« 東京芸術大学 美術解剖学 授業 | トップページ | 「ひらめき脳」3刷 »

2006/04/18

モーツァルト・モード

モーツァルト・モード

 朝5時のつもりが、
4時45分にはもうフロントから
「タクシーがお迎えにきました」
と電話がかかってきた。

 急いで身支度をして、まだ明け切らぬ
温泉街を行く。

 「おやすみになりますか?」
 「大丈夫です」
と言ったのは確かである。

 眠って行こうと思ったのだが、それから
空港に着くまでの間、運転手さんは
ずっと「解説」を続けてくださった。

 この国道***号を行きますとね、信号が
あるところが***号との合流点ですわ。
 このあたりは蟹の季節になるとお客さんが
黙っていても来るので、旅館の主人とかは
天狗商売をしていたところが、京都の若狭の
近くに蟹を出す安い宿ができたら、
みんな少しでも安い方が良い、というのが
人情ですから、そっちに流れてしまうように
なって。

 こっちは眠いけど、悪いと思うから、
うとうとしながら相づちを打つ。
運転手さんの「喋っている確率」は
驚くべきことに90%以上で、
飛行場に着くまでに延々と解説を
続けてくださった。

 飛行機の中で遅れた爆睡。

 空港で花野剛一Pと合流し、
三鷹方面へ。
 伏谷毅彦Dと三人でまずはラーメンを食べる。

 荒川修作さんの
「天命反転住宅」
を見学。
 以前から噂には聞いていたが、
床はでこぼこ、キッチンはすっぽり、
フックはニョコニョコ、
 部屋はつるりん、
 壁は色々、
 とても奇妙な住宅であった。

 それから、荒川修作さんと
トークのデスマッチ。
 
 荒川さんとお目にかかるのは
初めてであったが、
 なかなかにディープな方であった。

 デカルト以来の近代的「自我」概念に
とらわれず、
 「私」が身体にさえ宿ると限局せず、
むしろ、環境との相互作用の中に、
 結び、ほどかれ、響き合い、
のばされ、遍在し、超えて、
拡散していく存在として捉え直す。

 荒川さんの言われる「死なない」という
命題はつまりはそのようなことだろう。

 40年以上も前、ニューヨークに
行き、マルセル・デュシャンや
ヴェルナー・ハイゼンベルクとの
出会いを果たした荒川さん。
 お話しているうちに、私の中で、
いろいろなことがよみがえって来た。

 宇宙の波動方程式
 非交換アルジェブラ
 統合された並列性
 今見ているこの世界が、全然違った
場所に見えてしまうことの予感。


 荒川修作さんと、「天命反転住宅」で。

 荒川さんと「喋った〜」
とはあはあ言っているところに、
 
松井茂さんが到着。
 
 松井さんがプロデュースしてくださった
「モーツァルト・モード」
のCDをいただく。
 さすが松井さん、細部まで作り込まれている。

 松井さんとモーツァルト・モードに
ついて喋っているうちに、
 ああ、やっぱり量子力学だな、
と思えてきた。

 今の世界を支配しているのは
アラン・チューリング由来のcomputationという
概念だが、それは畢竟ニュートン力学に
過ぎないのではないか。
 ニュートン力学の外はないようにずっと
思っていたが、相対性理論があって、
量子力学があった。
 同じようにcomputationの外にも無限の
広がりがあるのだろう。
 
 カオスや意識はそれらの徴候であるが、
もっとぶっ飛んだ視点に我々人間の
未来のモーツァルト・モードはある。

 標記CDに寄せた解説文から、
「モーツァルト・モード」に触れた部分を
抜き書きする。
 
  私には、勝手に「モーツァルト・モード」と呼んでいる感覚がある。頭が軽くなり、様々な発想が空気の中を疾走するように浮かんでくる。陽気になり、まるで木漏れ日が自分の頭の上でダンスを踊っているかのように周囲の人たちと明るく話す。ああ、生きていて良かった、と思える、絶好調の時の流れ。それが、「モーツァルト・モード」である。

4月 18, 2006 at 07:58 午前 |

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: モーツァルト・モード:

» 「 PAY IT FORWARD 」 トラックバック Little Tree
これは、邦題「ペイ・フォワード〔可能の王国〕」という映画のタイトルです。 映画をご覧になった方はいらっしゃるでしょうか? 小説の原作者は、キャサリン・ライアン・ハイド氏です。 私は、カイパパ通信blog☆自閉症スペクタクル 〜自閉症から広がる、チャレンジに満ちた新しい世界!〜というブログの中で カイパパさんがご紹介していらしゃっていて、映画のことを知りました。 カイパパさんは、ブログを通して�... [続きを読む]

受信: 2006/04/18 10:42:22

» 茂木健一郎さんがいらっしゃいました トラックバック 三鷹天命反転住宅 BLOG:荒川修作+マドリン・ギンズ
昨日、茂木健一郎さんが三鷹天命反転住宅にいらっしゃいました。 茂木さんがホストを... [続きを読む]

