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2006/08/10

カッコいいとか、そういうことがあまり好きじゃない

朝一番で、伊東乾さん、青木茂さん、
跡見順子さんとミーティング。
 朝日新聞の井原圭子さんも
同席。

 場所は四谷駅から
ほど近いルノアール。

 意識的な意思決定に先立つ身体運動
について。議論する。
 伊東さんは開高健賞を受けられることが
決まったとのこと。
 オメデトウございました。

 井原さんと、日本人に必要な自己批評の
話をする。
 いくら自分たちの国は良い国だと言ったって、
夜郎自大で周囲の人間は共感してくれない。

 むしろ自分たちの欠点は自分たちで
先に言ってしまった方がいい。
 その方が寄り高みを目指せるし、
何よりも人間の態度として美しい。

 夏目漱石先生を見習え、ということです。

 終了後、麹町のBS日テレに歩く。
 あと一回あるが、それはテレビマンユニオンの
スタジオでやるので、
 『ニューロンの回廊』を麹町で
収録するのは最後である。

 2、3年前には、自分がここまで
「テレビ」というメディアにかかわるとは
思ってはいなかった。

 どんな制作現場でも、
最後はプロとしての意識、ものづくりの
心意気というものが大切になるんだなあ、
ということを思う。

 ゲストは、書家の柿沼康二さんと
パティシエの辻口博啓さん。

 「ドクター茂木」としての
演技もう終わりである。
 何となく芸風がつかめてきたような
気がするし、
 テレビマンユニオンの花野剛一さん
としてはもう1クールやりたかった
所なんだろうけど、
 正直言えば、
 ほっとした気持ちもある。

 人生では、スペースを
作ることも大事です。
 そうでしょ、花野さん。

 柿沼さんは様々な書の賞を総なめ
してから、アートとしての
表現に取り組まれている
方。
 柿沼さんの手ほどきで書を
したためて、初めてその
 何とも言えない奥深い
楽しさに目覚めたように思う。

 私は小学校の時の書道の授業が
苦手で、何しろヘタなものだから、
 楽しいと思ったことは一度もなかった。

 柿沼さんのとなりで、まずは空海が最澄に
宛てて書いたという国宝「風信状」の
「風」を臨書した。
 それは、「吸い込むこと」
に当たると柿沼さんは言われた。

 それから、自由に書いた。
 これは、「吐き出すこと」
だと柿沼さん。

 「風」という字の横に
落款としてフラワーピッグを描いたら、
柿沼さんが眺めて考え込んでいる。

 「茂木さんは、カッコいいということが
あまり好きじゃないでしょ」
などと言う。
 
 「普通、字は右肩上がりに書くと
かっこよく見えるんだけど、
茂木さんはわざと右が下がるように
書いている。
 カッコいいとか、そういうことが
あまり好きじゃないということが
わかります」
と柿沼さん。

 その一言で、何かが解放されたような気がする。

 吸って、吐いて、自由になれ!

 柿沼さんは9月から1年間アメリカの大学
で書を教えられるとのこと。
 「ギャップイヤー」で大きく飛躍される
柿沼さんの未来が楽しみである!

 辻口博啓さんのチョコレートは、
自分でも何回か買って、また人から
いただいて食べたことがある。
 いつも一粒ひとつぶ大切に食べる。

 ところが、今回の
収録に関して言えば、「演出」で一気に6個食べ、
それをアシスタントの岡村麻純さんが
「ドクター、食べ過ぎですよ」
と止める手はずになっていると言う。

