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2006/04/04

鴨ナイフ くゎっ、くゎっ!

(承前)
刀匠の指導の下、
ケラからナイフをつくった。

まずは、刀匠のお弟子さんが
叩いているのを見ていた。

赤熱した鉄が
ぱんとはじけるのが
見えた。

次の瞬間、

熱い!

上まぶたの辺りにじゅっと熱さを
感じ、
それからじわじわとひりひりし始めた。

作業場には鏡がないので確認できない。

後で見たらなぜか上まぶた
ではなく、下まぶたの方にやけどの
小さなスポットの跡があった。

しかし、ごく瞬間的に接しただけなので、表層
だけしか焼けていない。

名誉の負傷。

島田雅彦も、頬に一瞬
熱いものを感じたらしい。
島田の頬にやけどスポットがあるか
どうか、無精髭でわからない。

島田雅彦は、コンカンコンカンと
槌を振るい、バナナのように大きく反った、
ダガーナイフをつくった。

私は、最初は「マッコウクジラ」のような
形のナイフをつくろうと思って
カンコンカンコン叩いていたのだが、
頭部を丸くしようとして
熱心に叩きすぎたのか、
ふにゃっといやな感じで曲がった。

「あっ、これ割れていますね」とお弟子さんが
言う。
「間違いなく割れていますか」
「間違いなく割れています!」と若き禅僧の
ような風貌のお弟子さんは容赦なく断言する。

「これ、火に突っ込んで溶かせばつながりませんか?」
「つながりません!」
「どうすれば良いでしょう?」
「すぱっと切るしかないですね」
「切る!?」

お弟子さんの提案されたのは全面切除
だったが、
私はこの「味」を残したいと、
割れ目から斜めに切っていただくことにした。

めげずにトンカントンカンと叩き続け、
できあがったナイフは命名「鴨ナイフ」

島田の「反りナイフ」。
私は「鴨ナイフ」。
結果としてそれぞれの個性が
出たような気がした。

島田は、クール・ダンディー。
私は、鴨。くゎっ。くゎっ。

砂鉄からナイフを鍛え上げた、
ジークフリートの追体験。

振り返っての対談。

鉄とデジタル資本主義を結ぶもの。
それは、貨幣の強制通用力に象徴される、
私たちの心の中にある「動かし難い」もの。

そんな、自分の心の中にある「鉄」を
溶かしたい! と思った。

鉄を溶かすには、高いエネルギーと
高度な制御のインテリジェンスが要る。

名誉の負傷と鴨ナイフのあとに残ったのは、
エネルギッシュ&インテリジェントに生きよう
という決意だった。

(一連の模様は、集英社の文芸誌「すばる」
にそのうち掲載されると思います)


鴨ナイフ くゎっ、くゎっ!

4月 4, 2006 at 07:35 午前 |

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コメント

茂木先生には、ちょっとお許しいただいて
ここでお返事させていただきます。

朝 さま  ありがとうございます!

「思ったより、微妙に使い分けているものですね。」

ほんとうですね!

言葉は、日本語に限らず 奥が深いですね・・・

龍神 さま

「私も一生懸命ことばにすれば、きっと少しは伝わるものがあると」
思いたいです・・・

子どもの本をご紹介している“ひげうさぎ先生”に教えていただいた

いま読んでいる、梨木香歩さんのエッセイ「春になったら苺を摘みに」の帯には

“分かり合いたい私たちはみな”「理解はできないが受け容れる」と
書いてあリます。

そうなんです・・・コレは本当に難しい。

だからこそ、この問題にきちんと向き合っていきたいと想いました。

そのためには、“鴨ナイフ”を胸に


『エネルギッシュ&インテリジェントに生きよう
という決意』

が試されるような気がします・・・

投稿: TOMOはは | 2006/04/07 11:39:53

 TOMOははさま
 そりゃあもう、伝わらないときのもどかしさと言ったら…!
 自分に、相手にいらいらしたり、相手もいらいらして、
バトルもどきの展開(私の場合は男友達や他国の友達であることが多い)になったり。
 (本当にケンカ別れすることは、まずないですよ。)

 こう言えば伝わる?少しは分かってもらえる?と、
試行錯誤する。途方に暮れる。つらい時も、もちろんある…。
 そんな時、どれもこれも楽しんじゃえ!と、あとからでも
思うことにします。
 すると、うれしくなる…気がするだけでもよしとする。
 一生懸命ことばにすれば、きっと少しは伝わるものがあると
思いたいものです。
 (鴨ナイフから、なんでこんな内容に飛んでしまったんだっけ?
これでコメントにコメントするのは終わりにします。失礼致しました。)

投稿: 龍神 | 2006/04/06 23:59:55

TOMOははさんへ

はじめまして。
私もネイティブスピーカーではないのであくまでも個人的な連想をご参考まで、という話ですが、「思う」は'think'に近くって、「想う」は'wish'に近い(より気持ちが入っている)気がしました。(でも、文全体の流れによってimagine、wonder、hope等も多分入り乱れて使っています。)・・思ったより、微妙に使い分けているものですね。それこそ、「思う」と'think'でもそれぞれによって、活性化される「脳」がちょっと違う気もします。。!

