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2007/05/16

バンザイオオバタン

聖心女子大学の授業を終え、
途中で仕事をしてから、
NHKに向かった。

お昼時。NHK出版の大場旦さんに
電話する。

なんだか気になっていたのには、
理由がある。
原稿を書いていないのだ。

議論を
していて、興に乗るとテーブルを
ドンドン叩くオオバタン。
社会思想系の本の編集者として、名をとどろかせる
オオバタン。
怒濤の原稿追い込みを得意技とする
怪奇オオバタン。

しかしながら、私がオオバタンと
書いている「美」についての本はすっかり進行が
遅れていて、まことに申し訳ないと
思っていたのである。

そば屋に入り、
席に座って、「さてさて」
と切り出した。

「最後にお目にかかったのはいつでしたか」
「1月ですよ、茂木さん」
「はあ、そうでしたか」
とトボける。

「とにかくですね、11月には
出していただかないと!」
「最後にオオバサンと本を出したのは
いつでしたかねえ」
「2004年ですよ、茂木さん。
『脳内現象』ですよ。忘れたんですか。」
「ということは、3年経ったんですねえ。
いやあ、時間が経つのは早いものだ。」
「茂木さん、このそば屋を覚えてますか?」
「ええ、来ましたねえ」
「『心を生みだす脳のシステム』を書き上げて、
打ち上げできたところじゃないですか! あの
頃は、茂木さん、ちゃんと原稿を期日までに
書いてくださっていましたねえ」

話しているうちに、オオバタンの
表情が険しくなってきた。

端正な渋面が、ますますシブクなった。


コワイオオバタン

これはマズイ。怪奇オオバタンの
本領を発揮されてはアブナイ、
と、私は懐柔を図った。

「実はですね、この間も、美の問題については
思索を重ねてきたわけですよ。」
「・・・・」
「つまりですね、千利休における、
美の革新の問題であるとか、あるいは
笠智衆の微笑みにおける、聖なる
私秘性のテーゼ、さらには、美という
課題をですね、より広い生命哲学の
文脈の中に位置づける試みがあるわけで
して。」
「・・・・・」
「つまりですね、そのような課題を」
「・・・・」

オオバタンのシブ面は変わらない。

やがて、オオバタンは、いつもより
ドスの利いた言葉で、
「なんだかんだ言っても、ブツがないと
困るんですよ」
と漏らした。

ボクは、肝を冷やした。

いよいよ
暗黒の雲が立ちこめ、雨がザアザアと
降り始めるかと思ったが、
案に違って。
言うべきことは言った、と思ったのか、
オオバタンの表情が次第に明るくなってきた。

ソバをすすり、
いつものように思想界の動向などに
ついて語り合っているうちに、
「納期の遅れ」などの問題点が
あったとしても、オオバタンと私は
同志であるという原点が確認され、
そしてオオバタンはついに、
「わははははは」
と笑ったのである。


バンザイオオバタン。

笑った笑った。オオバタンが笑った。

コワイオオバタンが、バンザイオオバタンに
なった。

ボクは、たとえこわくても生きていて良かった!
と心から思ったのである。

5月 16, 2007 at 07:04 午前 |

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コメント

傷だらけのマキロンにも愛の手をお願いします。(_ _)

投稿: マキロン応援団 | 2007/05/17 8:51:17

私は、茂木さんをちょっと誤解してるカモシレナイカモシレナイカモシレナイldジャ;オcぃうs。
茂木さんの日記、ひそかにほぼ毎にち拝見させていただいてたんですよ。じつは。。。
それで、茂木さんはテレビでだいかつやくで羨ましいし、大変そうだなあとおもってたんです。よ。
松本仁志さんとか椎名林檎さんとか、とかとかとか、わたしがお会いしてみたいひとと対談とかしててそれはとっても羨ましくて、また、忙しすぎて研究とか思索とかする暇もなかったり、、、、、、、、、、、
まあ、暇がありすぎてだれからもあいてにされないのも過酷っちゃ過酷なんではあるわけだったりしたりしなかったり。。。。
日本じんって、けっこう、風潮として?
こころあるひと(???????)に限って(??????)がメディアを避ける傾向はけっして否めなくて、やっぱそれはおくゆかしくも、やっぱそれだけじゃだめなようなだめじゃないような。とにかく、風の旅人、尊敬してます。続いて欲しい。そして、茂木さんとか池上さんとか松野さんとか、養老さんとか、(知ってる範囲でしかいえないですが)ノーベル賞とか文化勲章とか生前に評価される世の中であってほしいと本気でおもいつつ、まあ実際のところはそんな世の中になっていってる気もします。政治家にもなってほしいなあー

ところでわたしにはやっぱし物理とか数式はむずかしーすぎて無理かもとはやくも挫折しかかっちゃたりしてますの。

投稿: 太田(大塚)洋子 | 2007/05/17 6:57:48

茂木先生へ

お仕事がいっぱいあって、茂木先生は来た仕事を断っていないのではないかしら? と思いました。
怒濤のように押し寄せる仕事が、全て楽しく出来れば良いけれど・・、
モーツァルト・モードで・・・。
時には怒りを吐き出して、時には美に包まれて、その幸福を満喫し
モギタンは新たなる美の発見、文脈の思考の旅にでるのですね・・・。

