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2007/08/30

擬態

仕事の必要上で調べものをしていて、
シロオビアゲハのことを
いろいろと思い出した。

 沖縄の斎場御獄に行った時に、
シロオビアゲハが飛んでいて、
 まるで死者の霊のようだなと
思った。

 シロオビアゲハのメスには、
ベニモンアゲハに擬態するものがある。

 ベニモンアゲハは、幼虫がウマノスズクサを
食べ、その有毒成分であるアルカロイドが
蓄積するため、成虫は鳥などの
天敵に補食されにくい。

 ベニモンアゲハは赤が目立つ、毒々しい
派手な模様をしていて、
 その警告色で鳥たちにシグナルを
送る。

 無毒の虫が有毒の虫に似る現象は、
報告者であるイギリスの博物学者、
Henry Walter Batesの名を
とって、「ベイツ型擬態」
と呼ばれ、ダーウィンの進化論に
おける「自然選択」(natural selection)
を支える有力な根拠の一つとなった。

 ベイツの報告した事例として、
「ドクチョウ」への擬態がある。
 


ドクチョウと、ドクチョウに擬態した蝶たち。
Bates H.W. 1862.
Contributions to an insect fauna of the Amazon Valley. Lepidoptera: Heliconidae.
Transactions of the Entomological Society 23, 3, 495-566.

 ドクチョウどうしも大変
似ているが、これは、毒などの理由で
補食されにくい種どうしが
 似たような姿になることで
シグナルを強め合うミュラー型
擬態の事例である。
 
 もう10年以上前、アマゾンの
マナウスに二泊だけしたことがある。

 ドクチョウがジャングルの中を
飛んでいて、そのゆったりとした
独特の飛翔パターンに魅せられた。

 もっとも、彼らが、本当に
ドクチョウ亜科(Heliconiinae)
の種だったのか、
 擬態した種だったのかは
はっきりとはわからない。

 シロオビアゲハの話に戻る。
 琉球大学の上杉兼司さんの
研究によると、ベニモンアゲハが
いる地域では、
ベニモンアゲハに擬態したメス
の生存率は確かに上がる
ようである。

 一方、ベンモンアゲハが
いない地域では、
 擬態型の生存率はむしろ
低い。
 目立ちすぎてしまうからであろう。

 地球温暖化の影響か、
沖縄諸島におけるベニモンアゲハの
個体数は年々増加し、分布域が
広がっていて、
 シロオビアゲハの擬態型の
割合も増えつつあるという。

 上杉さんの観察によると、
擬態型のメスは、シロオビアゲハの
オスにアプローチされにくいという。

 せっかく擬態して、鳥に食べられなく
なるのはいいが、
 異性に人気がなくなるというのは
うれしいようでかなしいようで、
 シロオビアゲハのメスとしても
複雑な気持ちであろう。

8月 30, 2007 at 08:28 午前 |

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受信: 2007/09/01 16:04:55

» 斎場御嶽/シロオビアゲハ/上原美智子「あげずば織」 トラックバック Seeds of Design!
茂木健一郎さんblogの中に「斎場御嶽(セイファウタキ)」に関する記述を見つけた。一度は出かけてみてたいと思っている場所だ。 沖縄の斎場御獄に行った時に、シロオビアゲハが飛んでいて、まるで死者の霊のようだなと思った。(「クオリア日記」エントリー「擬態」より引用) この文面から、知人が運営しているサイト(handmadejapan.com[日本の手しごと])で紹介されている沖縄の染織作家「上原美智子」さんの作品が頭に浮かんだ。「あげずば織」…という繭から引かれた1本の超極細の糸を縦糸と横糸にして、... [続きを読む]

受信: 2007/09/01 17:39:07

コメント

擬態でいろいろ思い出しました。

先日読み返していた『悟浄出世』の妖怪の定義。
妖怪は「自己の属性の一つだけを、極度に、他との均衡を絶して、
醜いまでに、非人間的なまでに、発達させた」ものであり、
「いずれも自己の性向、世界観に絶対に固執していて、他との
討論の結果、より高い結論に達するなどという事を知らなかった」。
あれほど執念深く何かにそっくりになっている姿が妖怪のようで(笑)。

今年の2月の朝カル対談で茂木さんが仰っていた
「バッティングセンターのおじいさん」のお話。
ハナカマキリにとっての「花」はおじいさんにとっての
「バッティングセンター」のようなものでしょうか?

