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2007/08/18

北風と太陽

NHK出版のビルに入っていったら、
オオバタンこと大場旦が、
「どうぞどうぞこちらへ」
と導いた。
 
編集部の一角の机。
なにがしかの原稿を書けというのである。
一向に進まないので
しびれを切らして
オオバタンが編みだした最凶の
手段。

座ると、オオバタンは机の上のライトを
灯してこちらに向け、にやりと
笑った。
 
「ここは取り調べ室だ!」

私の脳の中で、ジグソーパズルが
かちりとはまった。


NHK出版内の「取調室」でニヤリと笑う大場旦

「カツ丼」のかわりに、
オオバタンはスターバックスのラテを
くれた。
「故郷のお母さんが泣いているぞ」
とは言わずに、
「刊行スケジュールはこうなっているんですから、
この頃までに入稿しないと大変なことに
なるのです」
とドスの利いた言葉で脅された。

私は、こうなったら仕方が
ないと、文化性や歴史性についての
思考に沈潜した。

オオバタンの追及を何とか振り切ると、
そこには小林玉樹さんのやさしい笑顔が
あった。

小林さんは、NHK出版で、
『プロフェッショナル 仕事の流儀』
の本を担当されている。

オオバタンの最凶の気配
と打って変わった、小春日和の
人なのである。
オオバタンと小林さんが並んで
座るのを見ると、
かの「北風と太陽」という寓話を
思い出すのは、私だけだろうか。


北風と太陽。大場旦(左)と小林玉樹さん(右)

日経サイエンス編集部で、
地球科学がご専門の
川上紳一さんと対談。

川上先生は、名古屋大学で地震や
火山、惑星形成、衝突などの研究をされた後、
現在、岐阜大学に研究室を
持ち、「縞々学」などユニークなアプローチ
で地球の歴史を解明する研究を続けられている。

お話をうかがっていて、地球科学は
detective workのような
ものだと思った。

岩石という確固とした証拠はある。
ただ、それをどのように解釈し、
地球の歴史という物語を
組み立てるかという点においては、
多くの自由度がある。
想像の余地がある。

トーマス・クーンの言う科学
革命における「パラダイム」の変化
というモデルにぴったりと当てはまるのが
地球科学であるというのが一つの
発見であった。

ヴェゲナーによる大陸移動説、
プレート・テクトニクス理論、
小惑星の衝突による気候の激変と恐竜の絶滅。
スノウボール・アース(全球凍結)。

新しい「見方」が提示される度に、
それまで積み上げられてきた知見が
覆され、
岩石という同じhard evidenceが
全く異なる枠組みの下に再解釈される。

川上さんに、地球温暖化について
どのように思うかうかがった。

過去に現在と全く同じ温度上昇が
起こったことがあるのだと、川上さん。
ヨーロッパとグリーンランドが
分離した時、海底からメタンハイドレートが
噴出して、気温が上昇した。

現在の森林限界よりもはるか北まで
森林が広がった。

全球凍結の後の温度上昇は、100℃という
大幅なものだった。

どんな変化が起こっても、生物界
全体としては適応するだろう、
と川上さん。

問題は、人間がその文明のスケールに
おいて適応が可能かどうかという
ことである。

地球科学は実に面白い。
川上さんの話をもっと聞いてみたい。

対談の様子は、「日経サイエンス」

http://www.nikkei-bookdirect.com/science/index.php 

に掲載されます。

電通で、セカンド・ライフの事業展開
に詳しい粟飯原健さんと
ブレスト。
もちろん佐々木厚部長も同席。

粟飯原健さんは大変シャープな方。
UCSFに留学して、MBAをとられ、
今は電通のベンチャーキャピタルの
運営に当たられている。

いろいろと実質的な議論をする。
充実した時間であった。

銀座の中にある「竹富島」。

佐々木厚さんの大学ゼミの後輩で、
放送作家の富樫香織さんが乱入。

「一本の番組の台本を書くのに本を
50冊読む」という富樫さん。

気の置けない仲間との楽しい会話。

久しぶりに寛いだ。

8月 18, 2007 at 11:14 午前 |

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» マイスター万歳 トラックバック 須磨寺ものがたり
朝から、ほうじ茶の焙煎機が、 機嫌が悪く、ギーギーとうなっていた。 先週から酷使したから、とうとう怒ったのかな? 油をさしても、おとなしくならない。 [続きを読む]

受信: 2007/08/18 16:22:19

» ここまできたか トラックバック きむ仮説。
このニュースを見ていただきたい↓ http://newsflash.nifty.com/news/ts/ts__yomiuri_20070818i111.htm ありえない話だ。 大学はひどいと言うことはわかっていたけど ここまで落ちてしまったのか。 この代行組織が成り立っている以上 利用する人がいると言うことだ...... [続きを読む]

