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2006/12/25

横で見ていたら、そのあっけなさに

クリスマスイブの日、
ふと耳にした「真っ赤なお鼻のトナカイさんが・・・」
の歌。

 ほとんど、日本語の訳詞は原意に
基づいているということがわかったが、
 一カ所、
 「今宵こそはと よろこびました」
の部分が
 you'll go down in history!
だったのには少しびっくりした。

http://www.41051.com/xmaslyrics/rudolph.html

 日本の子ども向けの歌の詩で、
「歴史にのこるよ」というエンディングは
ちょっと考えられないのではないか。 

 このようなちょっとした点に、それぞれ
の文化圏における世界観の違いが出ていて
面白い。

 イブだろうが何だろうが、
結局ずっと仕事をしていた。
 
 途中、走った。
 意味もなく、めったやたらと走る
のが好きだ。

 走りながら、つまりこれは一つの
「状態」なのだと思った。
 シャノン的な文脈において、「0」と「1」
が構造化された意味がそこにあるのではなく、
 一つのフラットな状態がずっと
続いていく。
 そのことに意味がある。

 走り続ける。
 たとえメリハリがなかったとしても、
そのような継続自体が、人々を惹き付ける。
 だから、マラソン中継が高い視聴率を
上げるのだろう。

 夜、ちょっとリラックスして、
お酒を飲みながら
 『サラリーマンNEO』を見た。

 水越伸さんと私が出た場面だが、
あれは台本に大まかな指示が書いてある
だけで、あとは完全なるアドリヴである。

 テークには、本当に短い時間しか
かかっていない。
 ぱっと来て、ぱっと喋って
そして帰る。

 横で見ていたら、そのあっけなさに
びっくりするんじゃないか。
 
 ただ、中田さんと水越さん、そして
私の話が「すれ違う」ところが
面白いことにしよう、という設計や、
 カメラ割り、それに編集など、
 細かい点において吉田照幸さんを
はじめとするサラリーマンNEOのスタッフの
周到な準備と工夫があったことは
言うまでもない。

 BBCのコメディが、その基本に
BBCという局のキャラクターがあって
成立しているのと同じように、
 NHKというキャラクターを背景にしなければ
できないコメディというものがあるはずだ。
 
 サラリーマンNEOは、民放で放送しても同じ
味わいになるかどうかはわからない。

 NHKは一つの金脈を掘り当てつつあるの
ではないか。

 コメディが大事なのは、一つの文脈
だけでなく、複数の文脈が交錯するところに
ダイナミズムが生まれる点で、
 成熟した世界観を持つためには
笑いは欠かすことができない。

 NEOのようなコメディのさらに先の
発展の果実として望むところは、
 身を切るような自己批評の精神。

 障害や、セクシュアリティ、人種差別、格差といった
 シリアスな問題でさえ笑いに転化してしまう
BBCのコメディの高等技術は、
 果たして日本という風土で受け入れられるの
だろうか。

 タブーは、単一文脈の
制度的保証の装置である。
 だとすると、日本にはまだまだ
単一文脈が多いということができよう。

 単一の文脈しか存在しなくなる時、
人々は息苦しさを感じるようになり、
 創造性の基礎たるメタ認知が失われる。
  
 やるかやられるか。
それしかなくなる
戦争は、単一文脈支配の最たるものであることを
銘記せよ。

12月 25, 2006 at 08:03 午前 |

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@きょうはクリスマス本番。街はキラキラと電飾で輝き、寒さをふっとばすほどの暖かさ、華やかさに満ちている。 @2006年もあと数日。きょうがすぎれば、あとは除夜の鐘までのカウントダウンだ。 @紅白?なんだかなァ…。若いもんが出るのはいいんだけどさァ、如何もなぁ…見たくなくなっちゃったなぁ、1990年以来。紅白の裏番組の格闘技も見たくないしなぁ。残るはお笑いぐらいだけれど、見ていて幼稚だしなぁ。まぁ見るとつい笑うんだけれど…。 @日本では、差別とか障害とかを笑いに転化するコメディ文化が育たなかったから、... [続きを読む]

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@きょうはクリスマス本番。街はキラキラと電飾で輝き、寒さをふっとばすほどの暖かさ、華やかさに満ちている。 @2006年もあと数日。きょうがすぎれば、あとは除夜の鐘までのカウントダウンだ。 @紅白?なんだかなァ…。若いもんが出るのはいいんだけどさァ、如何もなぁ…見たくなくなっちゃったなぁ、1990年以来。紅白の裏番組の格闘技も見たくないしなぁ。残るはお笑いぐらいだけれど、見ていて幼稚だしなぁ。まぁ見るとつい笑うんだけれど…。 @日本では、差別とか障害とかを笑いに転化するコメディ文化が育たなかったから、... [続きを読む]

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コメント

単一文脈と複数文脈って、なんだか難しいですね。
けど、ネットが複数文脈なのは分かります。

NEOは、見ようと思って気にしていたのに、気が付いたら1時を過ぎていて・・。
そしたら、今日友人からメールがあり、茂木さんが出いていたよ! って。
「学歴は頼りにしたい人のものであって、いらない人には無用の長物」っていってたよん。ーと。

