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2007/04/29

ヴィトゲンシュタインの猫

「シュレディンガーの猫」をご存じか。

量子力学の不思議さを説明するための
思考実験で、
箱の中に猫と毒薬と放射性元素がある。

放射性元素が崩壊すると、毒薬が
こぼれて猫が死ぬ。

しかし、量子力学によると、
放射性元素が「崩壊」した世界と、
「崩壊していない」世界は
重ね合わされていて、
「観測」するまでわからない。

だから、箱を開けて観測するまでは、
毒薬のせいで「死んだ猫」
と「生きている猫」が重ね合わされて
存在していることになる。

実に不思議なことである。
一体どういうことか、
コペンハーゲン解釈、
多世界解釈、
量子重力理論などの諸説紛々、
まだ決着はついていない。

しかし、量子力学の不思議さを
説明するためとはいえ、
「死ぬ」と「生きる」が重ね合わさる
のではあんまり猫がかわいそうだ
というので、
しばらく前に「ヴィトゲンシュタインの猫」
というものを考えた。

猫が、ヴィトゲンシュタインに
難解な哲学を聞かされている。

5分後、果たして猫は目を輝かせて
聞いているか、
それとも眠ってしまっているか。

量子力学によれば、「聞いている猫」
と「眠っている猫」が観測するまでは
重ね合わされていることになる。
これが、「ヴィトゲンシュタインの猫」
である。

肝心なのは、猫が眠っているか、聞いているか
に関係なく、ヴィトゲンシュタインは
blah blah blah(ペラペラペラ)と話し続けている
ということ。

お好みによって、「塩谷賢の猫」「池上高志の猫」
「郡司ペギオ幸夫の猫」などとしても良い。


「ヴィトゲンシュタインの猫」

「科学大好き土よう塾」の収録。
福井茂人さんにお誘いいただいた。

ボクは、小学校5年の時放送委員会で
スタジオのカメラマンをやっていたことがある。

だから、カメラにはなんとなく馴染みがある。

スタジオでも、カメラの様子をふらふらと
見てしまう。

子どもたち(りん、まいほ、なおき)や、
中山エミリさん、室山塾長と
楽しく話した。

2007年5月26日(土)に放送予定。


科学大好き土よう塾のスタジオ。

終了後、近藤浩正さんと、電子顕微鏡の
話をする。
走査型電子顕微鏡で、どのようなおもしろい
ことができるだろうか!
最近は個人でも買えるモデルが出てきて、
養老孟司さんも500万円くらいのを
買ったという。

土に向かって難解な哲学をひとしきり
話したあとで、
微生物が眠ってしまっているか、それとも
起きているか、
そっとのぞいてみたい。

4月 29, 2007 at 08:24 午前 |

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いいお天気になりました。 まだ4月なので五月晴れとはいえないけれど、 一歩手前晴れ!(笑い) [続きを読む]

受信: 2007/04/29 11:21:05

コメント

ヴィトゲンシュタインがネコに哲学を語っているという仮定そのものが
事実であるかどうか問われうることについては、想い巡らさないのですか。

投稿: ななし | 2007/05/08 18:45:40

あの猫のzzzzzzだけが異質に見えたのは何故?

投稿: 井上良子 | 2007/05/02 12:18:59

シュレディンガーもヴィトゲンシュタインも、私の知らない人で、
問題の本質についても、よく分からないのです。
観測されるまでは確定していない、という話は聞いたことがありますが、
意味が分かりません・・・。
自然界のモノは、「予想する」という行為はしないと思うので、
普通、出会った瞬間がすべてであり、出会った時には確定している
と思います。
確定していない状態とは、人間の心が描いているフィクションではないのでしょうか?

ヴィトゲンシュタインさんが、一匹の猫を座らせて、目をつぶったまま
哲学の話を聞かせ続ける。彼は、話しながらも、猫はどうしているかなあと
想像すると思います。 目をつぶっている間だけ、
心の中の、寝てしまっているか起きているか、どちらかの猫と、
彼の前の、本物の猫が、重ね合わされる、と思ったのですが、
この考えは変でしょうか?

