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2006/10/27

「なにかがある」という引っかかりの感覚

いくら忙しいといっても、
寿司屋のネタじゃあるまいし、
イクラ何でも忙しすぎる。
 そんな一日だった。

 オレは007か、と思うくらい、
次から次へといろいろなことを
しなければならなかった。

 しかし、どんなに忙しくても、
絶対に「楽しい」と思い続けたい。
 それは一種の職業倫理であって、
楽しみ続けなければ、「強化学習」
による神経回路のつなぎ替えがうまく
起こらないものはもちろん、
 何よりもベストのパフォーマンスが
得られないからだ。

 スケートの清水宏保さんによると、
世界記録が出るのは、むしろ主観的には
「流している」と感じるくらいの楽しい
時だという。
 大リーグの選手が緊迫した場面で
ガムをかみながら楽しそうに打席に向かうのも
そのため。

 この日記はできるだけ「楽しそうに」
書くことにしているけれども、
 それは、実際にも楽しんでいなければ
良い精神の動きが保てず、相手に、自分に、
そして人生に失礼だと思うからである。

 電通で「アハ体験」の某タイアップ企画の
打ち合わせ。
 ソニーコンピュータサイエンス研究所
からは、私と夏目哲さん、佐々木貴宏さん、
ソニーミュージックの出口豊さん。

 ソニーコンピュータサイエンス研究所の
綾塚祐二さんが、素晴らしいhidden figureの数々を
制作。
 綾塚さんは、何かを掴んだ!

 本当に良く安倍晋三首相に似ている佐々木貴宏さん
が、
 「ぼくはこれがいいと思うんですよね」
と総理の重々しさで推薦する。

 1−2月頃には、ぐんと力の入った企画を
世間に届けられそうだ。

 せっかくだから、「アハ体験」が流行語ナントカとか
ヒット商品ナントカにノミネートされるくらいに
なればいいのだけれども。

 ホテル・オークラにての仕事に、
「傷だらけのマキロン」こと、
NTT出版の牧野彰久さんが来て、
私が喋っているのをじっと聞いていた。

 マキロンが傷だらけなのは、私が一向に
原稿を書けないからである。
 ごめんなさい、マキロン。

 終了後、牧野さんが近寄ってきた。
原稿の催促か、と思ったら、それだけでは
なかった。

 「今日遅刻してしまったのは、ぼくは
パパになったのですよ。」
 「えっ、そうだったのか! おめでとう!」
 「今朝だったのです。昨日の夜あたりから
兆しがあって。」
 「じゃあ、今日は眠いんじゃない? 男の子、
女の子?」
 「男の子なのです。名前は、シリュウに決めました」
 「どういう字?」
 「ツカサドル、に難しくない方のリュウです。」
 「かっこいい名前だなあ」
 「司竜というのは、三国志に出てくるのです。
いやあ、茂木さん、一日で人生が変わりましたよ!」

 マキロンが色紙を差し出したので、
私は、竜の絵を描いた。

 「えーと、おくさんはどんなイメージの人ですか?」
 「背が高いのです。年下ですが、しっかりしていて、
ぼくにとっては、おねえさんみたいな人なのです。」
 「ふむふむ。」

 出来上がった色紙と、マキロンを一緒に撮った。

 パパママト アソンデ オオキク ソダツ
 ソシテ アマガケル

 
パパになったマキロンと、私が描いた色紙

 「この左側にいて司竜を載せているのが、妻ですか」
 「いや、そうじゃなくて、それはマキロンで、右から
顔をのぞかせているのが奥さんのつもりなんだけど」
 「なるほど。そういわれればそう見えますね。
ウレシイです!」

 マキロンとタクシーで丸ビルに移動。

 理化学研究所の講演会。野依良治先生と親しく
お話するのは初めてだった。

 先日手術をされた、河村隆夫さんが会場に
いらして、びっくり。
 「朝のクオリア日記を読んで、どうしても話を
聞きたくなりまして」と河村さん。
 お元気そうな姿に、本当に安心して、
飛び上がるほどうれしかった。

 研究所へ。

 定例ミーティング。
 所眞理雄所長と打ち合わせ。

 「ヨミウリ・ウィークリー」
に掲載されるタイアップ記事の取材。
 セガから11月30日に発売される
アハ体験の第二弾、
 『脳に快感 みんなでアハ体験!』
について。

http://aha.sega.jp/ 

 小俣圭、柳川透と話し込む。

 小俣のやっているMcGurk効果のSOMによる
解析における、刺激間の距離関係の深い意味について、
考えて、整理した。

 その結果、ある洞察に到達し、
 なぜMcGurkという顕著な現象が起こるのか、
その根本的原因が明示化され、
 大分見通しが良くなった。

 柳川のシミュレーションについては、
その論理的構造をより明確にできたと思う。
 Generic neural networkで示せる
functionalな議論と、そのphysiologicalな構造、
機能への接続を区別して考えることが
大事である。