ついこの間、本棚の奥からゴソゴソと引っ張り出し、
カワイイ表紙を眺めながらパラパラと読み返した『フィンチの嘴』に
書かれていた、人類は「専門化しないことに特殊化した動物である」
という言葉。

花がなくてもバッティングセンターがなくても、
人間は多様性に適応して生きていけるようになっているんですね。。。

擬態のほかに「死んだフリ」をするコたち、
すぐに捕まってしまいそうな気がするのですが
大丈夫なのでしょうか(笑)?
突然ポロッと落ちて、かたまったまま
「ねっ?ほら見て!死んでるでしょ?」と全身で言われても
まるで説得力がなくて。。。(笑)

投稿: | 2007/09/01 1:02:11

シロオビアゲハ♀のハイレヴェルな「悩み」
>>
その不自由サノムコウニ
シロオビアゲハ進化の「秘密の花園」が。

リスクを採る「男前の」オスが現れたら、ためらわずウィンクしろよ。
「狭き門」の扉を開けながら生きるシロオビアゲハに幸多かれ!と願うばかりの私であった。

投稿: 風のモバイラー&野村和生 from nomgroove.com | 2007/08/31 6:40:47

生かされている限り、変容する

生物は、長い歴史の中で常に「自由」を求めてきた

「自由」とは、自然を飼いならす事を最大の目的としている気がする

荘子の「胡蝶の夢」を読み終えて、はてしなく直感してます。

投稿: | 2007/08/31 1:16:55

おお!きょうの日記は、茂木博士の大好きな蝶の話題…。
それも、鳥などに捕食されにくい種に擬態する種の話だ。

幼虫の時分に、食草・ウマノスズクサを
お腹いっぱいにバンバン食べて、
有毒成分アルカロイドを体内に蓄えてサナギとなり、
時満ちて毒々しい赤い模様を持つ成虫に羽化して、
鳥などの天敵に
「私は毒入りで危険だよ。食べたらあんた、イチコロよ!」
という強烈なサイン=シグナルを発するベニモンアゲハと
同じように毒を持つ食草を食べて育ち、
鮮やかな赤や黄色や黒の斑紋を持つ成虫に羽化して
やはり天敵に強烈なシグナルを発して生き延びるだろう
アマゾンの毒蝶。

それに擬態して、自分が天敵に食べられにくくする
スベを、進化の過程で身につけたシロオビアゲハのメス、
そしてやはり同じような理由で毒蝶に擬態した、毒なし蝶。

双方とも、本来の姿はなかなか美しいのに、
天敵に食べられにくくするために
わざわざ毒を持つ他の種に擬態する。

そこまでしておのれの生存率をあげようとする
巧まざる天然の智恵には驚くばかりだ。

シロオビアゲハのメスのベニモン擬態型が
オスにアプローチされにくいというのは、
本当は同じシロオビのメスなのに、
オスに、
「あれぁベニモンのオスとちゃうのん?」
と、勘違いされてしまっているってことなのだろうなぁ。

折角毒持ちの種に擬態して、鳥などに食われにくく
なっているというのに、その姿の所為で、
本来のシロオビのオス=男性にもてにくいというのは、
メス=女性としては嬉し悲し半々で、
本人たちは博士の言われるように、
複雑な心境なのではないか。

要するに他の種に化けた女は、
同じ種の男に見初められにくいと。
(人間だと、この点についてはもっと複雑で、
必ずしも蝶の場合と同じでないけれど…)


それにしても、ベニモンアゲハの沖縄諸島における生息数が、
昨今の地球温暖化の影響で増え、それにつれて
シロオビアゲハの擬態型が増える傾向にあるとは…。

そうなると、シロオビアゲハの世界では、
このまま温暖化が進めば、
これから先、
ますます異性に人気のないメスが増える、
ってことなのかな?

それとも、これから先、
シロオビのメスに続いて、オスも
ベニモンに擬態する事態が
訪れるのだろうか?

いずれのようになっても
自然界のシステムが、人の想像を超えて凄い、ということには
変わりはないと思いマス。

投稿: 銀鏡反応 | 2007/08/30 23:14:39

シロオビアゲハの事を聞いて、茂木さんの女芸人の話を思い出す。
女芸人になるには、女を捨てて、みんなを笑わさなければならない。

 ホモサピエンスのメスとしても
複雑な気持であろう(笑)。

投稿: | 2007/08/30 12:03:47

今日は、ひさしぶりの雨です。
病院で付き添っていると、
いろんな方々と出会って、
お話をきいて、私も話をして、
帰るときには握手したりして、帰り道、
つらいのは、みんな同じ、と思う。

茂木様のクオリア日記を見る前は、
体調を崩して、どうして自分だけ、とか、
そんな考え方しかできなかった。
今日、数年ぶりの研究室の同窓会で、
もう行かないつもりだったけど、なんとか、
みなさんに会いにいこうと思います。

投稿: | 2007/08/30 10:57:40

シロオビアゲハの写真、メスの擬態型とともに写真等はないのでしょうか?興味をそそられます。

投稿: | 2007/08/30 9:08:23

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