投稿: u-cat | 2007/05/01 2:21:40

おはようございます。
富士山が朝靄で赤く染まっています。

思えば誕生日プレゼントは
小学校五年生の時が望遠鏡で
小学校六年生の時が顕微鏡でした。

今日一日が良い日でありますように。
ではおやすみなさいませw

投稿: tukifukuro | 2007/04/30 6:05:55

ヴィトゲンシュタインは野茂英雄とならんで、私には男の中の男です。

<If it is, it is not. Yet if it is not, it is.>
これにまともに挑戦する人生は、過激で破滅的にならざるを得ません。

たとえば「外界」では状態の重ね合わせが起こっていても、ヒトのがそれを認識しようとすると、現時点の進化段階の脳が処理できる論理では納得できない。重ね合わせを奇異に感じるように出来ている脳にはシュレーディンガー・ヴィトゲンシュタインの猫をすっきり理解できることはないと思う。

普段日常では、矛盾した考えや行ないに対して無自覚で平気であるのに、いざ自己の脳の矛盾処理を考え出すと平気でいられない。
論理のみならず倫理についても考え抜いて、心の平安を獲得しようとしたヴィトゲンシュタインには遂に平安は訪れなかったみたいです。

投稿: fructose | 2007/04/30 1:26:04

「塩谷賢さんの猫」にはPTSDの猫と
そうではない猫とがいるのでしょう(笑)?
「茂木健一郎さんの猫」もたくさんいそうですね。
ちゃんと話を聞いて深くうなずく猫、
早口に圧倒されてキョトンとする猫、
遊んでくれているのだと勘違いして
じゃれつこうとする私のような能天気な猫。。。

ところで、これは
ヒゲのあるツチノコの絵???
うそだピョン♪
(ゆるいカンジのじゃれ方でごめんなさい。)

対称性のない相手にも難解なことを
語り続けるその情熱は一体どこからくるのでしょう?

投稿: まり | 2007/04/29 23:22:08

こんにちは、芋虫小僧です。
自分はGWは会社にフル出場です。
空がまぶしい。水面がまぶしい。自然が見たい。
5月がはじまるんですねー。

日記前後しますが、MRIは昔自分の研究室にもありました。
液体窒素でやたら遊んでいました。
話したいことは山盛りあるのに遅筆でなかなか書けません。
敵は眠気。あとどうしてもウチは猫が優先なんで(笑

講義論文とプリコジンと意識と記憶。
メタファーや直感。
隈さん的「制約の創造性」。
アダプタビリティーループの疲弊。
色々考えるのが楽しいです。
いつも面白いテーマをありがとうございます。

まとめたら書きますー。というか以前からずーっと、
モノロジで書くなーといわれているような気もしてますから
今度お話できたとき用に貯めて置いてもいいのかな。
でも開口一番「モノロジ!」って言われたらヘコミますので
お手柔らかに。
うーん、言われそうだなあ~。

ウチの猫がヴィトケンシュタイン哲学で寝るかどうかは
やっぱり量子力学にあわせて半々で結論は出ませんが、
どちらにせよ、一晩中ちょっとしたノクターンを楽しんでいますよ。
贅沢な猫だよなー。


投稿: imomusi | 2007/04/29 21:48:52

猫に話しかけると、日本語が分からなくても、こっちを
じっと見て、ちょっと、まばたきして、ちゃんと、聞いています。
しばらく家にいた猫も、そんなふうでした。短い間だったけど、
ずっと一緒にいて、慌てて出ていったきり、帰ってこなくて、
こんな、喪失感だけが残るなんて、思ってもいませんでした。

投稿: F | 2007/04/29 20:10:11

シュレディンガーの猫の問題について、まだ決着がついていないとは!…ところで唐突に今思い出したが、シュレディンガー猫の話は昨年だったかの朝カルの、茂木先生の講演で聴いた覚えがある。

投稿: 銀鏡反応 | 2007/04/29 19:51:40

ネコがかわいそうだというなら、
代わりにゴキブリとかハエの「生き死に」を
かさねてみるのはどうでしょう?
それにしても私には、
たとえ話のネコがかわいそうだという発想は出てきませんでしたねぇ。

投稿: ザビィ | 2007/04/29 16:40:03

僕は虫がダメです
残念がられるかもしれませんが特に蛾がだめです
当然それほどではないですが蝶もだめです
他の虫は大抵、人間がいると避けてくれるのに
奴らはマイペースを崩しません
たまに体にペトってします
凶悪です
何故、脳などのことを考えている人が昆虫に興味を持つのか
まさか、昆虫は条件反射の重なりの生き物
つまり、完成されたロボットだからなのか!!
と思いましたが、興味を持っていたのは子供の頃ですよねー
僕はトンボなら子供の頃追いかけましたので
トンボは怖くないのですが
(一時期は手で捕まえられました)
基本的に虫には関わりたくありません
ので、標本とか見ると軽く血の気がひいたりします