投稿: tachimoto | 2007/05/16 23:36:33

「書く人」と「書かせる人」どちらが主導権を握っているのでしょうか。「書く人」と「書かせる人」どちらが冷や汗を多くかいているのでしょうか。「書く人」と「書かせる人」どちらが出版の時の喜びが大きいのでしょうか。
どちらも自分の好きな方の役割に沿って楽しんでいるようにも見えますが・・・。

投稿: ダンテス | 2007/05/16 23:30:13

2度目の投稿、お許し下さい。

あのコワイ!(失礼)オオバタンさんの前で、茂木さんが一所懸命いいわけをされているところがなんだか可愛かった。

でもオオバタンさんは、最後は大きな心でそんな茂木さんを「バンザイ!」して許してくれた。2人は同志という原点ゆえに。

やっぱり「同志」というのはいいですね。

投稿: 銀鏡反応 | 2007/05/16 23:20:11

「コワイオオパタン」のお顔を真正面から写真に撮るような
余裕をみせる「けんちゃん」のほうが、コワイですね(笑)。。。

投稿: まり | 2007/05/16 23:06:14

茂木さんのブログをうっすら定期的(これは定期的とは
言いませんね)に読ませていただいていて、勝手な妄想
にて『オオバタン』さんの容貌を作り上げておりました。
コワモテ、メタボ系、白髪まじりの剛毛ストレートショ
ートヘアー、髭がびっしり、高校時代のあだ名は『おっ
さん』・・・。

『オオバタン』さんがこんなにすっきりとした方だった
事に、自らの妄想の飛躍しまくりを若干反省しております。
でも、それと同時に、現実と妄想とがかけ離れれば離れ
るほど、いいぞ、脳!と思ってしまう自分もいたりします。

これからも、ふらりと、うっすらと、でも自分の中では
定期的に読ませていただきたいと思っております。

どうぞ、お体大事にして下さいね。

初めてのコメントだというのに、こんな稚拙な文章で申し
訳ありません。

投稿: クニコ・S | 2007/05/16 22:30:41

いや~、エントリーの内容を拝見して、どうなるやら…!?、と私もキモがひやりとしました。
最後にはニッコリ笑って頂いて…よかったですね。

それにしてもあんまり原稿を先延ばしすると、今度こそ雷が…!でも、茂木さんは今とっても忙しい人だから、進行が遅れるのはしょうがないものね。

オオバタンさんも、本当は、そんな茂木さんの状態やお心がトテモわかってらっしゃるから、コワイ顔の後でニッコリ顔になったのかも。

何はともあれ、お2人とも、お身体を大切に為さってくださいね。

投稿: 銀鏡反応 | 2007/05/16 19:12:46

こんにちはー
予定調和的延長戦に突入です。
でも昨日4日遅れを2日に短縮しました。
終わらないものは終わらない~

先生でも締め切りをぶっちぎる(暴言失礼)
ことがあるんですねー
仲間ですよ仲間!(無礼失礼)

ところで先生は細身で目の大きい男性を
カッコイイと思う傾向があるみたいですね。

先生とはしみじみ、男性の趣味が
合わないような気がしています。
あっても仕方無いですが。

私は先生みたいな、もさもさ天然パーマが
すきなので、実はアフロ万歳!。
スキマスイッチもトータルテンボス藤田も
大好きです。
ライオンワイルドォ~。

福山雅治もオダギリジョーも
パーマかけているときの方が
キュートでコケティッシュでした。

そんなパーマ好きなので、私は先生を写真でみたときにも
この髪型からしてお洒落な人だなーと思ったんですよ。
だまされたっ!

歳とればとるほど、パーマって
人を柔らかい雰囲気にしますよね。
ふわりふわりと、軽やかに生きたいものです。
あー、私もパーマかけたくなってきました。

とりあえず、髪型ファンが一人はいるってことで(笑

では今日もあと少しですが
心穏やかに楽しく過ごせますように。


投稿: bb | 2007/05/16 16:04:59

途中まで新潮社のオバサン編集者と勘違いして読んでいました(笑)。
養老孟司先生は「バカの壁」のヒット以来、厳しい原稿の取立てに悩まされたそうです。
自分ではイマイチの出来で世に出したくないと感じている原稿でも、世間が出版しないことを許さないのでしょうね。
「原稿の搾取構造」があると言えるかもしれませんね。

投稿: naritoku | 2007/05/16 12:11:46

大笑いバタンさせていただきました。
ジャンルは全く違っても、同じような関係に苦しむことも
あるので、とても人ごととは思えず、笑ってしまった。
あらゆる緊張を突き抜けて出る笑いは、生物の進化の最高の部類
に入るのでは無いかと・・・・以下省略。
秀吉が指6本だった事と、千利休の関係を考えながら
日々を仕事に費やす事にします (笑)。

投稿: 山下 | 2007/05/16 11:17:50

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