キャンパスを闊歩して
トンネルを抜けて、新潟平野に
出ると、ぱっと開けて明るく
なるのでいつも印象付けられる。
「新潟大学医学部へお願いします」
というと走り出した。
くるっと回って、
ぐっと入って、停まったら、
そこに、呼んでくれた
岩村憲クンがいた。
「あれ、なんでここにいるんだ?」
というと、
「茂木さんを待っていたんですよ〜」
と岩村が言う。
「なんで、ここにタクシーが
停まるってわかったんだ?」
「だいたいここだろうと思って、
張っていたんですよ」
そうかそうか。
ボクは、新幹線の中で忙しく
働いていた。
まずは原稿を仕上げ、それから、
一つ今日はたっぷり「クオリア」
の本格的な話をしてやろうと
思ってパワーポイントを用意していた。
「それでさあ、岩村さあ、
今日はどんな話をすればいいんだろうか」
「一つ、医学生に、ばーんと医学の
現状についてですねえ」
ありゃりゃ。
会場と、その周囲の雰囲気を見て
観念した。
パワーポイントは使えない。
それでは、人間について
話そうと思った。
質疑応答が面白かった。
何だか、まっすぐだったなあ。
中田力先生のいらっしゃる脳研の建物も、
7テスラのfMRIが入っている
という棟も見学できた。
風が少し冷たかった。
キャンパスを闊歩して、
大いに面白かった。
岩村くん、渡辺さん、風間くん、
ありがとう!
何よりも、岩村が元気に
やっているようで、それがエカッタなあ。
クオリアの問題を話そうと
思ったのには理由がある。
今年は『脳とクオリア』を
書いてから10周年。
ちくま学芸文庫から
改訂版を出す予定でいるが、
なかなか作業が進んでいない。
10年経っても、クオリアの
問題の大切さも、難しさも
変わっていない。
何回も辿っている思考の跡がある。
そこを最初は薄い鉛筆で、
やがて濃いクレヨンでなぞっていく
ことによって、
徐々に絵が見えてきている。
帰りの新幹線は、仕事を
しようとして、はっと
気づいたらMacBookを
開いたまま眠っていた。
考えてみると、新幹線は
時速300キロで走り、
地球は毎秒30キロで
公転する。
そして、太陽系のあるあたりの
銀河系の渦の手も、
ぐるりぐるりと
回っている。
私が秒速何メートルで
走っていようが、
まどろむこと、考えることの
内容は影響を受けない。
これは実にすごいことだなあ。
宇宙の驚異は、
seven wonders of the worldなどを
持ち出さなくても、
たとえば目の前の芥子粒の中に
ある。
10月 14, 2007 at 09:33 午前 | Permalink
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» たわいのないことだとしても・・・ トラックバック なんでもあり! です 私の日記!!
自分の中で立ち上がるものが
甘くとろけている。
芯はしっかり感じてて
でもそのまわりは、ほんのりしている。
軽いめまい。
幸福感。
それでいて、ちょっとの焦り。
なんだか懐かしい声…
こんなに近かったのに遠く感じたり
本当は遠いのに近く感じたり。
世界のあらゆるものとの距離感が、ものすごく不思議に感じる。
たとえばそれは
ハローウィンの南瓜は、シンデラレラの南瓜と同じかな、違うかな。
といったたわいのないことまでも…
... [続きを読む]
受信: 2007/10/14 9:57:40
» MOTTAINAI トラックバック 不学問のススメ
世の中では環境問題が
毎日のように叫ばれている。
地球温暖化、森林破壊、砂漠化、酸性雨など
挙げだすとキリがない。
そして京都議定書の期限が迫る中
それらに対する人々の関心が増している。
レジ袋を減らそう!
リサイクルをしよう!
