トマトジュースのことを考えているだけでも
ルフトハンザというのは便利で、
機内でインターネットができる。
目覚めると、飛行機は北海道と同じくらいの
緯度を飛んでいた。
食事を挟んで、二つの映画を見た。
一つは、Rowan Atkinson(ミスター・ビーン)、
Maggie Smith、Kristin Scott Thomasが出ている
"Keeping Mum"、
もう一つはJennifer Aniston、
Kevin Kostner、Shirley McLaine が出ている
"Rumor has it"である。
前者はイギリスの映画だから意味がちょっと
違うが、文句を言う割には
ハリウッド映画を見るのは、
一つには
英語の勉強と割り切っているからである。
読む分には苦労しないが、
アメリカなまりの英語、
とくにスラングは苦手で、
テクストで見ると大したことを
言っているわけじゃないんだが、
音楽として聞き慣れていない。
どちらもコメディなのは、やはり、
行くときにみるのを途中で止めた
Mission Impossible IIIのように、
知性を感じない暴力表現に
不快な思いをするというような
経験をする確率が低いし、
そもそも私は笑いが好きだからである。
(Mission Impossibleは、もともとは
もっとウィットのあるドラマではなかったか?
IとIIは見ていないので何とも言えないが、
IIIについては、冒頭といい、その後の
展開といい、かなりNGだった)
フランクフルトでは、田谷と一緒に大急ぎで
1時間くらいで「カミカゼ」観光をした。
Dom(大聖堂)を訪れ、
それからゲーテの生まれた家
を目指して歩いて行き、
ゲーテの銅像を見上げたりした。
思えば、私は大いにゲーテを敬愛していた
時代があったのだ。
私の青春時代のある時期は完全にドイツびいきで、その
後いろいろぐれたり、気が散ったり、
忘れちまったりしたが、
精神の古層には、ドイツ的なるものが
確実にある。
ところで、ゲーテ的な世界と、
飛行機の中で見た現代の映画二本を
比べると、明らかにその精神世界が
違う。
「芸術」と「商業映画」を
一緒にするな、という意見もあるだろうけれども、
ぼくはどちらかと言えば、そのような
ジャンルを立てずに、すべてを
平等に見たいと思う。
そもそも、同じ人間がつくり、
味わっているのだから、共通点も多いにある
はずで、
一見軽薄なように見えるものの後ろに、
如何に深い人間ドラマを見るか、という
点に最大の関心があるのだが。
キアロスタミが「桜桃の味」の中で、
現代的によくある「メイキング映像」
や「楽屋落ち」の手法の背後にある
精神的に深い問題を掘り起こしたことに
対する衝撃と感謝は、忘れてはいない。
アメリカのハリウッド映画的な
ものの背後には、何が隠蔽されているのか?
結局このような問題を真面目に考えないと、
現代に向き合っていることにはならない。
ところで、トマトジュースに
胡椒と塩をかけて飲むのって、
すごく不思議である。
もちろん「ジュース」なのだけれども、
何だかトマトそのものを食べているような
気分にもなる。
まるで、野菜という固体が、
魔法で液体になってしまったよう。
しかもその液体は、どろどろしていて、
今にも「立ちそう」で、
なんだか別のカテゴリーのものの
ようなのだ。
私の概念世界の中で、胡椒と塩をかけて
飲むトマトジュースは、野菜でもジュースでもない
ような、不思議な場所を占めている。
無人島に行ったら、トマトジュースのことを
考えているだけでも一日はつぶせそうだ。
8月 27, 2006 at 07:09 午前 | Permalink
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コメント
お帰りなさい。ロシアからの日記、楽しく拝見
しました。写真の茂木さん、いい表情されていますね。
忙しいながらもちゃんと楽しんでいらっしゃる。
トマトといえば、子供の頃、よくおやつにお砂糖を
かけたトマトを食べていました。冷やしたトマトを
さいの目に切り、お砂糖をかけるだけ。
野菜というよりフルーツに近い感覚。
おいしかったです。
最近のトマトは甘いので、何もかけずにそのままの味を楽しんでいます。
投稿: かりんと | 2006/08/31 0:38:03
4年前にフランクフルトのゲーテの生まれた家に行きました。
かなりお金持ちだったということで、私の中のゲーテ観、若干修正&上書き、を余儀なくさせられました。が、それもまた旅したことの醍醐味でしょうか。
MIⅢに関しては、一応ⅠもⅡも見てきましたが、往年の007のように美女たちの間を軽やかに渡り歩いて気がつくとスゴイ状況をくぐり抜けていたというような人のように描かれていた気がしたのだけど(今となっては気のせいだったかしら?って感じ)、急に愛する人のために…的な頑張りが普通になっちゃって、なんとなくそこに、今のハリウッド…いやアメリカ?の足掻きを感じてしまいました。
トマトジュースに塩・胡椒…は経験したことありませんが、おしるこの横に塩昆布…ぐらいの感じでありかな、と思います。ちょっと前から私の中でイメージ的にはO.K.だけど、やる勇気がないのが豆乳に醤油。私は豆乳が好きだからやりたくないんですが、ボスが豆腐は好きだけど豆乳は嫌い!とのたまうので、醤油をたらしたら飲みやすいのでは?と提案してみて、もちろん却下されてますが、誰かやってみて推してください、って思っています。だめ?