受信: 2006/04/18 10:43:11

» ひろがれ私 トラックバック 考杉
こないだ私の中の何かが死に、 今はまだ、その何かのために喪に服して暮らしています。 なかなかね、空いた穴が大きすぎてね。後で更にわかったんだけどね。 そうか、穴とそうでない部分の境界そのものを消してしまおうか?? 今のところ、身体と外界を分かつ物理的境界に興味が無い。 いや、日常、笑ったり楽しかったり素敵だと思ったりは、してるんですが。 ついぞこないだの夢の中では、 ドイツ(とされている地)の詳細な地理を見たこともないはずなのにしっかりと把握し、 既にドイツにいるのに「パスポ... [続きを読む]

受信: 2006/04/18 23:31:43

» 茂木健一郎さんがいらっしゃいました トラックバック 三鷹天命反転住宅 BLOG:荒川修作+マドリン・ギンズ
昨日、茂木健一郎さんが三鷹天命反転住宅にいらっしゃいました。... [続きを読む]

受信: 2006/04/19 18:22:47

» どうして色々な「ありがとう」ってことを同じものって分かる? トラックバック 「ありがとう」と「愛・幸せ」等の数理哲学
 私たちは、どのようにして、色々な「ありがとう」に関係する出来事を、同じ「ありがとう」なこととして、同一化し認識できるのでしょうか。。  それには、ある「ありがとう」な出来事の時間発展に関する記述(カオス力学系による)とシンクロニシティ(共時性)、そしてそれを編集(edit= cutting and rearranging)し量子化されたものとして考えられる確率・統計の手法による推定が、関係しているものと思われます。  以下に、上記の関係とその周辺についての考察を述べたいと思います。 ...... [続きを読む]

受信: 2006/04/20 11:15:35

コメント

茂木健一郎先生、

いい写真、ありがとうございました。

ありがとう 

茂木健一郎先生へ

投稿: | 2006/04/27 18:59:30

ROSE様のコメントに同感です。
バランスを取ってハーモニーになるようにしなくては。
「1個人に依存しないよう」気をつけまーす・・
ありがとうございます。

投稿: | 2006/04/19 11:34:03

すみません、書いてる途中で送ってしまいまして
先に送った分、消してください。

投稿: | 2006/04/19 9:44:23

4月8日(土)、満開の桜の中モーツァルトモードに浸ってきました。
養老天命反転地。
荒川先生の傑作です。

主人(左脳人間)と私(右脳人間)と高2の次男(同じく右脳)で
養老公園へドライブ。
主人だけ入場せず駐車場で一眠り。

受付でおねえちゃんが次男の入場料を大人料金(200円高い)とられたのに後で気付き、
「この子は高校生です」というと
計算機をだして難しい顔して計算しだした。
200円かえしてくれるだけでいいのに、
「あほちゃう?」と思いました(言いたかった)。

あいにくの雨で、記念館でビデオを観ている間に小雨に。
ご存知の通り、平らなところがないので傘を杖に
こわごわ移動。

日本地図・北海道の横の、見晴らしのいいところで
少ない入場者でしたが、警備員のおじさんが
強風にあおられながらしっかりと仕事をしておられました。
「どっから来たの?」
「大阪。堺です」
「ここ、左から行くといいよ。
 こけそうになったら、傘はほうりだして、
 手を付いて。頭ケガしても保障ないからね」
とアドバイスをしてくれました。

低い屋根で2回頭を強打し、何度も足を滑らせながら
歩きにくくてやだなぁと思いつつ、探検しました。
でもクイズラリーがあって、
その答えを見つけようと意気込んできて、最後に
○○の間で苦労の末、答えを見つけたときには
えらい興奮しておりました。
雨もやんできました。

運動嫌いの私が、
歩きにくいのも、遠回りして次のパビリオンへ移動するのも
苦にならなくなっていました。

今思えば、あれがモーツァルトモードでしょうか。

強風に吹かれている警備員のおじさんのところへ戻ると
「大阪の近所の人に、ここの宣伝たのむでな」
と言いながら、
認定書がもらえるというクイズの答えを勝手に書き込んでくれました。

おじさんの顔はよく見ると
日焼け止めクリームを塗りたくって白いムラなっていました。
足元は明るいベージュ色に塗装されていて、
いい天気だと照り返しがきついのだそうです。

養老で印象に残ったのは
天命反転地より
警備員のおじさんの笑顔でした。

投稿: | 2006/04/19 9:40:10

4月8日(土)、満開の桜の中モーツァルトモードに浸ってきました。
養老天命反転地。
荒川先生の傑作です。

主人(左脳人間)と私(右脳人間)と高2の次男(同じく右脳)で
養老公園へドライブ。
主人だけ入場せず駐車場で一眠り。

受付でおねえちゃんが次男の入場料を大人料金(200円高い)とられたのに後で気付き、
「この子は高校生です」というと
計算機をだして難しい顔して計算しだした。
200円かえしてくれるだけでいいのに、
「あほちゃう?」と思いました(言いたかった)。

