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2007/02/08

ツァラトゥストラでも読みたまえ!

大久保ふみさん、箆伊智充クン、星野英一クン
の三人の修士論文発表と審査。

このような時には、本人たちが緊張するのは
もちろんであるが、主査であり指導教官である
私は、それとは別の意味で限りない緊張と
葛藤を強いられるのはご存じか。

這えば立て、立てば歩めの親心。

うまくやってくれ、と祈りつつ、自分が
代わるわけにはいかないんだから、
じれったくて、そしてほっと一息。

無事、三人とも試験に合格して
修士になることになりました。
研究室でビールなどを飲んで
乾杯。

箆伊がお風呂上がりのような
顔をしている。

緊張の後の弛緩を味わうやよし。
君たちは、大いにご苦労さまでした!
しかしながら、私はまだまだ
仕事があるのである。

諸君、今日は大いに楽しんで
くれたまえ!
そう心で念じながら、すずかけ台を
後にする。

こうしてまた、誰かの青春が
白日を迎え、あらたなる頁が捲られる。

江村哲二さんとのジュンク堂での対話。

フリードリッヒ・ニーチェの
事実上の処女作である『悲劇の誕生』は、
「音楽の精神からの」という副題がついている。

時満ちて、
今また、音楽(ミューズに捧げられしもの)
から何かが誕生すべき時が来ている
のではないか。

ニーチェは「神は死んだ!」と宣言したが、
人間はそれで楽になったどころか、
大いに苦しくなった。

彼のsuperhumanという概念は、
そこからの悪あがきの果実である。

TBSが鈴を鳴らすと頭が良くなる
という番組を流したが、
そんなはずはないだろう、
というのはカモンセンスに照らして
わかるはずだ。

今、脳や人間を語る際に求められているのは、
あたかも機械であるかのように
単純化するスキームではなく、
一つの生命哲学である。

君、ノウハウや安易な処方箋を求めては
いけないよ。

ツァラトゥストラでも読みたまえ!

人間を単純なる機械にたとえる
時代は終わった!
無限に広がる生命の海に飛び込んで、
時におだやかに、
あるいは激しく、
すいすいぐんぐんと泳いで行こうでは
ないですか。


この杯を受けてくれ
どうぞなみなみ注がしておくれ
花に嵐のたとえもあるぞ
さよならだけが人生だ
   
井伏鱒二


修士論文発表の日。すずかけ台駅前
の「てんてん」でみんなでお昼を食べる。
左から須藤珠水、野澤真一、石川哲朗。

2月 8, 2007 at 08:13 午前 |

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» 社会的交通ゾーン トラックバック なんでもあり! です 私の日記!! 
 2つ前の記事で、アイデンティティは…  『個の“脳”と、社会的環境の両者ににまたがるもの』  と書きました。      つまり、『個の“脳”』と『社会的環境』の相互を考えずして、  “人”を語れないのです。  以下、『個の“脳”』を『個』と表記することとします。    *    私は、『個の“脳”』と『社会的環境』の『間』をつなぐものとして  放物線のイメージを描いています。  この『間』は、いわば社会的交通ゾーンと言えるものです。    以前、私は「放物線…」という記... [続きを読む]

受信: 2007/02/08 8:23:02

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受信: 2007/02/08 8:26:27

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関さんのことはガン闘病記にも書きました。 彼は大学の先輩です。 学生のころ、 当時の社会風潮をうつした会合の席でお会いしてからの 長いつきあいです。 とは言っても、 関さんが日本最大手の証券会社に勤めはじめたときに、 私が社員寮まで訊ねて行ったのを最後に、 ... [続きを読む]

受信: 2007/02/08 9:30:05

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@ついこの間の話である。TBSが情報番組の中で「鈴の音を聞くと頭がよくなる」というテーマで、それに基づくいろいろな「実験結果」を流していた。たとえば、集中力のない子供に鈴の音を聞かせる。すると、集中力が出て来て、勉強がはかどるようになる、などなど。 @実際の結果は、テストの結果は芳しくなかったものの、集中力は出ていた、とTVは報じていた。 @いまから思うに、あんな、鈴のチリンチリンを聴いただけで、脳が活性化するわけないじゃないか。そんなの、少し考えたら誰でもわかることではないのか。 @鈴の音は確かに... [続きを読む]

受信: 2007/02/08 19:14:56

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「脳科学者と作曲家が語る 世にも美しい音楽入門」 茂木健一郎×江村哲二トークセッ [続きを読む]

