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2007/04/17

「今、ここ」にいるその存在感

お台場のノマディック美術館で
Ashes and Snow展を開催している
Gregory Colbertに再び会った。

http://www.ashesandsnow.org/jp/index.php

Gregoryの場合、10年のギャップ・
イヤーがあり、その間、一切作品を
発表しなかった。

「何をしていたのか?」
と聞くと、
「働いていた」という。

自分の持ったイメージを追い、
調査し、それを実現するために
10年間で27の探査旅行が必要だったと
いうのだ。

グレゴリーは、何よりも、魂の
孤独(solitude)が必要だったと
言った。

現代人は、あまりにも多くの
情報に串刺しされて日々を過ごして
いるが、孤独に浸って初めて
わかることがある。

グレゴリーの作品は、動物と人間の
間の共感(empathy)を描く。
グレゴリーの写真の中に表出するような
深い共感も、それに呼応する
魂の孤独があって初めて可能に
なるのかもしれない。

グレゴリーの今回の来日は約一週間で、
ニ、三日でタイ北部の現場に戻る。

インターネットもないような
地方に住む人々とのコラボレーションでは、
過去に自分がどのような栄誉を受けたか、
作品がどのように評価されてきたか
ということは全く役に立たない、
「今、ここ」にいるその存在感
だけで勝負しなければならないと
グレゴリーは言う。

考えてみれば、野生動物には「社会的地位」
や「名声」などない。「今、ここ」
の肉体の放射するものしか、
動物たちには見えない。
グレゴリーの仕事は、動物の
「今、ここ」の存在と人間の
「今、ここ」の存在を「瞑想」
の魔法でつなぐことで、現代文明に
対するすぐれた批評性を獲得している
のだろう。

レオナルド・ダ・ヴィンチの住んだ
ルネッサンスの時期は、古代ギリシャ・ローマ
の精神を復興しようとして、かえって
ただ過去に戻るのではなく、新しいものを
創造した。

現代の人類は、自然と人間の関係がより
調和的だった頃にさかのぼろうと志向
することで、単に文明を否定して時間の
流れを逆にするというのではなく、
新しい何かを生み出すことができるの
ではないか?

そんなことをグレゴリーに言ったら、
目が輝いた。

「知っているかい? ソクラテスが刑を受け、毒を
飲んで死ぬ前に読んでいたのは、『イソップ童話』
だったんだよ。」

えっ。

私は、驚いて、「プラトンがそう書いて
でもいるのか?」とグレゴリーに
聞いた。

グレゴリーははっきり答えなかったが、
後で確認すると、確かに、『パイドン』
の中に、ソクラテスが獄中で「イソップ童話」
(紀元前6世紀頃成立)を読んでいた
という記述がある。

「またギリシャ時代か!」
と私は笑って言った。

グレゴリー・コルベールの写真や映像は、現代の
『イソップ童話』だったのである。


4月 17, 2007 at 05:40 午前 |

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コメント

純粋な脱帽です。
帽子を床に置きます。

凄い存在感と説得力ですね。
写真でこれは。
久々キたあっ!
なにより好きかも(笑)
気持ちよい!
カッコイイ!

悔しいのが写真見る前に
先生の解説を読んでしまったことです。
自分の言葉にする前に読んじゃった。
しかしempathyにうんうん共感です。
でも現代社会批判は全くわかりませんでした。
その意識が私に全くないからでしょうか。

イソップ物語は私も、最近偶然思い出していて
ドキリとしました。
最近毎日日記を読んでいるせいか、
何が現実でどこまでが非現実で
どこまでが先生の意見だったか
わからなくなっています。

今私はアリストテレスが気になって
仕方がありません。まだ読んでないですが
同じ命題に対し、近代の学者の誰よりも
言葉のセンスと研ぎ澄まされた感覚が強くて
ビックリしたからです。

無知の自由が、もしや、
知識や制約が一切無い状態から、
感覚だけを研ぎすませていることを言うなら

一切の学問の真が存在しなかった時代の
天才が完成させた自然学は
究極のコンセプトワーク満載なのでは
ないだろうかと思ったのです。

答え合わせではない(現代人のエゴなのに)
遙か過去の人達の究極の感性と
現代知識とのコラボができたら
凄いことになるのではないかと思いました。
それがルネッサンスという成果だったのではと
思ったのです。

と思いながら、もう一度写真を見たら、
突然「現代のイソップ童話だったのである」に
ようやく「ああっ!」と思いました。

empathyとは別に
写真の中の物語性に「ああ!」なんです(笑)
たぶんこれが私のわからなかった「何か」、
そしてソクラテスが獄中で最後に読んだ理由
なのかなと思いました。

なるほど、それが「瞑想の魔法」ですか。
うーん、私は遅いですね。
そんな意味でまたもや脱帽なんです(笑)

