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2006/06/16

『人生の回廊』

ややこしい長い経緯があって、
目覚める瞬間は、職員室で
 第九がかかっていて、私は
それに合わせて歌っていた。 

 どうやら毎晩大量の夢を見ている
らしいが、どれもこれも忘れてしまった。
 
 昨日は、
 記憶に特筆すべきハードな一日だった!
 朝起きてから、研究上の某重要書類を書き続ける。

 contingency, small world network,
nano contingency, nano intelligence......

 やっと終えて送ると家を飛び出し、
 タクシーに乗って
 日経新聞の「ぞっとする絵十選」
の原稿を書く。

 運転手のおじさんに、
 「日本テレビはどこですか」
 「麹町はどこですか」
 「電話番号はわかりますか」
 「住所はわかりますか」
と矢継ぎ早に尋ねられて、困る。 
 花野剛一プロデューサーに電話して
情報を得て、なんとかカーナビ
くんに稼働してもらう。

 最近は、タクシーに乗って面食らう
ことが多くなった。
 カーナビ頼みというケースもある。
 規制緩和の是非うんぬんを言う
よりも、なんだか切ない。
  
 少しくらい道がわからなくても、
迷ってもいいから、無事着けば良い。

 麹町の日本テレビ。
『ニューロンの回廊』 
の収録。

 ゲストは、金森穣さんと、押井守さん。

 収録の合間に、「ぞっとする十選」
を書き継ぎ、
 さらにはカズオ・イシグロ『わたしを離さないで』
の書評を書き始める。

 文章を書くのと、テレビの仕事は、
脳の使い方が違っていて、 
 最初は往復するのはとても大変な
感じだった。

 最近では、文章を書くことをテレビの
方に生かす回路のようなものができて
きた感じがする。 
 普段活字の世界で生きているおかげで、
テレビの世界の
その場その場の即興の言葉も、
 生成とコントロールが精緻になってきたのである。

 一方、テレビの仕事が活字に
何らかの形で反映されているかは 
 よくわからない。

 ヨミウリ・ウィークリーなど、エッセイで
ネタとして使わせていただくことは
よくあるのだけれども。
 
 先日、新潟に金森さんのsense-datum
を見に行った時、
 夜、ホテルで触発されて一人「怖い体操」を
した。

 収録中、金森さんの前で「こうやってね」
と手足を動かしてみたら、
 速すぎます。と言う。

 手を前に出して、さっと後ろにもっていく、
という動作をやって見てください。と言う。

 ほら、肘が曲がっているでしょ。
 あっ、いま、手先に注意がいって
いませんでした。
 ずっと、左手へは放っておいたでしょ、
といろいろ指摘される。
 
 目から鱗である。私が金森さんの
マネをして「怖い体操」をしていた
時は、 
 要するに一つひとつの動きが速すぎた
わけで、
 なおざりになっていたのだろう。

 本当に厳密にコントロールしようと
すれば、ゆったりとやって注意を
行き届かせるしかない。
 Noismのメンバーのように素早い
動きをしていても、
 実は身体をカンペキにコントロールして
いるのだという。

 それと、鏡の前でやって来なかった
人はすぐにわかります、と金森さん。
 大きな鏡の前に立って、人からどう
見えるか、ということをフィードバックして
いかないと、
 動きとしては成立していても、
どこか形がダメなのです、という。
 
 男金森穣は6歳の時からずっと
そんなことをやってきたわけである。
 
 その他、とても深い話をうかがった。
 私は金森さんがとても好きになった。
 放送を楽しみにしていてください!

 金森さんは、7月3日の東京芸術大学の
授業にもいらしてくださる予定です。

 次の収録までの合間、花野剛一
プロデューサーと近くのコンビニまで散歩する。

 『ニューロンの回廊』はもともと
1クールの予定だったが、その後延びるか、
花野さんがいろいろ折衝している由。

 私は、収録は楽しいし、花野さんも
苦労してつくったフォーマットだし、
 続いたら今まで通り
良い番組にするために
ベストを尽くそうと思うが、
その一方で、何しろこんなタイトな
スケジュールなので、
 なくなったらその時は
少しは楽になった、と思うことにしよう。

 それにしても、プロデューサーというのは
大変な仕事だなあと思う。
 がんばってください、花野さん!

