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2007/08/17

グランド・サイクル

熱帯への興味は、子どもの頃からである。

 中学生の時には、タイム・ライフ社が
出していた世界の自然シリーズのうち、
第一巻の「アマゾン」だけが欲しくて
たまらず、講読の申込みをして
「アマゾン」の巻が来たら「ごめんなさい」
と継続断りの手紙を書いた。

 大学の頃、熱病につかれたように
なって、アマゾンのキボウシインコを
手に入れた。
 ランを育てた。
 そのうち、近所のペットショップで
寒さに震えているのが可哀想で
分けてもらってキボウシインコが
二羽に増えた。
 
 部屋の天井に、ツタの葉をからませて
ジャングルのようにした。
 母親は呆れていた。

 一匹目のキボウシインコは、「ボーボー」
と呼んでとてもかわいがっていたのだが、
ボーボーは英国留学中に死んだ。
 私の誕生日だった。
 「パーポー」はそれから
数年生きた。
 
 ボーボーを眺めているうちに
何だかむずむずしてきて、
 熱帯を舞台にした幻想観念小説を
書いたこともある。

 隙あらばジャングルに行こうと
画策していたが、
 実現したことは少ない。

 熱帯地域には数度赴いたが、
 本格的な熱帯雨林を見たのは、
1994年にアマゾンのマナウスに
行った時で、それ以来13年が経った。

 その間、どうも、
いわゆる「先進国」ばかりに
行きすぎた気がする。

 ボルネオの熱帯雨林を見て、
自分の直観は巡り巡って
グランド・サイクルを描きつつあるのかも
しれないと思い始めた。

 私は子どもの頃昆虫少年だった。
そのあと、アインシュタインにかぶれて
物理少年になり、青年になり、
 それから脳を始めた。

 クオリアについて最初に構想した
ことは、どちらかと言えば「結晶化の
原理」であったが、
 ここ数年「偶有性」(contingency)
が私の心の大きな場所を占めるように
なってきた。

 あれはいつのことだったのだろう。
 「偶有性の自然誌」
(Natural history of contingency)
という言葉が街を歩いていてふと
浮かんだ時、自然の中の多様性と、
進化と、学習と、心脳問題を
結びつける道筋が幽かに見えたように
思う。

 ボルネオのジャングルで、
サイチョウや、オランウータンや、
テングザルや、出会うたびに斑紋が異なる
蝶を見ながら、
 私はおそらく進化と意識を
結びつける方法を懸命に
探していた。 

 努力すべき方向が、日本の
日常を離れることで見えた。

 具体的な事実で押さえた
ことは沢山あるが、
 まずは、自分の観念的なスタンスが
固まったことを、とても
うれしく思う。

 熱帯雨林は、一つの「文化」
である。

 誕生してから一億年近く。
世界でも最も古い熱帯雨林に蓄積されて
きた文化は、複雑で、奥深く、
そして何よりも成熟している。

 いつもの簡易型デジカメではなくて、
α100を初めて使ってみた。

 距離に応じてレンズを替えて
写真を撮るなどということは、
生まれて初めてだった。

 幾つかのうるわしいイメージが
残った。
 つたないが、私の心が確かに
動いた瞬間の記録である。


トンボ。タビン野生生物保護区にて。


蝶。タビン野生生物保護区にて。


水辺のトンボ。タビン野生生物保護区にて。


ジャングルのはるか上空を飛ぶサイチョウ。
タビン野生生物保護区にて。


茂みの中の鳥。タビン野生生物保護区にて。


カニクイザル。Menaggol Riverにて。


カワセミが着水した瞬間。Menanggol Riverにて。


夕暮れにたたずむサイチョウ。Menanggol Riverにて。


木の上で休むトカゲ。Menanggol Riverにて。



たたずむテングザル。Menanggol Riverにて。


テングザルのジャンプ。Menanggol Riverにて。

8月 17, 2007 at 06:37 午前 |

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受信: 2007/08/18 8:21:29

コメント

おかえりなさいませ。

ジャングルの旅、満喫されたようですね♪

写真もすばらしい。トンボ・・特にいいです。

茂木少年が、部屋をジャングルにして、
お母様があきれる・・・
これは笑えました。

日本も、このままでは亜熱帯かジャングルに成りそうな勢いです。

投稿: ふわく | 2007/08/18 21:38:09

ボルネオ、何て生命力溢れるところなんでしょう。
日記を読んでから、普段の町並みに目を向けたら、あまりに人口的な無味乾燥のビルばかりで、違和感を感じました。
本来、人も自然の一部なんですから、その中でこそ生命力が磨かれる気がしてなりません。


