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2006/07/19

時にとても大変だ

昨日はちょっとタイトな日だったのだ。

 朝早く、研究所へ。
 TBS「王様のブランチ」の取材。  
 新潮新書『ひらめき脳』と
セガの「アハ体験」の両方に関して
いろいろお話する。
 新潮社の町井孝さん
がいろいろ画策してくださった結果なり。

 ディレクターの東海林和美さんが
ピエール・マルコリーニのチョコレートを
持ってきてくださった。

 仕事の合間に私が食べる、という
リサーチに基づいてのうれしい
お心遣い。

 本やゲームより、チョコレートが
売れてしまったらどうしよう。

 新潮社の金寿煥さん
といっしょに聖心女子大学まで移動。
 車中、打ち合わせなどする。

 4月からやってきた「現代の脳科学」
の授業も、今日の試験でおしまい。
 始まりのチャイムがなると、鉛筆の音が
一斉に聞こえ始めた。 

 カタカタカタカタ

 カイコが一斉に葉っぱを食べているよう。

 研究所に戻る。 
 ソニー本社で中鉢社長と
お話する。

 品川駅へ。

 橋本麻里さんから送っていただいた
新幹線のチケットを使えないことが判明
して、もったいないからと、一瞬
中央改札の外で待ち合わせて渡す。
 
 新幹線改札口へ。アスコムの新井晋さん、
柳千絵さん、媒体計画の山本貴也さん、
NHKの高橋理さん、福島昭さん
Mosaicの神田賢人さんなどと待ち合わせ。
  
 新幹線の中で、メールをチェックしたら、
羽生善治さんとの対談をまとめるのを
橋本さんにお願いしました、というメールが。
 さっき会ったばかりなのに、知らなかったぞ、
なあんだ、と思う。

 小田原から仙石原の養老孟司さんの
「バカの壁」ハウスへ。

 養老さんと対談。
 いただいたレジュメには、いろいろ
書いてあったが、養老さんのこと。
 (1)そもそも読んでいるか
 (2)読んでも、その通りにするか
という二つの関門があるから、
 どうせどうなるかわからない、と
思っていた。

 案の定そうだった。
私は、一応、世間の人が喜びそうな
ことを言う準備はしてあったのだが、
養老大先生は、いつものように
ひんやりとするようなリアリティ
の溢れるお話で、
 ああすればこうなるじゃなくて、
なるようにしかならない、
という態度を子育てや教育においても貫く。

 どうも、養老先生が隣りにいらっしゃると
私の過激な部分が活性化するようで、
 いつもは言わない本音のようなものが
ぽろぽろと出てしまった。

 途中で、高橋理さんから
「あまり飛ばさないでください」という
カンペが出ているんじゃないかと思ったが、
よく考えたら対談と写真を撮るだけで
カメラは回っていないのだった。

 課題は「大人の議論」の空間を
どう構築するか、ということだと
思う。
 今、世間に溢れているのは
批判するにせよ、ポジティブ・シンキングで
行くにせよ、単純化した子供っぽい
言説。

 養老さんが、
「この前テレビ見ていたら、魚を
食べると頭が良くなる、なんてことを言って
いたんだよ。そんなもん、食べたければ食べれば
いいし、魚がなければ他のもんを食べるしか
ないだろう。以上、おしまい。」
と言われていたが、

 「魚を食べると頭がよくなる」
に類した「そんなわけないだろう」という
ツッコミを入れたくなる言説が
むしろ大量消費品になっている。

 養老先生との対談を終え、近くの
ホテルに移動。

 布施英利さんも加わって、
文藝春秋の飯沼康司さん、松下理香さん同席の下、
「養老先生はどういう先生か」
「教育とは何か」
という鼎談。

 この三人で顔を合わせてきちんと
話すのは初めてである。

 布施さんは、養老さんのいられた
東大医学部に10年もいらしたとのこと。

 本物の養老さんの弟子である。
 私の方は1997年に『脳とクオリア』
の書評を養老さんが読売新聞に書いてくださったのが
最初の接点だった。

 どうしたら、大人の議論が構築できるのか、
そんなことをずっと考えていた。

 布施さんが指摘したように、
ピカソがそうであったように、
子供のような絵を描くということは
一つの目標でありうる。 
 そこで、養老さんが、「一度成熟を通過するんでしょ」
と言われたが、
 世界の様々なことを引き受け、総合的に
見ることを知っている大人の成熟の中に
ある子供らしさは好ましいものだと思う。

