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2006/03/05

逝きし世のうつくしき面影

開口一番、
角川春樹氏は、「どうしようと思ったんだよ」
と言われた。

角川句会。福田和也氏も参加。

私は、何しろ句作は生涯で初めてに
等しかったし、
すでに受け入れられている句の
文法をそのままなぞるのは
いやだと思っていたので、
わざと外した句を用意していった。

一つ一つ角川氏の「これはどういう意味だ」
という尋問を受け、
ご説明申し上げた。
「そうか、それならばいいな」
お手柔らかに願います。

一方、
そこは手練れの福田氏。
「うまくなったな」と角川氏もご満悦。

角川春樹氏に初めておめにかかって
思ったこと。
私は、常々self-doubtがある人が
好きだと思っていたが、
あるスケールを超えると、かえって
self-doubtがない方が良い方向に
働くということはあるんじゃないか。

映画撮影のために、
「戦艦大和」の「1/1」モデルを「2/3」
つくった、という話にのけぞった後で、
そう思った。
たとえばチンギス・ハーン。

『わが闘争』に書かれていた「UFOを見る」
という話も、何のためらいもなしに
「そうなんだよ」と言われる。

自己懐疑のある漱石のようなインテリジェンス
とはまた別ベクトルの、言い切る快感。
それが大スケールの実行と結びつけば
爽快である。

新幹線で長野へ。
桝一酒造の市村社長が愛車ジャガーで
お迎えくださる。

パワーポイントを仕上げているところに
ところに台風のように現れた
セーラ・マリ・カミングスはとても気さくな
良い人だった。

小布施の暗闇と、土のぜいたくに酔った。
市村さんの語る、生活者が豊かに暮らすことが
すなわち訪問者にとっても福音になるという
ヴィジョンは、全面的に支持したい。

日々の暮らしを充実させるということが
すなわちその土地の価値を高める
ことであるという原点に戻れば、
かつての江戸がそうであったように
浮世(=現世)の絵に描きたくなるような
日本が蘇るのではないか。

渡辺京二さんは、ある文化の本質は案外
外の目からしかわからないと書く。
だから、幕末の日本の美しさは、
そこを訪れた外国人によって定着されなければ
ならなかった。

長野オリンピックの準備に参加したセーラが
小布施に出会い、定住した経緯には
自分たちの価値を知らない日本人に何かを
伝えたいという思いがあってのことだと思うが、
渡辺さんの言われるように、それは
「ほんとうのこと」なのだろう。

セーラも渡辺さんの著作は愛読しているとの
ことである。

小布施に、逝きし世のうつくしい面影を見た。

3月 5, 2006 at 02:57 午後 |

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闘病日誌(はじめに) あらゆる合併症を起こす糖尿病たった何年かで死亡するケースもある。 症状の出ないまま慢性化していてある日突然、倒れて昏睡状態。 急性心筋梗塞、脳梗塞の何人かに一人は糖尿病に気づかずに起きた 合併症です。 又、近年では健康診断等で糖尿病の気があるなどと診断を受けていて 放置したまま合併症で死亡した場合、 死亡保険金が支払われないケースも多数発生しているようです。 気づかずにある朝突然『失明』年間に2000人も居るそうです。 そして『壊疽』糖尿病患者は神経感覚も... [続きを読む]

受信: 2006/03/05 15:20:15

コメント

このエントリーの、一番最初のコメントの補足です。

アートの世界で、角川氏のようなユニークな方がいくらおられても、現代を生きることを引き受けながら、作品を作らないと、サブカルチャーのような匂いのただようものになってしまうのではないのか…。

ところで、オレは神だ!と豪語される角川氏よりも、茂木先生のほうが、TOMOはは様の言われる200%ユニークで、というより私が思うにその2倍、400%ユニークだと思う。

それに角川氏よりもはるかにヒューマンな美しさを、茂木先生はその五体の中に秘めておられると見ている。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/03/06 19:47:11

「小布施に、逝きし世のうつくしい面影を」

お感じになれて、それはそれはお幸せでいらしたことでしょうね・・・

もっとさかのぼって、
国宝「源氏物語絵巻」の絵画をもとにした「復元模写」が完成したこをと
NHKの日曜美術館で放送していました。

華麗なる王朝絵巻の姿をしのぶにふさわしい、色鮮やかな彩色と、
細かな描写がTV画面を通じても伝わってきました。

五島美術館にて、3月26日まで展示とのこと、時間が許せば
日本人の、季節や自然との関わりを物語る、
いにしえの美しい世界に、ふれてみたいと想います・・・

句会も、まずまずのご様子で、ぜひお続けになって
若き芭蕉か一茶の域まで到達して、私たちを愉しませてください!!

ところで、岡本太郎さんをふと思い出しました。

それに“ひとはひと” 茂木先生は、もう200%ユニークで
神など名乗る必要などないと、私には思えますけれど・・・

投稿: TOMOはは | 2006/03/05 20:54:33

おお!
きょうは私がコメント一番乗りだ!!
↑失礼しました。

きょうはごゆっくりされているのですね。

戦士の休息といいますか、毎日のようにハードワークをこなされる先生のような方々には、たまの日曜ぐらいゆっくりゆったりなさったほうが、本当はいいみたい。

角川春樹氏については、過日の「日経ビジネス」(この手の雑誌は時々読みます)の連載「テレビウォーズ」でその言動について書かれていましたが、その中で角川氏がご自分を「おれは神である」なんておっしゃているんですよ。

台風の進路を変えることが出来るとか、津波が来ないように出来るとか、常人が聞いたらトンでもないことを言われている。

これには茂木先生ではないですが、のけぞりました、「うっそー、信じられん」と。そしてスグにつっこみたくなりました、
「ちょっと、角川さん!あなた、大丈夫?」。

そのほか、角川氏は「聴くだけで胸が出てやせる」という触れこみのケータイの着メロを作ったり、医療刑務所にいたころ、末期癌の患者に手かざしで1分で治した、なんて話をしてたと「テレビウォーズ」には書いてありました。

兎に角、オレは神だ!と言いきってしまえるその根性というか、スケールの大きさというか、とにかくある意味、ぶっ飛んでますよね。

でも角川氏の、映画のプロデュースの才能は本当に天才的ですね。まさに映画界にとっては「いなくてはならない人」なんでしょうね。なにしろ大変なヒットメーカーだったんですもの。

「犬神家の一族」「人間の証明」など彼がヒットさせた映画は沢山ありますよね。

まあ、映画に限らず芸術の世界にはこういう、とてつもなくユニークな方がいたほうがいいですよね。

小布施は自分はまだ行ったことがないのですが、風土といい文化といい、さぞ素晴らしかったろうと思います。

「渡辺京二さんは、ある文化の本質は案外外の目からしかわからないと書く。だから、幕末の日本の美しさは、そこを訪れた外国人によって定着されなければならなかった」。

私達日本人は、案外、自分の文化の価値についてまったくの無頓着になってしまっている。

そこへセーラさんのような外国の方が、(このエントリーでは、小布施ですが)我々が見落としがちな日本文化の本質を見抜き、それを教えてくださることによって、ああ、そうなんだ、と気づかされることが多々ある。

外つ国より来る人が、我等やまとびとに「逝きし世のうつくしき面影」に気付かせてくれるのですね。

我もまた、一幅の浮世絵もしくは錦絵となるが如き、逝きし世の面影に触れてみたい。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/03/05 15:55:31

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