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2006/10/08

オマエ、ほんとうか〜! 少し、仕事減らせよ!

たとえ二泊の短い滞在でも、
習慣のようなものはできるもので、
 ルー・マンジュの小さな
ホテルから、
 「アラブ・インスティチュート」
の横にある植物園を抜けて、
 バスチーユ通りにある会場まで
歩いていくリズムのようなものが出来た。

 池上高志が学会帰りにパリに立ち寄っていて、
やはりというか、面白いことになった。

 池上と私の話は、いつもちょっと漫才のように
なる。
 「茂木、お前、現代思想のオレタチと
郡司の鼎談、読んだか?」
 「いや、まだ、活字になってからは
ちゃんと読んでいない」
 「お前、直し入れたか?」
 「いや、テニオハ程度で、ほとんど直して
いない」
 「郡司のところ、スゲー加筆してあって、
数式とか一杯使っているんだぜ。
 「えっ、そうなのか。
 「どうやって、対談中に数式を口で言うって
いうんだよ!」
 「ふうん。」
 「郡司の発言が、一頁くらいずっと続く
ところもあるんだぜ。それで、オレタチが、
一言、「それは違うんじゃないか」とかいうと、
また郡司がだーっと喋る、っていうことになって
いるんだよ。まるでオレタチがばかみたいじゃ
ないか。」
 「そうなのか。ははははは。」

 私と池上が同じ会場にいると、ちょっと
まずいことになるというか、
 もともとうるさい二人が相乗作用で
ますます大変なことになる。

 二日目はいくつか議論のセッションがあって、
まずはロルフ・ファイファーと池上が参加した
ロボットについての議論があった。

 セッションはインフォーマルなもので、
カフェでみんなで議論する。
 ジョン・スチュワートが
いろいろ面白い議論をふっかけて
いたのだが、
 池上が、「ロボットをつくることの
目的は、最終的にはやっぱり恋愛だろう。
みなさんは「ブレード・ランナー」という
映画を見ましたか? あの中で、人間が
レプリカントと恋に陥るけれども、
やっぱり、そういったところまで行く
ヒューマノイドを作らなければならないんじゃ
ないか」
と言って、
 ストレート・ジャケットを着ていたような
会場の雰囲気が少しゆるんだ。

 この時しかないな、と私は
 すかさず立ち上がって、
 「身体性というバズ・ワードの、
正確な定義は何なのでしょう? 身体性が
大事だ、ということはみんながいうけれども、
身体性が実際には何を含意するのか、
そのことについて説得力のある表現を、
私は聞いたことがありません。
 脳の神経細胞のネットワークの自発的
活動や、それにともなう一回性学習などの
メカニズムを考慮すると、本当に
いわゆる「身体性」が知性の創発に必要なのか、
疑問に思わざるをえません。
 もちろん私はここでは「悪魔の代理人」
を演じているわけですが、皆さんどう思いますか」
とロボット・セッションに対して
はある意味では掟やぶりの「凶器攻撃」
をふっかけた。

 ロルフが反論して、池上も力学系の視点から
の話をして、
 休憩時間になっても、
 nonholonomic constraintの話など、
いろいろエッセンシャルな議論ができた。

 「しかし、nonholonomic constraintと知性が
結びつく、という議論は聞いたことがないなあ」
 「そりゃあ、論文を書くしかないだろう」
 「えっ、誰が書くんだ?」
 「オレとオマエに決まっているだろ〜!」

 池上が、「オマエ」という時は、ちょっと声が
高くなる。

 夕刻、今度はボクがパネリストだった
セッションがあったのだが、そこに池上が
飛び入りで参加することになった。

 始める前に、マーリーン・ワイナンツが、
「嫌な予感がするの」とばかりに
 私と池上の方を見て、
 「私のセッション・チェアパーソンとしての
役割は、この二人の日本人が暴走しないように
うまくコントロールすることね」
などと言った。