 それは、チョコレートに
対して申し訳ないなあ、と思ったが、
指示だから、仕方がない。
 
 普段はゆったりと一つ食べる
味の宝石を、
 一気にぱくぱくぱくと
食べた。

 コーヒーも水もなしである。

 続いて辻口さんとお話したが、
何だか妙なことが起こった。

 ぐわーっと、ものすごい
エネルギーが身体の内側から
わき上がってくるように感じたのである。
 気分が高揚し、
心なしかかっかと熱くなる。

 ランナーズ・ハイならぬ、
チョコレート・ハイとはこのことか、
とびっくりした。
 
 調子に乗って、というわけではないが、
台本指示により、
辻口さんの代表作
「セ・ラ・ヴィ」及び
「タルト・フランボワーズ」も食す。

 夕飯前にこんなにスイーツをいただくのは
初めての体験であり、
 スイーツの食べ放題バイキングに来たような
気持ちになる。

 「セ・ラ・ヴィ」はさすがの味。
素材の個性が立っていて、
しかも全体としては調和がある。

 「タルト・フランボワーズ」は、
カカオのえぐみを生かした大人の味。
 その向こうに、広大無辺なる
味の空間があることが確かに
感じられた。

 そして何よりのサプライズは、
お米の粉を使ったスポンジ・ケーキ。
 小麦粉アレルギーの子供たち
にもスイーツの楽しみを、という
思いで作られたとのことだが、
 「えっ、これが米が原料?」
と驚くほどさわやかで、しっとりと
していて、
 むしろ小麦粉よりもいいんじゃないか
とさえ思ってしまう。

 辻口さんは実家が七尾の和菓子屋で、
子供の頃から甘味に親しみ、
小学校の時にはもうケーキのスケッチや、
店のレイアウトを描いていたという。

 まさにパティシエになるために
生まれてきたような人。

 180センチはあるだろうという
長身で、人柄も大きく、
 そのスイーツに対する姿勢も格闘技のようだな、
と思って、そう申し上げたら、
辻口さんは実は格闘技が大好きだとの
ことだった。

 つくることの歓び、
人に歓びを与えることの歓び。

 辻口さんのスイーツの格闘的展開に
これからも目が離せない。

 収録が終わり、
田中ナオトさんが
「このスタジオでの収録は最後ですので、
ニューロン組の記念撮影をします」
と声を上げた。

 ナオトは、どちらかと言うと
立川談志のようなクールでシニカルな
スタンスが印象的だったので、
 そんなナオトがそんなことを言うので
何だかしんみりしてしまった。

 小津安二郎の映画の一シーンの
ように、全員で並んで記念撮影をする。
 私のニューロンの回廊にしっかりと
刻み込まれました。

 スタジオを出る時、花野Pと立ち話。
 「元気ですか、花野さん!」
と言うと、
 「みんなにそう言われるけど、元気です!」
と花野さん。
 すると、
 となりにいた佐藤さんが、
 「今、大人になりつつあるんですよ!」
と言いました。

 打ち上げは9月の最終収録の後に
ある模様。
 その時は大いに盛り上がることと
いたしましょう。

8月 10, 2006 at 08:33 午前 |

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コメント

 茂木さんは本当にスイーツ(とくにチョコレート)が大好き
なんだあ。大切に一粒づつ食べるだなんて、可愛い! 茂木さんに
食べられちゃうチョコレートは、大切に思われて幸せだね!

 普段、甘いものをほとんど食べない私が、どうしようもなく食べたく
なるのは、ピンチの時です。脳が食べたがるのかなあ?
甘いものに気が向かない状態が、リラックス状態だとは…うーん。
 お米の粉で作ったパンも、あっさりもちもちしていて、
好きです。軽くトーストして、バターをぬって…。

 茂木さんの超ご多忙は、変わらないのでしょうけれど、
この数日の日記はなんだかとってもあったかい感じがして、
心の余裕(?のような何か)を感じるのですよ。
私が思うのは、「飲み会でちょっと爆発」後から…、という気がする。
「ちょっと爆発」後に、ちょっと開放?
 高知での講演の音声ファイルを聞かせていただいた時も、
すご~くやわらか~い話し方をされていたので、サプライズ!
 セクシー・フラワーピッグ、発見の日でした!