素晴らしい写真の数々ありがとうございました。
自然に生きるものの美しさと強さを感じました。
そして、それを追う少年の目をした茂木さんのお姿を想像し、とても幸せな気持ちになりました。

今年の夏の暑さに負けず、未だ自宅の冷房をつけない私も、熱帯に住む資格があるかも!?です(笑) 

投稿: renren | 2007/08/18 21:22:54

エクアドルで人の手が入らない自然に出会ったとき、
不思議な感覚になりました。
地球は自然に覆われていて、自然の中に自分がいるんだ、
というようなものだと思うのですが、
言葉にしてしまうと、ちょっと違うような気がします。

茂木さんの写真を見て、
そのときの感覚が蘇りました。

投稿: aki | 2007/08/18 9:24:08

TEE♪・・遥かなる旅路
>>
茂木先生お帰りなさいませ。
>>

お昼前。中之島の朝日新聞社に近い住友中之島ビルで世界陸上2007大阪大会関連のアルバイトの面接を受ける。

朝日新聞社ビル1階にあるJTBに立ち寄る。トランス・ヨーロッパ・エクスプレスを辿る旅について、窓口の女性Aさんに訊ねる。ヨーロッパで一番気候の良い時期に、つまり5月から7月あたりに、スポーツのメイン・イベントが開催される。モナコGPを観て、カンヌ映画祭をのぞき、南プロヴァンスを歩く。バルセロナでガウディの世界に触れ、フットボールを観戦。ゲームの余韻に浸りながらBARで夜更けまで・・。パタゴニア、アンダルシアを巡りポルトガル、アルハンブラ宮殿へ。そして大西洋を望む。マドリードを経由しパリへ。テニスのフレンチ・オープンを観て、オランジェリー美術館でモネを観る。晩年モネが暮らした睡蓮の館を訪ね、あとは時間の許すかぎりカフェ巡りを。さあユーロスターでロンドンへ。

ウィンブルドン選手権大会をじっくり腰を据えて観戦。夜はフットボール・ゲーム観てPubへ。あとはイングランドの田園風景を楽しみながら鉄道旅を。

ふたたびユーロスターでドーバーを渡りパリへ。オランダ経由でぜひ運河の船旅を。ドイツ、フランクフルトに入りシティナイトラインでいざウィーンへ。線路は続くよどこまでも♪いざ往かん!TEEの旅を・・

すこし入れ込み過ぎた^。^ので、おなじく1階のカフェ&パブ「トップT」で昼めし。メンチカツのランチ。イケマスここは。

フェスティバルホール事務局に立ち寄り、友の会入会の話。2009年から立て替え工事が始まるそうだ。数々の名演を生んだ舞台もひとまず幕ということですね。吉田都さんのダンスが蘇る・・

炎天燃えるような中之島・四ツ橋筋を北へ。アバンザ堂島のジュンク堂へ。「ガンダムで英語を身につける本」(宝島社発行)を買う。これはホント愉快な本です。寮美千子さんの「楽園の鳥 カルカッタ幻想曲」を取り置きしてもらう。懐がサビシカッタので。まあそんなわけで最後にやはり、1階のカフェ(シアトル系・・名前忘れました)でふたたび和んでしまったワタクシなのでした。。メデタシめでたし。

ドンドン♪

投稿: 風のモバイラー&野村和生 from nomgroove.com | 2007/08/18 9:00:06

愛読者、テレビも、です。お話感動しました。写真もすばらしいです。
思わず自分も行って見たくなりました。ありがとうございます。

投稿: 小林晃人 | 2007/08/18 8:03:13

愛読者、テレビも、です。お話感動しました。写真もすばらしいです。
思わず自分も行って見たくなりました。ありがとうございます。

投稿: 小林晃人 | 2007/08/18 8:01:44

まずは お帰りなさい。ご無事でなにより。

素敵な写真の数々 はあぁ~とため息まじりに拝見しました。
特にとんぼの羽色の美しさと言ったら!
人工美は自然美にとてもかないませんね。
サルがジャンプするところやカワセミが着水する瞬間の写真など、ずっとシャッターチャンスを狙ってカメラをかまえる茂木さんの姿を想像しました。

