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2007/03/07

のびのびと

本当にせっぱ詰まっている時は、
タクシーで移動しながら仕事を
するけれども、
 電車で移動する余裕があると
無性にうれしい。

 千代田線で当座の仕事とは
直接関係のない英語の本を読みながら
移動していると、この世に
これ以上の贅沢はない!
とふつふつと喜びがこみ上げてきた。

 私は、ひょっとしたら世間様から見ると、
かなりヘンな感覚に
なってきているのだろうか。

 湯島駅で降り、不忍池のほとりを
抜けて東京文化会館まで歩いた。

 学生時代、散々ほっつき歩いた場所。
 やさしい暗がりに包まれていると、
さまざまな仮面がとれて、素の自分に
戻っていけるような気がする。

 あまり現代につきあいすぎるのも
イヤだな、と思う。
 同時代的なあれこれや、浮き沈みや、
揺れ動きは愉しいけれども、
 長い目で見ると、そのような
ことはきっと跡形もなく消えていって
しまう。

 もちろん、自分の生命自体がいつかは
跡形もなく消えていくものだから、
 流れに浮かぶうたかたのような
ものこそが自らに一番近いものでは
あるが、
 長い時間をかけて続いていく
うねりのようなものに接続しなければ、
視野狭窄に陥ってしまう。

 インターネットに象徴される
現代的な偶有性の場と、
古来変わらぬクラッシックな価値。
 この「対角線」的な組み合わせこそを
わが心の友にしようと思ったら、
 何だかいろいろなことが
ふっと楽になった。

 東京文化会館の大会議室は、
昭和的ななつかしい設い。

 山崎太郎さんとワーグナーについて
二時間大いに語り合った。

 ぴかぴかと光る鉱脈を掘り当てた気分に
なった。
 大学時代からの畏友との掛け合いが、
漫才のような
奇妙な面白さに満ちていたのである。

 私は相変わらずふらふらと
余計なことを言いながら散らして散る。

 山崎さんが、しっかりとした歩みで、
いろいろなことを整理していって
くださる。

 スタイルが違う二人がしかし基本的には
同じ方向を幻視し、仮想しているので
やがてぴったりと一致する。

 これは、まさに、先日鶴澤清治師匠が
言われていた、
 文楽における太夫と三味線の理想的な
関係と同じではないか。

 今年は三月の半ばには桜が咲くのでは
ないかと予報されている。
 会場にいらしていた
 電通の佐々木厚さんがそう言った。

 「桜の便り」と、不忍池の
ほとりを歩いていた時に胸の中を
ふっと通り過ぎていった
あたたかいものの感触が重なり、
心が久しぶりにのびのびとした。

 山崎太郎さんとの愉しい語らいが
魂をやさしく解きほぐしてくれていたの
だろう。

3月 7, 2007 at 07:28 午前 |

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受信: 2007/03/12 18:44:35

コメント

茂木さん、ごぶさたしてます。阪大の菊池です。
僕のブログについて書いてるかたがおられるので、しょうがないからひとこと。
 
僕は江原氏と対談された新潮45を買いましたが(茂木さんとの対談がなければ、買わない)、あれはまったく評価しません。茂木さんの発言だけを切り出すと、妙なことは言ってないんです。それは見事だとは思いますし、あれができるのは茂木さんならではだと思いますが、あれが江原啓介責任編集の雑誌に出ることの意味というのがありますから。
あれは僕の周囲で評判悪いです。
 
それから、「どうも好きになれない」かたへ、ですが、もちろん好きになってもらう必要はないのですけど、そりゃ創価学会にもまともな人はいますよ。あれだけでかい組織だもの。いろんな人がいるわけです。その点では小さなカルトとは話が違います。

投稿: 菊池誠 | 2007/04/12 1:35:22

ただこの瞬間の充実を求めて生きる刹那主義的な生き方は
ともすれば強迫観念に襲われます。けれど、人生の懐古に
より自分の歩みを振り返るとき、世俗のちょっとした変化
を掴む感覚が鋭敏となり、小さな生の息吹にも喜びを感じ
られるようにもなります。