あいにくの雨で、記念館でビデオを観ている間に小雨に。
ご存知の通り、平らのところがないので傘を杖に
こわごわ移動。

日本地図・北海道の横の、見晴らしのいいところで
少ない入場者でしたが、警備員のおじさんが
強風にあおられながらしっかりと仕事をしておられました。
「どっから来たの?」
「大阪。堺です」
「ここ、左から行くといいよ」
「こけそうになったら、傘はほうりだして、
 手を付いて。頭ケガしても保障ないからね」
とアドバイスをしてくれました。

低い屋根で2回頭を強打し、何度も足を滑らせながら
歩きにくくてやだなぁと思いつつ、探検しました。
でもクイズラリーがあって、
その答えが見つけようと意気込んできて、最後に
○○の間で苦労の末見つけたときには
えらい興奮しておりました。
運動嫌いの私が歩きにくいのも
遠回りして次の


投稿: | 2006/04/19 9:29:49

「モーツァルト・モード」と感覚を名付けられるとは
さすが 茂木先生!!想像しただけでも素敵な気分になります

>yuri様
私は『心の調律』時々ぎこちなくなります。
自律神経のように 意識する部分と無意識の部分がうまく
ハーモニーを奏で出すと 矛盾が少なくて好転するの
かもしれませんね

それと、美しい音楽や絵画・自然などにふれると
心が軽くなります。やっぱり「ちょっとウキウキ」が
いい感じなのかもしれません
『クオリア日記』は皆さんのウキウキの元かもしれませんね
どんなに御忙しくても きちんと書き込んでくださるから
私は安心感を感じています。(やや依存症になってるけど。。。)

投稿: | 2006/04/18 19:16:45

睡魔と格闘しながら、タクシーの運転手さんの話を相槌を打ちながら聞いていらした茂木さん。自分だったら話を聴くモードに切り替わり、眼を開きながらその話を、左の耳から右の耳へと、きれいさっぱり聞き流してしまう所だろう。

きっとその運転手さんは、“モーツァルト・モード”だったかもしれない。お客さんが来た途端に、そのモードに切り替わって、いろいろとお国名物などについてお話するのだ。

ニュートン力学の向こうには何もない、ということはなく、相対性理論と量子力学とがあり、意識とカオスがあり、そして無限&無量大数の、我々の“想定外の世界”が広がっている。


今の世界に支配的なcomputitionの概念に基づいて作られたWEBネットワークの世界。そんな世界にカラめとられてすっかり「奴隷」のようになっている者もいれば、茂木先生のように、computitionの外に常に眼を向け、ニュートン力学の向こうの、そのまた向こうの無限の広がりに思いを寄せる人もある。

そこにあるもっとぶっ飛んだところに、仰るように未来のモーツァルト・モードが潜んでいるのだろう。


荒川修作さんとの語らいも凄い。

デカルト的な哲学を超え、自我が身体に宿るという概念を超え、自我とは「環境との相互作用の中に、結び、ほどかれ、響き合い、のばされ、遍在し、超えて、拡散して行く存在としてとらえ直す」。

そこから生まれた住まいの形が荒川さんの天命反転住宅ということなのだろう。奇妙なスタイルの中に深い哲理が秘められているとみた。

茂木さんはこうしてやはり、日々、新しいもの、面白いもの、深いものと出会っているのだなあと感嘆した次第。
私も頑張らなくては…(@~@)

投稿: 銀鏡反応 | 2006/04/18 18:33:29

モーツァルト・モードとは、精神医学上に言ういわゆる「そう状態」というものなのでしょうか・・かなり近いように思われます。

投稿: hish | 2006/04/18 16:08:54

荒川修作さんの建物を見せていただいた事はないのですが、
多分、
普段の建物が不便だからこそ、
そこを利用する人たちが自身の体を使うことになり、
結果的には良いことになる ということかと
勝手に思っています。

茂木先生、忙しくて睡眠不足でも、
相づちを打たれたのですね。
・・心の調律が下手な私は、
愛想を振りまかなかったので、ごたごたに・・(苦笑)
これでは、モーツァルトが聞こえるはずもなく・・(苦笑)

「うぬぼれる脳」
買ってみたのですが、読み切れるだろうか・・?

投稿: | 2006/04/18 10:31:39

「モーツァルト・モード」とても楽しみにしております!!

母親が、クラシック好きでしたので
私も、それなりには聴きますが、詳しくはありません。

ただ、聴いていいなぁと感じることが基本だと思っています。

最近モーツァルトで聴いているのは
例の「アマデウスの魔法の音」というちょっと変わったCDなので

茂木先生のセレクトされた(?)おそらく正統派のモーツァルトの世界にひたって

ぜひ、「モーツァルト・モード」を体感してみたいですね!

論理や法則を、思いっきり飛ばして楽しんでもかまわないのかしら?

と私個人としては思っていますが
それもお一人お一人のやり方で、いいのでしょうね・・・

投稿: TOMOはは | 2006/04/18 9:22:49

コメントを書く