 明けて今日は関西へ。

 ヘンな夢を見た。どこかの学校にいたら、矢を飛ばす
のが得意なところで、時間がくると、
誰か一人のところに飛んでくる。

 オレのところにくるだろうな、と思っていたら、
案の定、ものすごいスピードで矢がびゅんと
飛んで、自分をかすめて壁に突き刺さった。
 
 あぶないところだぜ、全く。直後に目が覚めたから
良いようなものの。

 子供でいるのも、大人になるのも、
時にとても大変だ。

7月 19, 2006 at 10:44 午前 |

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» 養老現象? トラックバック どうにも変な音楽家
 養老孟司という解剖学者が書いた『バカの壁』という本が売れに売れて本屋の店員さんも「ヨーロー先生ってスゴイんですね!」という状態が日本のアチコチの書店で起こるという不思議な現象が続いているようです。ご多分に洩れず私も彼のファンでした。しかし今は違います。むしろかなり批判的です。  彼の本によって私は脳科学へと導かれました。そしてこの人の考えの内容から学び、考え方の癖に同調しました。名だたる脳科学者が彼の『唯脳論』を評して「こういう本を名著と言う」と絶賛するのを真に受けて・・・。新しい観点を得る、と... [続きを読む]

受信: 2006/07/19 23:59:03

» 暇つぶしの読書 トラックバック どうにも変な音楽家
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受信: 2006/07/20 0:02:46

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受信: 2006/07/20 0:45:02

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受信: 2006/07/20 15:05:26

コメント

はじめまして。都内医学部の学生です。
いつも、茂木先生のお考えに感動と共感をおぼえている者です。

今日、『三木成夫記念シンポジウム』というのに行ってきたのですが、
そちらで、布施先生が養老先生との対談のことにふれていらっしゃり、ちょうど、ピカソのことについてもお話されていました。

このシンポでお話ししてたことは、
仏像のお顔についてです。
仏像の顔というのは、輪郭が大人と同じサイズで、目鼻のバランスが子どものそれであると。
成熟した部分に含まれる子どもの要素。

とても興味深いシンポでした。

投稿: 根っこ | 2006/07/20 2:48:27

 初めてコメントを書かせていただきます。
 養老センセの本はほとんど全て読んできました。茂木センセの本は計見一雄センセの『脳と人間』を読んでたら言及されてたので『脳とクオリア』に目を通しました。それ以外にも立ち読みさせていただきましたが、エルンスト・マッハが出てきたので読むのを止めてしまいました。
 これに関して2つほどトラバを今日送りました。読んでいただければ幸いです。
 しかし、何といってもテレビに出ている人にコメントできるなんて、ちょっとワクワクしますネ。

投稿: oscar_pittarison | 2006/07/20 0:16:07

 初めてコメントを書かせていただきます。
 養老センセの本はほとんど全て読んできました。茂木センセの本は計見一雄センセの『脳と人間』を読んでたら言及されてたので『脳とクオリア』に目を通しました。それ以外にも立ち読みさせていただきましたが、エルンスト・マッハが出てきたので読むのを止めてしまいました。
 これに関して2つほどトラバを今日送りました。読んでいただければ幸いです。
 しかし、何といってもテレビに出ている人にコメントできるなんて、ちょっとワクワクしますネ。

投稿: oscar_pittarison | 2006/07/20 0:16:07

 初めてコメントを書かせていただきます。
 養老センセの本はほとんど全て読んできました。茂木センセの本は計見一雄センセの『脳と人間』を読んでたら言及されてたので『脳とクオリア』に目を通しました。それ以外にも立ち読みさせていただきましたが、エルンスト・マッハが出てきたので読むのを止めてしまいました。
 これに関して2つほどトラバを今日送りました。読んでいただければ幸いです。
 しかし、何といってもテレビに出ている人にコメントできるなんて、ちょっとワクワクしますネ。

投稿: oscar_pittarison | 2006/07/20 0:15:44

夢の中に

知らない人が 登場して驚くことがある。 

顔があり 声があり 言葉がある。

記憶の断片 認知の欠片 が 物語りする。

背広にネクタイ  何処で調達  色があり 文様もある
 
     夢の不思議  脳の不思議  

         永遠の 謎 ?