 思考を導くものは、「なにかがある」
という引っかかりの感覚である。
 「この先を考えると、なにかがありそうだ」
という感覚は、まず間違うことがない。
 ただ、必ずいつもそこに行けるとは
限らない。

 何かにひっかかり、それに挑み、
苦しい暗闇を抜けて、向こう側に抜けると、
まぶしい明るさが待っている。
 それが思考というもののダイナミズム。

 黄泉の国をいったん通って、
再び生まれ変わる。
そんな死と再生のプロセスにどこか似ている。

 思考とは、その力動の精華において、
実に精神のレインカーネーション(輪廻転生)
となるのである。

10月 27, 2006 at 07:57 午前 |

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コメント

おはおようございます。

もう日記が出ている頃かしら? と思って開いても、今日の日記がまだ公開されていないから、きっとパソコンの調子が悪いのかも? と思っている私です。茂木先生のユーモアのセンスは私好み。

相変わらずハードな日常をアグレッシブにモーツアルトのように生きてるのですね。

私も3日ほど超忙しかったのですが。25日の朝、静岡に新幹線で行こうとしたら、事故で新幹線がストップで。焦りました。
時間に追いかけられるのは、脳に負担を掛ける感じがしますが、茂木先生は、切り替えチャンネルが幾つもあるんですよね。

河村さん、手術が成功して(きっと)本当に良かったですね! 森の緑が命の風を吹き込んでくれたのではないでしょうか。

投稿: tachimoto | 2006/10/28 10:09:35

マキロンさんは「牧」とつくからマキロンなんですね☆アハ☆(笑)
傷にはマキロン。でも、マキロンが傷だらけだったら・・・とか
考えていました。。

マキロンさんの愛にあふれたお顔から、幸せな気分を
分けていただきました☆
おめでとうございます!

投稿: おか | 2006/10/28 1:07:38

理研の講演非常に楽しかったです。
お忙しそうですがお体に気をつけて頑張ってください。
かげながら応援しております。

YUSHI

投稿: YUSHI | 2006/10/28 0:15:28

恐ろしく多忙な茂木先生。しかし、多忙ということは常に何処かの不特定多数の誰かに必要とされている、ということなのだ。

ドンナに忙しくとも、仕事を楽しもう、と思い続けるには、やはり、自分のいましている仕事が、誰かの為になっていることを確信することが大事のような気がする。そういった点で、茂木先生の仕事に対する姿勢は、非常に理想に近い姿勢のような気がする。

思考を導くものは「引っかかり」の感覚…確かにそうだ。「この先に何かがある」といった感覚には、誤りを犯すことが少ない。

「何かに引っかかり、それに挑み、苦しい暗闇を抜けて、向こう側に抜けると、まぶしい明るさが待っている」。

思考というもののダイナミズムは輝かしいものなのだろう。

ところで、マキロンさんに赤ちゃんが誕生されたそうで…。

親子の竜が天に昇って天がける、という感じの茂木先生の色紙にも、新しく生まれてきた命を寿ぎ、その健やかな成長を願う、暖かい思いが込められているようである。

出生とは、畢竟、「黄泉の国」とされる死から次の誕生までの期間を経て、新たな生命体として生まれて来る、峻厳なプロセスなのだ。それと思考は似ている、というわけだな。

不肖、私も今やっている仕事を厭うことなく、常に「この仕事は誰かの為に必要とされているのだ、だから楽しまなくちゃ」という姿勢で取り組みたいと思う次第である。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/10/27 19:28:05

輪廻転生って、生まれ変わっても前世から残るものがあって、
その残った部分が浄化されて次に渡され、大きくなっていけば
どっしりとしたものになる。ように思います。

思考の輪廻転生は生まれかわった際残る部分ってお感じになりますか?

私は前世すずめだったように思います。
すずめの遺伝子が残っているざます。

投稿: 平太 | 2006/10/27 17:05:53

楽しい日記いつもありがとうございます。茂木さんは言葉の魔術師みたいです。セレンディピティ 偶有性 クオリア…それらの言葉はなぜかすごく魂に響くみたいです。なによりもすごいのが茂木さんの人その人!すごいパワーで革命を起こすようなオーラは体験した人でないとわからないかも。大阪にも来てくださいね!

投稿: 長尾みつる | 2006/10/27 10:02:20

ひえっ~。ど、どうも恐縮です。
ありがとうございます。
どアップで、恥ずかしい。。。

父親になったので、これから
今まで以上に、なにごとも頑張りたいと
思います。

……というわけで、
よろしくお願いいたします☆

投稿: 牧野 | 2006/10/27 9:08:26

「なにかがある」
という感覚だけをたよりに
日々、手さぐりで創作しています。
茂木さんの言葉は
どんどん独りぼっちになって、
ああ、もうだめだ。
と言う時に、ホントによく効きます。

竜の絵も、よく効きました。
茂木さん
シリュウくん。
どうもありがとう。

投稿: mori | 2006/10/27 8:29:48

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