受信: 2007/08/19 8:25:05

コメント

オオバタンのジェントルな取調べの雰囲気に安心しきっていると、オババタンと入れ替わりに顎鬚をたくわえたカールおじさんみたいな風貌の編集者が入ってきて、茂木先生が座っている椅子を蹴っ飛ばしたり、必死になって書き上げた原稿を「だめだ、こりゃ。こりゃー被○物○化じゃねえか。」の一言で破り捨てたりと理不尽で不合理な取調べが始まるかもしれないので気をつけた方がよろしいかと存じます。
「生命の危険」はとりあえずないとは思いますが・・・。

投稿: | 2007/08/26 16:34:42

小惑星衝突でふと思い出したのですが、今月の初めにNHKの再放送で「地球・46億年の物語」というのを見ました。

太古に小惑星が地球にぶつかった時の状態を、いまの地球を舞台に精巧なCGでシミュレーションしている映像をみて、言葉を失いました…。

地球に衝突した小惑星が、メリメリと地殻をはがし、高温の蒸気となった岩石…岩石蒸気が噴き出させて、日本列島をわずか数秒だったか、数分だったかで消し去っていくシーンには、思わず息をのんだ。

その岩石蒸気が、短時間で全ての大陸を焼き尽くし、海をひ上がらせ、ものの数時間で、地球全体を丸コゲ状態に変えてしまう…。

若し今にでも実際、こういう事態になれば、我々なんてあっという間だな、と思いました。

CGを見ながら、あのあと、新しい生態系が出来上がってくるのかもしれないけれど、いまの生態系のように、高い知能と認知能力を持つ生物のいる世界になるのだろうか??…こんな感想も持った。

投稿: 銀鏡反応 | 2007/08/19 5:04:19

大場さんと小林さんは、グルなのです。
大場さんがバッドコップで、小林さんがグッドコップなのです。
二人一組になって原稿を書かせてしまうのです。

畑に強力な殺虫剤を次々とまいても
毒に強い個体が生き残って増えていくように、
なかなか原稿を書いてくれないヒトが増えてくると
編集者の方々もそれに抵抗するように
最凶の方々が増えてくるのです。

うそです(笑)。

投稿: | 2007/08/18 23:08:59

基本的に岩石で作られた星である地球。

その地球のいろいろな事柄について調べる地球科学がご専門の川上伸一さんとの出会いが、茂木博士にとって、またも一つの発見をもたらしてくれたようだ。

地球科学は探偵の仕事のようなもの...まさに、言い得て妙というか何というか。


大陸移動説、プレート・テクトニクス理論、小惑星衝突、スノウボール・アース・・・。
地球を「探偵」するたびに新しい発見があり、新しい説・解釈が発表されると、古い定説と解釈は覆され、地球を構成している様々な岩石世界の歴史物語は再構成されるというわけか・・・。
まさにパラダイムシフトな世界なんですね。

温暖化を初め、いろんな変化があっても適応していくのが生物の世界。ただし、文明生活になれきってしまった我々人類は、たとえば、もし、急な気候の変化などに対応しきれるのだろうか。

今のような温暖化の時代なら、知恵を絞って、辛うじて変化に対応できるかもしれないが、スノウボール・アースになったら、難しいかもしれない。

きょうの日記とは関係ない話になるが、博士がボルネオに赴かれていた最後の日に、NHKのBS2にて「心の仏像」を見た。丁度この日は博士がご出演される日で、修験者のエイ!という気合いとともに、あの蔵王権現の像を背中に押し付けられる博士の姿が映っていた。

この番組で博士はたしかこのように語られていた。たしか「自分のやっていることが何でも意味付けさせられているのに、僕自身、疲れを感じている」と言われていた(記憶違いだったらお許し下さい)。

博士ご自身、あまりの多忙さと人気ゆえ、凄まじい毎日を送られるうちに、やはり、心のしんから疲れておられたのだな・・・。

一昨日までの、ボルネオへの旅は、そういう意味からも、格好のリフレッシュになったのではないでしょうか。(これも違ってたらごめんなさい)。
それではこのへんで。

追伸:「心の仏像」を見て、TVの画面に映し出された蔵王権現像は踊りだすようなポーズが印象的だった。またその顔が、何故か茂木博士のそれに似ているように見えた。

投稿: 銀鏡反応 | 2007/08/18 15:14:48

大場旦さんの最凶攻撃に、「一般人も意識は持っています、オオバタンはどう思いますか?」と、茂木さん得意のインタビュー攻撃で返す、なんて、どうでしょう(笑)。


子供の頃は、扇風機で、十分寝ていたのですが、最近はクーラーなしでは寝れなくなってしまいました。高齢化か地球温暖化かな?(笑)

投稿: | 2007/08/18 13:11:31

夏休み、親戚のお兄ちゃんが遊びに来た。
まだ中学生、読んだばかりの科学の本の話を
スイカを食べながら、ずっと話してくれた。
小学校に上がる前の私は、なんのことだか、
でも、蝉時雨のなかで聞いた話は、
充実した時だったんだと思う。

投稿: | 2007/08/18 12:32:54

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