 マーリーンは、私のインタビューをして
ヤヌスという雑誌に載せてくれる、
いい人なのである。

 セッションが始まり、私と池上はやはり
喋りまくっていたが、
 ちゃんとセッションの文脈に合わせて、
発言を出来たのではないかと思う。
 自信はないけれども。
 会場は盛り上がっていた。
 丁々発止。
 パリはロゴスを楽しむ場所なり。

 終わったあと、私は池上に言った。

 「やっぱ、日本は不思議なところだよな。
よくあるのは、オレが何かぱーっと言うじゃん、
そうしたら、みんなしーんと黙ってしまうんだよな。
ヨーロッパだと、こっちが何か言うと、必ず
返ってくるじゃないか。オマエも、そういう
経験ないか?」
 「何言ってるんだよ。それが、まさに日本の
問題点なんじゃないか。そういうことばっかりだよ。
 やっぱり、たまには日本をでなきゃダメだな。
 オマエ、昔パリに一緒にアパルトマンを借りよう
と言っていたじゃないか。オマエ忙しくなりすぎて、
アパルトマン借りることもできないだろう。」
 「いや、だいじょうぶだよ・・・」
 「オマエ、ほんとうか〜! 少し、仕事減らせよ!」
 
 こういう時、池上の声は一段と甲高くなる。

 会場の外にあった運河をぼーっと歩いていたら、
イワンがやってきて手を挙げた。

 パリの太陽はなぜか印象派のように見える。

 NHKの『プロフェッショナル』の「ゴクアク三兄弟」
の末っ子こと(長男は私)、河瀬大作さんから
メールが来た。


私めは、指揮者、大野和士さんのロケで、ブリュッセルにおります。
ワーグナーの大曲「トリスタンとイゾルデ」の深遠なる
愛の世界に毎日、耽溺しています。

ブリュッセルとパリとは列車でたったの2時間の距離。
あうことはかなわずと思いながらも、近くに茂木アニキがいるとおもうだけで、
嬉しくなりメールをしたためた次第であります。

相変わらず超多忙な日々のようですね。
どうぞパリで思う存分、羽を伸ばして、おいしい料理とおいしいワインをご堪能ください。

カワ坊拝

うれしい便り。

ボクも、トリスタンとイゾルデの
世界に耽溺したし。

10月 8, 2006 at 01:56 午後 |

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受信: 2006/10/09 8:13:44

コメント

先ほどのコメントの補足。

「現代思想」での竹内薫氏のコラムに、意識に水分子が関係している、という話が書いてあったが、水分子とともにニューロンの発火、セロトニンやドーパミンなどの脳内物質が、いろいろ複雑にかつ瞬間的に組み合わさって、私という意識を創り出すのではないのか???と密かに仮想しているきょうこのごろ。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/10/08 16:20:10

池上氏との会話(対話もそうだが)って、いつも盛り上がってますね~。

それも文系の私にはなかなか分からない高度な専門の話で…。

科学者というのはあのような高尚な話題で盛り上がることが出来る人達なのだ…。

カフェで議論を交わすのも、パリ的だったりして…。

きのう銀座で「現代思想」を立ち読みしましたが、郡司、池上、茂木の三氏の丁々発止のやりあいが兎に角凄い。難しいことは分からなかったが、白熱のムードが伝わってきた。


ロボット/ヒューマノイドについての議論をしているところで、茂木先生が「身体論」への疑義を示され、“悪役(ヒール)”になっているのが面白い。そうやってひとつの議論は新たな議論を呼んでいくものなのだな。

こういうと失礼かもしれないが、これはなんだかプロレス中継のようだ…。

そうか!科学の議論ってえのは“言葉のプロレス”なのに相違ないのだ!

池上さんが茂木さんに「オマエ!」と言うとき声が甲高くなるのも面白いですね。

パリの太陽は何故か印象派のよう…とあるが、おそらくそのとき、茂木さんの中で、モネの「印象・日の出」のイメージと実際の太陽がダブったのかもしれない…。


壮大な愛の世界に耽溺したいけれど、多忙ゆえそれがなかなか出来ないご様子の茂木さん。

せめて、パリで最後の1日(ですよね?)、ゆっくり心の翼を伸ばし、美味しいものを召し上がっていただきたいと存じます。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/10/08 15:31:28

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