私はこのセリフを茂木先生を知ったばかりの頃聞いて、ホンモノの人だ!
 と思ったことを思い出します。

先生お勧めのイギリスのコメディはまだ見ていませんが、確かに、政治家のカリカチュアとか、
ラブコメディ映画とか、皮肉が効いてイギリスモノは面白いですよね。今思い出しました。
「ブリジットジョーンズの日記」とか、色々見たのだけれど・・。
フランス映画は美しく理屈っぽいけど、イギリスのコメディは、からっとして、
自分を笑いの対象としている、・・・確かに。確かに。
暫く忘れていたことが、滑りの悪い私の脳の引き出しから飛び出しました!(笑)

フラワーピッグに関していえば、
「あなたから見たらボクはダニにしか見えないのですね。こんなにあなたを愛して、
赤いバラを差し出しているのに・・・」
そんな悲しみと切なさを、チャップリンのように道化にしちゃったのね。
当たり! でしょ? オペラ座の怪人は大好きだけれど、コメディではなく悲劇ですものね。缶の中は悲劇で、缶の外は喜劇ですね。
ファインアートの虫も悲劇のようでもあり、喜劇のようでもありますね。

投稿: | 2006/12/26 1:42:21

“障害や、セクシュアリティ、人種差別、格差といった
シリアスな問題でさえ、笑いに転化してしまう
BBCのコメディの高等技術は、
果たして、日本という風土で受け入れられるのだろうか”

障害や格差などを笑い飛ばすには、
きわめて強固な覚悟と、強靭な生命力が要る。
日本人にそれはあるか。

いま「日本国」と名乗っているこの島国の風土は、
茂木先生が上の言辞で示された問題を
笑いに転化することを忌み嫌い、
むしろタブー化して隠蔽し、
人々を「単一文脈」に従属させ、
創造性の基礎たる
メタ認知を奪ってきたものなのだ。
(それが日本人のウェットな面として
現われることがあるのかもしれない)

障害、セクシュアリティ、人種差別、格差、部落問題、などを、
自分達にとっては都合の悪いもの、
あるいは笑い飛ばしてはまずいものとみなし、
それらを“タブー”として封殺し続けてきた結果、

今や単一文脈に「支配」されかかり、
人々は創造力も、他者を慮る想像力も喪失しかけ、
互いに疑いあい、攻撃しあって
ますます息苦しくなっている状態だ。

この状態はやはり「軍靴」の音がやかましくなってゆき、
街じゅうに流れる「軍歌」のヴォリュームが
次第に大きくなっていった、
あの1930年代の様相に似てはいないだろうか。

いまは21世紀だ。
国家国民総動員と称して、
国家権力が民衆を戦争の泥沼へと
引きずり込んでいったあの年代に、
時計の針を逆戻りさせてはならない。

そのためにもタブーとされてきたことを笑い飛ばし、
身を切るような自己批評を許せる精神風土を、
何としても創り出すことが肝心要だ。

もし1930年代に、日本で、BBCのように、
タブーを笑い飛ばしてコメディにする風土が
築かれたならば、
あの愚かしい戦争へと
日本人は向かうことはなかったのではないか。


恒久平和をマジメに叫ぶことも平和な世界を
築く為には大事なことだが、
差別や障害なども徹底的に笑い飛ばすことも、
人々の創造性を強めにして、
単一文脈に支配されない平和な世界を
創り出す為には、きわめて必要に違いない。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/12/25 20:47:29

赤鼻のトナカイ、おもしろいですね。
あのトナカイの名前が、ルドルフと言うのだ、というのも初めて知りましたし、こんな歌なら、アメリカの子供たちが喜んで歌っているのが分かります。
こんな歌の中でも、アメリカの子供たちは、それぞれの「個」が鍛えられるようになっているんだな、と思いました。
英語教育も、中学1年生にこの歌を歌わせて、文化の違いを体験させたりすると良いですよね。 なんとなく不安を感じるんじゃないかなと思いますが、それが拠って立つ文化の違いにあることまで思いを馳せる事が出来れば最高ですね。

投稿: | 2006/12/25 14:46:36

こちらの日記を拝見して,昨日初めてサラリーマンNEOをお風呂で見ました。初めて見るので,茂木先生がああいう風にしゃべるコーナーなのかととか一瞬思ってしまったんですが,そこには「やはりコメディだな」と思わせる瞬間,ハッとする瞬間,つまりアハ体験がありました。やはり「普段は真面目だけど」という人(ここではNHKのことを指す)が,ああいうユーモアを効かせるととても新鮮に感じます。

投稿: | 2006/12/25 14:42:11

受け入れられないと思う。今の日本人の心の狭さは。

わけ隔てなく、平等といっておきながら、狭い基準で価値観をおき
誰がその価値観きめたか知らんが、それが正しいと完全に頭のなか縦割りでがっちがちになってるから。
世の中総ヒステリー。残念です。

投稿: | 2006/12/25 9:22:36

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