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2006/07/02

ちゃんと自分をさらけだしたもんね

網走には、小学校5年生の時に
父親と一緒に蝶をとりに来たことがある。

 その時訪れた「原生花園」駅がまだ
あるのかどうか、市民大学での講演の
前に訪れてみた。

 今から30年前。
 たしか、あのころは単線の列車が
何もない草原の中を走っていて、
 2時間に一回くらいしかこない
列車から降りて、次の列車が来るまで
周囲の草原でカバイロシジミを追いかけた
はずだ。

 当時、
 信号もない単線で電車が安全に
行き来できるように、
 通り過ぎた電車の運転手は輪っかの
ようなものをかけたり外したりして、
 シグナルとして使っていた。

 駅舎はまだあったが、小さいままにすっかり近代
的になっていて、
 ちょうど、観光客をたくさん乗せた一両の
列車が通り過ぎていった。
 観光シーズンには、一日何往復か運転される
のだという。

 今は小清水原生花園としてきれいに
整備されているが、 
 あの頃の、何にもなくただ草原が
広がっていた風情もなつかしい。

 原生花園という名前は当時も
あったが、
 ひょっとしたら私が見たのは
名前さえついていない原始の風景の
まぼろしか?
 
 釧網線と平行して立派な道路が走っていたが、
確かこれもなかったはず、と聞いてみると、
昔は砂利道だったそうだ。

 経済成長で生活が豊かになることは
良いことだが、 
 その一方で確実に風景が変わっていくことも
確かだ。

 市民大学は、もう30年も続いているという。
昨年は養老孟司さんもいらした。

 質疑応答でのやりとりが、そこはかとない
ユーモアがあり、楽しかった。

 終了後、
 網走市民大学学長の浪岡清治さん(歯科医院経営)と
永島俊夫さん(東京農業大学教授)が
 「五十集屋」に連れていってくださった。

 海がすぐそこにあり、水産加工場の横で、 
舟形の御輿などが置かれた一階から階段で上がって
いく。
 ボイルしたり、焼いたりしたズワイガニや、
ホッケ、なめたガレイを堪能した。

 もう一軒行きますか、と浪岡さんが
行きつけのバーに連れていってくださった。

 カウンターの中の女性の一人に向かって、
浪岡さんが「あんたのことは昔から知っているわ」
と言っている。
 「あんた、うちに治療にきていたわ」
 「小学生の時だったですね」

 昔小学生だった人は、遠くを見るような表情で
浪岡さんの方を向いた。

 浪岡さんがカラオケを歌ったので、
私も対抗上「知りませんよ」と言ってから
「十五の夜」を歌った。

 永島さんも、実にスルドイ選曲の
センスを見せた。

 それから、2、3回り歌って、
合間に
柿ピーをぽりぽり食べた。

 帰り際、「いや、先生、面白かったわ。
先生、エラカッタよ。
ちゃんと自分をさらけだしたもんね」
と浪岡さんが言った。

 浪岡さんは市役所の近くに住んでいらっしゃる。
その手前にあるのが私のホテル。

 翌日、東京に帰り、羽田空港で
NHKの細田美和子さんと待ち合わせ。

 自動車で移動しながら、
『プロフェッショナル 仕事の流儀』
のコードネーム「夏スペシャル」
(細田スペシャル)の打ち合わせをする。

 細田さんは、普段は「デスク」(何人かの
ディレクターを束ねる役割)をしているが、
 今回はディレクターとして、
「逆境を乗り越える」というテーマで
番組を作っている。

 「これが、私がディレクターとして
つくる最後の番組になるかもしれない、
と思うんですよ」
 車の中で、細田さんがぽつりと言った。

 現地に到着。
 ホームで電車を待っていたり、
電車の中で仕事をしている普段のままの
姿を撮影した。

 本を読みながらノートを取りながら
ノートパソコンを打つ、というのはいつもながらの
スタイルで、 
 電車を待っている時にノートパソコンを
開いてメールチェックしたりするのも
いつもながら。

 細田さんが聞く。
 「茂木さん、交差点の信号待ちの時も、
パソコンを開いたりするんですか?」
 「しません!」
 「歩きながら、同時に本を読んだりノートを
取ったりするんですか?」
 「だから、そこまではしませんてば!」

 細田さんの冷静にしかしじわりじわりと
追いつめる口調の前に、
 否定すればするほどアヤシクなる。

 家に帰って、録画してあった
『プロフェッショナル』の
仕事術スペシャルを見ると、
 自分の手の動きが普通の人に比べると
格段に多くて、いかにも多動症っぽいことに
あらためて気付かされる。

 小学生の時、初めて買ってもらった
アイワのカセットテープレコーダーでいろいろ
録音して遊んだ。

 あの時も自分の声が普段とは強烈に違って聞こえたが、
いつの間にか録音された自分の声には慣れてしまった。

 身体の姿勢や動きの方は、声に比べると
格段に難しい。

7月 2, 2006 at 09:45 午前 |

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受信: 2006/07/10 1:28:37

コメント

コメントを始めて書いたのですが、最初に書いたときに何か間違いをしたらしく、よそ様の名前でコメントになっています。
どうしたらいいかわからないので、ここに書き込みします。
よろしくお願いします。