駄文失礼しました
シュレディンガーの猫
決定論では確率の外側に決定者(雑な表現ですみません)がいるため
量子力学の矛盾を飛び越えてしまいますが
非決定論ではこの理論のランダム性を証明しなければ矛盾を克服できないのだとか
これはとても難解な問題ですね
A→Bという物事の流れがあるとして
Aが存在せず、何もない状態からBが起こることを証明せねばりません
確率の中にいる人類に確率の外側のことが分かるのか
無茶な話です
私の頭脳でわかるくらいなら、私は自分の脳を解明する事は出来ない
(↑うろおぼえ)
じゃないですけど、科学は本当に途方もないモノを相手にしていますよね

PS 「無謀な研究」楽しく拝見させて貰っております
是非レギューラ化を・・

投稿: 後藤 裕 | 2007/04/29 13:17:20

こんにちは。

今が過去の集約ならば、
未来もまた今に含まれているのでしょう。
主観の世界をホントの意味で量子学は結び付けてくれるのかもしれませんね。
これは相対の世界を同方向に変える作業なのかもしれません。
僕も量子学を勉強しているのはつい最近ですが、
とても面白いです。

茂木さんを初めとして最近は科学者の方が研究室を抜け出して、
発言してくれるので、
素朴な科学ファンとしてはうれしい限りです。
頑張ってください!

投稿: hayashi | 2007/04/29 13:12:08

シュレディンガーの猫ならぬヴィトゲンシュタインの猫…。
新しい量子力学の難解さを説明する比喩モデル。

猫に向かって難解な哲学をblah,blah,blah,…と喋り続けると、聞かされている猫は起きて聞いているか、それとも寝てしまうか…?

まことに面白い比喩。シュレディンガーの猫と違うのは、放射性元素という毒になりうるものが用意されていないことと、猫が放射性元素の爆発による被爆で死ぬんじゃなくて、くーくー寝ているだけで済んでいることだ。

こういうモデルを考えるところに、茂木先生の、無闇な殺生を忌む、というか、生き物を愛しむセンスがよく出ていると思った。

2匹の猫ちゃんのイラストがなんとも可愛らしい。一匹の猫はこてんと寝ている。猫たちに向かってblah,blah,blah,と難解な量子力学の理論を説明しつづける声だけのヴィトゲンシュタインが滑稽に見える。

電子顕微鏡ですか。個人で購入できるものでも500万円!うは~。まだまだ手が届かない…(´ω`″;)せめて10万円前後なら…失礼しました。

難解極まる哲学をひとしきり土に話した後で、微生物が活発に起きて動いているか、不活発に寝ているかを、その電子顕微鏡でチョイト覗いて見る…というのはおそらくジョークなのだろうが、人間でもエライ難しい哲学の話を聞かされ続けていると、寝ている人と起きて眼を輝かせて聞いている人が出て来ることは言うまでも無い事だ。

そもそも、土の中の小さな虫や微生物は人間の言っていることを理解出来るのだろうか?理解はしなくても何らかの反応はあるのかな?ないかもしれないなぁ…まぁ、微生物は生命だから、非生命に過ぎない水にむかって「有難う」「バカ野郎」と言って呼びかける愚かな実験をするよりはましであろうが、私としてはモーツァルトを鯛に聞かせる、という愚かな商売を連想してしまった。

投稿: 銀鏡反応 | 2007/04/29 11:11:14

「シュレディンガーの猫」、
初めて聞いたのはもう十何年前のことでした。
箱を開けるとあるときは猫は死んでおり、
あるときはいきているという不可解さがショッキングで、
また、量子力学というものが、文系の私にはよくわからず、
「死んだ猫が生き返るの???」と
理系の友人を質問攻めにした記憶があります。

こんな私を「ヴィトゲンシュタインの猫」の猫にすると、
眠るか起きるかの具合がきっとおもしろいような気がしました。

でも、友人を質問攻めにしてしまう私は、
もしかしたら、ヴィトゲンシュタインのほうだったりして・・・?

投稿: aki | 2007/04/29 10:50:01

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