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2006/05/25

言い忘れたこと。

成城学園前からタクシーに乗り、
NHK技研へ。

 ふっと気付くと、よくわからない
細い路地をびゅんびゅん飛ばしている。

 一回曲がり、もう一度方向を変え・・・
もう再現できない。

 「うら通りだよお」と運転手さん。
 「表はいつも混むからねえ」

 玄関で、研究企画部の加藤隆さん、
人間情報科学部長の伊藤崇之さんに
おめにかかる。

 所長の榎並和雅さんと昼食を
とりながらお話する。

 NHK放送技術研究所は、
田中啓治さん、斎藤秀昭さん、福島邦彦さん
らの数々の脳科学の研究者を輩出した
ことでも知られている。

 今ふたたび、人間に
フォーカスした放送関連技術の研究開発を
進めるフェーズに来ているのではないかと
榎並さん。

 技研の特徴は、研究者が放送現場といったり
きたりしながら密着した技術開発を
進めるところで、
 なるほど! と思う。
 現場に行かないとわからない課題、
未来像というのはあるものである。

 ハイビジョンのさらに16倍の
情報量を持つというスーパーハイビジョンの
デモンストレーションを見せていただく。

 ニューヨークの街並みやバスケットボール
競技の映像に、ついきょろきょろと見渡してしまう。

 普通の映像には、ぱっと見てわかるという
「一覧性」があるが、スーパーハイビジョンだと、
ほんとうにあっちにはあれ、こっちにはこれ
という感じでいろんなものが同時にわーっと
あるのだ。
 
 それでも、全体が同時に意識の中で把握
されているというアウェアネスはちゃんとある。
 実に不思議なものなり。

 スーパーハイビジョンは、人間の心の
不思議を映し出す鏡だ!

 榎並所長の後に、
「人の心を動かすものは何か」
というテーマで講演させていただく。 
 一般公開日の前の専門家向けの
内覧日ということで、
 大変鋭い質問が飛び交った。
 
 講演後、さらに幾つかデモンストレーションを
見せていただく。

 超高速度カメラ、高感度カメラ、IP放送、
薄型ディスプレー、高密度ホログラム記憶装置、
・・・・

 うーむ、これは・・・・
 放送の明日の姿が、何となく見えてきた
ように思った。

 見学を終え、
 放送技術の未来について
さらに深い思いを馳せていた私。
 そのまま「考える人」
でいれば良かったのであるが、

 さて、とタクシーを
呼んでいただいている間、おもむろに
渡辺淳一さんの『愛の流刑地』を取り出した。

 幻冬舎発行のバウンド・プルーフ。
 書評のために読まねばならないのである。

 目敏く関根崇泰が見つけ、
ケータイで写真をとる。

 「ふふふ、これは面白いぞ」と関根。
 うるさい、うるさい。
 私は仕事で「あいるけ」を読んでいるので
あるぞ。
 難行苦行、臥薪嘗胆なのだ!

 タクシーの中、さらには小田急線の
中で読み続ける。
 
 向こうの席では、
小俣圭が何やら笑いながら
幾何学の本を読んでいるようだ。

 球面の裏返しの話で私に差をつける
つもりらしい。
 確かに
 こっちは、京都でのアヤシイ密会の話を
読んでいるのではある。
 
 「背表紙を隠さなくてもいいじゃないですか、
茂木さん」
 と小俣が言う。
 うるさい。
 こっちにもハジや外聞というものがあるのである。

 仕事のため、恥ずかしいことをしなければ
ならない人も世の中にはいるんだから、
君たちももっと人生の修業をしなさいね。
 NHK技研ではリッパなことを
喋っていたであろう。
 人間の心を動かす放送の未来に思いを
馳せていたその男が、
転じて、仕事のために「あいるけ」を
読んで何が悪い。
 えーぃ、えーぃ、頭が高い!(笑)のである。

 銀座で増田健史、内藤礼さんと
『生きて死ぬ私』  の打ち上げ。

 内藤さんの入魂の解説のお陰で、
美しく文庫版が着地いたしました。
 ありがとうございました。
 
 そもそも、内藤さんは400字の
原稿を書くのに一週間かかるという方である。
 よく7枚も書いてくださいました。

 そばを食べながら、心の中で
パン、パンと内藤さんを拝む。

 『生きて死ぬ私』の中には、かの英国首相
トニー・ブレアが「私の一番好きな歌」
 と言ったという
In My Life 

引用している。

 そんなこんなを話しているうちに、
「たけちゃんマンセブン」こと
 増田健史がビートルズ・マニアである
という事実が判明し、
 六本木のキャバン・クラブに向かう。

 ビートルズのコピーバンドが出演する
場なり。

 そこで往年のBeatles songsを聴いていると、
電通の佐々木厚さん、ヨシダさん、オオサキさんが
乱入してきた。

 元気いっぱいがんばってきたフラワーピッグ
ではあるが、
 睡眠不足がたたって、時々
「飲み会でちょこっと眠る」という必殺技を
繰り出しつつ、『生きて死ぬ私』文庫化を
リッパに打ち上げることができました。