人生、人情の機微に触れる上でも私たちには特に、茂木先
生のいう、『インターネットに象徴される現代的な偶有性
の場と、古来変わらぬクラッシックな価値』の『「対角線」
的な組み合わせ』は必要なのかもしれません。

その1つ1つの現在と過去の融合を大切に生きる、改めて
一期一会を大切にする茂木先生らしい考え方だな…と感じ
たとき、なんだかほのぼのとする自分がいました。

投稿: コロン | 2007/03/08 4:43:55

音声ファイルを聞いたのが、また夜中になってしまいました。
コメントは控えようと思っていたのですが・・・。
先日、ネットで購入した『ローエングリーン』を聞いていたので
ワーグナーのオペラについての山崎さんと茂木さんのトークは非常に面白く拝聴出来ました。
ワーグナーの天才的なひらめきと、ギリシャ神話に基づいた、人間の愛の奥深さを描いているという点、それが壮大なスケール感で音が
心の奥底に響きわたる、まさに鐘が鳴り響くような振動を感じました。

ワーグナーの旋律は、少しばかり脳に中毒症状を起こさせる魔力があるのかもしれないと、ふっと思いました。茂木さんの声の、緩急、強弱、のリズムは、まさにワーグナー的であると、だからこちらに響いてくるんだな、とー。

投稿: tachimoto | 2007/03/08 2:12:40

今年の桜は暖冬のせいで開花が早くなりそうですね。
東京は18日前後開花だそうです。

茂木先生も、昨日の語らいで、
春の陽気のように暖かく
心がほぐれられたそうで…。
本当によかったですね。

現代的でノイジーな世界と
あまりにも付き合い過ぎると、
視野が本当に狭くなる…。

茂木先生の言われる
「長い時間をかけて続いていく
うねりのようなもの」に繋がっていかないと、
現代の、ノイズに満ちた世界に足を取られて、
視野狭窄に陥ったまま、
ずるずると飲みこまれてしまうだろう…。

現代的サイバー世界で広がる偶有性と、
古来のクラシックな価値が、
対角的に組み合わさっているとみられる、今の世界。

茂木先生も、その世界で、自分の軸を失う事無く、
生きて行かれるのに違いない。

それにしても、茂木先生は最近、
またワーグナーに回帰されているようですね。

自分もワーグナーの楽曲は好きで、
「ワルキューレの騎行」などは、
若い頃何回も繰り返し聴いていました。

地の底から沸き上がり、天空へと力強く昇っていく、
そんな質感が、ワーグナーの音楽にはあるような気がします。

投稿: 銀鏡反応 | 2007/03/07 19:06:33

こんにちわ。東京出身ですがハワイでの5年を経て20年前年末に沖縄に移住しました。お正月番組でNHKでオペラ「ニーベルンゲンの指輪」(ニューベルングと書き間違えそうだった)を見て日本に帰ってきたことの深い感慨を覚えました。毎夜1時ごろから連夜一週間くらい、だったかな。斬新的な演出が印象的でした。ああ、もういちど見たいです。最近、黒田恭一氏がラジオで話しているのを聞いたら全曲はLP20枚分だそうです。

それから、中央公論12月号時評2006で「韓国では、ネット利用は実名が圧倒的に多いという」とありますが韓国は国民総背番号制で匿名での利用はできないそうです。すみません、ソースは行方不明です。
もひとつ、菊地誠さんがブログでhttp://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1171275645
茂木さんが江原啓之さんと対談していることについて、「茂木さんはおかしなことは言ってないけど江原さんの文脈で読むとおかしい」とかなんとか、、。???いつか直接対決してください。
わたしは菊地さんは「創価学会にもまともな人はいる」と言っているのでどうも好きになれません。社会貢献をしない創価学会はカルトだと思ってますんで。

投稿: 賀茂凪湖 | 2007/03/07 12:45:32

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