勝負服の夢
湯河原の「石葉」
に来た。
小学館の「和樂」編集部の渡辺倫明
さんが、平松洋子さんに教えて
もらった宿だという。
「とにかく、ご飯がおいしいんですよ」
と渡辺さん。
東京駅に、渡辺さんと、橋本麻里さん、
それに私で集合した。
「こういう時はまずはビールでしょ」
と橋本さんがいい、渡辺さんが買ってくる。
日曜の午後のあいまいな気分を
泡の中に溶かし込んだ。
熱海から一駅戻り、車で
「石葉」へ。
「観月庵」という離れに
通される。
時計を見ると、まだ午後3時である。
とりあえず、とお風呂に
行き、戻ってきてもまだ午後3時30分。
畳の上に寝転がって、形態形成に
ついての洋書を読み始めた。
渡辺さんが風呂から帰ってくる。
「おやまあ」などと交わしている
うちに、いつの間にか畳の上に
大の字で寝ていた。
途中で起きて、お風呂にもう一度
入った。
帰ってくると、渡辺さんが
「競馬中継」を見ている。
「何ですか、これは?」
「ナントカ賞ですよ」
「なるほど。賭けているんですか?」
「いや、今回は買っていません。」
耳を澄ませていると、
「タケユタカ・・・」
「マダコウホウニイマス」
「ダイサンコーナーヲマワッタ」
などと聞こえてくる。
その中に、
「ショウブフク・・・」
とあったので、ピンと来た。
「そうか、勝負服というのは、競馬から
来ているんですか。渡辺さん、そうですか?」
「そうですよ。茂木さん。」
一つ賢くなったので、畳の上で
ふとんを被ってまた眠る。
6時になって、お膳が運ばれて
きた。
さすが平松洋子さん御推挙とあって、
素敵なお食事でアル。
ワインを飲んでワルグチや
カルクチをばあばあ喋っている
うちに、陶然となる。
とっとと眠る。
朝風呂に入る。
湯上がりでぶらぶらとしながら歩いた
談話室で、備えられてあった
白洲正子を読む。
部屋に戻る。それでも、渡辺氏は
起きていなかった。
勝負服の夢でも見ているのかしら。
以前、もう二十年近く前のことになるが、
インドネシアのバリ島の「地中海クラブ」
で何もしないでぶらぶらしていたら、
ずっと忘れていた巨きな夢が
胸の中に甦ってきて、熱い気持ちに
なったことがある。
ぶらぶらと何もしないでいることには、
そのような作用があるようだ。
虫と鳥の声が響き合って聞こえる。
山から猿が降りてくることがあると
いうが、
猿もまた、勝負服の夢を見ている
らしく、一向に姿が見えない。
胸には、猛然と突進していく
馬たちの残像があって、
身体のリズムが変わって行く。
石葉の離れ「観月庵」にて競馬中継に見入る渡辺倫明氏。
ぐっと寄ってくる。
さらにぐっと寄ってくる。
10月 15, 2007 at 07:38 午前 | Permalink
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決して押し付けない、
シンプルさと、
分かりやすさを、
大切に、こだわりを見せる、
グラフィックデザイナーがデザインを語る。 [続きを読む]
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コメント
<週末の数分の夢>。
競馬は、まず予想でわくわくするが、最大の魅力は「すぐに結果が出る」ことだ。未来が時には大金とともにやってくる。
予想という言葉の意味も教えてくれる。
数学のナントカ予想、未来予想、株価予想、競馬予想、景気予想、・・・・、限りなくこの言葉は溢れている。それは高嶺の花のようで、取れなくもないというところに魅力がある。近似にかける情熱。
必勝法がないことも魅力で、これは人生に似ている。
年齢を重ねると、未来予想よりも過去の回顧が多くなってしまうが、どっこい未来こそステキと教えてくれる競馬はずっと止められそうにない。
投稿: fructose | 2007/10/16 14:07:17
勝負服の由来は競馬から…なるほど、やはりそうだったのか!
ところで、勝負服といえば、若者が初デートなどの時に着るよそ行きのおしゃれ服も、「勝負服」と言われているらしい。
男女とも、デートで異性の気持ちをしっかり掴むのにも“勝負”をかける。その為におしゃれに力を入れる。
アスリートが試合の時に着るユニフォームも「勝負服」だし、お相撲さんのまわしもそうだし…。
別の所では、葬式で坊さんの着る派手な「袈裟」も「勝負服」。
考えて見れば、あっちこっちに「勝負服」というのはあるのですね。
競馬の話に戻るけれど、武豊など競馬の騎手の着ている勝負服は、星やストライプ、水玉模様など、色々と華やかだ。遠目からみても本当によく目立つ。
湯河原温泉ですか…。いっぺん行ってみたいなぁ。
胸の中に蘇る、忘れていた大きな夢…。自分の中にも、きっとそんな夢がまだ眠っているのかもしれない。
投稿: 銀鏡反応 | 2007/10/15 22:07:30
こんにちわ
勝負服は競馬から来ていたのか・・・。わたしも、一つ賢くなりました。
そう言えば、昔、私が掲示板(2chではない)に入りびたっていた頃、バカの壁が話題になり、仲間とYahooの本のレビューに書きに行った事がある。その時、私は「共存共栄が大切では?」と、書いた事があった。その時、ヒステリックに反論するレビューが書かれたけど、あれは養老孟司さん本人だったのだろうか?(^^)
投稿: tain&片上泰助 | 2007/10/15 15:24:57