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2006/08/29

確かに死語なんではないか

論文の英文をコツコツと
修正している時間の流れは好きだ。
 
 ひとりの職人のように仕事に向かい合い、
没頭すること。
 その間、自分もなく、時間の流れもない。
 生きているということを実感するのは、
往々にして
 時間の流れが苦しいまでにリアルに感じられる
時だけれども、
 時間や自己が消える時が一番充実している
というのはひとつのパラドックスだろう。

 久しぶりにNHKへ。打ち合わせ二件。
 
 住吉美紀さん(すみきち)さんが
短いズボンを履いているのを見て、
有吉伸人(ありきち)さんが
「おっ、すみきち、今日はホットパンツだな」
 と叫んだ。
 「ホットパンツ?!」
 山口佐知子さんとすみきちが
同時に叫んだ。

(お断り:当日記は、やまぐちさちこさんを
「山口幸子」と記して来ましたが、
 実は「山口佐知子」と書くことが
判明しました。お詫びするとともに
訂正いたします。これは、やまぐちさちこ
さんが幸薄い、という意味では決してありません)

 「ホットパンツ」というのは、確かに
死語なんではないか。
 旭川局から来た森田哲平さんが
笑っている。

 打ち合わせの時には橋本さとしさん
のナレーションがまだ入っていないので、
PD(プログラム・ディレクター)の人が
あてて朗読する。

 ところが、所々つまってしまう。
ありきちさんが、「おい、森田、
東京に出てきたら、すみよしが渋谷のギャル
みたいな格好しているから、くらくらしているん
じゃないか」
という。
 「ゴクアク三兄弟」の三男、河瀬大作さんが
「東京というのは恐ろしいところだなあ、
と思ったろう」
 と追い打ちをかける。

 「それにしても有吉さん、今日は、
森田、と呼び捨てにしたり、プロデューサー
っぽい言動が目立ちますね」
 「セーターを肩にかけなくっちゃ!」
 「それで、人差し指を突き出して、
「ハイ、そこ行って!」とか言わなくちゃ!」

 打ち合わせの空き時間、私が
ワードファイルを開けて、英文を
直していると、すみきちが質問して
来たので、説明した。
 「つまり、私はチーフプロデューサーの
ようなもので、一人ひとりの学生が
プログラム・ディレクターのようなもので、
一緒に「番組」(論文)をつくります。
 しかし、自分自身がプログラム・
ディレクターになることもあります」
と言うと、すみきちが、
 「それは、うちの業界ではわかりやすい
説明ですねえ!」と言った。

 ロシアの土産はチョコレートを持っていったが、
すみきちがぱくぱく食べている。
 「私、チョコレートとまらなくなるんですよお」
 「でもぜんぜん太らないなあ」
 「この前、友達と、死ぬ前に最後に食べたい
ものは何か、という話をしていて、私が
チョコレートと言ったら、エッ、てびっくり
されたんです」
 「・・・・(絶句)・・・・・」
 「茂木さんは何ですか? ビールでしょ?」
 「いや、その、死ぬ前にビールを飲む元気が
あるかどうかわからないから・・・」

 夜、日本財団ビルの中で「構想日本」
の会。
 少し早めについて、カフェで仕事を
していたら、
 構想日本代表の加藤秀樹さんが
迎えにいらした。

 甲野善紀さんと本格的にお話するのは
初めて。
 ぼくは、甲野さんが掘り下げていらっしゃる
ような身体性の問題と、
 身体性ということとは一見無関係に、
そこから離れる方向に進行
しつつあるように見える
現代の趨勢との間に何らかの関係性を
結びたいと思った。

 たとえば、ナンバ歩きのようなものを、
日本人はついつい西欧の「普遍」に対する
「特殊」だと思いがちだが、
 そうではなく、「特殊」がすなわち「普遍」
であるという覚悟を持つべきなのであろう。

 エルミタージュで、古代ギリシャの
彫像を見た時、人間の像と
神々の像がまったく同じであることが
印象的だった。
 古代ギリシャ人たちのように、
自分たちの身体性が、そのまま普遍につながる
という感覚を持ちうるか?

 明治以降、日本人は自分たちの身体を
普遍に対する特殊だと思いこまされている
ところがある。

8月 29, 2006 at 08:45 午前 |

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コメント

いつも読ませていただいています。
質問ですが、プログラムディレクターとはどんな仕事をなされるのですか?どういう意味ですか。

投稿: さとし | 2006/08/30 23:43:56

身体性の問題…

私には、きちんとはとらえられていませんが

ぜひ『こころとからだ』のあいだの道筋が見えると
おもしろいでしょうね…

武道、スポーツ、ダンス…

同じ身体を動かすにしても、いろいろありますね…

ところで、本能といっていいのかもわかりませんが
闘うこと、闘争とか、覇を競うとか、テリトリーとか
子孫を残すことに関連したこととか…
平たく言うと一番になりたいこととか…

そのあたりのことは、
進化をあつかう科学的視点からみると、
いかがなんでしょうか?

なぜか、ふとそのあたりが気になりました。

投稿: TOMOはは | 2006/08/30 7:34:29

今日初めて茂木センセのブログ見たけど・・・・
おもしろい(≧∇≦)ぶぁっはっはっ!!