 Fingers crossed.

 押井守さんには、映画作りの
秘伝のようなものをうかがった。

 必ず、自分にとって「なつかしい」
ものから始めると押井さん。

 思い出すことは創造することであるというの
は私が最近盛んに言っているテーゼであるが、
 押井さんは、自分の記憶にあえて
異質なものを入れることで
 ジャンプを図っているのだという。

 たとえば、子供の頃、雨が降っていて、
踏切の遮断機が下りていて・・・というような
懐かしいシーンがあったとして、
 そこに巨大なロボットを置いてしまう。

 なつかしさ、というのはキーワードであり、
外国にロケに出かけても、
 その風景に自分の記憶を重ねてしまうのだという。

 だから、押井さんのつくる映画は常に
「なつかしい未来」なのだろう。

 押井さんは犬好きで有名だが、
押井さんと犬との関係性には並々ならぬ
秘儀があることを感じた。
 
 押井さんは、子供の頃から
自分がどこにいるのか、「今、ここ」
よりも仮想の方が強くてわからない
流れの中で、
 自分の身体を取り戻す、確認する
プロセスの中に犬とのふれあいが
あったというのである。

 犬の目は神のそれであり、
 人間は犬を選ぶのではなく、選ばれる、
選んでもらったのである。

 ゴーストが身体の間をトランスファー
されていくという押井さんのモチーフは、
押井さんの実感をそのまま描いているのだと
悟った。

 何だか、押井さんご自身が、
とても懐かしい人だった。
 押井さんのかわいい犬に会ってみたい。

 さあ、いろいろハードだった
一日も終わり、地球がぐるぐる
回って
 新しい朝が来た。

 がんばるぞ。スペースをつくるぞ。
 何をやってもいい時間をつくって
思い切り考えて、体を動かすぞ。
 あははあはは。あははは。

 と行きたいところだが、コミットメントした仕事
の山が目の前にあり。
 私の『人生の回廊』は混み合いすぎている。

6月 16, 2006 at 08:26 午前 |

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» 茂木健一郎 クオリア日記 トラックバック 一枚の写真から
脳科学者、生物物理学者である茂木健一郎さんのブログです。 茂木さんの普段の生活から思う事、お仕事を通じての人との出会いからお考えになってらっしゃることが綴られています。 人間の脳の働きに興味がある人ならば、面白く感じるはずです。... [続きを読む]

受信: 2006/06/16 11:31:49

» 地球を感じる!? トラックバック Little Tree
このタイトルは、あまりに唐突かもしれませんが…ちょっとしたイベントのお知らせです。 先日参加した東京大学の五月祭の企画で 愛・地球博で好評だった『触れる地球』に触って体感してきました!! 前回の記事では、そのお話をするのをすっかり忘れておりました。 大きさは直径1メートルほどの球体ですが、その機能といい、美しさといい ご覧になった方は、ご存知かと思いますが もし宇宙船に乗っている自... [続きを読む]

受信: 2006/06/16 14:30:30

» 支援と配慮・・・ トラックバック Little Tree
「母なるものとは?」について、皆さまからほんとうにいろいろなお話を伺えてネットの素晴らしさを痛感しております。 おそらく私一人の中では、こんなに深く広い視点から このことを考えることはできなかったと思います。 その意味で、皆さまにはほんとうに感謝しております。 それでも、なお自分のなかに浮かぶこの想いが何なのかを もう少し考えてみたいと思っています。 それに先立って、まず思�... [続きを読む]

受信: 2006/06/17 7:01:31

コメント

職員室で“第九”を歌うなんて、なんと素敵な夢を見ているのだろう、このお方は!
ひょっとして茂木先生、ベートーヴェンもお好きなのかしらん?

