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2006/08/21

資源保護の観点から

成田エクスプレスの中で、仕事を
続けようと思ったが、さすがに
「これは眠った方がいい」
と思って、かくんとなって、
次に気付いたのは空港第二ターミナル
ビルの前だった。
 
 飛行機の中でトムクルーズ
主演の「ミッション・ポッシブルIII」
を見たが、途中でやめてしまった。

 その理由は、「青春と読書」
の連載原稿に書くことにする。

 フランクフルトで乗り換え。
 ふらふらしていたら、
見覚えのある顔が。
 わが畏友、田森佳秀その人である。

 おお、ということでBlack Forestという
Bierhausに入り、ビールを飲みながら
しばし語らう。

 もし田森と遭わなかったら、
ロビーで飲まず食わずで仕事を
していたことになるだろう。
 そうしたら、ものすごくお腹が
空いていたことだろう。
 それはそれで良かったのだろうけど、
友と語らうのはとてもうれしい。

 今回、私と田森はMaking good hidden figures
というタイトルで
 European Conference for Visual Perception
で発表する。
 そのためのサンクト・ペテルブルク入り
である。
 
 ところで、なぜ直行しないのか、
フランクフルトまでわざわざ行ってから
戻るのかと言えば、
 ダイレクト・フライトが
ないからである。
 
 モスクワ経由だと、
変な時間に着くとか、
国内便だからうんぬんとか、
そんな事情があるらしい。

 さて、そういうわけで、
 いよいよ、ロシアの大地を踏んだ。

 ガイドブックには、
ロシアはとにかくでかい、
と書いてあったが、
 あれだけでかい国土に、
日本の人口よりも少し多め
(一億四千万人)の人しか
住んでいないんだから、
 確かに土地がたくさんあるに
違いない。

 空港から移動する車内から
見る街は、なんだかスケールの
感覚がおかしく、
 旧ソ連時代の名残なのか、
やたらと大きな銅像があった。

 田森と一緒に移動すると、
かならずいつもより時間がかかる。
 というのは、彼が「非典型的なこと」
をしようとするからで、
 今回も、
空港で、学会を通してホテルを申し込んだ
人たちは迎えの人たちが来ていたのだが、 
 その人に「茂木もついでに
アストリア・ホテルに連れていってくれ」
と交渉を始めたので、
 私は外で待っていた。

 一人だったら、さっさと
白でも何でもタクシーを拾って
移動していたろうが、
 田森が交渉するのを見ているのが
面白い。

 なぜ外に佇んでいたかというと、
一度建物の外に出ると、また入るには
セキュリティ・チェックを受けるようになって
いたからである。
 うかつに出てしまって、
田森に、「おーい」と手を振って知らせた。
 その後すぐに、交渉は成立した。
 
 結局、20ドル追加で払うことに。
こういう、「規定があるわけじゃないが、
その場の感じで決まる額」
というのは面白い。
 まさに神経経済学の問題。

 へんてこと言えば、イミグレーションの
書類がロシア語でしか書いていなくて、
みなルフトハンザからもらった「説明書」
を見ながら、苦労して書き込んでいた。

 ヘンテコではあるが、私は何だか
ロシアの人たちが好きになった。

 アストリア・ホテルに着き、
一足先に来ていた田谷文彦を
呼び出して
 ビールとウォッカを飲んで
打ち合わせしたが、
 そのバーの人たちも佇まいも好きだった。

 何というか、一言でいうと
はにかんでいるというか、
 うつむいているか、
そんな態度が感じられる。

 タルコフスキーの
『惑星ソラリス』の冒頭、
 男の子が「こんにちわ」
と言って、女の子が絶妙な間合いで
「こんにちわ」と恥ずかしそうに言う
シーンがあるが、
 あんな感じの斜め17度くらいに
微妙に傾く感じが、
 ホテルのレセプションの人とか、
いろいろな人たちにあった。

 この日記を書き終わると、
さっそく仕事に追われるわけで
(ネットがつながって良かった!)
のんびりおろしあ、というわけには
行かないのだが、
 この「斜めかたむき」パーソナリティの
クオリアに接しただけでも、
 すでに、ロシアに来て良かったなあ
と思っている。

 それと、今日はぜひキャビアという
やつを食べてみたい。
 資源保護の観点から、
一人250gまでしか持ち出せないうんぬんとガイド
ブックに書いてあったりすると、
 もともと持ち出す気はなかったのだが、
ますます興味を惹かれて、
 一つ資源保護の観点から賞味をして
みたい、と思う。