投稿: 渡辺 紀子 | 2006/07/04 11:17:07

40年前の記憶が突然・・・学生時代に訪れた原生花園の一面に咲いてたハマナスの花の群生が思い出されました。網走でも蟹の話でも思いださなかったのに・・・。不思議ですね、何かのきっかけで、鮮明な画像が浮かんでくるって。

投稿: 渡辺 紀子 | 2006/07/03 8:49:28

突然40年前の記憶が・・・学生時代最後の旅行を夏休みを使ってて網走の原生花園に行きました。そのときの単線、線路の反対側に広がるハマナスの花。網走でも蟹の話でも記憶は戻らなかったのに・・・不思議体験でした。

投稿: 渡辺 紀子 | 2006/07/03 7:26:37

↑上のコメントの続きです。

自分をさらけ出すこと…これが簡単なようで結構難儀。普通は自分をなるべく「さらけ出さない」ようにするもの。インターネットでブログを書く際に、大抵は本名ではなくハンドルネームを使うのはそのいい例だ。あ!茂木先生は本名名義でブログを書かれているんだもんね。

でも、自分自身をさらけ出すことによって大きなカタルシスを得るとともに、新しい“自分”が現れるのかもしれぬ…。


ところで、けさ、「別の用事で行く予定」と前日のエントリーでのコメントでかきこみましたが、結局メディアージュのエクスプローラサイエンスでの、例の「アハ!体験スクェア」関連トークショーに出席しました。知識だけでなく、創造とひらめきが今の日本には本当に必要と痛感しています。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/07/02 19:54:51

写真を拝見しました。
小清水原生花園になっているという駅舎、素朴で愛らしい趣があっていいですね~。草原に何処までも続くかのように伸びる鉄路もイイ味を出している。経済発展も大事だが、発展ばかりにコダワルと
自然や過去にあった好(よ)きものをなくしてしまう。東京なんぞの大都市がイイ例だ。

網走といえば「刑務所」。いまあそこは博物館になっていて、囚人たちの生活や当時の設備などがそのまま保存、展示されているそうです。

北海道の海の幸はさだめし美味にちがいありません。ずわいがに、なめたがれい・・・。東京でこれらを食するよりも、現地で味わったほうが、より深く味とクオリアを感じられる…と、「食のクオリア」に書かれていたような気がするが…。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/07/02 19:37:53

私、茂木先生が来る2日前に仕事で網走の東京農大に行ったのです。
「あれ、茂木先生の講演があるんだ〜」と街角のポスター見ながら五十集屋に行ったのですが、なんと先生も行かれたんですね。
基本的に先生はTVと本の中の人ですが、今回のブログを読んで先生と共通の体験ができたようで、なんだか少しうれしいですね。

投稿: sakaguzi | 2006/07/02 16:32:37

かわいらしい駅ですね。
なつかしい感じがしますが
ちょうちょを追いかけていた茂木さんが訪れたころは、もっと原始の風景だったんですね。

「十五の夜」すてきな選曲
かなり熱っぽく歌いたい歌で
かなり熱っぽく歌われたのかなあと。
茂木さんは、歌うと声変りますか?

浪岡さんはすてきそうな方ですね
「エラカッタよ。
ちゃんと自分をさらけだしたもんね」
やさしい声でシャウトする茂木さんが聞きたいです。

本を読みながらキーボードは・・・神業です。
この前の、世界一受けたい授業の茂木先生の紹介画面で、
先生が真顔でキーボード打っている姿はインパクトでした。
 すごい集中している と思えたのです。

自分の録音の声は、小学校のころ初めて聞いたときはほんとうにびっくりしたけれど
何度も聞いたら慣れてしまうものなんですね


投稿: M | 2006/07/02 12:20:01

各地に旅行や仕事ででかけた時、ついてすぐって???という感覚になります。そこに実際にいる感覚がおかしいというか、
捉えられないというか、信じられないというか。
これってナンだろう?

投稿: 平太 | 2006/07/02 10:32:13

細田さんの件が現実となってしまうなら、何かしらのメッセージを受けれるだろうか。
シカと受け止め、見落としないようしよう。

投稿: 平太 | 2006/07/02 10:20:16

またやってしまいました。「壊れたバイク」ではなく「盗んだバイク」が正解です。お詫びして訂正します。申し訳ありません。

投稿: リリアン | 2006/07/02 9:59:35

「壊れたバイクで走り出す~」尾崎豊の「十五の夜」、熱唱を拝聴したかったです。自分をさらけだすこと、昔から苦手な私。でも、さらけだすことで得られるものがたくさんあることに気づき始めた今日この頃です。遅すぎ!?

投稿: リリアン | 2006/07/02 9:56:13

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