素敵なというかゴージャスな夢といえば、不思議なデパートに行った夢を見た。

何でもさいたまに出来たらしく、屋根が昔のパンテオンのように豪勢な作りになっていた。全部の売り場がひとつの透明な廊下で繋がっていて、屋上には夢のように綺麗な花々が咲き薫っていた。

さて、おもちゃ売り場にいると、なんと!そこには茂木さんそっくりの人がいた!以前見た夢にもこの茂木さんのそっくりさんが出て来たことがあったが、こんどの人は実際の茂木さんにきわめて近い。で、傍に近寄ったら何故かアタマを下げていた。といったところで夢から醒めた。

すいません、こんなコメントで…。このへんで終わりにします。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/06/19 18:22:45

 スクロールした位置が、
「あははあはは。あははは。」のところでぴたりと止まっていた。
ここが日記の結びだったら…と思ったら、変にどきどきしちゃった
2日前の私。
「茂木さん、あまりに忙し過ぎて、壊れちゃったのかな…」と
思ったのですよ…。
 緊張のワンクリックの瞬間。続くのか!?更新日時か!?

 カチッ…

 そこには冷静な茂木さんの結びのお言葉。
ほーっ。よかったね!と、2日前の私。

 研究上の某重要書類?何だろう?と気になりつつ、見られたと
しても、どこが重要なのかも、私にはわからないのだろうな。

 『ニューロンの回廊』、私は一度も見ずに終わってしまうかも
なんだ…。そのときは、機会はきっと訪れるさ、と思うことに
いたします。

 私…かわいい茂木さんに会ってみたい。早く早く~!

投稿: | 2006/06/18 16:15:15

運転手のおじさんは再スタート組なんだろう。

日雇いの面接でも年齢的に、きってしまった人たちに、今でも私のような小娘がそんなひどいことをしたと、申し訳なく思う。

おっちゃんガンバレ!

投稿: | 2006/06/17 9:47:26

私にとってはハードな問題と向き合うことがありました。

先生のハードプロブレムとは
次元があまりにも違いすぎるかもしれませんが…

結局、答が出るわけもなく
現在進行形の機関車のごとく
とりあえず、
シュッシュッポッポ~…という感じでしょうか?

イギリスからのさわやかな風を
楽しみにしております!!

投稿: TOMOはは | 2006/06/17 7:00:39

タクシーにカーナビは
なんとなくさみしいですね。
押井さんファンの人から
熱心な話をされたことがあったけど、
犬の話は出てこなかった。
犬が仮想世界から現実に引き戻してくれたなんて
見れなくてざんねんです。

お体こわしませぬよう
お気をつけください

投稿: | 2006/06/17 4:20:50

第九を歌っている夢とは、とてもゴージャスですね! 夢占いだと何と読み取れるのでしょうね? う~ん、留学で様々な思い出の刻まれたイギリスという土地を、仕事で再訪にあたって、改まった心持ちになっておいでだとか。。? 嬉しい再会とかもありそうですね!

出発前ならではの慌ただしさもあるでしょうし、想像も超えるくらいお忙しそうですが、健康な体は生活の大切な資本、どうぞご自愛下さいね。 

・・・書かれていた内容とは少しずれるのですが・・・それにしても進化を続けるカーナビ、最新のでは渋滞情報も踏まえて経路を提案してくれるし、ドライバーの気分に合わせて流せるように曲もソートしてくれると最近色々と学びました。
(ご参考:http://pioneer.jp/carrozzeria/cybernavi/function/index.html ) 
究極の理想は、あの「ナイト・ライダー」の相棒の車、KITT君だとも聞いています。茂木さん、あのKITT君が身近にいたら、どうですか?!(あ、日々実に様々な場所でご活躍の茂木さんにはピッタリの相棒かも!(^^))

