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2006/05/07

世界にはある秘められた「真実」があり

『ダ・ヴィンチ・コード』読了。

 小説やテーマについての感想はともかく、
ヨーロッパ文化の力の一つ源泉に、
「世界にはある秘められた「真実」があり、
その真実に接近すること、ないしはそれを
所有することが力を与える」
という信仰があるのだとあらためて
確認した。

 『ダ・ヴィンチ・コード』で
探究されているのは「聖杯」の謎だが、
そのような純粋に「知」の部分に
属する何かが世界を革命するポテンシャルを
持つ、と信じるところが凄い。
 
 一神教的世界観と結びついた、強い
「知」への信仰こそがヨーロッパを近代世界に
おける覇者にしたのかもしれない。

 All work and no play makes john a dull boy
だから、ということで、
 少しばかりの休暇をとった。

 北に飛び、
 旭川の旭山動物園、
それに「アルファリゾート・トマム」に行った。
 どちらも、前々から行きたかったところである。

 もっとも、最近は遊んでいるはずの時も
頭の中で「あっ、これはあそこに使える」とか
「うん、これはあの取材の下調べになるな」
などと仕事なのか何なのかわからなくなって
くる。

 年間入場者数で上野動物園を抜いた
旭山動物園の秘密については、
 「ヨミウリ・ウィークリー」の
連載の中でじっくり考察したいと思う。

 旭川から富良野を経て、
トマムへ。

 トマムのアルファリゾートは、
2004年の4月から、
星野佳路さんの星野リゾートが
運営を引き継いでいる。

 総支配人の安田隆明さん、
予約ユニットの神田 正俊さん、
アウトドア・アクティヴィティ担当の
細谷誠さん、
 Little Treeの大野聡さんに
お世話になり、充実した
 時間を過ごすことができた。

 私はうかつで、どこかに行くとき
何も調べないが、
 トマムに入ろうとした時、
「水の教会」という看板が目に入った。

 「ん? 水の教会・・・ひょっとして・・・」
と思ったら、やっぱり安藤忠雄だった。

 あの建築史上著名な作品が、トマムに
あるということをきちんと認識して
いなかった。
 
 安田さん、神田さんがわざわざ案内してくださる。
大変申し訳ない。

 アプローチの道がすでに美しい。
清流の中に、水芭蕉がたくさん咲いている。

 教会の十字架は、手つかずの自然
を背景に、一つの奇跡のように佇んでいた。

 可動式のガラス窓が動くと、窓の
十字架と教会の十字架がぴったりと重なった。

 意匠や構造、といったテクニカルな
問題を論ずるまでもなく、
 全体から受ける「空気」が清涼で、
簡潔、奥深く、美しい。そんな教会だった。

 トマムの自然には、何も足すべきものが
ないように思われるが、
 そこにあえて人智の何かを付け加える
としたら、安藤忠雄のあの作品のような
強度と簡素が必要なのだろう。

 「知」の問題に戻れば、私は、
意識の問題こそが現代における「聖杯」
だと思っている。
 一貫してそうだったのかもしれない。

 クオリアのどこが問題なのかわからない
という人に時々出くわすが
 (ダニエル・デネットのようにqualia blindな
人もいる)
 クオリアは、
 ある種のメタ認知を経て初めて
開かれる秘められた問題だからなのだろうと
 読み終えたダ・ヴィンチ・コードの表紙に
考える。

5月 7, 2006 at 06:49 午前 |

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なんか,打合せの後に上司に飲みに誘われたので珍しくのってみた。 ウチの会社の良い [続きを読む]

受信: 2006/05/11 4:08:04

コメント

(ものごとの中に潜む)「神秘の扉」を開くクオリアが、新たな宗教の“核”となる…という、河村隆夫様のコメントにうーんとうなっている次第。

クオリアと宇宙にあまねくあふれる万物を貫く生命の法則は、ひょっとしたら二つにして一つなのではないか?万物流転、生々流転、諸行無常、諸法実相…とさまざまな言葉で表現されるこの法則の中に、光り輝くクオリアが秘められているのではないか。

そして、このクオリアこそ、新時代の宗教の“核”となるのではないか。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/05/09 18:50:56

「真実」の話題に触発されて、フト思い出したのが、インドの話です。以前お会いした仏教系の大学の教授の方が「インドでは、真実は幾つもあると考えられている」という様な事をおっしゃっていました。(記憶が曖昧ですいません、もしかしたら、「ヒンズー教では」とか、絞っておいでだったかも?!)伺った時は「真実が幾つも」という発想にちょっと圧倒されつつも、インドで見た個性豊かな沢山の神々を思い出し、「ナルホド!」と何かちょっと納得した気がしました。

また、こう書いていてもう一つ思い出したのが、もうタイトルも思い出せない、アメリカの映画のワンシーン。喧嘩した若い2人を心配した周りの家族が、アレコレ話し合っていると、品良く年を重ねた風の女性(恐らくおばあさま?)が、'Wait, there are always three stories. His story, her story, and the truth.'と、やんわり皆をなだめたのでした。「こういう時に『真実』ってそう簡単に見つけられるかな?」なんて思いつつも(笑)、何故か心に響いた言葉でした。

投稿: 朝 | 2006/05/09 0:41:02

茂木先生と、皆さまのコメントを読みながら

しばし、見とれて…いえ、読みながら惚れ惚れとするような
感覚に、ひたっておりました。

一歩引いて視るのも、なんだか悪くないですね~

それぞれの方の個性や、感性の動きが、目に見えてきそうな
不思議なおもしろさにあふれているように感じられます…


トマムは、おそらく十数年前に、一度行ったときの記憶しかありませんが

本来は、大きな自然の中にささやかな人々の暮らしがあった…
だけだったところに

あのツインタワーや、スキー場や宿泊施設その他が出現して
どうなるんだろうな~?

