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2006/08/19

自分自身を救うために

電車で移動中、
 長谷川眞理子さんの
『ダーウィンの足跡を訪ねて』
(集英社新書ヴィジュアル版)
を読了。

 「青春と読書」連載中から
楽しみに読んでいた。
 
 長谷川さんが、ガラパゴスや
ケント州のダウン・ハウスなど、
ダーウィンゆかりの場所を訪問しながら
「種の起源」を著した偉人の生涯と
仕事について考察する。

 写真も豊富で、情報も的確。
科学に対する愛が伝わってくる本。
 
 最近ダーウィンに心を惹かれるのは、
意識の科学はひょっとしたら
「種の起源」以前の段階にあるのではないかと
いう認識からである。

 数理的なロジックをぎりぎり詰めていく、
ということも大事だが、
 その一方で、意識という不可思議な現象について、
現在知られている経験的事実を総合して、ある
妥当な仮説を立てることが必要だと
痛感する次第。

 それこそが、まさに『種の起源』において
ダーウィンがやったことだった。

 朝一番で、研究所へ。
 『ナショナル・ジオグラフィック』
日本版に掲載される、VAIOのタイアップ記事。
中村征夫、中村卓哉 親子のとった水中写真、
動画を見ながら、映像が与えるクオリアについて
コメントする。

 続いて、テレビ朝日で放送される予定の
特番に関する収録。
 鳥越俊太郎さんがいらっしゃる。

 欠点を克服すると、それがかえって
長所になる、という話をしていたら、
 鳥越さんがああ、そうか、というような
顔をされる。

 「私は、実は小学校の時はひとまえに出るのが
苦手だったんですよ。
 教室で起立して教科書を朗読なんかするときは、
足がガクガクふるえてねえ。
 その後も、とにかく大勢の前に出るのが苦手
でした。
 それが、大学に入って、このままでは生きて
いけないと思って、サークルに入り、
 無理矢理人の前に立つようにしようと
思って、マネージャーに立候補したんです。
 そんな自分が、まさかテレビに出る仕事をするように
なるとは、思いませんでした」

 番組は、脳内物質がテーマで、
9月に放送される模様。

 羽生善治さんと対談。
 椿山荘で。

延々と6時間くらい話す!

 羽生さんと私が話したら、
おそらくそのような内容になるだろう、
という筋からはまったく外れて、
 私にとっても非常に意外で、
しかもエキサイティングな方向に話が
向かっていった。

 そもそも、将棋の目的とは何か、
「勝つ」「負ける」ということ
は何か、というような話を深掘りしていったのである。

 羽生さんによると、名人位というのは
もともとは世襲の家元制であったが、
 江戸時代、将軍の前で一年に一回(11月17日)
行われる御前手合いでは、
 あらかじめどのような流れで勝ち、負けるかが
決まっていて、
 たとえば最後に持ち駒がちょうどなくなる、
といった、「美しい」型が重視されたの
だという。

 ちょうど武道の組み手のように、
勝敗以外の美意識が重視されたのである。

 しかし、名人の一門の人たちが
むき出しの勝ち志向での手合いに弱かったか
と言えば、
 そんなことはなく、
 当時の在野の指し手が名人一門の高弟と
手合いをして、相手にされずコテンパンに
やられたという記録が残っているという。

 名人自身は手合いをせず、棋譜も残って
いないというから、
 おそらく一門の中では切磋琢磨していたの
だろうが、対外的には、「型」が整った、
一種の理想型としての将棋を示していた
というのである。

 現代の将棋で、もし江戸時代の家元制の
下での名人たちのような美意識が残っているとすれば、
たとえば「投了」へ向けての「形作り」
のような作業の中にあるのかもしれない、
と羽生さん。

 もちろん、最終的には「勝ち」「負け」
という二項的結末によって留保されているとしても、
途中の指し手にまとわりついているものは、
美意識であり、一期一会であり、好奇心であり、
発見することの歓びではないか。

 その他にも、「将棋」という文化のまわりに
ある様々な不可思議でうるわしい光を放つ
ものたちの話が弾んで、これは素晴らしい
対談本になるわい、という予感に満たされる。

