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2006/02/08

師匠と恩人

養老孟司さんは、
一般向けに講演するときと、
少人数で話している時では、
 話の内容やモードが
 全く変わる。

 とりわけ、「バカの壁」以降その傾向が
強まったようにも思うが、
 一般向けの話の時は、きわめて
わかりやすく、
 何よりも難しい概念や固有名詞を
一切使わない。

 ところが、少人数での話となると、
まさに「やりたい放題」。
 話題はポンポン飛ぶし、
固有名詞も(レアなものを含めて)
飛び交うし、
 これはこれできわめて面白いから、
 一般向けにもちょっとご披露したら
と思うのであるが、
 何か確信されて今のスタイルを
貫かれているのであろう。
 
 というわけで、大阪厚生年金会館での
フォーラム。
 養老孟司さん、それに、松尾義之
さんがそろうというのは私的には
奇跡的な組み合わせである。

 まず、養老さんは私にとって
「師匠」のような方だということは
言うまでもない。
 そして、松尾さんは、「恩人」。
 私の実質的な処女作、『脳とクオリア』
を出版するという「英断」を
 日経サイエンスに所属されていた
当時にどーんとやってくださったのである。

 師匠と恩人と一緒のフォーラムは、
大変楽しゅうございました。

 終了後、会食。
 座談の名手、養老さんのお話しを
隣で聞きながら、
 私は気づいたことがある。
 やっぱり、この人は精神において
アングロサクソン的なところがあるのだな、と。

 日本的な会話というのは、たとえ
わかりきった話でも、
 それを敢えて言うことで
お互いの共感を高めたり、
 相づちを打ったりすることがある。

 一方、イギリスでは
できるだけ「エコノミー」でいくという
美意識がある。
 暗黙のうちにわかっていることは
前提とした上で、その先にある
何かをできるだけ言おうとするのだ。

 少人数で話している時の養老さんは、
わかりきった話は一切言わない。
 一つ一つ、濃い情報量がのった
言葉を発する。

 養老さんの最近の著作は、「日本とはどういう
国か」をテーマにしたものが多いが、
 やはり養老さん自身が必ずしも
日本的な性格ではなく、
 随分苦労されたことが伏線にあるのであろう。

 そして、新幹線で帰る。

 私は、師匠の横で思わず眠り込んだ。

 途中で目を覚ますと、文庫本を読んでいた
はずの師匠もまた、おやすみになっていた。

 新横浜で師匠と恩人が降りられて、
私ははっと我にかえって仕事を始めた。

 品川に停車する列車が多くなってから、
新横浜・東京間は仕事のしがいが増えた
ように思う。 

2月 8, 2006 at 06:08 午前 |

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ウチダ先生と茂木健一郎さんがそれぞれ、イギリスにおける特質を「機能主義」「エコノミー」とご指摘。こういうアングロサクソン的な振る舞いには僕もとても憧れが強く、何とかそっち [続きを読む]

受信: 2006/02/08 21:24:30

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受信: 2006/02/11 0:52:19

コメント

このエントリーを読んで思ったこと。

そうか、養老さんはアングロサクソン的な精神の持ち主だったのか。それで長年日本的なものと向き合う中で、苦労してきたのか。

暗黙のうちにわかりきっている事は敢えて言わず、その先にある事を言うという、養老さんの姿勢に、おお、そういう対話のスタイルもあるんだな、と少しなっとく。

わかりきったことを口に出していちいち相槌を打つ日本的な対話のスタイルもいいけれど、養老さんのようなスタイルもまた宜しかろうと思う。

対話のスタイルは其々違っていてもいいのかもしれない。

ともあれ、互いに語り合う中に1+1+1=3ではなく∞(無限大)で新しいものが生まれてくる。そこに対話の醍醐味のひとつがあるような気がする。

投稿: 銀鏡反応 | 2006/02/08 18:34:12

私は、夫に聞いて、新聞記事を見るまで
都留重人さんという方を存じ上げませんでした。

我が家の、政治経済担当の(などというと大げさですが)夫が
朝、出がけに「経済学の教科書のような方である」と話しておりました。

いつもあまりに素人的質問をするので、夫にはカナリあきれられていますが

新聞の見出しに、inspire されることがありましたので・・・

「経済成長より環境・福祉」「都留重人氏 社会変革説き続け」とのことで

お亡くなりになったことは残念ですが
その遺志を、次の世代の私たちが、どのように生かしていけるかが問われているように感じました。

「新しい社会経済体制」というものがどんなものか
具体的にイメージを作り上げることのできる方のいらっしゃることを願う、期待感が膨らみました。

以前、ヒマラヤ山脈の東に位置するブータンという王国で
GHN(国民総幸福量)という指標を掲げていることを知りました。

いま、日本は、アメリカのような社会を目指そうとしているのかどうかもわかりませんが

少なくとも自分自身は、どんな社会を望み
子どもたちの将来に、どんな世の中を残していけるかを
ささやかな暮らしの中からでも、きちんと見つめていこうと思いました・・・

さて、養老先生のご性格に、興味をそそられますが

以前、日本科学未来館に、家族で行ったとき
子どもはあちこち走り回っていましたが
モニターで、養老先生や田中耕一さんのお話しているのを見て、とても面白かったです。

子どもが読んでいる「かがくる」という雑誌の裏に
アインシュタイン展の広告が載っていて
いつか、お休みにでも行ってみようかと思っています。

私は、小学校の頃から、伝記ものなどを読むのが大好きで
いろいろな方の、成長のきっかけになった人や本との出会いや
転機になったエピソードなどを、うかがうのは
本当に面白いものだと思っています・・・

投稿: TOMOはは | 2006/02/08 14:53:53

養老孟司先生・河合隼雄先生に
お目にかかれるのは、
茂木先生のブログならでは!

1+1+1=3ではない のは、
養老先生の少人数でのお話に
ついていけるほど(?)、
無限のような気がします。

日本的な性格でなく というのは、
日本以外のことを知っているからこそ、
「日本的なところ」が見えてくるのでは無いでしょうか?

投稿: yuri | 2006/02/08 14:17:48

その組み合わせに、1+1+1=3どころではない

何乗にも掛け合わせた、何かが生まれたことを想像するのも、楽しいものです・・・

茂木先生が、師匠と仰ぐ養老先生の中学(?)高校は、とても有名ですよね・・・

私の中学の友人が、同じ横須賀線に乗っている方にあこがれていたことを思い出しました。

その紺色の制服が素敵だったのかしら・・・などと思いました。

あら、もう出かけなくては・・・

ご存知の方も多いと思いますが、
都留重人さんという経済学者の方が亡くなられたことを
本当は、書くつもりだったのですけれど・・・

ではまた、後で…

投稿: TOMOはは | 2006/02/08 8:32:25

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