するそのお人柄に
惹き付けられた。

2005年に小林秀雄賞を
いただいた時、
選考会で、養老先生は
終始ひと言も口を開かなかった
という。

他の選考委員の方の話を
ただ黙って聞いていて、
私の受賞が決まるまでの
議論にかかわろうとしなかった。

私に決まった後で、同席していた
「考える人」編集中の松家仁之さんに、
「良かった。肩の荷が下りた。」
と言われたという。

私が、「クオリア」などということを言う
もんだから、
世間でいろいろ苦労していることを
心配してくださっていたのである。

養老先生に
しばらくお目にかかっていない。
何だか、無性に会いたくなった。

「プロフェッショナル 仕事の流儀」
の収録。

キュレーターの長谷川祐子さんが
いらした。

魂の会話を交わした。

ビタミン不足か、舌の先が荒れて
少し痛い。

それでも、朝一番から夜まで、
ずっと喋らなければならぬ一日だった。

スタジオ横で舌の先を有吉伸人さんに
ペロリと見せて、
「ほら、荒れているでしょう」
というと、有吉さんが「ストレスでしょう」
と笑った。

「でも、技術でカバーしてうまく喋っている
んです」
と言うと、有吉さんが、
「ははは。一体、どんな技術ですか」
と笑った。

本当に、どんな技術かしらん。
ただ、話がおもしろいと、夢中になって
忘れてしまうだけである。

今朝は、舌もだいぶもとに戻った。

さまざまに反芻しながら、
冬眠前に自分を毛繕い
する熊のような気持ちになる。

このまま、しばらくまどろんでいたい。

しかし、現実には、仕事は切れ目なく
続くのである。

11月 23, 2007 at 07:18 午前 |

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受信: 2007/11/26 0:12:47

コメント

今日は満月ですね。
秋の月は高いので
本当に驚いてしまいます。

なにやら大事があったご様子ですね。
大丈夫ですか?
心配してしまいます。

舌の痺れもそのストレスだったのですね。
事態は収集したとのことですが、
そんなときに頼れるお父さんみたいな
養老先生がいらして羨ましいです。

ゆっくり毛繕いする時間も無く
それでも色々な人が毛を撫でてくれれば
気づいたらいつもの通りになれるのかしらん。
色々な人の優しい手に触れれば
心おちつけるのかしらん。

私も是非その一撫でに
参加させてください。

投稿: | 2007/11/25 0:12:49

昨日、この日記を読んでコメントが書けずにいたのです。

けど、お布団の中で、ころころと転がしていたら、、、、。

変なんですよね。

茂木先生の様に外から見ると、一見、華やかで、人々に愛され、スポットライトを浴びている人と、私が知っている地学教師さんが、
一瞬一緒に感じたんです。

地学教師さんと茂木先生は、太陽と月の様だと思っていたので、
(注意:私は自然が好きなので太陽も月も好きですよ。)
ただ心の奥深く直感的に共通を感じただけなので、自分でも「え?なんで?」の状態が続いていたのですが、今朝のコメント(「先生は真っ直ぐすぎ」)を読んで、少し「ああ、これかな?」と
思ったのですが、なぜだか、まだスッキリしません。

あの、共通感はなんだったんだろう????


投稿: | 2007/11/24 9:12:39

 先生のブログを読んでいて気になったので、再度投稿してしまいました。
 先生が窮し、養老先生の「藩屏」が必要となる大騒動とは一体何だったのでしょう?
 また、著名な科学者か、どなたかを激怒させてしまいましたか?
 先生は狷介孤高の上、あまりにも真っ直ぐ過ぎるのです。その姿勢はすごく格好良いのですが、時として周囲の大反発も生みかねません。
 先生は今をときめく売れっ子科学者ですから、妬みや嫉み、岡焼き半分の批判…いろいろとおありでしょう。たいへんですね。お辛いでしょうし、切なく思われることもあるでしょう。
 「好漢自重せよ」という言葉がございます。先生のような有為な科学者がどうぞ潰させませぬように。
 と、勝手な推測で申し上げましたが、とにかく気持ちを切り替え、嫌なこと、辛いこと、煩わしいことといった自分にとってマイナスなものは持ち続けないことです。さっさと忘れてしまうか、捨ててしまうか、他人にあげてしまうか…です。
 きっと時間が解決してくるのでしょう。だから大丈夫!くよくよと悩まないことです。
 