 帰り際、たけちゃんマンが何やら
While my guitar gently weeps 
がどうのこうのと言っていた。

 なんのことか分からなかったが、
 後で、たけちゃんはメールをくれた。

 私は「あいるけ」
を読むだけではなくて、
 こういううるわしい魂の交流をしても
いるのです。


言い忘れたこと。
茂木さんの言葉は
Gently Weeps
だから信じられるんだってわかった。
生意気いいますが、忘れないでください。

 増田健史


 画面を見つめる私の目は、増田健史
と飲んで来た数々のビールの思い出で
曇ってよく見えなかった。

 かつて撮影した、増田健史のお姿が
思い出されてきた。

写真はココ 
 
 一方、増田健史の盟友、NHK出版の
大場旦からは「太ゴチ」(太ゴチック)のお願い
というメールが届いていた。

 フラワーピッグは仕事から逃げることは
できないのである。 

 かつて大場旦、増田健史と行った
温泉宿の光景がよみがえってきた。

写真はココ 

そういえば「傷だらけのマキロン」
ことNTT出版の
牧野彰久さんからもタダナラヌ気配のメールが
届いてはいたのである。

5月 25, 2006 at 08:28 午前 |

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以前から気になる曲があった。 よく耳にするのだけれど、 誰の曲なのか、 どんな意味の歌詞なのか、 何も分らないのだけれど、胸がざわめく曲だった。 ある日、仕事場で“その曲”がながれた。 「あぁ~!!! この曲誰の曲? なんていう曲なのっ?」 思わず叫... [続きを読む]

受信: 2006/06/04 13:26:54

コメント

 茂木さんは、生徒さんの中でもとくに「関根崇泰」さんには、
おこられたり、机を使われたり、よくからかわれたりしている
ような…日記登場率、高し!茂木さんも楽しそうなのだ!

 茂木さんの生徒さんへのまなざしは、とってもおおらかで、
優しい感じで、読んでいてすごくほほえましい!
 結局、関根崇泰さんも小俣圭さんも、大きな茂木さんの
掌の中だったりするかもしれないよね!?
 茂木さんは良きボスで安全基地なのだなあ、と思います。
「茂木さんを大切に!」

 出たね!たけちゃんマンセブン!
 しかし今回は、フラワーピッグとたけちゃんマンセブンの、
うるわしくうつくしい魂の交流のお話。
 ビールの泡を吹き飛ばすでもなく、たけちゃんは、メールで
フラピーのおめめをうるうるさせてしまったのね。
日記を読む私も胸いっぱいになってしまったよ。
 時間も場所もこえて、私にも届いたお二人の魂の交流。
本物の魂の交流は、何もかもこえて、連鎖するようですね。
 なんて素晴らしい!
 だから…
「なぜにセブン?」という疑問は、今回は封印しよっと。

 増田健史さん(=たけちゃんマンセブン)は優しそうな感じ
でいい男!
 茂木さん(=フラワーピッグ)は「必殺!仕事から逃げられ
ない人!」とってもかわゆい!
 いい男も連鎖するのかな?

 うーん…元気いっぱいにみえるフラワーピッグも、必殺技を
出さねばならないほど、睡眠不足。ごはんはちゃんと食べて
いますか。あまり無理なさらないでね。
 元気いっぱいキュートな茂木さんでいてほしいのですよ…。

投稿: 龍神 | 2006/05/27 1:13:14

増田さんのお写真を拝見して爆笑してしまいました。すみません。

でも、後から、In MY Life のメロディーと
送られたメールが重なって
胸がじーんとしました。

茂木さんの経験された魂の交流を、ちょっぴり
おすそわけしていただいたようで
いい気分です。

友達って素敵です。
ありがとうございました。


 

投稿: mori | 2006/05/27 1:11:31

「考える人」 といえば、先日バックナンバーを見て

大貫妙子さんの連載もあるので2006年冬号を取り寄せました。

始めて手にした雑誌でしたが
こんなにオモシロイ雑誌もあるんだなぁ・・・という
意外にも思える出会いになりました。

茂木先生の恐山でのお話もいいですし

鶴見俊輔さんの本は、前から読みたいと思っていたし

須賀敦子さんって、どんな文章を書くのだろう・・・?

あの方達は「ロゲルギスト」って呼ばれていたんだ!

