« Okinawa | トップページ | つかず離れず »

2007/02/25

安定した大地だと思っているけれども

竹内薫との朝日カルチャーセンターの
対談で、先日NHKのドキュメンタリー
番組「72時間」で見た、
バッティング・センターの
「ホームラン王」の話をした。

おじいさんが自転車に乗って
ミナミにあるバッティングセンターに
通ってくる。
標的に当てて、一日何十本もホームランを
打つ。

ところが、番組の後半になって、
「バッティングセンターがもう少し
したら閉鎖されてしまうんですよ」
とおじいさんが寂しそうに言う。

「ホームラン王」としての栄光
を支えてきた「バッティングセンター」
というインフラは、そのようにあっけなく
消えてしまうのだ。

はかないのはそれがミナミの
バッティングセンターだからと
思いがちだが、
実際には全て同じ事なのではないか。

舞台になるのが
「セリーグ」でも、「アメリカの大リーグ」
でも、何かを成し遂げる基礎となる
制度、仕組みは、極限すれば
ミナミのバッティング・センターの
ようにいつかは消えてしまうもの
なのではないか。

この地球だって、私たちは安定した
大地だと思っているけれども、
本当は太陽のまわりを物凄い
スピードでぐるぐる回っていて、
いつ小惑星がぶつかって壊れるか、
軌道が不安定になるか、わかっちゃ
もんじゃない。

私たち一人ひとりの肉体もそう。

だから、どんなに中枢にあり、
安定しているように見える
ものでも、実際には自身の中に
脆弱性を抱えているというのが
世の中の真実であり、
そのことを見つめないと
生の哲学から離れた、つまらない
人間になってしまう。

竹内薫とは、大学時代からの親友だが、
「茂木、お前そういえば昔
ニーチェの話ばかりしていたなあ」
と言うので、
「そうだったけ?」と少し驚いた。

高校以来ニーチェが好きだったことは
事実だが、そんなに会う度にしていた
記憶はない。

「茂木が、ニーチェやワグナーに
回帰しているのを見て、友人として
安心したよ。
お前、途中で、何というか世間に
対して配慮する人間になって、
「大人になったなあ」と思っていたんだけど」

ボクは対談中に言い忘れたことがある。
二人ともまだ本など出していなかった頃、
竹内薫が、その処女出版となった
『アインシュタインと猿』の企画を
日本経済新聞社に持ち込んだ時の
大胆さには当時しびれた。

「企画を持っていったんだよ」
と事も無げに言う当時の竹内がまぶしく
見えた。

この所、対談でも、講演でも、
途中で爆発したり、まずい発言が
あったりして、mp3で公開できない
というジンクスが続いている。

昨日も、途中で竹内が過激なことを
言ってしまったので、
「まいったなあ。これで、今日の
対談もmp3で公開できないよ!」
と言ったら、竹内ははらはらと
笑っていた。

いろいろ話したけれども、
一番言いたかったことの一つは、
境界人と本流などと言うけれども、
本当にまともな本流は、自分の中の
脆弱さがわかっているという
ことである。

セルフ・ダウトのある人が好きだ。

2月 25, 2007 at 09:05 午前 |

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 安定した大地だと思っているけれども:

» 哲学の世界へ トラックバック 4月8日
ソフィーの世界―哲学者からの不思議な手紙 ヨースタイン ゴルデル / / 日本放送出版協会 明日、コンビニ受け取りで、この本が届く。かなり分厚いらしい。 96年頃にベストセラーだったみたいだけど、読まなかった。 今回読んでみようと思ったのは、茂木先生の影響大ですな~。 好きな人を少しでも理解したいと思う気持ちは、 とうとう私を哲学の世界にまで、誘(いざな)うようです(笑)... [続きを読む]

受信: 2007/02/26 2:05:56

» 境界人 現代日本を科学する の感想 茂木健一郎氏の特異な個性  トラックバック 本を読めば『道は開ける』
前日は、竹内薫先生の科学インタープリター講座に参加し、本日は、同じ朝カルで、竹内先生と時代の寵児ともいえる脳科学者・茂木健一郎さんとの対談に参加した。つい最近まで、竹内先生のオフ会&忘年会は、茂木さんのグループと合同で行っており、7,8年前に2回ほど参加し...... [続きを読む]

受信: 2007/02/26 2:23:22

» 波形編集ソフトの憂鬱 トラックバック 丸山高弘の日々是電網 - ブログ、ときたまPodcast -
mp3などのリアル音声データを、切ったり貼ったりするソフトを、「波形編集ソフト」と呼ぶ。 圧縮されたmp3データなどは、編集用の伸張しながら読み込むらしく、数分の音声データなら使用に耐えられるのだが、講演録など長時間におよぶ音声データとなると、読み込むだけでも一苦労である。どうもこれは、ファイルサイズではなく、録音時間によって影響されるのだから、たちがわるい。 Photoshopなどのように、そこそこのパソコンでも、百MB単位の画像ファイルが難なく取り扱えるのに、ファイルサイズ数MBの音声ファイ... [続きを読む]

