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2006/12/29

乱読、拡散、疾風怒濤、無駄、イミナシ、ナンセンス

今年はいろいろな方々にお世話になった。

 最後の「はっきりとした締め切り」
がある原稿。

 『プロフェッショナル 仕事の流儀』の
本の、1月30日発売予定の
第9巻

1月30日発売予定
●楽しんで学べ 傷ついて育て——中学校英語教師・田尻悟郎
●医者は人生を手術する——脳神経外科医・上山博康
●心動かす広告 命宿す写真——写真家・上田義彦

http://www.nhk-book.co.jp/tv_r/document.html

のエッセイを書いて、NHK出版の高井さんと
小林さんに送る。

 いつも締め切りぎりぎりで御迷惑をおかけして
きました。
 渋谷方面に頭を垂れる。

 同じくNHK出版の大場旦(オオバタン)
の本の原稿は、遅れに遅れて一向に進んでいない。
 そんなものが沢山ある。
 ずっと時間に追われていました。

 みなさん、来年はより精進しますぞ。

 そろそろ一年を振り返り、
来年の抱負を、というような時期になったが、
 実は密かに胸に秘めた思いは幾つかあり。

 しかし言葉にすれば陳腐になるので
言わない。
 ここにも「無記」はある。

 この所気になっているのは「拡散原理」
である。
 生命の本質をたった一つだけあげれば、
それは「拡散する」ということではないか。

 サンゴが満月の夜に大量の卵を海中に放つ。
 もし全てが着生して育てば、幾何級数で
大変なことになるが、
 実際には淘汰されて安定した個体数に
落ち着いていく。

 そのあたりの事情を、1798年に発行
されたThomas Malthusの
An essay on the principle of population
はとらえた。
 そして、チャールズ・ダーウィンに影響を
与えた。

 「産めよ増やせよ」は聖書が言うまでもなく
生命の一般原理であって、その点については
進化生物学に詳細な理論的・実験的蓄積が
あるので良いとして、
 気になっているのは精神の領域における
それである。

 科学でも、芸術でも、審美眼に基づいて
美しいもの、真実に近づけていくという
「収束」(convergence )の原理がある。

 ニュートンの力学よりはアインシュタインの相対性
理論の方が、そしてTheory of Everythingの候補
としての超膜理論の方がすぐれている。

 アーティストは、作品を「作り込んで」より
高い完成度を目指していく。

 これらが、「収束」の原理である。

 一方で、「収束」の原理は必ず「拡散」の
原理によってバランスされていなければならない。
 なぜならば、それが精神の領域で顕れる
生命一般の性質だからである。

 小説家でも音楽家でも、あまりにも洗練された
美意識の下に作品をつくる人は、玄人筋からは
高く評価されつつも、どこか生命力の減退を
感じさせもする。
 そこに、「拡散」原理が失われつつ
あるからだ。

 乱読、拡散、疾風怒濤、無駄、イミナシ、
ナンセンス。
 
 そのような横溢はもし何らかの美意識という
がともなわなければ空しいだけだが、
 ある美意識によって「収束」させられる
ことによって初めて一つの表現行為として
麗しい山脈を築き始める。

 作品の整った美しさと、実生活における
あらゆる方向へのエネルギーの放出を
両立させたモーツァルトの人生は、
 「収束」と「拡散」の原理を
共存共鳴させた見事な事例だということが
できるだろう。

 一つのことばかりにかまけていては
いけないのです。
 その一方で、収束も目指さなければならないのです。

 『プロフェッショナル 仕事の流儀』
の編集で天才的なワザを見せる小林幸二さんが忘年会の
写真を送ってきてくださった。
 
 ぼくとチーフプロデューサーの有吉伸人さん、
カラオケでみんなが騒いでいるのに
全く気付かずにぐっすりと眠っています。

 男というものは、実に全く、
明日への英気をこうやって
養うことであるよ。

カラオケで有吉さんと睡眠中。撮影 小林幸二。

12月 29, 2006 at 08:58 午前 |

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コメント

いつもながら、そうなんだーふむふむと日記を読ませていただき、
肝に銘じようと頁を下りてきて、このお写真…。

「締切りには間に合わせますから…」
「そういわれてもなあ。とにかくがんばりますか」

茂木先生は眠りつつも、姿態でお話なさるのですね。
(写真だけで、さまざまな連想があふれます。。。)

今日は久しぶりにコメントを書かせていただいて、
今年一年の感謝の気持ちを、と気張っていたのですが、
素敵なお写真の拝見し、一日、笑いがこみあげてました。
私のなかでは、これって、かなりの収束から拡散への展開でもあったような。。。
(ふたたび気張ろうとしましたが、一度抜けた腰は、笑いの震動でもとには戻りませなんだ…)

どうぞ、よい年をお迎えくださいますように。

投稿: kei | 2006/12/30 1:09:59

あの~、有吉さんはどう見ても俗人(普通のオジサン)に見えますが、茂木先生の
寝顔は、中性的で...聖人に見えますね~。

日本に山積する問題や、世界の邪な意識を白魔術の杖で来年もマジックしてくださいね!

投稿: tachimoto | 2006/12/30 0:24:14

ううむ…。愛らしい、そして、美しい…!♪
茂木さんの寝顔って、可愛らしい中に聖なる気配が潜んでいるようです。

法華経の教えの中に「万法は一法より生ず」という法理があると聞いた。

それはきっと茂木さんのいう「拡散原理」のことを言っているのかもしれない!

と、いうことは生命の本質の一つを、法華経は言い当てているのに違いない…!

美しいものを作りこむという優れた芸術家の作業の中には収束性と拡散原理のバランスが潜んでいなくてはならないのか…。

そのバランスが一つでも狂うと、拡散原理が失われ、
生命力の減退を感じさせる作品になってしまう。

自分はなかなかモーツァルトのようには
収束性と拡散とのバランスのとれた作品はつくれない。
なぜかというと、“未熟”で、
ある意味“滅茶苦茶”だから。

アタマの中が常にカオス状態だから。

だから描くものは、混沌まるだしのような、テーマ性の希薄な、
収束性と拡散原理のバランスがとれているのかどうかわからんような
作品ばかり。

それでもいいのだ。私はモーツァルトではないのだから。

本年度は茂木先生とより多く出会えた年になりました。
もっとも、それゆえに先生に御迷惑をかけたことも御座いました。

しかし先生は海のように大きな心で、
この間抜けめのヘマを許してくださいました。

来年度も…これからも、いろいろと御迷惑をかけることが
あるやも知れませぬが、
何卒よろしくお願い致します。
敬具

投稿: 銀鏡反応 | 2006/12/29 20:21:21

どこか泰西迷画のようだ。

投稿: 長谷邦夫 | 2006/12/29 16:46:26

生物の本質が拡散。
へーそういえば、宇宙も拡散していますね。
しかも最近加速しているようですが。

拡散と収束を繰り返す波動。
循環。

来年は「収束」の年にしたいです。個人的に。
お仕事頑張ってください。

投稿: julius | 2006/12/29 11:19:47

ぷっ。クリームパン口からとびだしちゃいました。

天使さまの寝顔ありがたく拝みました。
   
                    アーメン。

投稿: 平太 | 2006/12/29 9:08:21

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