投稿: 龍神 | 2006/08/11 2:32:12

追伸。
安倍晋三が「美しい国」なんて本を出したそうだが、彼はこの国が歴史上侵した過ちなどについて、何も触れようとはしていないだろう。

ただ、自分達の国には素晴らしい美しい伝統があるから、それを誇りに思おうとの1点ばりに相違ない。

歴史は美しい伝統だけの産物ではないのだ。個人史の集合体が歴史ならば、争いや侵略、蹂躪などマイナスの面も含まれるはずである。

如何なる国も過去に戦争などの過ちを犯している。日本だけは例外だとは言わせない。被爆国になったのも、当時の日本の満州国建国などの中国、アジアに対する侵略の果ての結果である。

このエントリーで批評精神のことについて書かれていたが、日本というのはただ、自分の国は素晴らしい伝統があるうんぬん、というだけで、自分たちが過去の歴史で犯した過ちや、その他の数え切れない「失点」には眼をつぶるという、外国から見れば許されない最大の欠点がある。

要するに、過去を(それが先の戦争の忌まわしい記憶であっても)“水に流して”(戦争の記憶だけは何があっても風化させてはならない)しまおうとする「ふざけた」ところがある。

これが実は日本が、諸外国から尊敬されない一番の原因だ。

アホらしい夜郎自大はやめて、謙虚に過去を振りかえり、自分達のこういう欠点を語ることが、このユーラシア東端のちっぽけな島国には是非、必要だ!

投稿: 銀鏡反応 | 2006/08/10 19:08:21

『ニューロンの回廊』も、もうじき放映が終わってしまうなんて、そんな…。(しばし絶句!)しかし、多忙を究めたる今の茂木先生にとってはやっぱりほっとする出来事かも。

自分も普段チョコレートを食べる時は、一個ずつ食べるのだが、一時に沢山食べると胸の奥がグァーッ!と燃えるように熱くなるのかな?

「チョコを沢山食べると鼻血が出る」という迷信があるけど、本当に鼻血が出そうになるのかな?

純度の高いチョコレートだとそうなるのかな?人によって違うのかな?市販のチョコでは如何なんだろう??
実験的精神を発揮して、試して見たいと思います。

世の中は「チョイワル」とか「イケメン」とか、上面だけ“ええかっこしい”が流行っているけれども、大事なのは精神の美しさ、潔さだと自分も思う。

そういう精神的な美しさと、表面だけのカッコよさとはやはり別もんだ。

茂木先生はええかっこしいが嫌いで、なりふり構わず、真理を追究される方だから、うわっつら的な、「カッコイイ」とか、そういうことが嫌いなんだよね。

如何にファッショナブルに決めようが、ココロに疚しさと、いやらしさがある人間はオイラも敬遠する。

いやらしさと疚しさを乗り越えた人間だけが、人に愛され、尊敬される存在となる。

自分もまた、そういう人を目指したいと、恒に思う。

閑話休題。

きょうの夕方、仕事の帰りに、家の近くの公園を自転車で通ったら、蝉時雨がさんさんと鳴り響いていた。

台風は逸れてしまったし、まだまだ暑い日々が続く。蝉もまだまだ大声で歌う。

茂木先生が、何卒この炎熱の季節を無事乗り超えられんことを祈る。無理はなるべくしないで頑張って下さい。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/08/10 18:46:14

茂木さんの字、好きです!!!色紙の字もそうだけど、毛筆もいいですね。

母の姉妹が書道をしていた関係で、子供の頃お座りをして書道をさせられたのですが、上手にはなりませんでした。字の上手下手はべつとして、その人の人となりがでている字は、味があっていいなぁと思います。

私の字は、男っぽいといわれます。正確が男前?なんですね、きっと^^;。

投稿: フ~シャン | 2006/08/10 12:52:02

文字が右下がりってそういう意味があったんですね。
僕も右下がりで、自分でも「なんで右下がりなんだろう」と思ってたんですけど、かっこいいのが好きじゃないという性格判断がなされるとは!
実は僕はカッコつけてるモノが好きじゃないんです。
なんか不自然な感じがして。
それがこうリンクするとは!
石田衣良さんにサインもらった時、石田さんも文字が右下がりで筆跡似てるなぁ、って思ってたら、性格が似てるからだとは!
話をしていて、気が合って盛り上がったので驚きでした。
僭越ながら、茂木さんにも以前から同じ感性を感じていたので、その茂木さんも右下がりとはちょっとサプライズでした。
しかし、こんなにコメント長くなるとは!
では。

投稿: どらごんぼーい | 2006/08/10 11:05:44

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