普通にそんな会話して通じ合っているんですか?
相当凄まじいことですよね。
絶対に追いつけなさそうです。

投稿: toufu-ni-satou | 2007/04/18 1:40:07

イソップの童話(寓話)に、よく動物が出て来るが、Gregory Colbertの子供と動物が一緒に写っている写真に、イソップ的な要素があるとは…。

イソップの話(例えば“兎と亀”や“北風と太陽”など)には、文明社会で生きる人間のあり様に対する健全な批評が含まれているのかもしれない。それをソクラテスが、毒を飲んで死ぬ前に読んでいたという。

ソクラテスはおそらく、そこに、人間が無知ということを知ることの大切さを見出したのだろう。そして己とイソップとの共通点をも見出したのだろう。

ところで、グレゴリーの写真作品を過日、駅の構内に貼られていたポスターとして見ていたが、子供と動物たちが、仲良く静かに並んで佇んでいる様は、あたかもお互いに心を通わせているかのごとく、優しく深いものがあった。おまけにやはり、とても「瞑想」的であった。


思えば、日本もつい50余年前まではインターネットはおろかケータイすらなかった。TVがやっと登場してきたばかりであった。都会はともかく、地方では、人間たちは「今、ここ」にいるその存在感で「人生勝負」をしなくてはならなかったと思う。

いま、例えば東京で大きな地震が起こり、ネットもケータイも使えなくなり、インフラも破壊され尽くされてしまい、復興もままならなくなったなら、我々はもう「今、ここ」にいる存在感で勝負しつつ行き抜かなければならなくなるだろう…。

その時自分は如何するか?アタマの中にイソップの寓話とソクラテスの格言と、日本の聖哲の言葉を思い浮かべるのであろうか。

投稿: 銀鏡反応 | 2007/04/17 19:18:10

祝 いいとも ご出演。

連日連夜のご活躍喜んでます。

たまたまでしょう?が(ある意味、必然だけど)

こうなれば茂木スペシャルウィークということで

あのDEEP IMPACT のように!!七冠達成してください!

ぜひ七日間連続興行(笑)を。


そして

この話の次?には量子力学、タイムマシーン論

ことしの僕のテーマ(笑)が多元的宇宙論・・ まったしても、


「出たな!!」


frOM 風のモバイラー&Kazuo Nomura

投稿: 野村 和生 | 2007/04/17 15:33:53

いいなぁーこの写真。

スクロウルしていて、このphotograh(スペルok?)がでてきたとき、

ドキリとさせられた。

で、でたな!!・・ってかんじで。

すごいなあ、しかし。

いまのところ感嘆符しかでねえ・・

そういえば、競馬の武豊騎手は、数々のG Ⅰタイトルをとった彼でさえ

も、なかなか勝てなかった日本Derby を初めてスペシャルウィークで

獲ったのだけど>>デビュー前の「彼」に調教で初騎乗した時、

「出たな!!(化け物!)」と思ったそうだ。

そして、あのディープインパクトの時も。


いま、LED ZEPPELIN のラストアルバム「CODA」(最終楽章)

の圧倒的な 音圧に晒されながら書いてますが

彼らもまた「出たな!!」

っていうロックバンドだった>>世界最高峰の。

まあ最高傑作は 「PRESENCE 」だとは思いますが。

アルバムジャケットがまたいいんだよな。

つづいてJOHN LENNON を聴く。

最近つくずく思うのだけど。

彼のように「主夫」HOUSE HASEBAND(スペルcheckプリーズ!はずば

んど)になりたい!!と。

子供を黄色いホンダビートにのっけて

保育園に送っていくのだけど

いいなあ子供って!!いいものはいい!!と素直に感じられる

から。可能性と、そしてなによりも未来がある。

それにひきかえ・・ゼロナナネンモンダイは。


それはともかく

きょうは、茂木健一郎dayなのですか!?

朝刊を読んでいるとダ・ヴィンチの「受胎告知」について

語っているかと思ったら

それを読みながら昼食を、ウおっ「笑っていいとも」にくいしん坊バン

ザイ>>辰巳琢朗が!!なんて思ってテキトーに見ていると、

電話口に、なんと茂木さん!

あなた昨日は深夜、仕事の流儀 再放送で

しゃべってたばかりじゃない。

それでアサイチハ朝日でコンドハヒルイチかよ!!

なんてツッコミいれながら・・

そして茂木健一郎スペシャルウィークは・・奔るのである(笑)

おあとがよろしいようで>>ドンドン


きょうは、そう 「出たな!!」の一日 である。


投稿: 野村 和生 | 2007/04/17 15:05:09

Gregory Colbertさんの写真は、本当に、瞑想という魔法になり得るのでしょうか。

彼の写真はあまりに美しすぎるのではないでしょうか。

また、彼の写真の美しさを成り立たせるのは、非常に人間的な価値、現代社会そのものであるように思えます。

茂木さんは人間と人間以外の生命が対等であるということは、どのような状態であると考えられますか。


投稿: 松田正道 | 2007/04/17 11:00:38

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