というわけで、また新しい興味のたねを見つけました!!

読んだら、どこかにしまっておかないで
皆さまにも、お伝えできるようにしたいです・・・

投稿: TOMOはは | 2006/05/26 6:48:13

タケチャンマン7さん、徳間書店の高橋さんのおかげで、生きて死ぬ私を読むことができてよかったです。
茂木さんの根底に流れているものを感じることができました。gently weeps、そのとおりだと思います。
茂木さんは、すてきな方々に囲まれているんですね。
お写真拝見した限りでは、タケチャンマンのイメージはありませんが…。
傷だらけのマキロン!…由来が気になります。

いろいろなお仕事依頼されて、大変ですね。
密会のお話も、茂木さんには堂々と読んでほしい気がしますが…

投稿: M | 2006/05/26 2:01:29

NHK技研で最新放送技術を見学し、かつ講演もして、そのあと「あいるけ」(=『愛の流刑地』)なる問題の小説を書評の為に読み、『生きて死ぬ私』文庫版の打ち上げ…と、この日の茂木先生は(いつものことながら)めまぐるしく多忙であられた。

毎日、本当にお疲れ様です。

放送の未来についてなのだが、幾ら薄型ディスプレイやスーパーハイヴィジョンとかいった放映の為の技術が、格段の進歩を遂げたとしても、その進歩した技術が、専らレベルの低いワイドショーや風俗っぽい番組に使われる、というのでは、放送の未来は何処までも暗いにちがいない。

やはり、技術面のみならず、ソフトウェア面の進歩もこれからの放送には必要だ。

新時代のディスプレイやスーパーハイヴィジョンに映し出されるに相応しい、質の高い番組造りが現場に求められる時代がもうじき来るのだ。

「あいるけ」が近々映画化されるというニュースが、ワイドショーでやっていたが、へぇ、そんなことになっているのか、という薄い感慨だけが残った。
封切になっても、自分は行く気にはなれない。

それにしても、NHK技研が脳科学者の“揺籃”になっているとは。ここのところいろいろあるNHKにも、そんな立派なところがあったのだなぁ。

ところでいま小林秀雄さんの「考えるヒント」を読んでいる途中なのですが、(このことについてはひょっとしたら御存知かもしれないと思いますが)小林さんと、あの名(迷?)キャラクターで有名な「のらくろ」の原作者で知られる、漫画家の田河水泡さんとは義理の兄弟同士だったというくだりを発見し、

“えぇー!本当か?あの田河水泡と小林秀雄が??”

と驚いた。

あの“のらくろ”の生みの親と、かの孤高の批評家とは親戚同士だったというのか…。いやはや…。


孤高の批評家と、人気キャラクターを生んだ漫画家との意外な人間関係に、眼を丸くしておるところで御座います。

『生きて死ぬ私』をかつてHPのテキスト版で読んだ時、この書の書き手はなんと深く内省的で繊細なエスプリを持っているのかと、愕然としたことを覚えている。

肉眼やTVなどで拝見するあの堂々にして飄々たる姿とは裏腹の、震えるほど繊細なエスプリを、この『生きて死ぬ私』から、その後の『脳と創造性』や『クオリア降臨』、『脳と仮想』などの著作からも伺うことが出来る。

茂木先生が『生きて死ぬ私』で滲ませたあの繊細なエスプリは、いま先生の中で深まり、その後の著作に宝石のように鏤(ちりば)められている、と観ている。

おそらく先生が御老境にさしかかられても、そのエスプリは光を放っているのに違いない…。

きょうは少々長くなりました。このへんで失礼します。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/05/25 20:41:25

増田さまとの魂の交流は、どんな言葉でも表現できない、
つながりなんでしょう。乾杯!

写真で拝見する限り増田さまは男前でした。

投稿: 平太 | 2006/05/25 9:37:49

今、思い出しましたが、渡辺淳一さんの

そちらの世界に行く前の
医学に携わる人の視線で書かれた小説は
結構好きで、読んでいました・・・

歳に関係なく、人にはどうしても苦手な分野があるような
私にはそんな気がしてしいます・・・

まぁ、それはそれでよろしいのではないでしょうか?


ビートルズの曲は、タイトルを聞いただけで
なんとなく頭の中にメロディが浮かんできます。

きっと、脳のどこかにファイリングされているんでしょうね。

いま、梅棹忠夫著「知的生産の技術」を読み直しています。

PCがまだ普及していない時代に書かれた本とは思えないくらい
ほんとうに面白いですね!!

作者の科学者であると同時に、まっすぐで優しい目線が
私はとても好きなんだと思います。

投稿: TOMOはは | 2006/05/25 9:34:55

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