今回の旅回顧録 静かな興奮、感動が伝わってきました。 
日常から大きくかけ離れた環境に身を置くという、自分をリセットするような体験の効用はこれからじわじわと浸透していくのでしょうね。

インターネットが使えない数日間が茂木さんにとってどんなものだったか、興味は尽きません。
心ときめくご報告 ありがとうございました。

投稿: 高橋純子 | 2007/08/18 6:08:50

 すごい写真ですね。すごいとしか言い様が無い。
 私は茂木さんがボルネオに行っているお盆の間東京でずっと仕事をしていて、その間株価がおかしくなって、各国で公的資金が市場に投入され、数年前(テロのあった2001年)に日銀の仕事でお盆を返上した時のことを思い出し、なるほどマネタリストとはそういうことかなどと思いながら、やすい賃貸の自宅でサラダを食べながらSADEを聞き、泣いたりしています。私も茂木さんのトゥームレイダーのような行動力がほしい!!。時代の空気が癒しや和み的なものから攻撃的なものに変わってきている気がして自分が取り残されているように感じています。しかし、このお盆にボルネオに行ってこんな写真を撮ってくるコナン・ドイルのような茂木さんの若さやエネルギーに脱帽です。

投稿: taira | 2007/08/18 0:31:13

日本をお留守にしていらっしゃる間
寂しかったので「ボルネオ」で検索していたら
ジャングルの昆虫、食虫植物の
アップの写真オンパレードのブログを
見つけてしまい、怖いもの見たさで見てしまいました。
ジャングル、恐ろしいですね。
あんなに食虫植物があるなんて、エサの虫が
どれだけたくさんいるの?と不気味になりました(笑)。

爬虫類はカワイイと思えるのですが、
もうヤママユガの幼虫とか、なんだかわからない
毒々しい赤と黒の芋虫の団体さんのお食事風景とか、
白い粉を吹いたようなワシャワシャの毛虫とか、
思わず「どこの部屋ですか?」と聞きたくなるような
まわしの似合いそうな胴体の巨大スズメ蛾とか、
超!巨大ナナフシとか、スゴいです。。。

私が子供の頃、飼っていたのは友人宅で生まれた手乗り文鳥でした。
換羽期に抜けた羽を死んだ後も手元にとっておいて
だいぶたってから埋めました。。。
26グラムでした。ボーボーちゃん、パーポーちゃんの
もふもふの重量感には負けてしまいますね(笑)!
フィンチが大好きになり、その昔
表紙のフィンチのイラストに惹かれて
書店で平積みされていた『フィンチの嘴』を衝動買いしました。
(ダーウィンだの進化論だのにそれほど興味があったわけではないのに!)
人を恐れずに寄ってくる野生のガラパゴスフィンチたちに
憧れました(笑)。

おサルさんたち、「かわいい」というより
哲学者のような雰囲気です。

投稿: まり | 2007/08/18 0:17:30

カワセミは日本で見かけるのと同じなのでしょうか。
コバルトブルーを思わせる背中の青が、瞬間、水しぶきに溶けたかの様ですね。

あの美しい鳥を、また見たくなりました。

投稿: 大栗 勝(ミーさー) | 2007/08/17 22:53:13

観察の鬼、茂木さんの面目躍如のような文章と写真が楽しいです。

私は今、思うところあって、籾の発芽をペットボトル内で観察中です。興味津津。楽しくて仕方ないです。

ボルネオと種籾。観察対象は無限。

投稿: fructose | 2007/08/17 21:35:46

一枚目のトンボの写真とカニクイザルの写真が特にいいですね。
うーん、世界は美しい。そして在り難い。

投稿: pteron | 2007/08/17 20:46:46

茂木博士、おかえりなさい! 御無事でなによりです。

早速お写真を拝見しました。その素晴らしさに感激しきりです。

ハネまで茜色のトンボ、目玉模様の愛らしい蝶、深い群青色に輝く水辺のトンボ…。

鮮やかな赤とさかのサイチョウ、

木の上に佇むカニクイザル、

如何にも「親父さん」といった風情で佇むテングザル、

水飛沫(みずしぶき)の中に輝くカワセミの青い影。

木から木へとジャンプする、テングザルの黒い影。


本当に美しい!…そして、面白い!


