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2007/05/14

自分の人生にとっての

夕刻、京都へ。

伊藤若冲の代表作『動植綵絵』が、
『釈迦三尊像』とともに展示される
という一世一代の展覧会があり、
その会場の相国寺を訪れる。

もともと、相国寺は、若冲が『釈迦三尊像』と
『動植綵絵』を寄進した寺である。
明治維新の時に、動植絵三十幅
が皇室に献上され、爾来、宮内庁
所蔵となってきた。

今回の展覧会は、いわば「里帰り」
であり、「釈迦三尊像」と一緒に
なるのは、実に120年ぶり。

今後も、当分はないのではないか。
少なくともハレー彗星くらいに
思っていた方が良い。

ブルータスの鈴木芳雄さんが
ニューヨークから帰ったその足で
かけつけた。
写真を撮ってくださった。

photo/ Yoshio Suzuki: http://fukuhen.lammfromm.jp/

感想はここに書ききれないが、
一つだけ。

若冲に、もし『動植綵絵』がなかったら、
私たちにとってこれほど大切な画家には
なっていなかったのではないか。

むろん、一つひとつの絵は、何とも言えない
タッチ、書き込み、繊細さ、線の力動に満ちており、
瞠目すべき作品に違いないが、
たとえばユーモラスな一品も、抽象的な
画面構成も、
一方で『動植綵絵』という絶対的な基準が
あるからこそ照射されるものがあるように
思われる。

若冲ほどの境地に至らないとしても、
自分の人生にとっての『動植綵絵』は
一体何か、一人ひとりが考えてみるべき
だろう。

5月 14, 2007 at 08:43 午前 |

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受信: 2007/05/26 21:58:16

コメント

やっぱり若冲展にいらしてたのですね。
相国寺は学生時代に一度行ったことがあります。
天井の龍の絵がとても印象的でした。
手を叩くと反響することから「鳴き龍」って呼ばれて
いるんですよね。
久しぶりにあの龍に会いに行ってこようかしら。

投稿: かりんと | 2007/05/17 0:05:01

うっかり「自分の人生にとっての夕刻」と読んでしまい
しんみりした気持ちになりました。
『動植綵絵』を理解するにはその頃が適齢期。。。
ってことはないですね、はい。

投稿: りえ | 2007/05/16 14:22:24

ただただ、疲れました。
あのエネルギーを一対一で見つめるのは。
あの一幅の中にどれほどの集中と無があるのかと・・・
美しい、思いがけない自然の一こまを見たときに湧き上がる理由がつけられない涙と同じ種類のものが出てきて焦りました。

投稿: ミッシェルP | 2007/05/15 15:18:44

こんばんはー
明日で第一次締め切りです。
ふらふら~

若中の『動植綵絵』みたいに
素敵だなー感じられる基準があると、

たとえ興味外の分野であろうとも
きっとまた別の素敵があるのかもしれないと思えて、
一生懸命探って、心研ぎ澄まして、
自分にとって、何か新しいものに気づける
きっかけになりますよね。

そんな変化のパワーをくれるから
芸術って凄いですね。

愛も友情も芸術も知も優しさも
きっと全部そうなんだろうなと思うと
自分にとって好きなものが
もっともっと沢山になればいいのになー
と思います。

先生が話す内容は、ネット以外は
興味有る分野なので楽しいです。

最近はおかげさまで現代美術を
面白いなあと思えるようになりました。

いろいろな素敵が自分の中で増えてゆく
楽しさって本当にいいですね。

先生のそういった啓蒙活動に
とても感謝しています。

では今日一日
先生が楽しく過ごせますように。
そしてまた素敵なものをみつけてきて
くれますように。

おやすみなさいませ。

投稿: sirakumo | 2007/05/15 4:59:05

鮮烈!!生命を引き出す?構成。骨の髄まで揺り動かさつつ、動植物が描かれているのに、人間賛歌を感じています。ゆっくり訪れたいです。

あの耀きはどこからくるのでしょう。
額縁の絵でなく、巻物?掛軸に仕立てられた 日本の美。
ここに生まれてこれて良かったって事まで、湧き上がらせてくれる不思議なチカラ。

投稿: 井上良子 | 2007/05/14 22:20:05

中学の時先輩に物凄く絵のうまい人がいた
見た物を其のまま描ける人だったらしく
職員室だか校長室だかの廊下に
校舎を写真の様に描いた絵が飾られていた
プロの漫画家になった人を子供の頃からとてもよく知っているが
その人よりも巧かった

僕はあの先輩の描いた絵より巧い絵を知らない

これは子供の頃の誇張を含んだ記憶の為せるわざかもしれないが
校舎の絵の記憶を無理に見捨てる事はすまいと思う

僕はずっとこの絵に代表される何かを持ち蓮


投稿: nobori | 2007/05/14 20:23:46

去年、若冲の展覧会があった時に、行くべきであったと、きょうのエントリーを読みながら後悔している。

狩野派とか円山応挙などにはない、ぬわっ…と言った感じで粘っこく、しかし力強く立ち上がる生命力が感じられる、あの作風がトテモ好きなのに…。

あの時行っておけば、若冲のユニークな筆致の中に生命感あふれる画風に触れられたのに。若冲という芸術家の「魂」に触れられたのに。
しかも若冲にとって、この『動稙○絵』(○には糸偏に采。すみません。入力できません)が彼にとっての『絶対基準』というから、一生に一度は見たい!と思うのだが…。


相国寺の今回の展示は120年振りで、しかも今後当分ないとのこと…。自分にとって、京都はあまりにも遠い。新幹線で行けることは行ける。が、京の都へ上りて若冲に触れる時間が、今の自分にはない。

「若冲ほどの境地に至らないとしても、自分の人生にとっての『動稙○絵』(○は糸偏に采)は一体何か、一人ひとりが考えて見るべきだろう」

この問いは、日本人にとって非常に重いものではあるまいか。自分の中に確たる人生哲学がありやなしやを問うていると思う。

が、それでも、私は真剣に考えてみたい。魂の探究をしてみたい。自分の人生にとっての絶対基準は一体何かということを。それが人生如何に生きるかということを追求する、ということに繋がるはずだから。

投稿: 銀鏡反応 | 2007/05/14 19:40:54

茂木先生!㈱クバプロをご存知ですか?

投稿: tomoko | 2007/05/14 15:36:07

伊藤若沖見たいです・・
しかし関東の人間に京都は遠い
『動植綵絵』をまともに見たことがないので
何も書けません、いつか見に行こうと思います

それにしても良いシリーズです
普段使われていない場所から想像力がわき出てきます
次見られるときには必ず見ておこうと思います

投稿: 後藤 裕 | 2007/05/14 11:30:43

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