ベルトマン博士の靴下
朝日カルチャーセンター
のあと、
飲み会でいつもの
ように「兆一」に行き、
帰ろうと靴を履こうと思った
時に事案は発覚した。
?????
ボクの靴と確認できるブツが
確かに並んでいるのだが、
何かが歴然とおかしい。
右の靴には、かかとのところに
色リボンがついている。
左の靴には、ついていない。
右はほっそりしているが、
左は少しふっくらしている。
内側の模様も違う。
しかし、どちらも間違いなく
私の靴である。
朝家を出る時に、違う靴を
左右一つずつ履いて出たらしい。
その事実に夕刻まで気づかなかったのは
仕方がないとして、
テープを巻き戻して朝に戻すと、
ボクは、ブルーバックで
テレビの収録をしていたのだった。
現場に立ち会っていた
電通の佐々木厚さんに、「あれ、
足まで入っていましたっけ?」
と聞くと、佐々木さんは、
「全身だから、もちろん
入っていましたヨ」
と言う。
シュートの時、プロデューサー
もカメラマンも音声の人も
ディレクターも
目を皿にして見ていたのでは
なかったか。
それでも、誰も気づかなかった。
量子力学の基礎の研究で著名な
JSベルが1981年の論文で書いた
「ベルトマン博士の靴下」という話がある。
「ベルトマン博士は、左右違う色の靴下を
履くのが好きである。毎日、どのような
色の靴下を履くかということは予想できない。
しかし、もし片方の靴下がピンクであると
いうことがわかったら、もう一方の
靴下はピンクではないということが
直ちにわかる。最初の靴下に関する観察が、
瞬時に二番目の靴下にかかわる情報を
もたらすのである。」
博士のこの奇妙な習慣が
量子力学の基礎にどのようにかかわるのか
という点について興味のある人は、
ひとつ少し勉強してみてはいかが
でせう。
時間をさかのぼって、
脳研究グループの会合。
柳川透が、脳の中の自発発火
と行動の変位の関係についての
論文を紹介。
戸嶋まゆみさんは、視床を電気
刺激し続けることで重度の脳損傷患者の
機能が劇的に改善したという
論文を紹介。
戸嶋さんは、ゼミのJournal Clubでの
論文初紹介であった。
研究所を出たら、田谷文彦が
追いかけてきて、
話しながら歩いた。
ああ、その間も、
ゼミをやっている時も、
五反田の街を歩いている時にも、
ボクの足はずっと左右が違って
いたんだなあ。
思えば朝、
ソニー広報の滝沢富美夫さんに
急ぎの仕事を送った。
「これで、私も戦車に追いかけられずに
済みます」
という滝沢さんの安堵に始まった
一日は、人間の脳がいかに大きな差異を
見逃し続けるかという事実に関する
一つの認知実験として終わったのである。
しかし、いくら茂木の仕事が
遅いからといって、戦車に追いかけられる
ことはないんじゃないですか、
ねえ、滝沢さん!
10月 13, 2007 at 08:00 午前 | Permalink
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脳は人生においてすべてを活用されることはありません。
ということは、人間はいくつになっても未完のままということでしょう…。
けれど、未完であるということは、それだけまだやれる、たくさんの可能性を秘
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コメント
名古屋へ講義に行くときに、地下鉄車内で
白と黒の左右ちがう靴を履いていた女性を
見たことがあります。
一種のファッションだそうです。
茂木さん、カッコイイ~!!
ってことですよ。(笑)
投稿: 長谷邦夫 | 2007/10/13 20:42:13
>朝家を出る時に、違う靴を
>左右一つずつ履いて出たらしい。
まことにお気の毒なお話ですが
天才茂木さんへの信頼感は増すばかりです(笑)。
>それでも、誰も気づかなかった。
アハ体験。
大きすぎる間違いには誰も気づかないことが
これによって実証されました(笑)。
投稿: 新屋敷 恒 | 2007/10/13 20:14:55
きょうのこのエントリーを読んで、失礼ながら思わず吹き出してしまいました(笑)。
昨日、茂木さんが違う靴を左右一足ずつ履いておられたとは、朝カルの講義の際にはいつも最前列で座って受けている私も、まったく!気づきませんでした。
実は靴ではないんですが、自分の場合、ふっと気づかずに食事のときに違う箸を左右一本ずつ持ってしまい、食べるときになって、あ!こりゃやばい、と気がついて両方同じ箸にする、ということをよくやってしまいます。
茂木さんも、毎日がいつもお忙しいからなのでしょうか、きっと無意識のうちに違う靴を一足ずつ履いていかれたのかも・・・しれませんね。
無意識のうちに大きな差異を見逃してしまう人間の脳・・・。疲労がたまるとそうなりやすいのかもしれません。
老婆心ながら、お体を壊されないよう、くれぐれもお気をつけてくださいね。
それでは、これで失礼します。
投稿: 銀鏡反応 | 2007/10/13 19:24:34
茂木先生、まあなんてかわいらしいのでしょう!
今度はお靴をお間違えになられたのですか。
以前、靴下をちぐはぐにお履きになられたこともありましたよね?
どんな人間にも間違えはつきものですから、そんなミスは気になさらない方がいいですよ。
別に人に迷惑をかけたわけでもないですし、そんな愉しい失敗はご自分自身で楽しまれるぐらいの余裕を持たれた方がいいのでは。と言いつつも、先生のお書きになられた文面からはもうすでに愉しまれているご様子が伺えますが・・・。
私も先生のブログにコメントした内容で赤面ものの間違いが何度か・・・。先生のブログにアップされた自分のコメント見て、「えっ???」。
ここで訂正させていただきます。
「盾の会」は」「楯の会」で、「オックス・・・」は「Oxbridge」ですよね。先生が学ばれたケンブリッジを間違うなんて・・・。
誤りに気づいたとき、顔から火が噴くのではと思うほど恥ずかしかったです。
ちなみに、私的分析によると、最初の誤りは「慌ただしい時間帯で読み返す暇がなかった」。
2番目のミスは「少々お酒をいただいていて呂律がちゃんと回らず、その時はきっとそう発音していたと見られる」-と反省しております。
投稿: K.M | 2007/10/13 18:31:37
こんにちわ
靴下の色に関する、関連情報が前にあるのでわかるのだと思います。昔あった番組で、「クイズ・ドレミファ・ドン」で、曲の、イントロで、曲名を当てるクイズがあったのですが、あれは、曲を知っておく必要があると思うのです。
また、「ペンギン」と聞くと、ニワトリ、鷹、スズメは、否定されるわけですが、脳の中で、ニューロンがOFFで、否定されていのか、ONで、否定されているのか、人それぞれ違う可能性があると思います。
「戦車」って、戦場にいるのですね(^^)。
投稿: tain&片上泰助 | 2007/10/13 16:18:19