投稿: | 2006/06/17 1:33:58

きょうのエントリーはいささか長めで、コメントを纏めるのが至難の技のような気がしている。

『ニューロンの回廊』がもし1クールで終わってしまうのなら、視聴者として残念なのだが、茂木先生にとっては「少しは楽になる」ことなのだろう。しかし、私個人としては、是非!続けていただきたいと念願するものである。

茂木さんにとっては番組を好い物にしたいという思いがあるにせよ、大変かもしれないけれど…。

それにしても、人其々の『人生の回廊』ってあるのだよね。
茂木先生のように毎日混み合っている人もいれば、全然混み合ってないスカスカの人もいるわけで、十人十色、千差万別だ。

この日もまた、達人達との触れ合いがあったよし、トテモ羨ましく思うこと、しきり。

押井守さんの“犬との秘儀”は興味深いです。

犬に限らず、異なる生き物との触れ合いは、タンに人間の心を癒すのみならず、人間の身体性を取り戻し、おのれを確認する効能があるのだろう…。

出来得る限り、他の生き物と触れ合っていきたい。そして、人とも…。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/06/16 18:06:35

最近、ユーズドでなく本を買うときは
少しためらうこともありますが

カズオ・イシグロ著『わたしを離さないで』と
バレンボイム/サイード『音楽と社会』と
松岡正剛著「フラジャイル」「花鳥風月の科学」を

やっぱり購入してしまいました。

このぶんだと、私のささやかなお給料は
また本代に消えてしまいそうです。

(でもちっとも惜しくはなく、
このワクワクは、何ものにも替えられませんね…)

押井監督の作品は、たぶん私が
いままで避けていたジャンルだと思いますが
鈴木敏夫さんと監督の対談記事を読んで
今度、観てみようと思いました。

それにしても、「ニューロンの回廊」を
見られないのは、本当に残念です!

投稿: TOMOはは | 2006/06/16 14:29:43

はじめまして、菅野と申します。こちらの記事にトラックバックさせていただいたものです。現在フリーの物書きとして活動しておりまして、AFP通信社様運営のニュースブログで、オフィシャルブロガーとして活動させていただいております。一枚のニュース写真から連想(妄想)される物語を書いております。よろしければトラックバックを承認していただければ嬉しく思います。

先日、スピードスケートの清水宏保さんが出演なさった「ニューロンの回廊」を拝見いたしました。非常に興味深く、大変面白い内容だったと思います。
特に、清水選手の限界を超えた所でもう一人の自分を作るような事と、多重人格者がもう一人の人格を形成することとの類似点が印象に残っています。

私自身も、運動を行っておりまして、自分の限界に達する瞬間に鍛えている部位が自分の物じゃないものとして限界を超えようとしたりすることもありますので、感覚的に清水選手の仰っていたことがわかった気になりました。
少し、脳についての書物を読んでみたいと思います。

お忙しい中、コメントに目を通して下さいましてありがとうございました。

これからもよりよい番組作り、期待しております。

投稿: 菅野貴之 | 2006/06/16 11:40:09

「やーるーだーけーやーったら あははと笑おう」
これは私が最近気に入っている歌の一節です。

といっても皆さんご存知ないでしょうね。
「アンタッチャブル」というお笑いコンビと若槻千夏が
「ナチャッタブル」というユニットを組んで歌っている
「勝利の花びら」という曲です。

テレビアニメ「ケロロ軍曹」のエンディングテーマです。
小5の次男がテレビ大好きなので、つられて覚えました。

次男は朝から「○○スタ」という番組を見ていて
そこで「脳に快感」のCMやってるので
先日は朝から茂木さんにお目にかかれました。

小5のときに九州大学で蝶の権威と面会した茂木さん、
お母様も素晴らしいですね。

それにひきかえ子供と一緒にギャハハと笑ってる
私っていったい・・・

投稿: | 2006/06/16 9:20:47

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