 版元は大和書房。
 書き手はなんと、エース登場、橋本麻里さん。

 今日も仕事で出かける。もうぐずぐず言わず、
ひたすら短距離ダッシュを続けることとした。
 できることは全てやる。

 Mac OSXの様子がどうもおかしく、
不具合が蓄積しているらしい。
 再インストールするだけのHDの空き領域が
ないので、
 Tech Tool Pro 4.5で修復しつつ
使う。
 Eudoraはなんとか動くようになったが、
昨日はキーボードがむちゃくちゃになって、
「」やアポストロフィが変な文字になった。

 とくに、アポストロフィが出なくなったので、
いちいちコピペしていた。
 論文執筆の追い込み時に全く
困った事態なり。

 今朝はふたたびTech Tool Pro 4.5で修復
したので、元にもどった。
 しかし、Norton Utilitiesと違って、
このソフトは何を検出して、何を修復したのか
その詳細が表示されないのがちと不満である。

 柳川、小俣、恩蔵との論文をばーっと
仕上げなければならないし、
 その他にもやることが沢山あって、
ロシアに行っても結局仕事ばかり
しているんじゃないかという
予感がする。

 いずれにせよ、明日の朝早くに
遠いかの地へと
出かけなければならない。

 ユーミンもサンクト・ペテルスブルクに
来るようで、
 宿泊のホテルも一緒だったのだが、
 私がチェックアウトする日にユーミンは到着。
 ジョイント企画はまぼろしとなってしまった。
 残念。
 
 忙しい時の合間に、活字を読むと魂が癒される。

 東京を巡る地下鉄の中で読んだ長谷川眞理子
さんの前掲書の中に見つけた
パッセージがあった。

 彼とエマの間には全部で10人の子どもが生まれたが、
そのうちの二人・・・は幼くしてすぐに死んだ。・・・
他の子どもたちも、元気いっぱいとはいえなかった。
ダーウィンは、自分とエマがいとこ婚であることの
影響がでているのではないかと案じていた。だからこそ、
あれほど詳しく自家受精と他家受精の研究をしたの
である。

(『ダーウィンの足跡を訪ねて』170頁)

 フロイトやユングの精神分析は、もともとは
自分自身を救うために構想された。
 
 学問とは、もともとそういうものではないか。

 そのように考えることの大切な意味を私に教えて
くださったのは、河合隼雄先生である。 

8月 19, 2006 at 09:39 午前 |

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コメント

河合隼雄先生のご回復を祈っています。ニュースを知ってから3日、とても気になります。

投稿: | 2006/08/21 12:13:33

いよいよロシアへ ご出発ですね。
実り多き日々である事を お祈りしております。

御忙しい日々を過ごされていても
精力的に前進なさる精神力にいつも感動しております。

私など ユルすぎて迂回状態。。。
恥ずかしくなります。

そして
河合隼雄先生が1日も早く回復される事 心より
お祈り致します。
責任の重いお立場 ご心労も重なったのではと。。。
思いをめぐらしてしまいます。

投稿: | 2006/08/20 2:51:15

今日、お立ちですね。
楽しい旅となりますよう。

> 最近ダーウィンに心を惹かれるのは

の節につきましては「待ってました!」の感ありです。

本日の日記では先生はいつもの「金魚」調ではなく「いるか」以上の余裕!

やがては「クジラ」になって、潮を吹きながら、東西の海洋を渡っていただきたける日を心待ちに。。。

失礼いたしました。

投稿: kamuro | 2006/08/19 23:38:42

…それにしても、将棋の勝敗の世界はおそろしいほど奥が深いものなのだな。深掘りすればするほど、底に秘められた美意識や美学のようなものが現われてくるのだろう。

話は変わって、きょうも本当に熱波にうだる一日でした。半ドン仕事のあと、「こども音・楽・館 2006」に行こうと思ったが、予算がないことに気付き断念。灼熱の街の中を路線バスを使ったり、歩いたりして過ごしました。

恵比寿~用賀駅間をゆく東急バスに510円を払って300円お釣りを貰って乗りこみゆらゆらとゆられてゆく。終点につくなり近くの喫茶店で休んで読書。とある兄弟についての小説を読んでいた。

しかしこの期間、何処へ行っても、まだまだ熱波地獄のようなうだる暑さです。ロシアへは絶対無事故で赴かれることができますよう、お祈り致します。

将棋の世界も進化論も、掘れば掘るほど、奥が深い!!