投稿: 一光 | 2006/07/19 21:47:21

脳の病気《私も統合失調症》などや研究がススムことを祈ってます。無理されず、これからもご栄進祈っております。http://hakone-hirohisa.cocolog-nifty.com/blog/

投稿: スズキヒロヒサ | 2006/07/19 21:24:22

時々、拝見しております。養老さんが私の故郷、箱根町にいらっしゃるとは初耳です。いつかお会いしていたかもしれませんね。
仙石原の3D宇宙恐竜ワールドに勤めてた時期がありました。
茂木さん、私は脳の病です。《統合失調症》
副作用のない薬などの開発が早くススムことを祈って、一日一日を生活しております。
茂木さんの生活に幸せな日々が続くことを個人的に祈念しております。

スズキヒロヒサ。

http://hakone-hirohisa.cocolog-nifty.com/blog/

投稿: スズキヒロヒサ | 2006/07/19 21:21:15

人生、なるようにしかならない。子育てにしろ、何にしろ。そう言うものなのかもなぁ。

それはさておいて、養老さんや茂木さんも懸念しているように、この世の中「魚を食べたら頭が良くなります」なんていう「スローガン」(?)に代表される、単純化した子供っぽい言説が蔓延っている。

そんな言説に囲まれて生きていたら、大半は知的、徳的程度の低い人間になってしまうんじゃないか。ゲンに日本はそうなってしまっているのではないか。

日本人の大半はそんなガキっぽい言説を大量消費して、どんどん知的にも徳的にもレヴェルの低い人間になって行く。

当然、世界からもいい笑い者にされる。いや、そうされても、何も感じない、へらへら笑うだけの人間に成り下がっているだろう。

「世界の様々なことを引きうけ、総合的に見ることを知っている大人の成熟の中にある子供らしさは好ましいものだと思う。」

ピカソ、ダリ、岡本太郎、小林秀雄…こういう人達はまさに茂木さんのいう「世界の様々なことを引きうけ、総合的に見ることを知っている大人の成熟の中にある子供らしさ」を持っていた人達ではなかったか。

いまの(特に日本の)大半のクリエイターらに、その世界のさまざまを引きうけて、総合的な視点に立って物事を見つめ、その中にあって子供らしさを保った人はドレぐらいいるのか知らない。けれども、このあいだ初台で“メディア・アート”の類いの展示を見たのだが、あそこに展示してあった作品の大半は、ただ、作り手が何となく“子供っぽい”視点だけで、作品を拵えているという感じをママ受けてしまう。

そんな作品の中の何処に、「大人の成熟」があるのだろうか。いまになって酷く疑問に思っている。

ところで、いま書いているこのコメントも、“子供っぽい言説”の一つなのだろうか。そうかもしれない。

ともあれ、(私を含めて)現代人は、もっと世間に流布する「魚を食べると頭が良くなる」に代表されるような、ツッコミの対象にしかならない、幼稚な言説に左右されるのではなく、もっと人生の深淵に関わる哲理を持たなくては、と思うばかりだ。

きょうは長いうえに、きつい含みのあるコメントで申し訳ありません。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/07/19 19:38:48

養老先生
近所の朝日新聞の販売店にポスターが貼ってあり、
通る度になぜだかどきどきします。
眉毛のあたりかな・・。

ピエールマルコリーニ、先生の日記を読んで試したいと思ったので、
間接サンドイッチマンかもですね。。。

大人の議論には成熟した大人。
矢が飛んできた夢、すごい意味がありそうです。
先生の過激な部分て、どんな感じなのでしょうね。

投稿: M | 2006/07/19 12:44:18

以上、おしまい。って養老先生だから許されるんだろうな。
私なんぞがわかった風にいうと、袋叩きの刑に処されるだろう。

他の大人が言ったとしても、きっと『ミモフタモナイ』と世間ににらまれるか、しかられるだろう。

なんでそんな風に発言できるんだろう。

投稿: 平太 | 2006/07/19 11:10:28

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