クオリアspritでファイト♪

投稿: しん | 2006/08/30 1:02:50

ありきちさんて楽しいですね。ホットパンツは死語なのかな…

甲野さんも。世界一受けたい授業で茂木先生の前に出られたとき、初めて見てびっくりしました。すごい方ですね。

ギリシャ像の重大な問題、気になっていたんですが、
きょうのお話でなるほどです。
あの像の前に立ったときに、そこまで巡らすことのできる茂木先生は、やっぱりすごいなあと思いました…。

あの像、大きな煉瓦みたいな壁も、近くで見たら色もすごくきれいそうですね

投稿: M | 2006/08/29 23:20:26

「エルミタージュで、古代ギリシャの彫像を見たとき、人間の像と神々の像がまったく同じであることが印象的だった。…
古代ギリシャ人のように、自分達の身体性が、そのまま普遍につながるという感覚を持ちうるか?…明治以降、日本人は自分達の身体を、普遍に対する特殊だと思いこまされているところがある」

身体と精神は一つと考えると、明治の文明開化以降、そういう状態に我々がおかれているということは、「普遍」と袂を分かち、他国、他者との触れ合いを避けた結果、偏狭なナショナリズムや一国平和主義などにこの国が未だに縛られ続けているということと、少なからず関係しているのかもしれない。

ともあれ、身体性の問題に限らず、何の問題にせよ、「特殊」はすなわち「普遍」と一つなのであると思う。

例えば、生まれながらにハンディキャップを持った人々を、我々は「特殊」な人達と観なそうとするが、そういう人達も「普遍」の存在であると思わなければならない。彼等を「普遍」に対する「特殊」な存在と考えている限り、共存共栄は難しいだろう。

自分達と違ったものをたんに「特殊」とみなすのではなく「普遍」の存在として許容して受け入れることが、明治以降の日本人には欠けているのではないか。あるいは、明治以前からそうかもしれなかったりして…。

話は変わって…。

“ホットパンツ”…確かに最近はそうは言わない。といっても私もファッションには疎いから、最近その手のパンツを何て呼んでいるのか分かりません
(@_@;)

死ぬ前に何を食べたいか…?私の場合は何も食べずに、水を飲んだりして。死ぬ前に水を飲んで、お腹の中を綺麗にしてから、死ぬんだ。
チョコレートやビールなどは、食べないし、飲まないよ。
それらを飲んだり食べたりする気力があるかどうかもわかりません。でも水だけは飲むかもよ。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/08/29 18:47:23

 昨晩「構想日本」の会でお話を聞かせて頂きました。
茂木さんに直接会えたのは初めてのことだったのですが、テレビで拝見するよりもずっと親近感が感じられとても良かったと思います。

 昨晩の話の中の、1つのトピックは「甲野さんに対する敵とは何か」という事だったと思いますが、その問いについて自分なりに考えてみたことがあったので、単なる独りの考えで完結してしまうのはとてももったいない事と思い、コメントという形で書き残したいと思いました。

 在り来たりの考え方なのかも知れませんが、私見を簡単にまとめさせて頂きますと「甲野さんに対する敵とは、特定の組織体制ではない事はもとより、かと言って「科学者」を詐称した、実は科学者でない人達のみという訳でもなく、「不確実性に満ちた今日を生き、少しでも確実そうに見えるものには目を引かれがちであり、特に「科学的」という言葉のベールに包まれたものに敏感に反応してしまう「大衆一般」」のことなのではないだろうか」となります。しかし、「大衆一般」とは1つの言い方に過ぎず、遠回しに言わないとすれば、それはとりもなおさず、私たち自身のことなのかも知れないとも思われました。

 そして昨晩の茂木さんのお話に触発されて、私なりの「甲野さんの敵を撃退できる方法」も考えてみましたが、その方法として考えられるものは、結局「「大衆一般」の一員として埋没されない為の、批判的精神」を自ら育めるようにする「教育」しかないのではないだろうかと思います。

 コメントとしては長文になってしまったのですが、これからも茂木さんのお話が聞ける機会があれば積極的に参加して、一緒に考えることができればと思います。ここまでお読み頂いてありがとうございます。それでは失礼します。

投稿: 魚 | 2006/08/29 14:48:38


 昨晩「構想日本」の会でお話を聞かせて頂きました。
茂木さんに直接会えたのは初めてのことだったのですが、テレビで拝見するよりもずっと親近感が感じられとても良かったと思います。

 昨晩の話の中の、1つのトピックは「甲野さんに対する敵とは何か」という事だったと思いますが、その問いについて自分なりに考えてみたことがあったので、単なる独りの考えで完結してしまうのはとてももったいない事と思い、コメントという形で書き残したいと思いました。

 在り来たりの考え方なのかも知れませんが、私見を簡単にまとめさせて頂きますと「甲野さんに対する敵とは、特定の組織体制ではない事はもとより、かと言って「科学者」を詐称した、実は科学者でない人達のみという訳でもなく、「不確実性に満ちた今日を生き、少しでも確実そうに見えるものには目を引かれがちであり、特に「科学的」という言葉のベールに包まれたものに敏感に反応してしまう「大衆一般」」のことなのではないだろうか」となります。しかし、「大衆一般」とは1つの言い方に過ぎず、遠回しに言わないとすれば、それはとりもなおさず、私たち自身のことなのかも知れないとも思われました。

 そして昨晩の茂木さんのお話に触発されて、私なりの「甲野さんの敵を撃退できる方法」も考えてみましたが、その方法として考えられるものは、結局「「大衆一般」の一員として埋没されない為の、批判的精神」を自ら育めるようにする「教育」しかないのではないだろうかと思います。

 コメントとしては長文になってしまったのですが、これからも茂木さんのお話が聞ける機会があれば積極的に参加して、一緒に考えることができればと思います。ここまでお読み頂いてありがとうございます。それでは失礼します。

投稿: 魚 | 2006/08/29 14:45:15

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