何とも言い様のない素晴らしさに心うたれつつ、このコメントを書いています。

自然の中の多様性とこの世界を満たす偶有性、意識と進化、そして、学習と心脳問題を結びつける線もしくは方法を、博士はボルネオの密林で、蝶たちや鳥たち、いろんな生き物たちと出会いながら、懸命に見出そうとされていたのだ…。

「誕生してから一億年近く。
世界で最も古い熱帯雨林に
蓄積された文化は、複雑で、奥深く、
そして何よりも成熟している」…。

ありとあらゆる多様性・偶有性、生命の豊穣とが一億年という長い年月を書けて積み重ねられて、一つの成熟した「文化」として、ここの熱帯雨林は成立したのだろう…。

その「文化」にじかに肌で触れた、独りの若き脳科学者が、また一歩前へと、自らの進むべき道を進んでいく。


私が熱帯雨林に赴く事があるかどうかは、この先分からないけれども、若し赴く機会があったなら、その複雑精緻で奥深い、成熟した「文化」に是非、生で触れてみたいと、このコメントを書きつつ、しみじみ思う晩夏の午後。


投稿: 銀鏡反応 | 2007/08/17 19:25:02

茂木さんがジャングルに興味があるのは、人類の過去の記憶とつながっているかも?

我々人類の祖先が樹環に居た時期が二足歩行時期より長いので、その頃の環境の適正化の無意識の記憶が遺伝子化されているのかも?

投稿: tain&片上泰助 | 2007/08/17 17:39:17

お帰りなさ~い!
クオリア日記がお休みで寂しかったです。
が、何と素敵な動物たちのお写真!!!

赤い羽根のトンボ、まるで羽子板の羽根みたいですね~
ボルネオの森に抱かれた茂木先生はどんなだっただろうな~

熱帯雨林は一つの文化である、とは私もそう思います。
この2日ほど、経済とか投資とかそんな本ばかり
読んでいたので、
熱帯雨林の文化と対局にある経済は脳がコインで詰まってしまう
ようで、なんだか、上のお写真を拝見して
森の中の立ちこめた霧がうっすらと消えて
鳥や動物たちの鳴き声が突然聞こえだしたような・・・。

これからも、クオリア日記楽しみにしています~♪

投稿: tachimoto | 2007/08/17 15:28:48

津波にのってお帰りとは!

投稿: 僭越な斉藤 | 2007/08/17 12:09:12

「偶有性の自然誌」!
ラテン語でそんな本が書かれているのがどこからか発掘されたら、と夢想します。偶有性についてはうろ覚えですが、アリストテレスが形而上学で何か言っていたような気もします。

投稿: CUSCUS | 2007/08/17 9:44:08

おはようございます。
お写真を見ながら、なんだか私まで、
うれしくなってきました。
みんな、みんな、かわいいんやけど、
今朝の気分でいうと。。。
木の上で休むトカゲ、に心ひかれます。

投稿: F | 2007/08/17 7:23:34

今朝のブログを読みながら、僕は少年のころのことを思い出しました。僕が住んでいる小さな町の商店街が、まだコンビニも郊外大型店もショッピングモールない時代には、どんなに人々であふれかえっていたか。どんなに商店がオーラを放っていたか。あの雰囲気に圧倒されたばかりか、大人になっても僕は、多くの人間があふれかえっている場所に行くことが好きになっていました。地下鉄、都市圏JRの駅、繁華街、とにかく不特定多数の雑踏が好きなので、東京へ遊びに行くと、地下鉄を乗って移動することそのものが趣味のようになっていました。
今日の、茂木さんのブログを読みながら、「少年のころの、あの商店街の経験」で、あのとき「僕は、感動しまくっていたんだ。」と、いうことに気がつきました。これって、まったく、グランド・サイクルなんですね。あのとき感動していた、という自分をいま、鏡の前にいるように確認している気がします。

投稿: 内嶋 善之助 | 2007/08/17 6:59:13

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