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2007/01/23

真性異言

 国土交通省の懇談会で、
 文化をいかに育むか、
 グラフ構造がもたらす
偶有性、
 ローカルとグローバルの共存、
クオリア立国について熱く
語っていた。

 終わったあと、コシノジュンコさんが
言いにくそうに、
 「あのう、茂木さん、こういうところに
赤いセーターを着ていらして・・・」
と切り出したので、
 てっきり服装のことを怒られる
のかと思ったら(私以外はみな
ジャケットにネクタイだった) 
 「前と後ろが逆なのが、さっきから
とても気になってしまっているのですが」
と言われて、私は瞬間的に
自分でもわかるくらい赤面した。

 ぐいとひっぱって見ると、
確かにラベルが前に来ている。

 ひええ、と恐縮した。
 そして、全く気付かないで普通の
顔をしていた自分は何てバカなのだろうと
思った。
 そういえば、電車の中でFeynman Lecturesを
聴いていたら、
 前の人が妙にじろじろとこちらを
見るので、
 はて、おかしいなと思っていたのだが。

 「お話を聞くときに、やはり、
前を向いてその方のことを見ながら
聞きたいと思うのですが、どうしても
気になってしまって・・・」

 さすがはファッションデザイナー。

 川勝平太先生が、「いやあ、男には
服装に頓着しない、という考え方も
あるわけでして」と言われた
そのやさしさとコシノジュンコさんの鋭さと。

 どちらもステキでした。

 東京大学の駒場キャンパスには、
2年間しかいなかった。
 (対して、本郷には理学部物理学科で2年、
法学部で2年、大学院で5年の計9年間いた
ことになる)。

 それでも、幾つか染みこんでいる
場所がある。

 塩谷賢が、授業のあとの立ち話で、
「茂木さあ、無限が一つの鉛筆だとして、
その横にもう一つ鉛筆を置いたとしたら、
どうなると思う?」
と言ったのは、5号館だということを
思い出した。

 授業。
 今回は本質論を、ということで、
まずは反応選択性のクリティークから
入り、
 マッハの原理までいったところで
一時間目が終わった。

 二時間目は趣向を変えて、
googleに象徴されるgood old fashioned A.I.が
台頭している今、
 embodimentや、intuitionといった
もの、あるいは複雑系におけるような
 カオスとかアトラクターとかいった
ものを重視するromantic scienceが
いかにregenerateできるか
という問題を熱く議論した。

 終わったあとたむろっていると、
塩谷のノートが目に入ってきた。

 ボクは、学生時代からこいつの
びっしりとならんだ書き込みは見慣れて
いて、そのわけのわからない文字列を、
しばしば「真性異言」といって
からかいつつ敬愛していた。

 何か議論を始めると、
こちらの都合などおかまいなしに
だーっとずっと喋っているのも
塩谷のもう20年以上知り尽くしている
性質である。

 柳川透がつかまって黒板のところで
ずっと話し、
 百軒店のBYGで皆で話している
時には、
 野澤真一がずっと二人で語らっていた。

 ボクや池上高志は、どちらかと言えば
二人で話している時にも
 隙間が空いていて、
そこに誰かが入ってきたり、
 誰かに突撃をかけたりするのだけれども、
 塩谷は、「話し込む」という
感じになって、そのようなパーソナルな
会話空間の設計は、
 案外人柄の本質にかかわって
いるのではないかと思う。

 池上や塩谷のような友人に恵まれて、
ぼかあ幸せだなあ。

 学生にいつも言っていることは、
心から尊敬できる畏友を持てということである。
 なれ合うのではなく、切磋琢磨する。
 そいつの前では本気になれる、
 そんな友人を持て。
 
 そうすれば、世間がいくら堕落したって、
そんなこたあ知ったことじゃない。
 

二人の畏友、池上高志(左)と塩谷賢(右)


塩谷賢のノート。

「通行」とは評価の一部なのではなかろうか

とある。


塩谷賢のノート。

宗教とは、眼前の事物の移り動く流れの彼方
や背後や内面にある何ものか
実在しながらも現実されるのを待っている何ものか

などなどとある。

(ココログがまたもや写真をアップできなかった
ので、仕方なく別のところに置いた。
 本当になんとかして欲しい)

