« 『脳の中の人生』8刷 | トップページ | プロフェッショナル 仕事の流儀 飯塚哲哉 »

2006/08/17

出だしのテンポが早すぎてはいけない!

今週は本当にスケジュールがきつく、
かなり苦しい状況になっている。
 
 なんでこんなにやることがあるんだ!
と思わず悲鳴を上げたくなってしまう。

 日曜からロシアに行くので、その前に
しておかなくてはいけないことが
たくさんありすぎて、
 青息吐息である。

 絶対に、全部が終わるとは思えない!

 なるほど、人生というのは
いろいろなサプライズを用意しているものだと
思う。
 これほど「空白」を求めての
きびしい闘いが待っているとは思って
いなかった。
 
 獲得は喪失と表裏一体である。
 何かやるべきことを
獲得するということは、空白の喪失をも
意味するのだった。

 本当は日記を書いている場合では
ないのだが、
 これは精神の最後の砦。

 こうやって書いて振り返っておかないと
全体性が失われ、バランスが崩れる。

 8月17日(土)にオペラ・シティ
である
こども音・楽・館 2006
のリハーサル。

 楽屋口から入っていくと、
ちょうどチョン・ミュンフンさんが
パパゲーノ役の晴雅彦さんの
歌を聴きながらいろいろアドバイス
していた。

 東京フィルの関係者は、マエストロ・
チョン・ミュンフン
さんのことをとても尊敬していて、
 その思いは打ち合わせの時の
発言の端々からも伝わってきたのだが、
 私が垣間見た、練習の様子からもその理由は
わかった。
 
 今回の趣向で、晴さんは関西弁で
Ein Madchen oder weibchen wunscht Papageno sich...
のアリアを歌っていたのだが、
 マエストロからの指示は英語で、
 それを聴いた瞬間、晴さんは
突然、「関西弁で
パパゲーノを歌う変な人」から、
 「威儀を正して英語で指示を受ける
芸術家」に変身するので、
 その変貌ぶりが面白かった。

 「このフレーズと
フレーズの間にブレークを入れるとき、
それが物理的にどんなに長くても
いいけれど、必ずそのブレークを挟んで
フレーズが一つにつながっていなければならない」

 チョン・ミュンフンさんはそんなことを
言いながら自分で歌って見せた。

 続いて、パパゲーナ役の高橋薫子
さんも加わって、
 「パ・パ・パ・パ・・・」
の二重唱。

 ここでは、マエストロは、「出だしの
テンポが何よりも大事です!」
と強調していた。

 出だしのテンポが早すぎてはいけない! 
 途中からは、テンポは普通でいいけれども、
とにかく最初だけはゆっくり始まらなければ
いけない!

 なるほど!

 舞台進行の打ち合わせでは、
マエストロの「パワープレー」
が心地よかった。

 段取りを説明しようとすると、
「ここに書いてあることと何か
違うことがありますか? 同じならば
いいよ!」
とぱっとさえぎってスイっと流す。

 指揮者道を垣間見た思いだった。

 進行台本は、「一つの番組の台本を
書くのに50冊本を読む」
放送作家の富樫香織さんで、
 こちらはもう完全に信頼しているから、
 後は当日のアドリブがどれくらい
炸裂するかである。

 さてさて空白を求めての闘い。
 あまりにも苦しいので、仕事の合間、
歩きながら必死に空白をつくった。

 空白とは時に能動的に作り出すものなり。
 歩きながら、相互作用同時性の
ネットワーク構造についてのイメージを
ふくらませる。

 灼熱の都会の街を行き交う人たちは
どこかさびしげだった。
 
 皆、人生の過酷な真実にあえぐ
金魚さんたちなのだろうか!
 金魚たちは、晴れ着をまといつつ、
どこに流れていくのでしょう。

 さて、私はクオリア日記という
息継ぎも終わったことですし、
 ふたたび、仕事の海深く潜って
いくことといたします。

 明日まで、しばしサヨウナラ。

8月 17, 2006 at 04:47 午前 |

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 出だしのテンポが早すぎてはいけない!:

» 家族の夏休み・・・『明日の神話』編 トラックバック Little Tree
お盆休みの終わった方もいらっしゃるかもしれませんが、我が家は昨日から夫が夏休みです。 日曜日に、お墓のお掃除とお墓参りには、家族3人で行って来ましたので 昨日は、お仏壇にお線香をあげて、お参りしました。 昨年までは、kirikouの歳の大きいいとこふたりが、まだ就職しておりませんでしたので 夫のきょうだいとその家族が皆で集まって、ワイワイとお盆を過ごしていました。 今年は、それぞれに忙し�... [続きを読む]

受信: 2006/08/18 6:07:14

コメント

うちの教え子たちが、茂木さんのことを心配しています。
「ノーベル賞候補なのに忙しすぎるんじゃ・・」と。
残暑が厳しいです。
どうかご自愛のほどを。

投稿: narinatta | 2006/08/17 23:25:03

それにしても、ここのところの茂木先生の日々って、本当に苦しい日々が続いているんだなあ。辛いお気持ち、心よりお察し申し上げます…。先のコメントできついことを書いたけれど、ドンナにぼやいても、状況は変えられないと思います…。