投稿: 朝 | 2006/04/06 23:40:38

龍神さま

>それぞれ感じかたが違うから、難しいなあと

私もいま、身近にある問題でちょっとそんなことを思っています。

そのうれしさを感じられるとき、はいいのですけれど

伝わらないときの、複雑な気持ちは・・・

できることをやるしかないと、思っています。


ところで、私も passion という感じがしてきます・・・
    

投稿: TOMOはは | 2006/04/06 20:22:55

 TOMOははさまのコメントを拝見致しまして、

 イギリス滞在前に保険として購入したポケットサイズの辞典を引いてみました。すると、

passionate 情熱的な;(言葉・感情が)激しい;怒りっぽい

 とありました。
(どれも茂木さんに当てはまりそう?うふふふ!)

 私としては、passionateと聞いて、誰でも思い浮かべるであろう意味で
書いたつもりではありますが、それぞれの感じるままで良いと思っています。
 小説や歌詞も、翻訳家によってなんとなく違ったりしますし、
日本の古典の解釈もそうですよね。
(何にせよ、良し悪しは別として…この判断も人それぞれだなー)

 コミュニケーションって、それぞれ感じかたが違うから、
難しいなあと。とくに、いろいろな国の人と接すると、些細な事でも議論になってしまったりするので、
強く感じます…が!が!が!
 それがすーっごくおもしろい!!

 そのうれしさを感じたとき、
みんなちがって、みんないい って強く、強く思うのですよ…。

投稿: 龍神 | 2006/04/06 18:27:46

龍神さまの  『Passionate Dandy!!』


私の感覚的には、言い得て妙・・・・のような気がしますが

家にある受験用の辞書では、???のことが書いてあります・・・
(やはり、コレって全然使えないのかも知れず
英英辞典が、必要か?でもそれも英語ですよね・・・)

もしも英語のお得意なかたがいらしたら、教えていただきたいのですが


考えるは、think として

思うや想う・・・など

日本語では私自身も少し意識して使い分けていますが

それに当てはまる英語は、どのようなものになっているのでしょうか?

といっても、使う場面場面で、それぞれ違うとは思いますけれど・・・

投稿: TOMOはは | 2006/04/06 9:06:02

 この鴨ナイフくん、作者に似てよく切れる?
 (ブチギレって意味じゃあなくてよ、念のため。)

 茂木さんの一部が、こんなにユニークでユーモラスなかたちに
なって、ぽとり、生まれましたよーって、すごく感じる!


 島田さんがクール・ダンディならねぇ…

 茂木さんは、Passionate Dandy!!

投稿: 龍神 | 2006/04/06 3:48:37

何とも言えない、この魅力的な「くゎっ、くゎっ」という文字と
それに負けない質感の鴨ナイフ。
茂木さんの「太く生きている!」感がしました。

~貨幣の強制通用力に象徴される、
私たちの心の中にある「動かし難い」もの~

以前、NHKで放映された「エンデの遺言」を思い出しました。
理性で人間が動かない時は、実行が人間を動かしていく、と。
とても心に残った言葉です。

エネルギッシュ&インテリジェントに生きようという決意、ですか~
茂木さんのそのエネルギーはどこから生まれて来るのでしょうか?
・・・んん、答えはこの鴨ナイフに見てとれそうですね!

投稿: ☆☆☆ | 2006/04/05 21:59:52

なかなかおもしろい造形ですね。鴨ナイフ。
下まぶた、やけどなさったそうですが、如何やら大丈夫のようですね。

「鉄とデジタル資本主義を結ぶもの。それは、貨幣の強制通用力に象徴される、私たちの心の中にある『動かし難い』もの。

そんな、自分の心の中にある『鉄』を溶かしたい! と思った。

鉄を溶かすには、高いエネルギーと、高度な制御のインテリジェンスが要る。

名誉の負傷と鴨ナイフのあとに残ったのは、エネルギッシュ&インテリジェントに生きようという決意だった。」

我々の心の中にある「動かし難い」もの、とは…。それは少なくとも私が思うに、文明社会の中で生きていくうちに“しみついて”しまった諸々の“固定観念”とか、「変わらない自分」ばかりを追い求める愚かしい「自分探し」の傾向(自分なんて一生のうちにどれだけ変わるかわからない、だから人生とは妙でおもろいのだ、とイマドキの若者はなかなか思えない)とか、そういう、現代にありがちな我々文明人の嗜好的思考を含んだ、何故か錆び付いている、ばかっでかい“魂の鉄塊”なのに違いない。

そんな魂の錆びた鉄塊を、高い「志」というエネルギーで溶かすことが出来たなら、我々文明人は忘れてしまった“人間性”を取り戻せるに違いない…。

嘘とインチキと、デジタル拝金主義が蔓延するこの社会。鴨ナイフを振りかざし、魂の奥底から

「グワー!!」

と、火をハク思いでエネルギッシュ&インテリジェントに生き抜きたい、と茂木先生にならい、私も念願する。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/04/04 19:13:57

見事な鴨っぷりですね。造形美を感じます。

投稿: アブレオ | 2006/04/04 8:29:48

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