投稿: 銀鏡反応 | 2006/08/19 20:09:46

1962年生まれの産婆です。科学に勝負・・私の住まう世界から もしかしたら 一番かけ離れている言葉。でも、あちこちで最近目にし、読んでいる茂木さんの言葉に 知らず知らずの間に 引き寄せられて・・そして、今日は、”クオリオ”という言葉を知りました。お産の現場で、日々感じている不思議な様々な現象・・クオリオなんでしょうか。

投稿: | 2006/08/19 19:20:43

goo RSSリーダーで、鳥越俊太郎(氏)という言葉をキーワードにしてたどり着きました。

はじめまして。

ダーウィンにしても、フロイトにしても、内的必然性を社会的必然性に拡張した。
学問とはそういうものであり、でなければ学問の価値も意義もないと考えております。

自説を展開しておりますので、ご高覧いただければ光栄と存じます。

投稿: スポンタ | 2006/08/19 13:32:10

1粒で300m!
1粒で2度おいしい!
1箱18粒いりアーモンドキャラメル。
チョコもいいけど、キャラメルもアスリート茂木さまを応援しています。

河合隼雄先生は、奈良の大仏さまも見守ってくださっていると思います。

ロシアお気をつけいってらっしゃい!

投稿: | 2006/08/19 12:48:26

       自分救助は

             信頼なる  メタ認知へ

        メタ認知の鍛え方   逃げないこと   ?

投稿: | 2006/08/19 11:52:17

羽生さんとの対談が思わぬ方向にいくなんて、とっても面白いですねえ。これも近いうちに本になるとか。本屋に並ぶのが待ち遠しいですね。
美意識、一期一会、好奇心、発見の喜び...。いずれも人間精神にとってきわめて重大な要素だ。しかし、インターネットという「もう一つの文明社会」が全世界的に張り巡らされ、グーグルなんていう調べものツールがそのネット社会を通じて世界津々浦々に普及して以来というもの、それらの重大要素の価値が軽んじられようとしている、と私個人としては思うのだが...。いやまて、むしろ、それらの要素の大事さは、ネット社会が進化すればするほど、いや増して大きくなっているのではないか。

いまだ「種の起源」の前の段階にとどまっているという意識科学。如何にしたら、次の段階へ向けてのブレイクスルーが成せるのか、世界中の意識科学を研究している学者たちが脳をぞうきんのようにしぼって考えている状態だ。
恐らく茂木さんにも、毎日の煩雑な日々の中で、ニッチのような空白をつくって脳をぞうきんのようにしぼって、現在知られている経験的事実を統合し、妥当な仮説を作り、それを実際に証明しなくてはならない日がやってくるのだろう。
学問とは、自己の錬磨のためにするものとばかり思っていたが、自分自身を救うためにもするものなのか。非常に納得。
やはり「学ばずは卑し」というが、学ばないものは世界で恥をかくだけで、いっこうに救われまい。

ユーミンがサンクトペテルブルクに来る日に茂木さんは日本に帰ってしまうんですね。あらら。
おっしゃる通り、ちょーっと残念ですねえ。もうちょっと茂木さんが帰国する日が遅かったら、ジョイント計画も実現したかもね。

河合先生のご容態がとても気になっています。本当に一日も早くご回復なさるとよいですね。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/08/19 11:34:54

好奇心の先端にカメラをつけて覗いているような
臨場感あふれるどきどき感がありますね。

投稿: | 2006/08/19 10:38:42

空白が作れずイライラしている女です。私の場合は茂木先生と違って単に要領が悪いからですが・・・。
 そうか、ダーウィンもフロイトやユングも、自分自身を救いたくて・・・それが始まり・・・なんだか当たり前かもしれないけど、ちょびっと近付けた気がして癒されました。ありがとう。
 まず自分、自分が幸せでなけりゃ、人のことまで手が回んないよ~~~って開きなおることも、OKなんですよね。
しかし!そればっかじゃアカンよ!と思ったりして、脳はバランス取ろうと、お仕事してくれてるんですね。
 茂木先生、お忙しいなか、更新されてるブログにとてもとても癒されてます。有難うございます。嬉しい反面、心配しています。お体気をつけてくださいね。

投稿: | 2006/08/19 10:19:53

文字化けは、ソフトが問題?

新築引越しを機に、パソコン本体とキーボードをS社からF社に買い換えました。それに伴い、プリンターはPIXUS MP500、光通信、プロバイダーもNIFTY、windows XPに買い換え。文字化けどころか、パソコン環境のスペックの進歩に驚かれされました!

以前、メール本文で文字化け現象。ーー>リプレースで解消。

投稿: | 2006/08/19 10:17:10

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