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2006/04/19

もっと大きな何かのために

 寝転がったりしながら読むのが好きなので、
NatureとScienceの両雑誌を購読している。
 
 脳科学、認知科学だけではなく、
ナノテクや、分子生物学、進化、物理学
などいろいろ興味があって読むが、
 それにしても、と
思うことがある。

 これだけ毎週多くの論文が出版されて
いて、一体誰が読むのだろう?


 かつて、リチャード・ファインマンは、
Physical Review誌に掲載されている
論文を全部読んでいたと言う。
 そういう時代は終わって、
 今は科学が細分化、専門化され、
自分の分野にかかわる論文以外は
読まない時代。

 専門家でも(専門家だからこそ?)
サーチライトの中に入るものしか
見えない状況になっている。

 それで思い出すのが、
ライアル・ワトソンの
『未知の贈りもの』の中で、
インドネシアの夜の海に船で漕ぎ出す場面。

 発光しながら船の回りに集まってきた
無数のイカを見て、
 ワトソンは、「イカの眼球は光学的には人間と
同じくらいに正確に世界を映し出すが、
彼らの神経系はそれほど複雑な世界を理解できない」
という疑問を持つ。

 何のためにイカは世界を見ているのか、
という疑問を持ったワトソンは、
 「イカの個体を超えた、より大きい何かのために」
見ているのだろうというインスピレーションを得る。

 科学と人間個人の関係は、ワトソンの
見たイカと同じなのかもしれない。

 聖心女子大学の授業の第二回目。
 ニューロンの構造、機能、神経伝達物質
などの基本的事項を振り返るとともに、
 1996年のミラーニューロンの論文を読んだ。

 NHKへ。

 プロフェッショナルの打ち合わせ。

 顔を合わせるなり、チーフ・プロデューサーの
有吉伸人さんが、「茂木さん、『ニューロンの回廊』見ましたよ」
と言う。
 あっ、そうですか、とちょっと動揺する。

 「茂木さんが生き生きしていましたねえ」
と畳みかけるので、
 「そんなことないですよ。プロフェッショナル
でも生き生きしていますよ!」
と言って座った。

 細田美和子デスクが、「茂木さん、日に焼けました
か?」
と言うので、黙っていると、山口幸子さんが、
「照れて赤くなっただけでしょ」
と正しい指摘をした。

 「昨日、『サラリーマンNEO』 なかった
ですね」と私。

 「茂木さん、NEOは火曜日ですよ」
と有吉さん。

 しまった、スゴ録をセットするのを
忘れてしまった。

 NEOでは、来週から『プロフェッショナル』
のパロディーをやる模様。

 住吉美紀さんが、プロフェッショナル班に
コーヒーメーカーを寄贈してくださったので、
みんながおいしい珈琲を飲めるようになった。

 続いてラジオのスタジオに移動し、
松尾貴史さんの
NHK FM
「トーキング・ウィズ・松尾堂」
で松尾さん、佐藤寛子さんと話す。

 盛り上がって1時間30分くらい
喋ったが、 
 放送されるのは45分くらいのようだ。

 松尾さんの永六輔さんのモノマネが
バツグンだった!

 論文を直しながら、
大手町の読売新聞へ。
 utility of action回りについて、
何か新しい概念を作れないかと
模索する。
 
 prion、quark、black holeで
もわかるごとく、
 サイエンスにおいてnamingは重要なり!

 読書委員会。
 大きな部屋に「コの字」型に座って、
皆で本について議論する。

 一生懸命本に当たっていると、
国立天文台の渡部潤一さんが、
「茂木さん、これどうですか?」
と本を持ってきてくださる。

 私が「検討本」として取り上げた本について、
同じ分野の研究者の先生が、
 「私たちはこの方を知りすぎているから。
先入観なく読まれたらいいんじゃないでしょうか!」
などと言われる。

 町田康さんは相変わらずぼそぼそと
キックの利いたことを言う。

 読売文化部の待田晋哉さんは、
若者向け文学の「課題図書」を
「茂木さん、これどうでしょう?」
と持ってくる。

 読書委員会室はエキサイティング!

 途中で、鵜飼哲夫さんに呼び出されて
ジカダンパンされた。

 こうやって一日を振り返って見ると、
とてもその体験の全体を私の脳髄が
処理しきれるとは思えない。

 やはり、私はかつてワトソンの乗った船を
取り囲んだイカたちと同じように、
 私よりももっと大きな何かのために
この世界を一生懸命見ているのだろうか?

 
昨日の日記に、荒川修作さんとの
写真を添付しました。

4月 19, 2006 at 06:49 午前 |

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受信: 2006/05/02 19:55:03

コメント

茂木先生へ
 
ライワル・ワトソンって、以前テレビで番組をやっていた生物学者ですよね? インドネシアの海に船をこぎ出して、人間の目と同じほどの世界を映し出すイカと対面するって、面白いし素敵ですね。映像が浮かんできました。
けれど、イカから見える世界は、海の中の世界と地上の空と月、星、雲ですね。
人間の見ている世界とは違います。イカは自らが発光するんですよね。海の中の星の役目を果たしているのかも。
それにしても、意識ってものはイカにもあって、人間と何かしらのコミュニケーションが出来るかも知れないですね。イカって不思議な生き物ですね。人間と同じくらいに。墨を吐く所が忍者みたいだけれど。

投稿: | 2006/04/21 0:59:54

>やはり、私はワトソンの乗った船を取り囲んだ烏賊たちと同じように、私よりももっと大きな何かの為に、この世界を一生懸命見ているのだろうか?

人間は、自分よりももっと大きな何かの為に、この世界を死ぬまで見つづけていくのだろうか。その「もっと大きな何か」とはいったい何か?科学だけでなく、思想においても、これは大変な命題につがいない。

全てが細分化され、自分の専門分野以外見ようとしない傾向が各ジャンルで見られるようになってくると、果たしてそれでいいのか、という疑問が立ちあがって来る。もっと大きな何かをすら見ようとしていないのだろうか、世間の人らは…。

量子力学の世界から素粒子の一つ一つまで見極めようというミクロの視点と、大局を見極めるマクロの視点と・・・この二つを持っていないと、人間は未来すら見とおすことが出来まい。

閑話休題。昨日のエントリーに茂木先生が荒川修作さんとツーショットで収まっている写真を拝見しました。

先生のスーツ姿、いや~、ダンディにしてミョーにかわいらしい(!)というか何というか。なんともはや、キマってオリマス。
先生の、いつものヘアスタイルとミョーにマッチングしてます。講演のたびに拝見している黒装束もカッコイイですけど、このスーツ姿もよいです…。本当に。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/04/19 18:13:32

スッ スミマセン!

スーツ姿の茂木先生の出現に、寝ぼけまなこが・・・“開眼”しました!

つまらない冗談を言っている場合ではありませんでした。

ミクロにつきつめていく視点と、大局を見る視野の広さ・・・

両方兼ね備えた人には、なれるでしょうか?

足元を固めつつ、未来を志向できたら・・・素敵でしょうね!

投稿: TOMOはは | 2006/04/19 7:26:01

私は日経サイエンスを読んでますが、読む記事は2,3つで他はあまり読まない。というか読めない。物理というか、量子論も難しいところまで行くとわからないし、宇宙論もよくわからない。
そういう読めないところまで読むと、何か化学反応が生まれるかもしれない。。

投稿: 54notall | 2006/04/19 7:23:35

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