投稿: kyono | 2006/08/29 15:24:49
ミキサーにかけて作るトマトジュースでしたら、クレイジーペッパーを入れるのもお薦め。また、トマトジュースにプラスはちみつ、レモンを入れると甘いジュースっぽくっていいですよ。昨日、高校の友人と会ってたのですが、茂木先生の話になりました。友人の職場に茂木先生と大学時代の同級生の方がおられるみたいで。先生はかなりの巨人ファンらしいですね。そう、お聞きしましたよ。久々に会う友人とアフタヌーンteaをしながら先生の話題で盛り上がるとは・・・。何かしら不思議な思いです。また、今年の夏は他でも先生の話題で持ちきり。先生のブログを読ませて頂くと時々、考えさせられる事があります。感謝。
投稿: hana | 2006/08/27 21:54:53
トマトは果物のように甘いと思うので、
ジュースの時、塩こしょうはありえないと思います。
でも、火を通したトマトは脳にに大変よろしいようなので、
このときは塩こしょうですよ。
投稿: atti | 2006/08/27 15:20:51
日記は覗いておりましたが、久方ぶりにコメントしてみよう、と思う疑問?質問です 先生!そのトマトジュースとゆうのはコンビになどに有る様な缶ジュースや、ちょっと高級な感漂う頂き物で届くような産直タイプのビンに入ったものなのか?否か・・とゆう事です。私は普通のトマトは本当に大好きで、毎日でもあれば食べちゃいたいくらいLOVEですが、トマトジュースだけはどうも好きになれません。原因は、子供の頃父がおいしそうに飲んでいたトマトジュースを貰って飲んだ時の衝撃からです。まず匂い、それに+で致命傷的な味?でした。普通のどこにでもある缶のトマトジュースでしたが、子供の頃の私にとっては、なぜあれをおいしそうに父が飲むのか?父は大人だから子供の私とは味覚が違うか?それとも単に変?のどちらかに違いない。。そう思いながらも、何故私はおいしく感じれないのか、とゆう事もショックでした。その衝撃以来、私の中ではトマトジュースはジュースにあらず。トマトジュースによる学習から、私の中で野菜ジュースにしても未だジュースに分類されず、健康ドリンクの類に入り、その偏った考えは30過ぎた今も変わらずなのであります。しかし世間は健康ブームとゆうか、フレッシュジュースの密かなブームとゆうべきなのか、駅やデパート至る所にジューススタンドが多く視られ、中には野菜中心のスタンドもあるくらいです。ある知人から聞いた話では、トマトの皮を剥き、家庭用ジューサーで丁寧にジュースを作ると、一般でゆうトマトジュースとは「別物」の、それはそれはとてもおいしく飲みやすいトマトジュースが出来るとゆうのですが。未だためした事がありません・・。先生の日記にあるトマトジュースとゆうのは、もしかして私の幻のフレッシュトマトジュースの事なのか??もしそうであるのなら、わたしもその感覚・クオリアを勇気を持って体験してみたい、と思うのです。
投稿: abekaori | 2006/08/27 10:45:35
トマトジュースに塩胡椒か・・・トマトそのものを食べているって感じだとあるが、胡椒がジュースになって薄まったトマトの青臭いクオリアを引き立たせているんだろうか。固体が液体になっていて、今にも立ちそうな、固体とも液体とも違うカテゴリーのようなものになるとあるが、それも塩胡椒の為せる技なのか。
ちなみに自分は以前、トマトジュースにソースをかけて飲んだことがアリマス。
結果は・・・トマトの青臭さがおおかた消えて、ソースのスパイシーなクオリアだけが感じられたのでした。ソース入れすぎたかしらん。でもドロドロとしていて立ちそうな気配は感じられませんでした。
ところで…「芸術」とか「商業映画」とかいちいちジャンル建てしないで平等にみていこうという茂木先生の姿勢には好感が持てる。
“一見軽薄なように見えるものの後ろに、如何に深い人間ドラマを見るか”…これは、映画に限らずTVドラマなどでも同じコトが言えるかもしれない。
TVで毎週のように流れている、一見、安っぽいお気楽な、恋愛とか青春とかをテーマにしたドラマの背後に、如何なる人間的問題が潜んでいるか、ということをマジメに考えなくては、このややこしい現代という時代にまっすぐに向き合うことはできない。
ハリウッド的手法で造られた商業映画の背後には、何が隠蔽されているか、に向き合うのも非常に大事だが、日本で大量に製作されているお気楽ドラマの背後にも何が潜んでいるか、も鋭く観察していかなくてはならないだろう。もっとも、自分は、昨今のドラマは嫌いなのだが…。
どんなドラマも、観ていて安っぽく、ワンパターンだ。チャンネルを途中で変えたくなるほど、陳腐だ。果たして背後に深い人間的問題が隠されているのか知らん。
それはそうと、機内で快適に過ごされておられるようで安堵しております。
本当に無事安穏にてご帰国されんことを!
投稿: 銀鏡反応 | 2006/08/27 10:45:25