投稿: | 2007/11/23 22:21:22

こんにちわ

以前、前野さんとの対談を思い出したのですが、たとえば、自分で掃除をして、コンセントで充電する、お掃除ロボットを考えた場合、周りを認識する上で、メモリー上に部屋のマップ、コンセントを画像認識して探すなどの、一時記憶が必用になってくると思います。これは、茂木さんの言う、クオリアとは違いますが、ある程度高度な認識力を持つ自律的なマシーンを考えるとその処理のためにどうしても周りを認識するため、一時にメモリーが必用になってくると思います。


う~ん、「クオリアに機能的意義があるか」難しい問題ですね。(^^)

投稿: | 2007/11/23 21:49:37

街の色の変化に、冬の訪れを感じるようになりました。
風の香りも変わりますね。
我家の愛すべきウサギさんも、なんだか日に日にふさふさに。。。

毛繕いと共にお部屋の加湿はどうぞ入念に。
お忙しいとは思いますが、是非ともお体ご自愛下さいませ。

投稿: | 2007/11/23 21:03:09

 「ごきげんよう、先生。お久しぶりです」
 この間に何だかいろいろな思いが吹っ切れ、再エントリーします。
 人生一度切り。もっと自分の気持ちに素直に従って生きていこうと思います。必要以上の倫理的禁忌や自己抑制、プライドといったものは、人生をつまらなくさせるだけですもの。
 わたくしは死ぬまで人を恋する心を忘れず、想いを寄せる方と心を通わせ、慈しみ合い、その方を献身的に支える、そんな女性でありたいと思います。そして幾つになっても女らしさを持ち続け、可愛らしい「おばあちゃま」になりたいです。
 本日、今春亡くなった祖母の墓参りに行って、手を合わせながらそんなことをふと考えました。


投稿: | 2007/11/23 20:46:31

養老先生のエクセレントな(素敵な)レターに、
寒い日々のなか、マイハートまで暖かくなれました。


投稿: | 2007/11/23 18:46:23

口の荒れは、あったかい緑茶でひと息つけばすぐ治りますよ。

投稿: | 2007/11/23 11:58:42

私も、時々舌の先が荒れることがありますが、私の場合それは、暴食が主な原因だったりします。声をだす仕事をしていますと、朝少しよくなっててもまたひどくなりますが・・・

投稿: | 2007/11/23 11:27:39

今日の日記を読み、茂木博士に対する養老孟司教授の温かい思いやりに、私も心が和らぐ思いがしています。

普段厳しいけれど、いざ大変だ、困った!と言う時に、すかさずすっと手を差し伸べ、相手を思いやる言葉をかけてくれる存在…。

それは当人にとって、どんなにあり難いものであることか。

ましてや、それが生涯の師と仰ぐ人であったら、なおさら、その温かい心遣いに、どんな人でも心底あり難く思わないことはない。

茂木さんにとって、人生の師であられる養老さんの温かいお心遣いは、日々多忙な時間を生きる茂木さんにとって、どれほどの大きな励ましの力となることだろう。

何時の時代も“師匠”と“弟子”の関係ほど、大切なものはないと思う。いわんや現在の希薄化しすぎた人間関係が普通の時代ならば…。

私は思う、お二人の関係は、きっと何時までも強い、師弟の絆で結ばれつづけるに違いない、と。

投稿: 銀鏡反応 | 2007/11/23 10:47:04

こんにちわ

最近、急に寒くなりまたからね、春まで冬眠したい気持ちは分かります。

それから、外食の多い、茂木さんにはサプリメントが必要かも(^^)

投稿: | 2007/11/23 10:23:40

養老先生には、マンガ学会へも無料奉仕に近いかたちで
来ていただき、講演していただいたことがあります。

京都国際マンガミュージアムでは、館長役を引き受けて
下さっています。
館長さんでおられる間に、先生を中心に国際的な
シンポジュウムがやれたら~なんて夢を京都精華大学の
かたがたは思っている様子です。

是非、実現してもらいたいものですね。

投稿: 長谷邦夫 | 2007/11/23 9:49:45

ここに自称親衛隊長がいることを、お忘れなく!!

投稿: 河村隆夫 | 2007/11/23 8:52:59

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