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2007/02/04

解きほぐせない

ボクは最近完全に本の虫になってしまって、
特に、全ての教養を英語で再構築しようと
少しでも暇があれば同時に十冊くらいの本を
読んでいる。

(本を読む時間自体がなかなかとれないのが
かなしいところなのだけれども)

Roger Sorutonによる
Kant. A very short introduction
(Oxford University Press)を読んでいると
(このA very short introductionのシリーズは、
本の袖が折りたたまれていてしおりにすることが
できるので、便利で好きだ)、

Since Kand is one of the most dificult of modern
philosophers, I cannot hope that I have made
every aspect of this thought intelligible to the
general reader. It is not clear that every aspect
of his thought has been intellible to anyone, even
to Kant.

とある。

カント自身にも、その哲学が本当に
わかっていたかどうかわからない・・・・

ボクは笑って、親友の塩谷賢を
思い出してしまった。

同じシリーズのHegelにも
「難解」ということが書いてある。

やはり本物の哲学というのは
難解なのかもしれないなと思う。

塩谷クンだけの罪ではないのだ。

問題は、その難しさをいかにやわらかく
丸め込んでしまうかということだ。

難しさについて考えていて、
塩谷が、
時間論に悩んで落ち込んでいた時
京都で天ぷらを食べたら元気になったという
話を思い出してしまった。

難解な哲学も、からりとおいしく揚がった
天ぷらにつつまれると、ふわっと天上の
世界へと
昇華してしまう。

うんうん考えていても、おもわず
うふふとなってしまう。
そう考えたら、
人間は、なんと素敵な存在なのだろう。

カントにビールを飲ましたり、
ヘーゲルにマシュマロを枝に差して
たき火であぶったものを差し出したり
した時に立ち上がる空気に、
ボクたちは救われるのではないか。

哲学の難解さは、天ぷらにされた
タラの芽のほんのりと幽かな苦みに
きっと良く似ている。

ボクがintractable(解きほぐせない、
難解な、扱いにくい、というような
意味)という英単語を初めて
「生」で聞いたのはGraeme Mitchisonから
だったかもしれない。

Horace Barlowを訪ねてCambridgeで
セミナーをした時、当時やっていた
非対称結合ボツルマンマシンのグラフ変換法に
よる解析の話をしたら、
Graemeが、

But isn't it highly intractable?

と聞いたのだ。

なぜ彼がそんなことを言ったかと言うと、
グラフ変換法で用いるspanning in-treeの
数が、

だという話をしたからだ。
 状態数Nが少しでも大きくなると、
天文学的な数字になってしまう。

 ボクは、Graemeが言った
intractableというのが、
「それは実際的な意味では使えないじゃないか」
という非難であることは重々承知しながら、
少し誇らしい気持ちでもあった。

そもそも、世の中の多くのことは、intractable
(解きほぐすことのできないもの)
である。

自分の部屋の中にある気体分子の動き
なんて、解きほぐせない。
生まれてから今までやってきた会話の
総体が私の言語感覚に重大な影響を
与えていることは疑いないが、
その故事来歴を明らかにすることなどは
解きほぐせない問題である。

恋愛も解きほぐせない。
三角関係は英語でlove triangleというそうだ。
三体問題が解きほぐせないことは、
数学的に証明されている。

解きほぐせないことがたくさんある
人生を万歳と言ってしまおう。

難解なことを思い切り考えて、
それから
タラの芽の天ぷらを食べて、
その苦みと宇宙の解きほぐせなさの
間にある不思議な共鳴を味わったら良いのでは
ないかと思うのだ。

2月 4, 2007 at 08:16 午前 |

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コメント

トコトンハテナ?という番組で、ティッシュペーパーやイチョウの落ち葉をてんぷらにしたら美味しかった。というのがあった。てんぷらという調理法(食感の変化とハイカロリー化?ハイジュール化?)は脳に美味いという感覚をもたらすということだった。付加物が元の難解さとは違うモノにし、元と違うのに元を理解した気分にさせる。(誤解させる?)と、誤解しているらしい自分を感じつつ、無意味なコメントなのに投稿してしまう。

投稿: | 2007/02/06 16:40:45

哲学の難解さはタラの芽の苦み。
そしてふわっと宙に浮こう。

考えて考えて考えていると頭が締めつけられます。
(茂木さんにはそんなことはないのかな。)
そんな時こそ今日の教えを思い出します。

人間は素敵な存在ですね。

投稿: | 2007/02/04 21:59:22

本当に本物の哲学というのは、難解なのかもしれない…。

まじめに取り組めば取り組もうとするほど、
ますます解らなくなる…そんなものなのかもしれない。

※問題は、その難しさを如何にやわらかく丸めこんでしまうか
ということだ。

そんな時はタラの芽の天ぷらのように、
苦い哲学をふんわりやわらかな衣で包んで噛み締めて、
そのやわらかな衣の食感とともに、ホロ苦味として味わってしまえ。

そうしたら、この上ない天上の歓喜と共に、
何か真理を掴むことが出来るだろう…。

哲学に立ち向かう、ということは、そういうことなのだと、
きょうの日記を読んで思う次第。


確かに世は、解きほぐせないものもので満ちている。
気体分子の動きも、恋も、
みんな複雑な知恵の輪のように絡まっていて、
容易に謎が解けないように出来ている。

しかし、だからこそ、人生は味わい深くなるのに違いない。
宇宙は豊かなのに違いない。

投稿: 銀鏡反応 | 2007/02/04 9:04:31

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