というのが正直な、感想でした。


都会に住む私たちが、そんな大自然の中で何かを思い出し
何かを再生していくきっかけになれば、ほんとうに素敵だと想います。

でも、それはどこか幻想にも似たものかも知れず

その大自然そのものを、生かしていくことを
妨げるものであってはならないのではないのかしら?

と、ふと心によぎる何ものかが、私の中に在るような気がしています。

とはいえ、そんな大自然にかこまれて
新緑の中で時間を気にせず、気になる本を読む暮らしは
ほんとうに私の憧れです…

投稿: TOMOはは | 2006/05/08 10:56:29

茂木先生 北海道に行ってらしたのですね!!
『水の教会』神聖な雰囲気漂うクオリア 想像しながら
日記拝見しました。

『ダビンチコード』1年ぐらい前に読みましたが
今読み返したら 感じ方が違うかしら~などと
思っていますぅ

投稿: ROSE | 2006/05/07 18:44:11

茂木先生の日記を読むのが最近の私の密かな楽しみになりました。
昨日NHKの「探検ロマン世界遺産」でガウディの建築群という番組を観たのですが(もちろんガウディは知っていましたが)、彼の建築哲学と、作品の独創性と曲線の織りなすリズムが、土と木と石と時間が呼吸しているようで、正に自然と共生している建築だ、と感じました。
建築家とは、なんとすばらしい職業なのでしょう!

安藤忠夫さんもすばらしい建築家だと思います。独自の建築哲学があって。旭川の教会は観てみたいです。
けれど、彼の表参道ヒルズの建築はシンプルではありますが、余り良い出来ではないような気がします。(あくまでも私の意見)何度か、反対側のカフェから眺めましたが、磨りガラスの壁は、欅並木の美しさに映えていないし、ヒラメキも感じません。周りの建築が独創性と豪華さを競い合っているから、あえて、シンプルにしたのだろうか、それとも予算の制約があったのかしら、と色々考えてしましました。けれど、大変な盛況で、あの建築は大成功だったのですね。
商業施設と教会では当然異なるでしょうが。
意識は建築にも宿るような気がします・・・。

投稿: tachimoto | 2006/05/07 14:38:48

正直、心配していました…2日間も日記の更新が止まっていらしたので、何かあったか、と気が気でありませんでした。

きょう、迷いに迷った挙句、思いきってアクセスしてみたら、成る程、こういうことだったのですね。北海道にいらして、旭山動物園やアルファリゾートトマムを訪れられたのですね。充実されたホリデーを過ごされたのですね。

『ダヴィンチ・コード』読了されたとのこと、自分はまだ読んでいないのですが、レオナルド・ダヴィンチの「天才」のすごいところは、彼の残した作品やマシーンの設計図の裏に、既成の科学的な世界観・価値観とはべつの新たな価値観や世界観が秘められているのではないか、という気にしてくれるところだと思います。映画のほうが話題になっていますが、原作も是非読んでみたいと思います。

ありきたりなコメントで相済みません。それではお元気で。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/05/07 14:08:43

5月の3日4日の二日間で、私も『ダ・ヴィンチ・コード』を読みました。
クオリアが現代の聖杯であるというお考えに、同感します。

神のパズルがひそんでいる、というキリスト教的世界観は私にはなじみませんが、科学的世界観の背後に、意識を生みだす脳神経ネットワークパズルがひそんでいて、それを解くと、科学的世界観をささえている既成概念は音をたてて崩れていくように感じます。
そして、その後にあたらしい価値観が立ちあがるように思います。

しかし私はそれよりも、神秘の扉をひらく鍵となるクオリアは、あらたな宗教の核となるように思うのです。
おそらくは、永遠に解き得ぬクオリアの神秘は、そのまま意識の神秘であり、宇宙の神秘と同義のように思います。

既存の宗教が色あせてきたいま、もしも解き得ぬなら、クオリアの旗をたかく掲げた、あらたな宗教観の創成を期待します。

投稿: 河村隆夫 | 2006/05/07 8:38:22

 茂木さん、楽しいお休みとれて良かったね!子供の日にね!
 しかし、北海道にいらしていたとは!
 なんか、しんぱいしちゃったよ~。いろいろと…。
  私は、これから少し眠って、出かけなければならないので、
 また来ます…の予定。 おやすみなさい。
 

投稿: 龍神 | 2006/05/07 8:05:55

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