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2005/12/10

批評性と創造

 昨日の夢はひさしぶりに爽快だった。
 夜空を、たくさんの飛行機がどこかを
目指して群れをなして飛んでいくのである。
 地上にいる私からも、
空のスバラシキ
 広がりが感じられ、
 うぁーっと思わず叫びたくなった。

 地上に目を転じれば空の
広がりのスバラシキとは遠く離れた
事件が続く。

 人間のカモン・センスは
そう簡単に誤らないが、単なるルールや
条文はすぐに誤る。

 ビラ配布が可罰的違法性を持つと
判断する裁判官がいて、
数字を入力間違いした取引で
 大損する人がいたり、棚ボタの人もいる。 

 それぞれ、どのような対処を
すれば良いのかカモン・センスに
照らせば明らかだと思うが、
 世の中そうもいかないらしい。
 こっちのカモンセンスが濁らないように
気をつけるだけのことだ。

 美しき時間を持った。
銀座の資生堂で、「ワード」
の打ち合わせ。
 10Fのファロ資生堂で昼食。
 テーブルの上には、
ベルギーのフラワーアーティストDaniel Ost
によるアレンジメント。
 若林則夫さんと大体の方向性を
詰め、詩人の谷郁雄さんと
昨今の文壇事情などを話した。
 谷さんはホンマタカシさん、佐内正史さん
とのコラボレーションの本を出している。

 研究所へ。
 The Brain Club。
 まずは関根崇泰が
疾病失認の論文を紹介し、
 その後須藤珠水が先日
行った学会の報告。

 その間、私は小俣圭がまとめた
Self-Organizing Map(S.O.M.)の
論文を読んで、赤入れする。

 柳川にSmall world networkの
論文をとっとと書きましょうと
激励。

 新宿へ。
 ビッグ・イッシュー日本版の
ゲスト・エディターとして、
内藤礼さんに「小さな気づき」
というテーマで話を伺う。

 内藤さんの作品は表面的には批評性を
前面に出しているわけではないが、
 やはりその背後には固有なる世界への
アプローチの仕方があるのであって、
 ただ、それを露わに出さないだけの
ことである。
 むしろ隠す。意図的にそうする
わけではないが、
 内包させることによって
力が出る。

 そもそも、生命現象などを見れば
わかるように、新しきものがこの世界に
誕生する時は、小さな姿をしている。
 小さきものは、その潜在性において
大きなものであり、
 だからこそ力を持ちうるのではないか。
 それをいかに育むか。

 ライターの土田朋水さん、写真の高松英昭
さんを交え、懇談。
 高松さんは十年以上ホームレスの人々の
姿を追って来ているという。

 壊すのは簡単だが、創るのは大変だから、
どんなに小さなものでもいいから創る
ことを続けていきたいとおもう。
 批評性も、創造と結びついて
はじめて美しい姿を見せる。

 心ある美術界の人たちは、六本木ヒルズの
近くに建築中の新国立美術展示施設
(ナショナル・ギャラリー)(仮称)が、日展や
院展といった公募展への「貸しギャラリー」
になるといって怒っている。

 それについては、面白い話がある。
先日、芸大の授業に行く途中、東京都
美術館を通りかかったら日展をやっていた。
 裏道を通っていたら、
合格発表のような掲示板がある。
 なんだろう、と思って見てみると、
日展入選者の番号と名前がかいてあるのだった。
 
 そっちの方で生きている人たちには
それなりの言い分があるのだろうから、
私は知らない。
 芸術の値段を「号いくら」と書き並べて
いる「美術年鑑」にも愛読者がいるのだろうから、
どうぞ好きにしてくださいと言うしかない。
 私は思うのだが、
 ナショナル・ギャラリーの箱さえ
つくってしまえば、
 時代が流れがまともな方向にいけば、
公募展など追い出されるだろうから、
 その時のために、そこに入れる美しい
作品を一生懸命つくっておくというのが
正しい態度なのではないか。

 むろん、公募展や美術年鑑などに
協力する必要はないし、無視していればよい。

 直島には女性作家三人の作品を収蔵する
新美術館が出来て、
 内藤礼さんも制作するそうである。

12月 10, 2005 at 10:59 午前 |

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コメント

日展や院展の公募展なんて、怒っちゃうと同時に笑っちゃう勢いですが、そういう人たちからも自分は一つの視点をもらってるんだと思うと、何も言えなくなって、ドライな気持ちになります。
それはそれとして、自分のすべきことをしよう、と、前向きな気持ちになって、茂木さんの意見に頷きました。

投稿: 西永 昌代 | 2005/12/11 9:37:38

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