 ウォッカがとてもおいしく感じられたが、
これはまずいことだと思う。
 ロシア政府は国民にあまりウォッカを
飲んではいけません、と言っている
ようだが、
 確かにあれはうまい酒です。

8月 21, 2006 at 12:37 午後 |

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» 茂木健一郎先生序文『冑佛伝説』書評 トラックバック 御林守河村家を守る会
「甲冑武具研究」153号に、拙著『冑佛伝説』の書評が掲載されています。 . . . . . . . . また目次にも、「新刊紹介 『冑佛伝説』」と記されていて、 35ページの下段に、西岡文夫常務理事の書評が掲載されているのです。 「甲冑武具研究」は(社)日本甲冑武具研�... [続きを読む]

受信: 2006/08/22 7:06:02

コメント

ロシアの空港に着いた瞬間のニオイ、街中のニオイ、ホテルロビーのニオイ、匂いか臭いか? 空気、温度、色彩、構造物、それら一つひとつが一体となって一挙にロシアが目の前に出現し、その全体の中で異邦人である自分を暫くして自覚する。そして徐々に一つひとつの質感を確かめるように表層の意識が分析を始める。東欧が持っていた人間臭は街角のあちこちにあって、それはフランスともドイツともイタリアとも違っていて、新鮮にも思えることすらあるが、どことなく危うく、物悲しく、悠久の時の流れの中で、どのような体制になろうとも坦々と生きてきた人々の内的な傾斜を感じずにはいられない。
・・・・というのが僕の印象でした。茂木さんの17度の傾斜という質感は親しみがこもっていてとても興味ぶかいです。

投稿: 不老鱗 | 2006/08/22 4:03:29

無事 ロシアに到着されたのですね。
随分 旅をしましたが、ロシアは行ったことがありません。
茂木さんの日記を読ませていただきながら、想像しています。
”斜め傾き”のその感じを。これからも 日記を楽しみに読ませていただきます。それにしても、ものすごくお忙しいのですねえ・・

投稿: akemi | 2006/08/21 23:01:51

無事にロシアの大地を踏みしめることが出来た茂木先生。現地の人ってはにかみ屋さんが多いみたいですね。なんかいいですね。でも、こんなロシアでも、政治家の類はなんかえらそーにしているみたいですよ。

ウォッカという酒があまりにもウマイので、ロシアではアル中で死ぬ人達が結構出るらしい。それも冬に。御存知のようにロシアの冬は箆棒に寒いので、人々は寒さを凌ぐ為についウォッカをぐいぐい飲んでしまうという。それで、先に書いたようにウォッカを飲み過ぎて死んでしまうということが起こる。…以上が、ロシア政府当局による、ウォッカ制限令の出る原因になっているという。

茂木先生もビールとウォッカのちゃんぽんのやりすぎは、出来れば避けたほうが良さそう。

それにしてもキャビアにウォッカ、ボルシチにピロシキ…などといった美味しいものものには事欠かないロシアの風土。

科学界のタモリ(失敬!)こと、田森佳秀さんと会ったり、ご門弟の田谷さんと出会ったり、同胞の方と出会えてよかったですね。

キャビアも、チョウザメが少なくなって漁も制限されつつあって、(原因は多分密漁にあると思う)本場のロシアでも、数が出回っていないのでは。一人250gしか持ち出せないとは。でも資源保護の観点からみれば、しょうがないのかもしれない。これからもっと持ち出す量が少なくなるのかもしれないし。

キャビアについては私も賞味したことが生まれてこのかた一度もない。一度日本のデパ地下の食糧品売り場でもさがして、見つけ出して賞味して見たいものだ。

ひるがえってここ日本では、高校野球で早稲田実業が4-3で駒大苫小牧を破って、悲願の甲子園初優勝を飾ったそうです。

早実の優勝にわくここ東京はとても平和な空気が流れている。気温は高いですが。

サンクトペテルブルクでも、ずっと平和な風が流れていると好いなァ。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/08/21 18:31:05

マスター、無事に到着されたようで何よりです。
本場のウォッカ&キャビア…、
旅行にはその土地のものを見ながら食べられる醍醐味がありますよね。ゆっくり堪能してきてください☆
今の時期、サンクトペテルブルクはもう秋っぽい気候なのでしょうか?海外遠征で気分転換しつつ、激務続きでの渡航なので風邪など召しませぬようご自愛下さいませ。

投稿: えみーじょ | 2006/08/21 13:04:54

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