受信: 2007/02/26 7:45:01

» 境界人 現代日本を科学する の感想 茂木健一郎氏の強烈な個性  トラックバック 本を読めば『道は開ける』
前日は、竹内薫先生の科学インタープリター講座に参加し、本日は、同じ朝カルで、竹内先生と時代の寵児ともいえる脳科学者・茂木健一郎さんとの対談に参加した。つい最近まで、竹内先生のオフ会&忘年会は、茂木さんのグループと合同で行っており、7,8年前に2回ほど参加し...... [続きを読む]

受信: 2007/02/26 22:52:05

» マッコウクジラ トラックバック へなChoこ
十年も前になるか 宮崎から東京へのフェリーで 夜の甲板に立ち 足下にあるのは ただならぬ深さに蓄えられた 水のみである事に 深い畏れを抱いたのは 一月ほど前、薄靄の中 街灯に照らされた小道を歩き 彼方に見える赤い灯の その遥か先に広がるのは 透き通った ハイコント..... [続きを読む]

受信: 2007/02/27 22:48:42

» 地球の速度 トラックバック この地球を受け継ぐ者へ
※結論  みんな、「絶対速度」マッハ88で、地球と一緒に宇宙空間を移動してます・・・・ 今、この瞬間も・・・・1秒で30km・・・ ----------------------------------------------- 地球は、太陽の周りを円に近い楕円形の軌道を描いて1.0000太陽年に1回公転し、... [続きを読む]

受信: 2007/03/05 1:45:18

コメント

             宙


  空    安定した大地など どこにも 無い  海

             心            

投稿: | 2007/02/26 6:47:05

こんばんは。

今日の日記を読ませていただき、とっても励まされました。
2週間ほど、酷く落ち込み頭が割れそうでしたので。
まだ少しだけですが、ニーチェの「悲劇の誕生」を読み始めました。
こちらは、読みやすいですね。

映画「ルードリッヒ・神々の黄昏」が私大好きなんですが、
ワーグナーのオペラのCDをネットで購入しょうと思います。ワーグナーはいいなぁ、と思ったことがあるのですが、しっかりと、コンサートやCDで聞いたことがなかったものですから。
ちょっと、ワーグナーに浸ってみたい気持ち。

投稿: | 2007/02/26 0:05:53

自分は病気なんじゃないかとは全く疑わない人には
重症な人が多いというのに似てますね。

あっと言う間に盤石だったものが崩れた
という事のほうが歴史上多いですよね。

未来の世代にバカにされないように
現在盤石なものを半信半疑で見て生きたいものです。

未来において風化しない方法って、
普遍性を軸にする事なのかなぁとも思います。

投稿: HogeHoge | 2007/02/25 16:17:48

昨日は、いろいろと興味深く、またさまざまに考えさせてくれるお話が聴けて、本当によかった。

例えば、世間で「ブーム」になっていることなど瑣末なことであり、そんなものはほっといて、自分が正しいと確信する方向に進んでゆけばいいんだ、というメッセージは、私自身にとっても、おおいなる励みとなった。

その一方で、世間、肉体、社会の諸制度…。全ての事物は、どんなに安定しているようにみえても、実はその中に脆弱性を抱えているものだ、ということを昨日の対談で、改めて深く思い知らされた。


つまりは、自分が依って立つ基盤となるものは、それが「ドンナに中枢にあり、安定しているように見えるものでも、実際には自身の中に脆弱性を抱えている」のであり、それは、足でちょっと踏んでしまえば、忽ち抜け落ちて
不安定な世界へと落ちてしまうようなものなのだと思う。

それを常に知覚しているか、いないかで、自分はつまらない人間に堕するか、堕さないかが決まるのに違いない。

実をいうと、私は、ずっと前から(おそらく茂木さんや竹内さんに遭遇する以前から)、人間は、自分の依って立つところから、ちょっと足を踏み外せば、たちまち不安定なところに落ちてしまう弱さをもっているものだ、と思っていた。しかし、そういうことを知覚していて、なおかつ世の中に妥協しないでいれば、ある意味、堕落した人間にならずに済む、と昨日の対談で強く確信できた。

TVの情報番組で、とある教授がレポーターとして出演していたが、なんだか見事なまでに、堕落した感じになってしまっていた。これは世に、というかTVに、これは妥協してしまったからだ、と思っている。

反対に「NEWS ZERO」に出ている竹内氏や「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出ている茂木氏を見ていると、何時も何処かマジメで、毅然としているものを感じる。

私は斯く思う…この人たちは、いつ何時、何処へ行っても、何を語っても、世の中に妥協しないで、なおかつ、常に自己の中の脆弱さを知覚しつづけて、ものごとの本質に向かって邁進し続ける人なのだと。


私自身も、自分の脆弱さを見つめながら、世に妥協する事無く人生を生き抜きたいと思う。

投稿: 銀鏡反応 | 2007/02/25 10:13:58

コメントを書く