1月 23, 2007 at 08:33 午前 |

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コメント

”切磋琢磨できる友”池上さんや塩谷さんの存在が、茂木先生
にとって、人生の支えになっているようですね。脳科学、クオ
リアという新分野を切り開く上で辛酸を嘗めた時期にも、常に
お二人の温かい支えがあったことが容易に想像できますし、ま
た知的刺激を常に相互に受けあうことで、創造力を高めあって
きたんでしょうね。

ところで、塩谷さんの最後のノートのメモ「宗教とは、眼前の
事物の移り動く流れの彼方や背後や内面にある何ものか実在し
ながらも現実されるのを待っている何ものか」という表現はお
もしろいですね。人生を生きるための教義として学んだものを
自らの内的規範とするも、そこではまだ意識の域を出ていない。
そこに実体験があって初めて信仰心へと深化していくことを見
事に看破されている…。塩谷さんのノートを一度精読してみた
いですね(笑)

投稿: コロン | 2007/01/24 4:44:46

私も、思った事があると、ノートを取っています。

塩谷さんの、二つのノートを内容を合わせると、聖書に載っている、キリストの言葉、「成功のイメージが出来れば、それは実現する。」(はっきりと覚えていませんが。)と、言う事でしょうか。


学生時代、部活で、私はラグビーをやったことがあるのですが。(弱かったですが・・・・。)
自分のポジションである、スクラムハーフでトライした時に、「ココを行けば、トライできる」、と、イメージが、ひらめいた時、トライできました。
世界で活躍するスポーツプレーヤーは、「成功イメージ発見力?」は凄いものがあると思います。
(ちなみに、私は、先祖からの仏教の墓に入る予定です。)

投稿: tain | 2007/01/24 1:19:59

もっと早く誰か教えてくれれば良いのにね!
おしゃれで後ろ前に着ているのかも? と思われたのかな~。

無限大の鉛筆のお話は面白いですね!
無限大と無限大が近づくと、消滅してしまうか、核融合して、四つ葉のクロバーになります。
それか、四弁桜になるかしら。
四弁桜の話、本当は作り話だったの?

それから、友人は、もしかしたら、親以上に大切かもしれないですね。


投稿: tachimoto | 2007/01/23 23:46:38

例の赤いセーターを後ろ前に着ていることに気付かず、講演をしてしまった茂木さん。まぁでも、それもご愛嬌ということで…。

それにしてもコシノさんの指摘も鋭ければ、川勝先生のフォローも素晴らしい。お2人とも素敵な方だと納得しました。

この日の講義は、さぞや白熱したものであったとお察し致します。

講師たる茂木さんが、魂を熱く燃やして語る様が眼前に浮かび上がるようであります。

茂木さんは、池上さんや塩谷さんといった、本当にユニークで素晴らしいご畏友を大切にされている。そしてお3人ともお互いを尊敬しておられる。麗しいことだ…。

小学校時代から「いじめ」を受けた「怨念」から、心から尊敬できる畏友を持てなかった自分から見ると、お3人の有様は本当に麗しい姿に見える。

ひょっとしたら、今から畏友をもつのも遅くはないのかも知れぬ。

投稿: 銀鏡反応 | 2007/01/23 18:03:51

塩谷ってほんと随分太ったねぇ。SⅠ20から数学科に行ったのは知っていたが、駒場を出てから全くお目に掛かっていない。ご活躍で何よりです。

投稿: WhiteTiger | 2007/01/23 12:07:43

茂木さん、とっても素敵です(笑)

池上さんは赤がお好きなんでしょうか。
指ヨガスタイルの塩屋さんと。 こうして並ばれると、対照的な感じが。。
ノート部分はいまは見られませんが、「通行」・・・むつかしいです(笑)

グーグルはgood old fashioned A.I.。。
romantic scienceとの構図、おもしろそうですね。

投稿: M | 2007/01/23 11:05:40

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