受信: 2007/02/08 19:49:18

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受信: 2007/02/09 0:41:16

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今度は頭が良くなる音ですか。ちょっと見てみたかった番組内容だったんですが^^;音を聞いて頭がよくなるなら、お受験のお母さん方が喜んで買いに走りそうです。白インゲンの時のプロデューサーと一緒だったんですね。2度あることは3度あるってところでしょうか。 [続きを読む]

受信: 2007/02/10 3:05:46

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受信: 2007/05/04 8:49:49

コメント

昔、私が修士試験を受けたときのことを思い出しました。
自分の書いた卒論とそこで書いた用語や1つ1つの数式のの意味
などを何度も確認して、プレゼンに備えていましたね…。

このブログ記事を読んで、茂木先生の新たな胎動を感じました。
茂木先生の中でもともともたれていた科学哲学が醸成され、旧来
のものを突き破ろうとしている…。

その息吹が感じられたことを嬉しく思いますし、心より応援して
おります。

投稿: コロン | 2007/02/09 4:55:45

実はその「鈴をチリンチリン鳴らすと頭がよくなる」という番組、私も見た。

鈴の音は確かに耳には心地よいが、それを聴いて頭が活性化する、というのが如何にもうそ臭かった。
ハッキリいって、あれは“擬似科学”でしかない。

この番組を流したTV局の人々には、カモン・センスが欠如している。それはいまの日本社会を見渡すと結構多い。

茂木さんがきょうの日記で言われるように、人間や脳を問題にするときに、機械のような単純化したスキームで語る時代はもう終わってしまっている。が、何故そのことに気付こうとしないのか(あるいは、うすうす生命哲学が必要なことに気付いているのだけれど、民衆にはそれは難しいから、単純スキームで語ったほうが「解りやすく伝わる」とか、そーいう理由で無視しているのであろうか。若しそうであるなら、尚更タチが悪い)。

生命哲学の観点からなぜ、人間や脳を語ろうとしないのだろう。

本当は神は死んだわけではなく、最初から人の生命の中に存在しているのかもしれない。

それをニーチェが「死んだ」とやってしまったが為に、人間が今世紀に至るまで、大いに苦悩するようになってしまったのだろう。

それはさておき、3人の門下生の皆様、修士試験合格、おめでとう御座います。師たる茂木さんの「這えば立て、立てば歩め」の「親心」の篭もった、厳しくも暖かく、そして粘り強いご指導の賜物だと思います。

投稿: 銀鏡反応 | 2007/02/08 18:34:50

茂木さんのブログを、私の好きな人に教えたくなりました。
私の勧めでここにきて、コメントなんか書いてくれたら嬉しいなって。
私の好きな、茂木さんと茂木さんの世界を好きになってくれたら、
間接的に想いが通じたことにはならないでしょうか。

茂木さんは恋をしていますか?

投稿: 和泉 | 2007/02/08 17:38:40

 勧君金屈巵 満酌不須辞
 花発多風雨 人生別離足

 唐の詩人、于武陵のこの詩は私の大好きな
もののひとつだ。

 それにしても、この日本語訳は原作を超えた
別作品といっていい。

 “サヨナラダケガ人生ダ”
 
 井伏鱒二! あなたはタダモノではない!

 「ツァラトゥストラはかく語りき」を読んだ
のは、もうはるか昔、高校生の頃だ。

 また読んでみたくなった。よし、読もう!

 

投稿: hashimoto | 2007/02/08 15:56:01

たしか1972年、ぼくはフリージャズの山下洋輔トリオと共に
ミュンヘンへ行ったとき、旅行バッグに入っていたのが
『悲劇の誕生』でした。

ホテルでそれを取り出していると、山下さんが
「あれ、ぼくもそれ持ってきてるんだ」と
文庫本を出した!

懐かしい記憶です。
そして最近、IPODで当時のジャズを聴きかえし始めました。
ロックと融合しそうになったマイルスもやはり面白いし
楽しいです。
音楽が産んでくれるもの~それは何か。
自分がまだ未体験な何か…。

投稿: 長谷邦夫 | 2007/02/08 13:17:44

>君、ノウハウや安易な処方箋を求めては
>いけないよ。

茂木さんのこの言葉が私の心にとても響きました。苦しいときはどうしても楽な方へ楽な方へ行ってしまうのが人間ですね。
それが脳の構造なのですよね。

投稿: 心のつながりコーチ | 2007/02/08 10:38:44

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