電気はこまめに消そ....... [続きを読む]
受信: 2007/10/14 15:40:24
» 寿限無 (じゅげむ) 須磨かるた大会 トラックバック 須磨寺ものがたり
初とは、たった一度だけ、
緊張と興奮がほどよく、
混合した、一日の時間が、
やっと、幕を明けた。 [続きを読む]
受信: 2007/10/14 20:30:59
» 宗教的経験 トラックバック Tiptree's Zone
私はこれまで、宗教的経験をしたことは無いのかもしれない。
ある小説の中に次のような箇所があります。
-------
W: あなた、これまでに宗教的経験をしたことある?
M: ユークリッド幾何学、そして一般相対性理論を、それぞれ完全に理解した時です。
W: ああ、そうじ...... [続きを読む]
受信: 2007/10/14 21:13:31
» 有り難う トラックバック Progress
[parts:eNoztDJkhAMmY3OmFBMDE0tDSzODRDNDcwtzS0tDQ5NE01QLoFhqiqW5hYlBinGKSaqRXlYxAB16DAw=]
[parts:eNoztDJkhAMmYzOm5OTERNOkVAsAINMD0A==]
人は死の淵にあるとき、何をするものなのでしょうか?
私の知り合いの方の奥さんは、胃がんを発症し、それが前頭葉にまで達したそう
です…。
前頭葉は感情、思考、知性などの人間の精神的な高次機能に関係しており、障害
があると、手足... [続きを読む]
受信: 2007/10/15 5:12:01
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コメント
新潟大学の医学祭で茂木先生の案内をさせていただいた渡辺です。すばらしい講演ありがとうございました。
先生のお話の中で、「多様性を生み出す普遍性」という概念が導入されることによって医学と科学が同じ方向を向き始めたという話が興味深かったです。生物の多様性を制御する普遍の原理として、ダーウィンは進化論を考えたということですが、そういう意味で、クオリアの問題も、多様性を制御する普遍の原理についての研究なのではないかと思いました。
投稿: 渡辺 | 2007/10/15 17:25:54
秋の「雪国」ですねw
先生の
seven wonders of the worldは
何ですか?
私は
何故この世ができたのかなあと
宇宙はどうなってしまうのかなあと
何故生物はできたのかなあと
意識って何だろうということです。
あと3つは
またそのうち考えますw
意識は生きているうちに知りたいな。
先生よろしくお願いします。
投稿: tomato | 2007/10/15 2:38:43
アップされている講演だったか、ブログの中だったかで『脳とクオリア』の改定版を執筆中だと知り、読まずに待っていますが、まだまだ出版されそうにないのですね。
楽しみにしています。
時々、進捗状況を載せていただけたら幸いです。
投稿: nama | 2007/10/14 23:49:49
岩村さんの下の名前は「憲」じゃなくて「憲一」ですヨ!
オレも新潟行きたかったですー
投稿: 野澤 | 2007/10/14 23:42:54
このエントリーからは、茂木博士のライフワークであるクオリアへの思いが、強く伝わってきます…。
思えば、茂木さんはどんなに多忙な時でも、このライフワークを手放すことはなかったし、これからも決してないと確信している。
「中央公論」9月号に連載中の「新・森の生活」を読んだ時に、茂木さんのクオリアへの思いが、いささかも変わることなく、むしろいや増して深く強くなっていることを感じた。
『脳とクオリア』の改訂版のための作業、一日も早くとりかかれるといいですね…。
季節は急速に「中秋」から「晩秋」へと移り変わっていきます。
茂木さんの思いが実を結ぶ日が、一日も早く訪れてほしい…そう願わずにはいられない。
投稿: 銀鏡反応 | 2007/10/14 18:39:58
こんにちわ
掲示板で、「私は小学校の教師をしていますが、地球は自転しており、太陽の周りを回っている、太陽は銀河をまわっている、私たちは、どのぐらいの速度で動いているのですか、子供たちに教えたいのです。」と、質問があったので、「宇宙は、光速で、広がっているので、私たちは光速より遅い速度で動いている。」と答えたら、「そんな事じゃない!!」と、言って怒っていました。私は、何か間違っていたのだろうか?
タクシーの止まる所を待っていた、もしかして、複数のポイントに人が待っていたのかも?(^^)
投稿: tain&片上泰助 | 2007/10/14 15:48:16