暑い日々が続いているから、決して無理をなさらないで頂きたい。暇が少ない多忙な人々は体が資本です。

先にもコメントしたように、無理せず一つ一つ、コツコツと仕事を消化していくうちに、空白の時というのは必ず訪れる。

時には、能動的に空白を作ることも必要で、そうしないと、ただの動物のようになってしまうだろう。

そういう能力があるコト自体、有り難いことではなかろうか。

……私は、灼熱の日々のもと、肉体労働(ビルの清掃業)に従事し、“ゆるい”身体に鞭打っております。

毎度のように汗が滝のように噴き出します。

日曜からロシアに赴かれるとのコト、何卒つつがなく、無事故で過ごされることをお祈り申し上げます。

茂木先生のもとに、本当にゆっくりとした空白の日々が一日も早く訪れんことを…。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/08/17 20:26:28

空白を求めて厳しい闘いを強いられている茂木先生。
本当に仕事に追われてばかりで大変でしょうが、今ある仕事の全てをこなせば必ずそこに空白が出来るものだと思う。空白が一生ないと言うコトは絶対あり得ない。

それにしても、本当に大変なのは鏡を見るように分かるけれど、日本という所は何てまぁ、人間を安月給で働くだけ働かせて、アップアップさせてばかりいるのだろうか。

しかし、その一方で働きたくても、肉体的、知的ハンディのせいで働けない、いわば、空白しかない人たちだっているのである。


今の時代、障害者を雇ってくれる企業なんて微々たる数しかない。おまけに今は「格差社会」なんていわれている。障害者が働く所と言えば、たいていは彼等の入っている養護施設の中に入っている作業所くらいだ。あるいはNPO法人が経営している特別な会社くらいか…。

そういう境遇に置かれている人のことを考えると、私などは、空白がほしいなんて、口が裂けても言えない。腹が痛くなっても思えない。

むしろ、元気で働けることこそ、五体満足な者の大いなる“特権”だと思っている。

私自身、いつかコメントしたことがあったかもしれないが、障害者(所謂自閉症)の一人であった。ヘタしたら、普通の社会で働けなくなるところであった。しかし幸運なことに、今はこうして一般社会の中に入って、普通の企業に就職して働いているのだ。


……そうはいっても、空白がなくて大変な思いをされて仕事をこなされている、茂木先生のお気持ちも先に書いたように鏡を見る如く、非常によくわかる。

日記の内容をみるかぎり、スケジュールも汲々で、トテモきつくて大変でしょうが、転換点は必ずやってきます。必ず空白が訪れるはずであります。

残暑が厳しい日々が続きます。私も日々格闘しております。くれぐれも健康にはご留意して大変な日々を共に乗りきろうではありませんか。空白がない、とばかりぼやいていたら、キリがありません。


追伸:実をいうと、私の場合、毎年盆休みがないのです。でも茂木先生の場合に比べたら、土曜の午後(午前中は半ドン仕事)と日曜という「空白」がある。いまこうして日記へのコメントをしている状態も「空白」である。

でもそんな自分がこういうのもなんですが、茂木先生のように空白がなく苦しくても、必ず労働の後には空白が訪れる、と信じ抜いて頑張り抜くほうです。いな、必ずそうします。なんぼ時間がかかっても日にちが掛かっても、断じてやり抜くしかないと思うほうです。だって途中で投げ出したら、何時まで経っても空白は来ませんもの。

今回のエントリーで、こども音・楽・館2006のリハーサルのことが書かれていましたが、出だしのテンポが早過ぎてはいけない!という言葉を聞いて、高校時代を思い出しました。

出だしを間違えると全体の調和が狂っておかしくなる。テンポを揃えるのにとても苦労したおぼえがある。

仕事も音楽も、出だしのテンポを間違えず、それを維持することがなによりも大事なのかもしれない…。

人生は日々闘いだ。空白があろうがなかろうが、人間として生きていく以上、社会、国家というシステムと闘いつづけなくては…!

以上、きょうはキツイコメントで申し訳ありません。若しお読みになってご不快ならば、削除をお願いします。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/08/17 18:54:54

私、アマチュアの合唱団で歌っているのですが、
超幸運にも、マエストロ・チョン・ミュンフンの指揮で歌ったことがあるのです。
それまで様々な指揮者にお会いしましたが、
チョン・ミュンフン氏はやはり一流。
ほんの些細なことなのだけれども、
出された指示は意味深く、的確で、感動の嵐でした。
疑わずに身を任せていれば、
普段の私たちでは作り出すことの出来なかったレベルの
音楽を紡ぎだしてくれて、それはそれは気持ち良かったです。

一線を越えちゃっている人の
集中力と感受性は素晴らしいものですね~。
(もちろん、茂木さんも含めてですよっ。)

投稿: mono | 2006/08/17 12:49:16

コメントを書く