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2006/03/18

救済者に救済を

重松さんに別れを告げ、
朝日カルチャーセンターへ。

お腹が空いていたので、つい
てんやで天丼を食べてしまった。

エッジがつながるかと思ったが、
店の奥に入ったので電波が通じない。
しばらく、席を移ろうかと迷ったが、えいや
と諦めた。

萩尾望都さんをお迎えしての
対談。
ディープなファンが目を輝かせて
詰めかけ、大変な熱気。

萩尾さんは手塚治虫に最も
大きな影響を受けられたとのこと。
はて、作風が違うような、
と考えているうちに、
手塚治虫の無意識の中に萩尾望都
が棲んでいたような気がしてきた。

萩尾さんが、人間は遺伝子か、
それとも環境か、とお尋ねになるので、
たとえ遺伝子だとしても、
人間の認知発達はopen-endedであり、
どこまでいってもここで終わり、
ということがない。
次々と気付きが起こる。
だから、100年生きるだけでは
その可能性を尽くせないから、
決定されていないのと同じだ、
とお答えした。

そうしたら、萩尾さんは、クローンを
100代作って一億年生きさせたら、
などと言う。
もちろん、脳状態も一緒に移す、
ということだろう。
この方はディープなSF思考なのである。

萩尾さんをお迎えして、懇親会。
二次会で、疲労感を覚え始めたところに
増田健史が来た。

「茂木さん、最近感動するものに出会いましたかあ!」
と来る。

知るか! こちとら、生きるだけで精一杯だ。
だがな、タケシ、こんなことがあったんだよ。

朝、
何となくパルジファルを聴くモードになって、
そのストリームが耳から入る中、
代々木駅の階段を上り、山手線に駆け込んだら、
ちょうど聖槍が聖杯と一緒になって
クンドリが倒れるところだった。

 かなりの疾走だったから、
胸がドキドキして、
「救済者に救済を」というコーラスを聴きながら、
ここで倒れて死んでしまうと、BGMとしては
ぴったりだな、と思った。

ワグナーはバカものだったかもしれないけど、
彼の見た夢は掛け値なしに美しい。

つまり、何というか、その中で生きること
自体が一つの挫折でしかあり得ない現代の
文化状況においてだね、
美しい夢を見続けることは魂のバランスのために
必要だと思った。

それくらいかな。今度また飲みましょう、たけちゃん。

佐賀に行く特急がちょうど出ます。
ごきげんよう。 

3月 18, 2006 at 01:46 午後 |

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コメント

 茂木さんにとっては、ぴったりでも、

 救済する側は、びっくりでしょう。

投稿: | 2006/03/21 13:57:55

千鶴 さま

いえいえ、こちらこそ・・・

私こそ、本当にいい歳をして、夢みたいなことを
アレコレ想うことばかりです。

さしずめ 「バルバラ異界」で

足を結わいつけておかないと
フワフワどこかに飛んでいってしまいそうな千里さんの
年取った判です。(これでわかるでしょうか?)

でも、人はそれぞれの時期に
それぞれに成長したり学ぶことができる
素敵な生き物だと思いますよ。

千鶴さまにも、まだまだ時間はたくさんあるんですもの
初めは独学でも、いっぱい本を読んだり
いろいろな人とお話をするうちに

きっと自分にとっての「これだ!」というものにめぐり合えると思います。

私自身もいまだに、そう信じてやっています!

またお話しましょうね!!

投稿: TOMOはは | 2006/03/20 19:00:29

…クローンを100代つくって一億年まで生きさせたら…
…脳状態もいっしょに移す…

ううむ、萩尾先生の思考はほんと、ディープなSF系統の思考なんですねぇ。

茂木先生の『プロセス・アイ』にクローンの少女が出てきますが、そういうのを100代までつくって一億年生かすということなんだろうね。

ところで、遺伝子と環境、どちらが人間の生きかたを決めるか、と聞かれたら、私は
「両方だ」と答えるようにしたい、と思う。

遺伝子に込められた情報が、その人間のベースとなる資質を作っているとしても、外の環境次第で、その人間は如何様にも変化するものなのだとしか思えない。

だから安易な遺伝子決定論には異議を唱えることにしている。

遺伝子だけがその人間の生きかた全てを決めるとは、口が裂けても、アタマが七つに割れても、自分は言えないし、思えない。

やはり、最低でも両方があいまって、その人間の生きかたを可塑的につくってゆくものだと思う。

その中で生きること自体が一つの挫折でしかあり得ない現代の文化状況において、美しい夢を見つづけるということは魂のバランスの為に必要だ、という茂木先生の主張にはなるほど一理ある。

だが、美しい夢を見つづけているだけじゃ、この文化状況に「革命」は起こせないのではないのか?

美しい夢を見つつも、何とか新しいものを創造していかなければならないのではないのか。

人々の生命の奥底に限りなき希望のともしびを灯す、新世紀に相応しい文化を。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/03/18 18:27:12

美しい夢を見続けること・・・

うつくしい志向への、あくなき憧れ・・・でしょうか?

萩尾望都さんの美意識――様式美へのこだわりが、
創作の大きな土台にあるように、私には思えました。

独自のご自分にとっての心地よさのような、落ち着きのよさが
独特の空気や光の質感を生み出していらっしゃると
納得いたしました。

実は、ご質問したかったことに関連しますが

ブログを始めてつくづく思うに
私は、少なくとも自分が、目にし耳にし心にした
と感じていることしか、おそらく表現することが(今は)できないだろう、ということです。

まったくのファンタジーの世界のクオリアと

私の感じていると想っているクオリアとの間の

相違や相関・・・などが何かあるのかを

萩尾さんと創作にチャレンジされている茂木先生に
伺ってみたいと思いました。


世代性について申し上げるとすると

私は、植物が種をつくり、自らはいずれ朽ちていくとしても

地面に落ちたその種が芽を出し、いずれ育って大樹となり
また 次の世代に自らの想いを託していく姿に

共感を覚えます。

・・・皆様それぞれの、いろいろな想いがおありでしょうね・・・

投稿: TOMOはは | 2006/03/18 18:00:29

私も昨日のお昼は本当にひさびさに
天丼食べてました!
単なる偶然ですけど
なんとなくうれしくなってしまいました!!!

相変わらずお忙しいようですが
ご自愛のほどを!

投稿: | 2006/03/18 17:40:06

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